豆知識の連載「換気って何?」でもレポートしております通り、最近の日本家屋の密閉度(気密度)は極めて高いです。
それは蒸し暑い夏場でも知的労働ができる様に、エアコンが当たり前の時代になったからです。
しかし、それは、冬場の暖房も変えてしまいました。
石油ストーブなどは、専用の局所排気装置(専用の換気扇)が必要となったわけです。
そんな日本だからこそ、私は、オイルヒーターをお勧めします。
■今の日本家屋
今の日本家屋はかなり密閉度(気密度)が高く、欧州他、寒いエリアの家と比べても遜色ありません。
その昔、「家は夏を旨とすべし」という言葉があり、風通しのイイ家=換気の良い日本家屋でした。
この風通しのイイといのは、部屋の中に空気が溜まるエリアを作らないということです。
もっというと、湿度をいかに外に逃がすのかが、日本家屋の最大の課題です。
こうして季節ごとの家具を最小限。
外気を取り入れやすい様大きな窓と縁側、そして欄間を持つ日本家屋が生まれたわけです。
が、昭和30年代からのエアコンの普及、度重なる震災による構法の見直しは、日本の夏を、日本の家屋を変えてしまいました。
断熱材のタップリ入った、密閉型の家が、今の日本家屋です。
高緯度になると、家の密閉度は増します。
隙間があると、家の中の温もりがダダ漏れになってしまいますからね。
典型的な例が、北海道です。
密閉度が高いので、暖房がガンガン効きます。
外は雪、内はTシャツという、北海道の冬に驚かれた人もいたのではないでしょうか?
北海道での暖房は基本「火」を使いますが、煙などはキチンと外に出すようになっています。
寒冷地だけあって、それなりの準備がされているわけです。
暑い夏はエアコンで乗り切り、寒い冬は「・・・です。
今回は、先の文章に当たる「・・・」。
つまりは、暖房のお話です。
■今選択できる暖房
昔、密閉度の甘い時代、日本の部屋の暖房は、「コタツ」に「石油ストーブ」が一般的でした。
熱がどんどん逃げる時代ですから、熱を布団で閉じ込めるコタツ、そして火力の強い石油ストーブが重宝されました。
問題は換気ですね。
火を使うので、酸素がどんどん減ります。
不完全燃焼での有害物質も考慮しなければなりませんが、まず酸素が減りますので、換気は絶対です。
密閉性がイイ部屋では、特に換気を頻繁に行う必要があります。
問題の2つめは「コタツ」ですね。
こちらは健康的な問題では、ありません。
コタツは人間の体に適した頭寒足熱、そのままの暖房器具ですが、余りにも居心地が良い。
気持ちが良いので、ついダラダラとしてしまいます。
今は、ゆっくりというのが余りない時代ですからね、ちょっとコタツは・・・。
となります。
では、そんな中、メインの暖房として選択できるのは、大きく3つですね。
電気ストーブ | 基本はシーズヒーター金属、石英ガラスなどでニクロム線などの発熱部を覆ったヒーターで熱を出し、反射板を使い、その熱を前面に出す方式。 |
オイルヒーター | 不燃性のオイルを暖め、その放射熱で部屋を暖める方式。部屋全体が暖まる。 |
エアコン | 吹き出し口から、熱風を出し、部屋全体を暖める方式。 |
■デロンギがオイルヒーターを作ろうとしたわけ
イタリアのデロンギ社は1902年創業です。
が、もともとはいろいろな部品を作る小工場でした。
規模を拡大し、電気機器の製造をはじめたのは、1950年。
まだこの頃には、デロンギの顔の1つである、オイルヒーターはありません。
オイルヒーターが発売されたのは、1973年頃だそうです。
理由は、ご存じ「オイルショック」です。
1950〜1960年代の欧米は、まさにこの世の春。
暖房はセントラル・ヒーティングで、「家中暖か」が、原則です。
ところがオイルショックで、エネルギー価格が一挙に跳ね上がります。
当然、節約のため、セントラル・ヒーティングは使えなくなります。
理由は簡単ですね。
全部屋暖房するのは不経済だからです。
で、デロンギが作ったのは、「一部屋用のセントラルヒーティング」。
言葉として可笑しいだろうという突っ込みはなし。
「セントラルヒーティングと同じ温もりを一部屋で味わえる」ことです。
セントラルヒーティングの特徴は2つあります。
1つめは、暖房用の換気が要らないこと。
燃やして酸素を消費する部分は、別部屋に用意されるためですね。
2つめは、柔らかな暖かさです。
セントラルヒーティングは、暖かい部屋であり、決して暖かい風を浴びるものではないです。
どちらかというと、人に寄り添うような暖かさです。
この2つ、酸素消費がない、柔らかな暖かさ、これがオイルヒーターの持ち味です。
■日本人が誤りやすいオイルヒーターの使い方
私は日本人です。
このためですかね。
もう20年以上前ですが、デロンギのオイルヒーターを初めて買った時余り上手い使い方をしていませんでした。
単純にいえば、放熱形ストーブの様に、部屋の真ん中に置いたのです。
今考えると、良くなかったですね。
部屋端は余り暖かくなかったですから。
部屋中央に置くのは、火力の強いモノなのですね。
単純にいうと火を燃やすモノなのです。
囲炉裏、だるまストーブなど、火の放射熱は強いです。
そうかといって、電気ストーブのように、人のそばというのも効率がよくありません。
実はオイルヒーターの使い方で一番良いのは、その部屋の中で一番熱を奪うところ=窓のそばなのです。
■置き場所は、窓そば!
完全密閉の部屋では、ロウソク一本でもかなり暖かくなります。
小さくても火ですから、それなりに熱量があるからです。
冬場、部屋が寒くなるのは、窓から熱が逃げるためです。
逆にいえば、ここから寒い空気が降りてくるということです。
部屋を効率よく暖めるには、この寒い空気をシャットアウトしてやれば、イイわけです。
お分かりですね。
配置は、窓そば、中央がベストです。
こうすると緩やかに立ち上る暖気が冷たい空気をシャットアウトします。
そして徐々に部屋全体が暖まって行きます。
冷たい空気を遮っているわけですので、かなり早く(といってもそれなりに掛かりますが)暖まります。
それ以外の置き方だと、暖まるのに更に時間がかかります。
■使える相棒、デロンギ ドラゴンデジタル
暖房で気になるところは、どこでしょうか?
多分、以下の4点だと思います。
●自分の求める暖かさなのか?
●暖房費は、どの位なのか?
●長時間使用での、火災の可能性は?
●オイルヒーターは立ち上がりが遅いと聞いているが、対応策はあるのか?
今回テストしたデロンギ ドラゴンデジタルで、それぞれ確認して行きましょう。
■Q1:自分の求める暖かさなのか?
デロンギ ドラゴンデジタルは、1500Wで、デロンギのオイルヒーターでは、最強のスペックです。
カタログには「〜10畳」とありますが、これは部屋の密閉度でかなり変わります。
これを20畳レベル、自宅の窓4つある南向きの吹き抜けリビングキッチンで使ってみました。
家は1999年ですので、かなり密閉性が高く、真冬でも日が照っていれば暖かく暖房はいらないレベルです。
設置場所は、窓側としました。
日中、昼間は付けません。
午後3時頃、日がかなり傾いてくるとスィッチ・オン。
いつもなら滲みるように出てくる冷気を止めようと言うわけです。
これは見事なものでした。
家族が一番集う窓のそばに1台ですが、見事に家族のそばには冷気が来ません。
このため、暖かいですね。
ただし、北海道のようにTシャツ1枚ということはありません。
厚手のスェットの上下にフリースという今時の、冬の室内着を着ています。
■湿度
次にオイルヒーターのメリットしてあげたいのが、のどが乾かないことです。
風を発生させませんから、皮膚からの水分蒸発も自然なレベルです。
(洗濯を乾かす時、風を当てますよね。その逆です。)
温風と加湿機を使っている人もありますが、そのような部屋は激しく結露します。
目に見える窓なら水気も取りやすくいいのですが、部屋の隠れたところで結露されると大変です。
カビが生えます。
空気中のカビの胞子の量が上がると、健康被害になります。
人は、口から水分を取り、皮膚から吐き出しています。
つまり人がいる限り、密閉空間での湿度は上がります。
エアコンは、冷房時除湿は可能ですが、暖房時除湿はしないのです。
ウイルス対策のため、湿度を50%に保ちたい。
わかります。
しかし、インフルエンザウイルス感染の多くは、接触感染なのです。
うがい、手洗いで、かなりの防げます。
オイルヒーターは放射熱なので、人体から強引に水分を奪うことはありません。
これはオイルヒーターの美点ともいえます。
■Q2:暖房費はどの位
冬の暖房費は高いです。
デロンギも安くはないです。
しかし、このドラゴンデジタルにはエコモードが付いています。
8時間リビングで使用したとして、通常が1時間あたり約25円。これを約19円になるモードです。
差額は、1日48円。月 1440円。3ヶ月で4320円。
で、暖房に差は・・・。
何も感じられません。
これは温めるを常に「強」で行っていたのを、温度によっては一部弱にするなどでの違いですからね。うまく考えてあります。
■オイルヒーターの特徴を理解すると、よりベター
オイルヒーターはすぐ暖かくならない。
それは事実です。
が、逆に冷めにくいのも事実です。
必要な時間が分かっているなら、30分前にスィッチが入り、不要になる30時間前に電源を切ればよいのです。
オイルヒーターの「暖まりにくいけど、冷めにくい」をうまく使ってやるわけです。
意外な節電ポイントです。
■Q3:長時間使用での、火災の可能性は?
最も多い火事の原因は、「コンロ」(フライなどしているとき、加熱しすぎ油に引火)、「タバコ」、「放火」がトップ3です。
が、一方、東京消防局からは、次の様なお達しが出たことがあります。
トップ3には入らなくても、ストーブが危ないのは、今も昔も変わりませんからね。
要するに「電気ストーブに気を付けて」です。
ドラゴンデジタルの使用時表面平均温度は、約60℃。
ふとん乾燥機より、低温なのです。
これなら燃えません。
また、ずっと触り続けることはできませんが、間違って触って「あっ」となった時に火傷の心配もまずありません。
プラグは安全プラグ。周囲の温度を検知し、異常と判断すると電源カットします。
また、1500Wで、コンセントの定格容量ぎりぎりなので、「2口コンセントでは、安全のために片方は必ずあける」ように指示されています。
しかもチャイルドロックもかけられます。
■Q4:オイルヒーターは立ち上がりが遅いと聞いているが、対応策はあるのか?
オイルヒーターの立ち上がりが遅いのは事実です。
暖まりにくく、冷めにくいのがオイルの特徴ですから、こればかりは仕方ないです。
しかし前述の通り、使うタイミングが分かれば、タイマーで対応できます。
考えて使うのが、ベストです。
■現在の日本の家にぴったりの暖房
省エネのために密閉度が上がる日本の家。
メイン暖房として使えるのは、外に煙突を出したストーブ、エアコン、そしてオイルヒーターです。
ストーブを付ける場合は、外に煙突を出さなければならないので、初めから、そのように設計しなければなりません。
となると、エアコン、オイルヒーターです。
エアコンの問題点は、温風をだすということです。
足に当たる分には問題がありません。
が、顔に当たるとボーッとしますね。
これは水分を持って行かれるからです。
オイルヒーターは、放射熱の暖房ですからね。
それがない。
私が、暖房にエアコンではなく、オイルヒーターをお勧めするのは、それが理由です。
エアコンは、体が乾くので、加湿したくなるのですが、空気中から除湿しているわけではないので、人がいると湿度はあがります。
ここに加湿機を加えると、加加湿になり、容易に結露する環境になります。
結露は、カビ発生を誘導しますからね。
省エネ住宅と健康住宅は、全くの別物なのです。
オイルヒーターは、体の乾きを最小限に抑える暖房です。
逆にいえば、湿度コントロールも最低限で済む。
全体をコントロールするメイン暖房としては非常にありがたいことです。
中でもデロンギのドラゴンデジタルは、使い勝手がとてもイイです。
お勧め品です。
商品のより詳しい情報は、デロンギのホームページにてご確認ください。
http://oilheater.delonghi.co.jp/
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