CES Unveiled Tokyoでのパネルディスカッション
SONY分社化発表と同じ時間に語られたこと
CESコンシューマー・エレクトロニクス・ショーは、北米最大の家電ショーですが、9月に行われるIFA(ベルリンショー)とは性格を異にします。
IFAが、どちらかというとオーソドックスで、全てのカテゴリーを同一に扱う雰囲気であるとすると、CESは、カテゴリーを数分野に分け、ラスベガスに設けられた幾つかの会場にそれぞれの特徴を出す感じです。
そのキーワードの1つが、IotInternet of thingsです。
単純にいうと、家庭にあるモノとモノと、インターネットでつなげて、何か、新しいことをすること意味します。
新しいことの定義はありません。
モノでも良いですし、サービスでも良い。今までできなかったことなら何でもイイわけです。
「生活家電.com」で、何度も取り上げている、HEMSもIotの一種です。
■Iotで一会場埋まる
私は行っていませんが、今年のCESでは、Iot関連のブースで一会場埋まったそうです。
ラスベガスは砂漠の真ん中、会場は滅茶大きいですからね。
そこに小さなブースが出て、ワイワイガヤガヤ。
コミケのようなインパクトがあったのではと思います。
日本でコミケは会場が一杯になります。
しかし起業関連では、割と閑散しています。
Iotのほとんどは起業レベルですからね。
今、Iotの展示を日本でしたとしたら、規模は小さいですし、閑散としたことでしょう。
日米のこの差は何故でしょう。
単純な言い方をすると、起業したい人よりも、漫画家になりたい人が多いのです。
その上、漫画家になる、アニメを作るなど、漫画にもなっているしアニメにもなっています。何をすべきかも、分かっているのです。
野茂英雄が大リーグへの道を開いた後、名プレーヤーは大リーグに行くのが当たり前になった感がありますが、彼がその方法を提示しなかったら、多くの選手は大リーグに行かなかったでしょう。
フロンティア精神、アメリカン・ドリーム。
確かにアメリカは起業精神に富んでいますが、彼らはちゃんと起業の方法を知っていることも事実です。
■CES unveiled Tokyo のスタートアップパネルディスカッション
さて、そんな中行われたCES unveiled Tokyo のスタートアップパネルディスカッションですが、なかなか面白かったです。
モデレータに日本経済新聞の論説委員兼編集委員の関口氏、パネリストに(株)Cerevo 代表取締役の岩佐氏、WiL 共同創業者ジェネラルパートナーの西條氏が参加しました。
岩佐氏は実ビジネスの観点から、西條氏は投資の観点から、いろいろコメントされました。
まず、実ビジネスの方から。
Iotによらず、参加すべき技術ハードルは、最近スゴく低くなったそうです。
そうですよね。
全てとは言いませんが、HEMSのプログラムは、笑えるほど簡単にできるようになりました。
こうなると、大企業の技術はどちらかというと、今までの延長線上で、難易度が高いところを目指します。
例えば、PCだと、より薄く、より軽く、そしてより早くです。
技術難易度が高いのはわかるのですが、一度示された方向性は、かなり徹底しないと新しく感じません。
その割りに、企画力の勝負に出てきません。
企画は、新しい技術がどうこうではなく、組み合わせの妙にあるとお考えください。
技術を紐解くと既存の技術が実に多いです。
私は、先日ソニーが発表した、ランニング サポートマシン、Smart B-Trainerを高く評価しています。
技術は、スマホとウォークマンの組み合わせ。
ですが、情報を耳から流すという新機軸と、今まで培った耳にフィットさせるというウェアラブルに必要なアナログ技術と相まって、完全な独自商品になっています。
要するに、ここが遅れているのではというのです。
岩佐氏が見るところ、多分回路の設計を含め、工場で働く人という意味ではない技術屋としてのエンジニアは日本は世界一多いと言います。
つまり、彼らを集め、世界に打って出るのが一番ということです。
例えば、あるサービスはA国では標準なのに、B国では見向きもされないと言うのはよくある話です。
そのサービスができるのなら、日本ではないところに売りに行けばいいわけです。
彼の話は続きます。
「中小企業が、海外を目指そうとしない。」
「日本の場合、ベンチャーと大企業は仲が良いとは言えない。相談したいことがあっても、若い人はどこに持って行っていいのか分からない。」
岩佐氏は、元パナソニックに勤められたことがあるそうです。
また、社員も、元××という大企業が多いそうです。
そうなると、いろいろな窓口を持っている社員は、それだけで価値ある人になるわけです。
さらに、大企業には「スピードがない」そうです。
スタートするまでが「遅い」。
企画は、一言でいうとアイディアです。
100%成功するわけはないです。
100%成功する企画があるなら、会社勤めせず、自分で儲けて、さっさと会社を売って楽隠居します。
ところが、大企業で多いのは、「どの位成功するのか」いろいろな人に聞いて廻るのです。役職者と有識者は違うわけで、ビジネスの原石を見分けられる人は、よりレアです。
で、そんな人が、案件をこねくり回している内に、ベンチャーが成功させてしまう例が実に多い。
たとえ話で、アクションムービーのゴープロがでました。
技術的には、高くはありません。
が、アクションムービーは画のプアさを、それでしか撮れない画でカバーしました。
粗い画です。
が、臨場感と味があります。
日本の大企業では多くの場合、NGでしょうね。
西條氏からすると、今起業資金は国内に潤沢にあるそうです。
質の良い起業提案なら、すぐにでも資金が集まるとのこと。
Wilは、ソニーと協業して、スマートロックのキュリオという会社をおこしました。
で、今、このプロジェクト、ネットファンドで資金を募ったところ、サポーター1,219人、18,681,750円2015年2月19日、19:30現在集まっていますから、立派なものです。
日本でも起業の可能性が有ることがわかります。
後は、この起業活動をどう認知してもらうのかです。
ここでCESの出番です。
CESには、一般のお客さんは元より、メーカーからディストリビューターに至るまでいろいろな人が来ます。
しかも世界各国からです。
よく「一堂に会する」という表現を使いますが、そんな感じです。
日本は、この様な展示がありません。
ビッグサイト、幕張メッセと、取りあえず会場は持っているのですが、パッとしませんね。
今、政府はこのような催し物を、どんどんサポートすべきかも知れません。
■ソニーの分社化
この様な話を聞いていると、友達からメールが来ました。
「ソニー、全部分社化」
仰天しましたが、先日Zシリーズを発表した安曇野のVAIOなどは自分で地に足を付けて歩いてますからね。
これもありかと思いました。
しかし、いろいろな企画がやりやすく、起業家の雰囲気を持っていたソニーはどこへという感じです。
日本で最も成功したベンチャー企業とまで評されたことがあったソニーですが、岩佐氏、西條氏が指摘している要素は本当に少ない様、思います。
起業は自身したい人がするのですが、サラリーマン社長はそうでないですからね。
同じ時間に聞いた非なる話。
「祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり 沙羅双樹の花の色 盛者必衰のことわりをあらわす。
奢れる者は久しからず、ただ春の夜の夢の如し・・・。」
■関連記事
思うこと「「「handiii」に1,000点(円)!」小さなパトロネージュ、クラウドファンディング」
思うこと「“HEMS” ビジネスは、誰が主役なのか? ENEX / SEJ / 新電力EXPO展示会から」
新製品「これぞSONY流!楽しく、緻密なランニングサポート Smart B-Trainer」
2015年2月19日