第16回 米・食味分析コンクール:国際大会の中、「お米甲子園」及び「栽培別部門」が行われます。
鑑定士のライセンスを持っており、その審査員を務めることになりました。
今回は、そのレポートです。
■「お米甲子園」とは
農業の後継者不足・若者の米離れなどが進む中、未来を担う高校生たちに今一度米作りを見つめなおし、世界でも有数な“日本のお米”に誇りを持ち、その伝統を受け継ぐとともにさらなる発展を目指してほしいとの思いから “全国農業高校 お米甲子園” が、米・食味分析コンクール:国際大会と平行して始められました。
今年から、プレゼンテーションの部も設けられ、米だけでなく、どんなことをして来たのか、どう思っているのかも、はっきり主張できます。
さらに、今年から、一般社団法人 食の検定協会が後援してくれることになりました。
■米所、田舎館村
コンクールが行われたのは、11月23〜24日。
場所は、青森県南津軽郡田舎館(いなかだて)村の体育館。
田舎館村は、工業団地もあるのですが、田んぼとリンゴ園が拡がる典型的な農村でもあります。
顔を上げると、津軽富士こと「岩木山」が見える。
津軽っ子自慢の「岩木山」は、見目麗しさと、雄大さが同居した山です。
田舎館村で有名なのは、「田んぼアート」です。
多分これは見られたことがある人もいるのではないでしょうか?
しかし、私がビックリしたのは、「田んぼアート」を見るための展望台。
高さが6Fの建物なのですが、デザインはまんま天守閣!お城!
ビルがないエリアですから、非常にきれい。
今年は、いろいろな天守閣に登る機会がありましたが、これも悪くないと思いましたね。
あと、田舎館にはゆるキャラはいませんが、美少女がいます。
「いち姫」。
津軽和徳城主、小山内讃岐の娘「千徳於市」が、そのモデルです。
また設定では、輪廻転生し、現在、中辻いちことして女子高生ライフを満喫しているようです。
美少女キャラは、どうしても顔が似かよる傾向にありますが、パワーがありますからね。
悪くはありません。
■国際大会の審査
国際大会の会場に入ってみますと、エントリー米が、ずらりと並べられています。
全部で4000以上。
日本はもちろんのこと、遠くカリフォルニアからのエントリーもあります。
審査方法は、一次審査、二次審査、最終審査を経て行われます。
一次、二次は機械による審査です。
一次で使うのは、静岡製機(株)の食味計と穀粒判別器。
食味計は、「水分」、「タンパク質」、「アミロース」、「脂肪酸」、「食味値」を測定します。
穀粒判別器は、「整粒度」です。
食味計のボーダーラインは、一般米:85点以上、低・中アミロース米通常のうるち米(通常食べているお米)に比べてアミロースの含有量が少ない米である。粘りが強く、冷めてもあまり食味が低下しないのが特徴。:80点以上です。
穀粒判別器のボーダーラインは、玄米:75点以上、白米(海外のみ):85点以上。
低・中アミロース米は、白濁しているため計測できません。
二次審査。
当然一次審査を通過した玄米を使います。
ここで使用するのは、東洋ライス(株)の味度計。
二次審査が終わると、最終審査ノミネート米の決定です。
まず、水分値が12%以下、または16%以上であった検体はノミネート対象外。また精白米で出展は参考出品扱いになります。
次に、一次、二次審査を通過した米の中で、一次審査の食味値、二次審査の味度値を合計します。
その上位、40位までが最終審査のノミネート米になるわけです。
■最終審査
実は、この最終審査より前の審査は、事前に終わらせます。
それはそうですよね。エントリーは4000オーバー。
しかも、「国際総合部門」以外に、「都道府県代表お米選手権」、「栽培別部門」、「小学校部門」、そして「第5回 全国農業高校 お米甲子園」が競われるのですからね。
で、最終審査は、鑑定士による官能鑑定となります。
タイガー魔法瓶(株)の炊飯器、約40台で、40種類の米を炊きます。
そして30名の鑑定士が、それを食べ鑑定するわけです。
小分けされた米、10種類が乗った盆が配布。
それを10分で鑑定。
それを4回繰り返し、40分で40種類を鑑定するわけです。
鑑定項目は、「色・ツヤ」「香り」「粘り」「食感」「食味」の5項目。
色・ツヤ | 粒は揃っているか、色はどうか、光沢はどうかを確認します。 |
香り | 口元に近づけた時のふくよかな香り、噛み砕いた時のほのかな甘い香り、そしてノドを通る時の鼻に戻される香りですね。ノドを通る時の香りは結構重要です。 |
粘り | 噛んだ時の粘り具合です |
食感 | しっかりしているのか、柔らかいのか、それとも極端にモチモチした食感なのか等です。 |
食味 | 美味しいか、美味しくないか |
1つは、自分の基準を正確に持つことです。
現在はコシヒカリが基準米です。
しかし鑑定士はコシヒカリばっかり食べているかといえば、違いますね。
好きな米を食べています。
要はコシヒカリの味を覚えていて、それに対してのポジションを明示できればいいのです。
2つめは、正確な食べ方です。
まず器を手に取り、米の粒が均一さ、大きさ、色、そして光沢を確認します。
視覚です。
次は、ご飯を少量(口に含む感じ位の少量)箸に取ります。
香りを確認し、口に入れ歯で噛みます。
香り、粘り、食感を感じます。
嗅覚と触覚です。
次に同じご飯をもう少し追加します。
香り、粘り、食感を確認するとの共に、食味を確認します。
意識は、味覚に寄せます。
そして飲み込みます。
ここで後の香りがします。
触感と共に嗅覚を働かせます。
これを繰り返し、審査を進めます。
あと、正直、お米はかなり余ります。
勿体ないですが、仕方ないです。
一口以上食べると、それに引っ張られますから・・・。
正確に上のことを繰り替えし、審査します。
ちなみに「香り」と何度も書いていますが、審査するご飯は炊きたてではおこないません。
1時間以上経ち、温度がかなり抜けた状態で審査します。
審査米は、ある限り会場に来た人にも振る舞われます。
捨てるのは勿体ないですからね。
■お米甲子園の審査
国際審査の翌日、お米甲子園の審査で、私も審査員として参加しました。
お米は、「銘柄」「田んぼ」「水」、そして「その年の天候」で、味が変わります。
が、一つの目安として、農高生が作った米の銘柄を上げておきます。
4校が栽培 | コシヒカリ、にこまる |
3校が栽培 | ひとめぼれ |
1校が栽培 | つや姫、てんこもり、天使の詩、つがるロマン、きぬむすね、ヒノヒカリ、コシヒカリBL、ヒカリ新世紀、あきさかり |
審査は、粛々と進められます。
ちなみに、青森のニュースで審査風景が放送され、私もドーンと映っていました。
しかし、40種類、40分ですからね。
ひたすら集中。
撮られた記憶は全くありません。
■栽培別部門の審査
続いて、栽培別部門の審査。
「低・中アミロース米」「JAS・JAS転換中JASは日本農林規格のこと。「農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律(JAS法)」の適用を受け、認証先を記した「有機JASマーク」の表示が必要となったため、有機栽培をJASと呼ぶことがある。」「若手農業経営者 男性」「若手農業経営者 女性」「水田環境特A」「早場米はやばまい。通常の出荷時期より早い時期、主に9月に出荷される米。」「環境王国そこ住む地域住民の方々が築きあげた優れた自然環境と農業のバランスが保たれ、安心できる農産物の生産に適した環境の地域のこと。環境王国は認定委員会により認定される。委員会は、米・食味鑑定士協会 鈴木会長、宮城大学 大泉教授、日本土壌肥料学会 西尾元会長、滋賀県立大学 小池名誉教授、静岡大学 富田教授、横浜国立大学 嘉田教授、淡水生物研究所 谷理事よりなる 」の米を味わうわけです。
うなったのは、水田環境特Aですね。3種出されたのですが、どれを食べても本当に美味しい。
そして環境王国も。
銘柄だけではないことが、一口でわかります。
■プレゼンテーション部門
お米甲子園で、今回より始められたのが、プレゼンテーション部門。
こちらは非常に面白かったです。
昔の青年の主張コンクールを彷彿とさせる青森県五所川原農林高等学校。
米の歴史から説き起こす、長崎県立大村城南高等学校。
台湾へ米の輸出に挑戦した山形県立置賜農業高等学校。
特徴もさることながら、若いパワーを感じます。
そして視点もイイですね。
特に山形県立置賜農業高等学校の相手は、海外ですからね。
日本の美味しい米は海外、特にアジアでは垂涎モノの1つですが、それでキチンと儲ける仕組みはまだできていません。
会場での講評は、村長がされたのですが、それも面白かったです。
五所川原へは、「田舎館からみると、あんな土地の悪い(痩せている)ところで頑張って・・・」といい、大村城南には、「米の九州伝来は有名ですが、津軽平野にも弥生中期には稲作が入っており・・・」という。
本当に、米と田舎館、東北が好きなんだと感じましたね。
ちなみに言を足しておきますと、田舎館村には垂柳遺跡(たれやなぎいせき)という弥生時代中期の遺跡があり、そこから畔で区画された656面の水田跡が発見されています。
東北の歴史を考える時、京都中心で考えるのは不適切です。
少なくとも、中国と直接交流があったと見るべきでしょう。
日本は関東当たりを境界線として、西と東で別々に発達した文化があり、それが融合して最終的に日本を形成したと考えるのが適当なようです。
しかし、日本の正史は西の文化ですからね、文化は西から東に上がる。
つまり東北は最も遅れた地域。
未だに、そう見る人も多いです。
これに対する不満でしょうね。
日本の歴史認識は、中々変わりませんからね。
村長さんの、この高い問題意識好きです。
■審査結果
最高金賞 | 滋賀県立長浜農業高等学校 生物活用科 3年 | にこまる |
金賞 | 佐賀県立佐賀農業高等学校 農業科学科 | 天使の詩 |
金賞 | 中津川市立阿木高等学校 生産科学科 | コシヒカリ |
金賞 | 秋田県立西目高等学校 総合学科 3年 | ひとめぼれ |
金賞 | 長崎県立大村城南高等学校 | にこまる |
金賞 | 兵庫県立播磨農業高等学校 農業経営科 作物・農業機械コース | ヒノヒカリ |
次に注目して欲しいのは、銘柄がばらけていることです。
逆に言えば、複数ノミネートされたコシヒカリより、良いとされた米があるということです。
またコシヒカリが合わないエリアがあります。
津軽平野もその1つ。
平均気温が低すぎるのです。
ここでは、その寒さに合わせた「つがるロマン」などが作られます。
このお米も美味しい。
ところが市場売価が、スゴく違うのです。
1.5倍位ですかね。
これなら、何がなんでもコシヒカリを作りたくなりますよね。
強引に作ると米は痩せますからね。
コシヒカリといえども、さほど美味しくない。
よく出来た「つがるロマン」の方が美味しい。
しかし「つがるロマン」だと高く売れない。
米・食味鑑定協会がコンクールをしているのは、その状態を改善するためです。
世の中には美味しい米が、いろいろあることを分かってもらうためです。
そして農家も儲かるようにする。
そのためです。
美味いとなれば海外でも買ってくれる。
このための「国際」コンクールなのです。
■美味しい米&野菜が作る、農家の未来
農業高校生は、農家を見ていますからね。
何とかしたいと思うわけです。
山形の置賜農業高等学校は、ビジネスを始めちゃったわけです。
日本で農業を成り立たせるためには、量を追うことはできません。
それだと、海外に負けてしまう。
土地を持っている所が勝ちます。
このため、日本で作るモノは須く美味しくあるべきです。
価格に見合う納得すべき味であることです。
これが農家を救うと思います。
今から工場出荷の水耕栽培の野菜がどんどん出てきます。
私も水耕栽培のレタス試してみましたが、なかなかの味です。
決して痩せてはいません。
しかし、大地の恵みはそれを上回ると思っています。
また、ジャガイモ、大根など、水耕栽培で出来ない野菜も一杯あります。
何よりも、「米」。
美味しさは、日本に冨をもたらします。
世界遺産にも登録させた「和食」ですが、農家の頑張りでもっと違う展開が可能だと思います。
世界三大料理は、フランス、中華、トルコですが、ここ10年で様変わりするでしょう。
来年の、お米甲子園は、石川県小松市です。
見物は無料ですので、是非いらしてください。
米を食べながら、日本の未来に思いを馳せるのも一興です。
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