「ライティング・フェア2015」にみる
次世代照明のトレンド
現在行われている、ビッグサイトで行われている「ライティング・フェア2015」。
最新の照明の展示会です。
メーカーに囚われず、どの様な流れになって行きそうかを説明したいと思います。
ちょっとお復習いです。
白熱電球は蛍光灯に比べ、断然消費電力が高いです。
このため、地球温暖化防止、環境保護を目的にLEDへの切替を自主的に行うようにと、経産大臣が表明したのが2008年。
これに対し、東芝ライテックが2010年に製造終了。
2011年に、三菱電機オスラムも終了します。
2011年は大変な年で、東日本大震災が起こります。
次いで、福島原発も被災。計画停電さえ起こる始末です。
これを受け、2012年に、NECライティング、パナソニックも製造を終了します。
では、蛍光灯はどうでしょうか?
蛍光灯の最大の問題点は、水銀を使用していることにあります。
水銀化合物が原因の公害病もありますね。
水俣病です。
2013年10月10日、水銀による汚染防止を目指した「水銀に関する水俣条約」が、国連環境計画(UNEP)の外交会議で採択・署名されました。
この条約により、蛍光灯は2016年に製造終了。2020年に販売終了となります。
20世紀の支えた2つの灯りですが、21世紀以降も人類が生き延びるために必要な省エネ、低環境負荷の灯りにその座を明け渡すわけです。
■LEDのデザイン
ということで、LEDの歴史が始まったのですが、まず第一の課題は「電球を作れ」でした。
「レトロフィット」といわれる行為ですが、今あるソケットが使えないとどうしようもないですから。
低価格も含めて、まずはそこに集中しました。
逆にいえば、現在、家具屋、電気屋を巡っても、自分が好きな形のシーリング、ペンダントに出会うことはとても少ない。
LEDの特性を形に活かしたものは、皆無です。
しかし、LEDの小ささを活かすとこんな新しい形の照明も可能なのです。
新しい時代のシャンデリアと言っても可笑しくないでしょう。
LEDはデジタルコントロールが可能ですので、線ごとに明るさを変える、調色を変えると言った遊びも可能です。
また個々のパーツを壁に取り付けた演出も可能です。
これがLEDのスタンダード・デザインになるのかを問うには時期尚早ですが、LEDのポテンシャルを上手く引き出したデザインであることは間違えありません。
このようなデザインが増えれば、家の雰囲気を新しい照明で変えたいというニーズにも答えられると思います。
また導光技術を使ったデザインもありました。
■LEDの制御技術
日本に流行っていなくて、海外に流行っている照明の制御法があります。
電源スイッチに、EnOcean(エンオーシャン)技術を採用しているのです。
EnOceanは、ドイツのファブレス企業工場を所有せずに製造業としての活動を行う企業です。
独シーメンス中央研究所で生まれた技術を活かすために、2001年に起業されました。
技術の特長はバッテリーレス無線発信技術。
簡単にいいますと、電源のON/OFFを行うリモコンの中にバッテリーを持たないのです。
つまり、電池切れがないのです。
となると、照明のような生活の根源に関わる製品の大本のスイッチとして使えるわけです。
自宅を思い出してください。
大本のスイッチは壁にありますよね。
その時、電線は、配電盤⇒スイッチ⇒照明とつなげられています。
そのスイッチがなくなるわけですので、電線は、配電盤⇒リレー⇒照明となるわけです。
さてもう一度イメージしてみましょう。
今度は、京都の町屋を改造して住むことになったとしましょう。
屋根裏を通して電線は張れるのですが、スイッチを付けるとなると壁を壊さない限り、柱を這わすことになります。
まあ、醜いことこの上もありません。
EnOcean技術を使うと、柱を這わす必要はないわけです。
ヨーロッパの都市部は、古い町並みをそのまま残して、そこに住みますから、この技術は非常に有意義なわけです。
バッテリーレス、つまり電池が不要なのは、スイッチを押すエネルギーを電力に変えるからです。
高校生の物理で、フレミングの法則を習ったと思います。
電磁誘導ですね。
スイッチを押すと磁石がコイルの中を動き、起電するわけです。
起電といってもスゴく小さい。
無線でも、簡単な信号が送るのが精々です。
が、逆にいえば、重要な信号は簡単だったりするわけです。
ON/OFFなどは典型例ですね。
それ以上のことは、HEMSを使うなど普通のリモコンで対応すればいいわけです。
欧州では、すでにいろいろなところで採用されているそうです。
日本では、中将姫が一夜で織り上げたとの由緒を持つ曼荼羅で有名な、奈良県葛城市當麻寺で採用されています。
EnOcean、HEMSと違う意味で使える規格です。
■LEDの健康技術
地球の上で進化した人間は、肉体を持つ限り、地球の現象から逃げられません。
例えば、時差ぼけ。
現地で朝日を浴びると、体内時計がニュートラルになるといいます。
これは朝日の色により、脳が朝と判断。
朝の体制を体に命じるからです。
そう、光は健康のポイントなのです。
例えば、日のある間は、太陽光に似た色をの光を使うわけです。
そして夜はリラックス色に。
日本人がリラックスする色は、白壁に白熱電灯を灯したややベージュな色だそうです。
また、万国共通でリラックスする色は、パステルカラー。
中でもピンク色はリラックス度が高いわけです。
夜は基本白熱電球色、寝る前にピンク色は、理にかなっているわけです。
LEDの特徴の1つに調色がありますが、上記のようにプログラムして人間のサポートをすることも可能です。
これは20世紀の電球にできなかったLEDならではの利点です。
■LEDの停電対策
会場を歩いていると、「今回のLEDにバッテリーを搭載しました」との声。
見ると、光る蛍光灯をもつ女性が・・・。
スターウォーズのライトサーベルじゃあるまいし、と思ったのですが、聞いてみると停電対策とのこと。
LEDは小型ですから、蛍光灯という容器の中に入れたら、スペースが余ります。
そのスペースにバッテリーを入れるわけです。
で、LEDは省エネですから、その小さなバッテリーでも、かなりの時間光るというわけです。
災害発生時は、直後に停電が起き、徐々に復活するのがパターン。
一番落ち着かなければならないときに、灯りがないのですから、下手するとパニックを誘発します。
これは、それも防げるというわけです。
これもLEDの特徴を活かした技術です。
■独自な世界の創造が可能な有機EL
点発光のLEDに対し、今開発が進められているのが面発光の有機ELです。
面自体が発光するので、光が柔らかい。
これはどちらがイイという話ではなく、白熱電球と蛍光灯との関係かと思います。
適所適材ということです。
飾り棚にしているメーカーもありました。
新しい提案でしょうね。
20世紀には、電気代がかかり過ぎてできなかったことが、ちょっとした遊びができるようになる。面白いですね。
また、産学官連携で、新しいムーブメントを起こそうとしているのが山形県ですね。
柔らかく、大きな面積を影なく、正確な色味を上手く使いこなそうと、頑張っています。
中でも感心したのは、手持ちの平面ライト。
これならどこでも、広範囲の色確認が可能です。
今は反物のチェックがメインだとのことですが、美容院での髪染め時のチェック、印刷見本のチェックなどいろいろな用途がすぐにでも思い浮かびます。
まだ、完全な製品でないそうですが、イイ感じのアプローチです。
いろいろとありますが、照明は2020年までにかなりの進化を遂げます。
家を建てる人は、最新情報にご注意あれ!
2015年3月5日
タグ: 2015, EnOcean, LED, YAMAGIWA, パナソニック, ライティング, ローム, 日立, 有機EL