新製品

災害対応の標準になるか? V-LOWマルチメディア
放送と加賀電子のハイブリッド防災ラジオ


9月1日は、あの関東大震災が起こった日です。
マグニチュード7.9。死者・行方不明 10万5千余人。
天災としては最大規模。東京都以外、神奈川、千葉、埼玉、山梨、静岡、茨城、長野、栃木、群馬の9県に被害を及ぼしました。
このため9月1日は、防災の日と定められています。

以降、日本は防災に務めてきましたが、次の様な被害が出ています。
名称 死者 行方不明 負傷
阪神・淡路大震災 6434 3 43792
東日本大震災 15889 2609 6152
広島土砂災害 72 2 43
注)この表はウィキペディアのデーターを表にしたものです。

で、先月発生した広島の土砂災害を入れたのは、流言飛語があったからです。

阪神・淡路大震災、東日本大震災で、略奪、盗みが発生せず、世界各国から驚嘆の目で見られた日本ですが、今回はネットで朝鮮人が盗みを働いたというデマが流されました。
心寒い行為ですが、ネットに規制は掛けられませんから、こんなこともあります。

では、災害時に、最もイイ情報入手は、どう行うのがベストなのでしょうか?

 
■放送局の義務
いろいろな国で状況は異なりますが、日本の電波は基本「国」のものです。
で、放送局はこれを使わしてもらう関係です。
貸したモノを使って、滅茶苦茶なことを放送されては困ります。

このため放送法で、以下の通り定められています。

「第4条
放送番組は、法律に定める権限に基づく場合でなければ、何人からも干渉され、又は規律されることがない。

(1) 公安及び善良な風俗を害しないこと。
(2) 政治的に公平であること。
(3) 報道は事実をまげないですること。
(4) 意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。

以下略」

当然、法律ですから罰則もあります。
そこがネットとは、違うところです。

放送が必ずしも正しいと言えないことは、皆さんもご承知だと思いますが、少なくとも流言飛語は出にくい構造になっています。

 
■東日本大震災でのアンケート
下は東日本大震災で情報入手に役にたった情報源のアンケートです。
2014年08月31日11時11分00秒.pdf002 圧倒的に「ラジオ」ですね。

私は東京・世田谷に在住ですが、この日は千葉・勝浦の病院にいました。
病院での仕事が終わった午後5時。
テレビを見て、津波により東北が大変になっていることを知りました。

クルマで千葉市まで戻りましたが、そこでストップ。
とうとう泊まることになりました。
携帯電話は回線がパンクして通じませんし、スマホで確認しても千葉から東京へ戻る手段が見つかりません。
そんな時、役に立ったのはやはりラジオでした。

翌朝、午前6時に、7時から総武線が、再開するとの情報が入りました。
実際に電車が動いたのは、7時50分。東京・御茶ノ水に到着したのは、11時。
家に辿り着いたのは12時過ぎでした。

 
何故、ネットでなく、テレビでなく、ラジオなのでしょうか?

ネットは自分で情報にアクセスする必要があります。
情報がどこにあるか知らなければそこに辿り付けませんし、回線が一杯だとつながりません。つながらないとイライラします。
また、情報精度は自分で確かめなければなりません。
が、自分で必要な時に、情報を取りに行けることは魅力です。

テレビの場合、ローカル情報枠が小さいことがあげられます。
これはテレビの電波が遠くまで届くため、広範囲な情報を扱うためです。
それに、どのタイミングでローカル情報が入るのかがわかりません。
テロップで出し続けてくれるのは、まだ良心的な方です。

その逆がラジオです。
ラジオは地方局が実に多い。
これなら身近な情報がいろいろ扱えます。

 
が、ラジオなら問題ないのでしょうか?
ゲリラ豪雨などは、数キロがその範囲ですから、狭い東京23区内でも、渋谷区の情報で、足立区の住民は動けません。

ラジオより、より狭い範囲で、的確な情報があれば、・・・。

では、それがあるのでしょうか?

 
実はあるのです。

 
■V-LOWマルチメディア放送
2014年08月31日11時07分52秒.pdf001聞いたことがない放送だと思います。

V-LOWのVは、VHFVery High Frequency。超短波のこと。帯域:30 – 300MHzを意味します。
そう地デジ化で明け渡したVHF電波帯域です。
LOWはその帯域の下側のこと。
具体的には、95〜108MHzです。

 
マルチメディア放送にも明確な意味があります。

実は、従来の放送は、送る信号、送り方に制限があります。
例えば「テレビジョン放送」。
「静止し、又は移動する事物の瞬間的映像及びこれに伴う音声その他の音響を送る放送をいう。」と規定されています。

マルチメディア放送は、送るモノ、送り方に制限はありません。
音声、静止画、動画、データー何でもイイですし、リアルタイム放送でも、蓄積型放送サーバーに一度コンテンツを全て入れてしまい、サービス毎、そのコンテンツの中の必要な情報を放送する方法。ダイジェスト視聴、マルチシナリオ視聴、番組リクエスト視聴等、色々なサービスがある。でも、IPデータキャスト通信の世界で一般的である、「パケット」を放送電波にのせて送る放送。電子新聞、電子チラシ、強制起動などの制御データーなど、インターネットで使っているサービスが使える。でもイイのです。

テレビとネットが合体した感じですね。
しかもネットの様に、回線満杯はありませんので、とても便利です。

2014年08月31日11時07分52秒.pdf017 さらに、このデジタル放送を受けるのはデジタル機器です。
地域毎の設定ができます。

例えば、私は世田谷のK町に住んでいます。
予め世田谷・K町に設定にしていれば、隣のS町の情報を受けずに済むわけです。
これを言い換えると、避難所の名指し、「大雨で道路が冠水し始めました。K町1丁目の人は、××小学校2Fに避難してください」の様な、そのエリアの人だけに役に立つ情報をドンドン出していけるということです。

DSCF4331

同じ放送を受信しても、画面が異なる3つのラジオ。
理由は、3つのラジオのエリアコードが違うからである。


今までは、どうかというと、「世田谷にお住まいの人は、次の所に避難してください。で、A町の方は○○へ、B町の方は△△へ、・・・・」で、自分の番が来るまで行動が起こせません。
避難は、「短時間で素早く」が鉄則ですから、これも重要なポイントです。

 
■エフエム東京の子会社が、マルチメディア放送のハード関係を受け持つ
さて簡単に、このマルチメディア放送を実施する会社について触れましょう。
エフエム東京の子会社の(株)VIPです。

エフエム東京は、かなり気骨のある会社で、現場対応も早い会社です。

例えば、東日本大震災時、3/11〜3/18、1週間CM放送を取りやめ、少しでも多くの報道をしています。(後で株主ともめたそうです)
また、震災翌日、中越地震の被災体験の母親から、「避難所は子供が怯えるのですが、なんとかなりませんか?」というリクエストに応え、「アンパンマンのマーチ」を放送しています。アンパンマンは、これから拡がって行きます。
さらにFM岩手の要請を受け、釜石支局にサテライトスタジオを設けるなどしています。

 
マルチメディア放送実施と書きましたが、実は放送局開設は、そう簡単に行きません。
大臣の認可も必要ですし、機材にもお金が掛かります。

VIPは、「V-Lowマルチメディア放送に関わる特定基地局の開設計画」を総務省に提出。電波監理審議会を経て、2014年7月15日に認可を受けました。
この時、VIPは、放送局に使われるハードを扱う会社として唯一認定されたのです。

VIPが放送用のハードを整え、全国で7つのエリアに分け、マルチメディア放送を立ち上げるわけです。

マルチメディア放送は、最終的にはいろいろなことに使えますが、防災の役割は決して小さくはありません。
是非、がんばって欲しいものです。

 
■ハイブリッド防災ラジオ「M’eoSound VL1」
P1010274

TAXAN M’eoSound VL1
9月1日より受注開始


さて、次はそれを受けるラジオです。
メーカーは加賀ハイテック。ブランドは「TAXAN(タクサン)」。
PCの周辺機器の中でも、ひと味違うユニークな機器を世に送り出してきた会社です。

チューナー系は、2006年の地デジ・ワンセグ用受信モジュールから手がけ、8年の実績を積んでいます。

で、この防災用ラジオですが、一番してはいけないことは、防災専用にしてしまうことです。
専用にすると忘れてしまいますからね。
いざというときに、電池がなかったりします。
「天災は忘れたころにやってくる」(寺田寅彦)は、実にうまい名文句です。

このため「M’eoSound VL1」は1つの工夫がしてあります。
通常のAM/FM放送が聴けるハイブリッド・ラジオになっているのです。

表示部も、時計、カレンダーなども表示でき、なるべく日常使いもできるようになっています。
もちろんLEDライトも付いています。

9月1日より受注生産となります。

 
■このプロジェクトへの印象
まずラジオですが、防災機器として、重要な所はクリアしてあると思います。初号機としては順当というところでしょうか。

が、個人的にいうと、より日常的に使えるモノが望ましいです。

緊急警報は、かなり大きな音で鳴ります。
電話の呼び出し音と同等といえばイイでしょうかね。
しかし、その呼び出し音を聞き逃すことがあるのが人間ですからね。

P1010276

大きいわけでも、重いわけでもないが
部屋から部屋へ持ち歩かないと思う


特にこのサイズで部屋から部屋へ持ち歩くことはないと考えた方がベターです。そうすると通常リビングに置くのか、ベッドルームに置くのかで、仕様は大きく変わると思います。
例えばベッドルームなら、時計ではなく、目覚まし時計にするとかです。

しかし「今までより、使えるモノができたなぁ」という感じが本音ですね。
V-Lowマルチメディア放送も含め、今後注目して行きたい商品、システムです。

 
商品のより詳しい情報は、加賀ハイテックのホームページにてご確認ください。
https://www.kagaht.co.jp

2014年9月1日

タグ: , , , , ,