日立、野菜の鮮度を保つ「スリープ野菜」機能を持った
大容量冷蔵庫「真空チルド」Xシリーズ発表会
近くのラーメン屋のメニューに、厚労省の薦める「野菜350g/日」をのせた湯麺があります。
野菜てんこ盛りのイメージですね。
麺食いの私ですが、食べるのに時間が掛かります。
この様なメニューですとまだイイのですが、普通にご飯を食べているとかなり意識しない限り、野菜の摂取量は少ないです。
厚労省の調査では、60〜69歳で食べる野菜の量が多いのですが、それでも312.3gです。
逆に家庭用の廃棄食品を、農林水産省が調査したこともあります。
こちらは1人1食あたりのg数です。
トップは野菜:20.2g、続いて果実類:6.4gですね。
現在、野菜は生で盛りつけに使われることも多いですが、お腹一杯になったらツマの部分は残しますからね。
しかし、瑞々しい野菜は、本当に美味しそう。
ツマも残さず食べるのには、鮮度がかなり重要です。
■鮮度を落とさない保存法:CA貯蔵
読者の中には「CA貯蔵」という言葉を知っている方もいらっしゃると思います。
CAというのは、”Controlled Atmosphere”、『コントロールされた空気』を意味します。
主に、私はリンゴで見たことがありますが、じゃがいもなどでも見られます。
ポイントは、収穫した後も、野菜が生きていることにあります。
呼吸し、自分の内部の栄養を使っても生きのびようとします。
根をのばし、芽を出すモノさえあります。見たことありますよね。
CA保存は、そんな野菜、果実に対して考えられた方法です。
単純にいえば、「冬眠させてしまえ。」です。
冬眠とは、冬場はエサが少ないということで、秋に食いだめして巣ごもりするわけです。
が、動物、特にほ乳類の特徴は、新陳代謝が激しいことです。
つまり栄養分の消費が激しいというわけです。
このため、冬眠状態になりますと、その動物の体温が下がります。呼吸回数も少なくなります。そして脈拍数も下がる。つまり恒温状態を保たないことにより、栄養を使わないわけです。
CA保存は、植物に対し、冬眠してやる保存法です。
暗い部屋で、「低温」にして、「空気中の二酸化炭素を増やし、酸素を減らす」。
植物が寝やすい状態(暗く、低温)にして、エネルギー源(酸素)をできる限り少なくしてやる。
こうすると、植物は生長モードではなく、生命維持モードに変わり生きのびようとします。
周りの環境が変わるまで、体力、栄養を温存しようとするわけです。
■「スリープ野菜」機能の課題
このCA保存を応用したのが「スリープ野菜」機能です。
ただ問題が幾つか。
冷蔵庫ですから、「暗い」「低温」はOKです。
1つめの課題は、二酸化炭素(以下CO2)をどうやって生成するのかです。
まさか、ユーザーにドライアイスを買ってきて入れてくださいとは言えませんからね。
2つめの課題は、二酸化炭素を増やした空気を保持できる空間を作り出すことです。
3つめの課題は、二酸化炭素を増やした空気の中になるべく多くの水分があることです。
ここに入れたいのは、ジャガイモ、ニンジンのような一週間くらいなら保存できる野菜ではないですね。
葉物。しかもどちらかといえばサラダに使うような野菜です。
これらの特徴は、水分が多いこと。
水分がなくなれば、鮮度が落ちるだけでなく、全く食欲をそそりません。
ハムレットではありませんが、「行け、ゴミ箱へ!」となります。
そのためには、そのエリアの空気中の水分を多くしなければなりませんが、気温が下がると空気の水分保持量は少なくなりますので、コントロールが大変なわけです。
■「スリープ野菜」機能のキー技術
野菜をしなびさせるものとして「エチレンガス」があります。
おかしな話かも知れませんが、収穫後の野菜は呼吸するとエチレンガスを出します。
実はエチレンガスには、熟成を早める機能があるのです。
果実の方が分かりやすいので、果実を例に説明してみましょう。
この現象は、植物のライフサイクルに関係があります。
果物は受粉により種ができると、その周りに果実を作ります。
これを他の動物、鳥に食べてもらう代わりに、種を別の所に運んでもらうわけです。
では熟した果肉と熟さない果肉は、どこが違うかと言えば、固さ、甘さですね。
柔らかく、甘くなるのが熟すという行為なのですが、その先には自分が腐敗することが前提です。
種を、子孫を残すための必至の行為なのです。
その果実を熟させるために出すのがエチレンガス。
エチレンガスには、植物を柔らかく(成熟を促進させる)する機能があるのです。
果物は、熟した方が美味しいのですが、野菜はそうではないですね。
特に葉物野菜は、シャッキリ感が重要です。
熟成させてはダメなのです。
日立がしたのは、エチレンガスを光触媒により、CO2に変えることです。
植物は呼吸するので酸素は減る。エチレンガスは野菜の鮮度を落とすが、それをCO2に変えて眠らせる方に使うわけです。しかも、臭いの元のエチレンガスを分解するわけですので、臭いもしなくなります。
次にすべきことは密閉化ですが、真空チルドの実績がありますから、これは課題1よりはやさしかったのではと思います。
一番難しかったのは、課題3ではないでしょうか?
低温でギリギリまで加湿するということです。冷蔵庫の底に水など溜まると低温と言えども雑菌の繁殖の可能性がありますからね。
日立が選択したのは、自分から湿気をプラスするのではなく、空気が含めなくなった水分を外に出すという方法です。特に水分が多い葉野菜は、どうやっても外に水分が出てしまいますので、それを最大限有効活用しようというわけです。
具体的には、冷えたアルミパネルを壁面に用意、余分な水分をここに結露させます。
その水を蒸散ボードで吸い上げ、気化しやすい状態にして、冷気で気化させるわけです。
かくしてできたのが、「スリープ野菜」機能。
結果は一目瞭然です。見た目、食感もイイのですが、栄養素の保存もスゴい!
■「真空チルド」の改良
真空チルドの方は小改良です。
フレッシュカセットの辛み成分に、「抗酸化成分」を追加しました。
効果は、魚の栄養素の中でも失われやすいDHAなどに現れます。
しかし57%はスゴいです。
また見た目もかなり違います。
あと個人的には、真空チルドのドア音かなり気に入っています。機能が五官で分かりにくい場合もあるのですが、これだとわかりやすい。こちらは10秒ビデオでどうぞ。
■霜取り時の省エネ
冷蔵庫の省エネは各メーカーしのぎを削っています。
このため、かなり良くなっています。
今回、日立は除霜に着目です。
今までヒーター全開で対応してきた除霜を二段階にしたのです。
まずファンで霜の温度を上げてやり、その後ヒーターを付ける方法です。「ハイブリッド除霜」です。
またコードヒーターを新たに設置するなどして、より効率を追求しています。
結果は、次の通りです。
■大きくても楽に
こんなに大きいと、中に一杯モノを入れると大変そうと、思っている人はいませんか?
実は、これ電動アシスト内蔵です。
だから、ギリギリまで詰め込んでも、スッと扉が開いたり、引き出しが開いたりします。
やりかたは、冷蔵庫の表面、もしくはレバーに触るだけ。とても楽です。
■インテリア化する冷蔵庫
何度か書いていますが、現在はリビングとダイニングが融合されつつあります。
これを受け台所用品は、だんだん単なる仕事用具から離れつつあります。
カラフルなのは当たり前。
収納すると「オブジェ」に見えてしまうスライサーなどもあります。
中でもミラーはとても人気のある色で力を入れています。
びっくりしたのは、「クリスタルミラー」。
遠目は「黒」なのですが、実際は「ミラー」。割といい感じかも知れません。
本稿は、Xシリーズに関して詳しくレポートさせて頂きましたが、Gシリーズ(電動アシストがないモデル)、Sシリーズ(電動アシストとハイブリッド除霜システムがないモデル)も同時発売です。
商品のより詳しい情報は、日立のホームページにてご確認ください。
http://kadenfan.hitachi.co.jp/rei/index.html
2014年7月25日