“IFA2014″ パナソニックブースで確認した、
日本と欧州の白物家電の基本差
よく海外のお話をする時、ヨーロッパらしい、ヨーロッパ特有の、という表現が使われます。
それがどの様なことか、一番分かるのが、日本を代表する家電メーカー、パナソニックのブースです。
日本人なら、パナソニックの家電を持っていない人はいないでしょう。
逆にいえば、それだけ馴染んでいますからね。
違和感もハッキリ分かるわけです。
では、今年のパナソニック・ブースを確認しながら、ヨーロッパらしさを確認しましょう。
■3つに分かれているブース
パナソニックのブースは大まかに3つに区分されていました。
「4K映像」「白物家電」「テクニクス」の3つです。
面積は、それぞれ等分されています。
白物家電のブースには、その中に「調理家電」「冷蔵庫」「食洗機」「IHクッキング」「理容・美容家電」「洗濯機」のコーナーがあり、調理家電のコーナーでは客寄せ、試食の調理デモが行われます。
この調理デモは大人気で、お昼時から2時位までは戦場のような忙しさです。
IFAの中の食事コーナーには、「特別な価格で提供している」と書かれています。単純にいえば、「割高」なのです。
IFAはヨーロッパの建造物らしく、広大な中庭を持ちます。
夏フェスができるレベルです。
ここでお弁当を食べる人も多い。
9月と言っても日差しがやや強いだけで、大陸性気候でしかも北寄りですから、温度も20℃台前半ですし、湿度も少ない。
秋の行楽シーズンのような雰囲気です。
■入り口は「4K」そろい踏み
今年のパナソニックのAVは、4Kシステムが揃ったことを大々的にアピールしていました。
TVだけでなく、レコーダー、ムービー、デジカメに至るまで、民生用、業務用を問わずに揃ったよ、というわけです。
「来ているなぁ」と感じたのは、ウェアラブルカメラ。
このサイズで4Kですからね。
ネイマール目線ではないですが、これでピンボケなし、視野角がそれなりなら欲しいですね。
あと、こちらの方がいいなぁと思ったのは、4Kサイネージです。
画もキレイなのですが、文字が印刷物にほぼ同等というのがイイです。
■調理家電
まず一番に気づくのは、どれもこれも”金属光沢”があることです。
調理器具に求められるのは、清潔なこと。
美味しくできても、黴菌一杯なのはNGです。
また汚れもNGです。
その逆にしておきたい。
つまりピカピカなら・・・、というわけです。
同じ状況の所が日本にもありますね。
料理屋の厨房です。
これが家庭にも入っているのがヨーロッパです。
が、これ以外に高性能を感じる部分が多いのではと思っています。
ドイツのナショナル・カラーはシルバーです。
ちなみに、このナショナルカラーには次のような逸話があります。
グランプリでメルセデス・ベンツが1kgの重量オーバーした時に、対策として塗装ごと外装をヤスリで削り対応。
銀色の下地で矢のように走しり、「シルバー・アロー(銀の矢)」と呼ばれました。
以降、ドイツのナショナルカラーは、白から銀になったそうです。
ナショナルカラーを変える位のインパクトですから、銀=高性能という意味もあるのかも知れません。
ちなみに、ヨーロッパで銀器が使われたのは、抗菌作用のためです。
ヨーロッパの歴史を紐解くと、感染症の嵐。
上下水道とも発達が遅れた地域が多かったので、仕方ないのかも知れませんが、銀というのはかなり実用的に使われたものです。
次に気付くのは、電子レンジ系が少ない。
代わりにオーブンが、ドーンと鎮座まします。
元々、西洋料理はオーブンが基本ですからね。
また、弁当系はサンドウィッチです。
サンドウィッチは温めると、味が格段によくなるというものではありません。
つまり、「チン」の文化はないと思われます。
その代わりといってはなんですが、ミキサー系の家電は非常に多い。
これは日本が、素材の味を楽しむため、素材を切るのに対し、ヨーロッパは、ソースを楽しむためですね。
いろいろなものを混ぜ合わせて、新しい味を作り出すのです。
包丁にウェィトを置く日本に対し、ミキシングにウェイトを置くのです。
私はこれは小麦から来ているのではないかと思います。
小麦は、いろいろな所で主食とされますが、籾と実が分離しにくいというより、できません。
このため粉砕し、実の部分を小麦粉として取り出します。
米はモミを取り、ヌカをこそげ落とせば、米となるのとは異なります。
このため、小麦粉は何を作るにせよ、混ぜ合わせて生地を作ります。
このように、ヨーロッパでは混ぜることから料理が始まるわけです。
で、最後の特徴は、ビルドイン型が多いということです。
実はこの歴史、そんなに古くはありません。
1960年初頭だそうです。
が、これ主流になった理由は、判然としません。
キッチンが片づいて見えるのが大きな理由だと思いますが、それ以外にもあるような気がしています。
私のイメージするその理由は、先ほどと同じです。
生地を作るには乾いたスペースがいるのです。
包丁を使うなら、流し内でもできますが、生地を捏ねたり、延ばしたりはできませんからね。
このスペースに家電が鎮座ましますことは、余り有効なスペースの使い方とはいえません。
このため、家電の壁中収納。
ビルトインですね。
どうでしょうか?
■エスプレッソマシン
ヨーロッパのドリンクの基本は、コーヒーです。
ホテルの朝食からしてそうですね。
バイキング形式で飲み放題。
ドリンクメニューは、「水」「オレンジジュース」「牛乳」「コーヒー」です。
で、別格がエスプレッソマシンですね。
今回泊まったホテルには、エスプレッソマシンが置いてあり、期待したのですが、「夕方から、で有料よ!」と言われてしまいました。
パナソニックを興した松下幸之助は、海外勤務の心得の1つとして、「異国に在ることを認識し、其の国の風俗・風習に早く慣れるとともにそれらを深く理解すること。」としてます。
だからと言うわけでないでしょうが、日本の大手メーカーがエスプレッソマシンを持っているのは、心強い限りです。
ないと、「あゝ、やはり単なる日本メーカーなんだ。日本で作ったものだけを売るんだ。」と言われる可能性があります。
そういう意味でも、素晴らしいと思います。
■冷蔵庫
各棚(部屋)に内扉があり、日本に比べるとマジ切られています。
これは冷蔵庫が、冷却器を各部屋が持つ直冷式だからです。
日本は、間冷式です。
間冷式は冷気を一カ所で作り、それを循環させる方式です。
日本で、直冷式を採用しないのは、霜取りの関係です。
日本は湿度が高いですからね。
直冷式にすると、霜取りの時、数カ所で霜取りしなければならないため大変になってしまいます。
それに比べヨーロッパは大陸性気候。
非常に湿度が少ない。
ベルリンなどは、北緯52°30’ですから、日本の近くだと、北海道宗谷岬を超え、北樺太にあたります。
北海道ですら、梅雨がない。湿度少ない。爽やか。ですからね。
この冷蔵庫もビルトイン式が人気だそうです。
パナソニックのビルトイン冷蔵庫は、まさに壁。
説明されても、どこにあるのか迷うレベルでした。
大型冷蔵庫は、日本で廃れてしまった、扉を開けないでも水が飲めるシステムを採用しているモノも多いです。
■IHクッキングヒーター
展示されていたのは、直列3口型です。
日本標準ともいうべき三角3口型ではありません。
設置に制限がある場合は仕方がありませんが、制限がない場合、こちらの方が圧倒的に使い勝手がイイです。
■食洗機
日本と一番違うのは、食洗機の普及率かも知れません。
実際、どの家庭でもあるようです。
こちらもお湯洗いがマスト条件です。
評判を聞いてみますと、「深いため、多くのものを洗えるので、評判良いよ。」と言っていました。
技術的には、日本と変わりません。
■洗濯機・乾燥機
一番違うのは、洗濯条件です。
水質と温度ですね。
硬水で冷たいことです。
この条件どういうことか単純にいいますと、洗剤の働きがスゴく弱くなる。
このため「お湯洗い」が当たり前です。
このため少ない水(湯)量で洗えるドラム式が基本となります。
パナソニックも、ドラム式の洗濯機、乾燥機を並べアピールしていました。
デモは「均一」に洗えることをアピールしている感じですね。
日本のドラム式と、同じ技術、「ヒートポンプ乾燥」「エコナビ」などが詰め込まれています。
■アイロン
パナソニックでの展示はなかったのですが、項目として上げておきます。
アイロンは、ヨーロッパでは大いに時間を掛けて行います。
丁寧というより、アイロンをかける量が半端ないです。
例えばシーツ。
日本の家庭でかけるかと、答えは「余り・・・」でしょうね。
彼らは、アイロンをガンガン掛けます。
このため、スチーム用の水タンクは、内蔵でなく、ほとんどの場合は別タンクで設けます。
某K社は、スチームクリーナーそのまま。
それに加えて頑丈なアイロン台も。
本当にため息が出てきます。
しかしこれがヨーロッパの家事なのです。
これで、共働き、子育て、パーティー、コンサートなど夜の催しが、ありますので、本当に大変です。
■掃除機
これも激戦区です。
部屋はキレイであることが必須ですから、当然ガンガン掃除します。
1時間位はザラだそうですね。
そうなると共働きは、ロボット掃除機が欲しい。
そうでしょうね。
炊事(料理)、洗濯、アイロン掛け、掃除・・・。
ロボットで許されるモノなら、お願いというのが本音でしょう。
家事が深夜にずれこむためか、ヨーロッパ製の掃除機は、静音性をうたったものが多いです。
また、ゴミ捨ても少ない回数で対応できる、紙パックにこだわるメーカーも多い。
ただ2〜3層のペラペラな感じではなく、5層以上の目詰まりにもしっかり堪えるとしたスペシャルな紙パックですがね。
ただ私が廻った時(一般開催の前日)、パナソニックの掃除機の展示はされていませんでした。
■空気調整関連
まずエアコンを並べているブースは、ほとんどないですね。
これは基本的に、夏でもそんなに暑くないし、暑い時には働かない(長期バカンスを取る)のが習慣になっているからだと思います。
ついでに言えば、加湿機、除湿器もほとんどありません。
これも同じ理由ですね。
空気清浄機は、少し出展されています。
日本と異なるのは、サイズ。
一部屋の床面積が広いためです。
■健康家電、理容・美容家電
これらは、性能は日本と同じモノで、国によって異なる電圧事情に合わせたものがでています。
あと一つ違うのは、「デザイン」「色」ですね。
日本よりカラフル感があります。
パーソナルユースだからと思いますが、電気シェイバーで戦隊ヒーローの色が集められるとは思いませんでした。
■テクニクスのこと
最後にテクニクスに触れましょう。
テクニクスは、松下時代から使われたオーディオブランドです。
その時のブランドは、「National(ナショナル)」ですからね。
現在の社名は、海外のAVを伸ばして行くために、欧米で用いられたものです。
パナビジョンの「パナ」と、音と言う意味の「ソニック」で作った造語です。
詰まり、AVメーカーのための社名といってもイイのですが、そこにオーディオ・ブランド、「テクニクス」の復活です。
この話は問い詰めても、答えは出ないでしょう。
しかし日本のAVの飛車、角の一方を担うメーカーですからね。
ただただ頑張って欲しいと思います。
今回のシステムは、念入りに作ってあり意欲作で、期待したいと思います。
ただ、パナソニックの真の強みは、総合力です。
AV専業メーカーでは、出来ないことができることです。
正直、太陽光発電を含め、直流のみで構成されたAVルームなどの提案が欲しい。
異国の地でも、そう感じました。
2014年9月14日