シャープのドラム型洗濯乾燥機の話も、洗濯乾燥機の構成比が、ドラム型とタテ型を比べるとタテ型が多くなったという話から始まりました。
やはり、ドラム型の洗浄能力の足りなさが、問題だというわけです。
洗濯乾燥機は、ドラム型、タテ型とあります。
ドラム型は、衣類を壁面に擦りつける「押し洗い」と、衣類を上から下に叩きつけるような「叩き洗い」、タテ型は「押し洗い」に、衣類同士を擦り合わせる「もみ洗い」です。
「もみ洗い」は衣服がある程度以上自由に動けることが前提ですので、水量が多いことが前提になります。
逆に「叩き洗い」は、水量が少なくても汚れが落とせます。
日本で、タテ型の洗濯機が進化したのは、水量が多いからですね。
しかも川の流れも速いので、常にきれい。
欧米はこの逆。このためドラム型が進化したわけです。
また、洗濯の汚れはいろいろありますが、落ちにくいもののトップ3は、次の順です。
「ドロ汚れ」「黄ばみ・黒ずみ(皮脂汚れ)」「食べ物、飲み物汚れ」。
叩き洗いは、どちらかというと衣服に優しいといわれます。
逆にいえば、物理的な洗浄パワーが落ちるわけです。
このため、物理的なパワーで取らなければならない、「どろ汚れ」「食べこぼし」は厳しいというわけです。
■マイクロ高圧洗浄
ドロ汚れは、子供が、特に幼い子供がいる家庭では非常にポピュラーな汚れです。
ところが、これの対応が中々難しい。
理由は簡単、ドロの粒子が衣服の繊維の目に入ってしまうためです。
微粒子なので一度入ってしまうと、これがなかなか取れない。
洗剤の問題ではありません。
ドロですので、水にも、溶剤にも取れません。
基本的に洗剤の問題ではないのです。
ドロの粒子を叩き出すことが必要です。
このため、有効なのは歯ブラシを使った手洗いです。
ブラシで汚れを掻き出すわけです。
これがドロ汚れです。
今回シャープが開発したのは、「マイクロ高圧洗浄」です。
これは「マイクロ」の方に意味があります。
水を細かな粒子にして散弾銃のように繊維に浴びせるのです。
大きさは100〜500μm。
皆さんも経験があると思いますが、目の詰まった繊維はなかなか水を吸いません。
これは水がなかなか細かな粒子にならないためです。
シャープは、その水粒子を作り出す仕組みを作り出したのです。
圧力の方ですが、極端に高いわけではありません。
この水の微粒子を繊維の中に入れ込むレベルです。
水の塊を押し込むわけでないので、極端に高圧にせずに済むのです。
このため、水道の圧そのままです。
手に当てると、「高圧」という言葉に疑問を抱く人が出てくるレベルと言ってもイイと思います。
が、粒子が小さいので、それで十分なのです。
理にかなった物理洗浄力アップです。
この機能、ドロ汚れ対策を目的として作られたモノですが、皮脂汚れ、食べ残しにも効きます。
洗浄力を上げるには、この様に物理的な機能を上げる方法と、洗剤の活性を高めるなど、化学的な方法がありますが、今回シャープは物理的な機能を上げてきたわけです。
■その他の機能
その他の機能は、基本昨年まで持っている機能を改良しています。
シャープの洗濯乾燥機の特徴の1つは、センサーが多いことです。
「光センサー」「泡センサー」「重量センサー」「水位センサー」「振動センサー」「湿度センサー」「温度センサー」。
これにより、洗濯乾燥機の状態を常に把握。
洗濯乾燥を、最適に進めると共に、時間短縮、省エネ運転ができるというものです。
例えば、次のような感じです。
洗剤の種類 | 泡センサー 光センサー |
泡の量と洗濯水の透明度から、洗剤の種類を見分け、すずぎ1回洗剤なら自動ですすぎ回数を1回に |
衣類の布質 | 水位センサー | 吸水率から布質を見分けて、脱水・乾燥時間を調整 |
乾き具合 | 温度センサー 湿度センサー |
空気の水分量を測るので、衣類の乾きを正確に判断。乾かし過ぎのムダを省き、スピーディ |
衣類の量 | 重量センサー | ドラム回転の負荷から衣類量を検知から衣類の量を検知し、量に応じて時間も調整 |
汚れ具合い | 光センサー | 洗濯水の透明度から汚れを検知、汚れが少ない時は運転時間を短縮 |
衣類の偏り | 振動センサー | 脱水時の振動から槽内の衣類の偏りを検知 |
周囲の温度 | 温度センサー | 周囲の温度を計測し、洗剤の効果が出やすい夏場などは運転時間を短縮 |
フィルター 目詰まり |
温度センサー等 | 糸くず、乾燥フィルターの目詰まりを検知 |
例えば、洗濯物が多い場合、ドラム型の特徴である叩き洗いの効果が、出にくい時があります。
そりゃ、ぎっしり詰め込まれると、上から下に落とすこともできませんからね。
そんな時は、こすり洗いを自動で付加します。
シャープのドラム型のガラス扉は、ひまわりの花のあの種がぎっしり詰まった状態を模しており、ドラム型用の洗濯板の様な感じですね。そこに擦りつけるというわけです。
状態を正確に把握できれば、やり方はいろいろあります。
また効率のよいヒートポンプが組み込まれているため、乾燥まで使っても電気代がそれなりで済むところはイイ感じですね。
シャープは、3人家族の洗濯を、下記の条件で想定しているのですが、その場合電気代が、約350円です。
●条件
週末まとめ洗濯乾燥 約6kg(消費電力:530Wh)×4回
平日は時短モードによる洗濯乾燥 約2kg(消費電力:430Wh)×20回
少量時短モードによる洗濯乾燥 約0.5kg(消費電力:240Wh)×8回
もちろん、プラズマクラスターによる槽の洗浄ももちろん付いています。
さらにココロボも進化しています。
ちょっとビックリしたのは「声優」を変えたこと。見た目と一緒でダイレクトにアピールしてくる部分ですからね。
私は、目でみてスィッチで動かす方法も重要だと思いますが、声で操作できれば、もっとイイと思っています。
旧約聖書の創世記では、神は世を作る時「光あれ」と言ったとあります。
知的な、人間最古のコミュニケーションは声だったのかも知れません。
これを極められるなら、それに越したことはありませんからね。
■何故ドロ汚れに着目したのか?
冒頭、ドラム型は洗浄力でタテ型に劣るイメージがあるため、構成比が落ちている旨を書きました。
では、どの層がタテ型を好むのでしょうか?
子育て世代ですね。
子供ができると、洗濯物はイメージ的に倍以上に増えます。
とにかく、汚れますからね。
汗まみれになりますし、いろいろな汚れを付けて帰ります。
風呂に入れ、新しい服に着替えさせても、ご飯を食べさせるとどこかに、ご飯が付いています。
しかも、学校からも給食着も持って帰ってくる・・・。
出してくるのが、日曜日遅くだと、それだけでパニックです。
こんな時に便利なのはドラム型ですね。
なんたって乾燥機が強力ですからね。
ところが、汚れは・・・となり、勢いタテ型を選択することになるわけです。
そのために開発された、「マイクロ高圧洗浄」です。
子供がどこからともなく付けてくるわけのわからない汚れをドラム型で落とすための機能です。
そうシャープは、今まで使ってくれなかった子育て世代を取り込もうとしているわけです。
これはマーケティング、ビジネスから見ても面白い挑戦です。
今後のシャープの動きに注目です!