掃除機は、キャニスター型、スティック型に大別されます。
どちらを選ぶのかは、自分のライフスタイルに添い、自分が得心行く方となるのですが、流行としてはスティック型と言えるでしょう。
今のキャニスター型には、魅力がないのかというと、そうではありません。
独自の利点が多々あります。
今回、三菱電機の新型「風神」TC-ZX30Pをレポートしながら、同時にキャニスター掃除機の魅力をレポートします。
■キャニスター型の強みと弱み
初期の掃除機は、実はスティック型だったというと驚かれるでしょうか?
例えば、独コーボルト社のショールームには、初期のスティック型掃除機が飾ってあります。
アメリカでもそうですね。
アニメ「トムとジェリー」には家政婦さんが、掃除をするシーンが何度も出てきますが、古い頃の作品はスティック型。
それが、新しくなるとキャニスター型に変わります。
要するにキャニスター型の方が便利だったので、切り替わったわけです。
何故でしょう。
それは安定した「吸引力」この稿では「吸引力」を単に掃除機がゴミを吸う力として使います。定義があるわけではありません。が得られるからですね。
本体にクルマを付けて移動させるわけですので、多少重くても構わない。
つまり大型モーターが使えるわけです。
吸引力が強い。
しかも昔は紙パックではなく、布パック。
そこにゴミを溜める分けです。
布パックが小さければ、すぐ詰まり、吸引が悪くなります。
キャニスターはある程度大型で扱い難くはなるのですが、その代わり、安定した掃除に必要な能力を常に出せると言うわけです。
しかし強みと弱みは、基本的に表裏一体であることが多いです。
特に特化した強みは、見方を変えると一気に弱みになります。
キャニスター型の弱みは「重い」「大きい」ことです。
扱いづらいし、AC電源があるところでないと使えません。
バッテリー駆動を前提にしたスティック型は、ここからの再脱皮と言えます。
キャニスター型とスティック型の大きな流れは、こんな感じです。
■住宅事情をプラスして考える
こういった掃除機の特徴に社会事情が加わります。
掃除機に影響を与えるのは、2つ。
1つめは、「住宅事情」です。
「大きさ」も大きなウェィトですが、それに加え「外気環境の悪化」「高密閉型住宅の普及」があります。
2つめは、「家事時間」ですね。
家事だけならイイのですが、多くの場合これに仕事か、育児が加わります。
そうなると大変。少しでも短い時間で家事をこなしたいとなるわけです。
住宅事情の外気環境の悪化というのは、子供のアレルギー疾患の増加原因の1つといわれています。
例えば、花粉症。
花粉症の人は、窓を開けての換気は避けたい。
例えば、黄砂、PM2.5。
多い間は、窓を開けての換気はしたくない。
そして住むのは省エネを考慮して作られた高密閉型住宅。
外気を入れると室内の温湿度が変わるので、なるべく外気を入れない。
共通するのは、閉めたままで掃除機をかける構図です。
こうなると排気がキレイなのは絶対条件です。
サイクロン型掃除機は、かなりのレベルまでゴミと空気を分離します。
が、年々要求は厳しくなりますので、技術革新が追いつきません。
このため、一部フィルターを使います。
それにはフィルターをいれるスペースが必要です。
キャニスター型が圧倒的に有利です。
次に家事時間を考えてみましょう。
早い対応に不可欠なのは、機動力です。
室内に有って、直ぐ使える。
コンセントを無視して、動作できる。
小さく、軽い。
もうお分かりですね。
ここはスティック型が得意な分野なのです。
■「風神」2013年モデルと2014年モデルの比較。
今、時短は大命題であり、そこにスティック型掃除機が脚光を浴びている理由もあります。
当然、キャニスター型掃除機は、長所にあぐらを掻いて、短所を直そうとします。
長所は、「吸引力」。そしてフィルターを多用できるので「排気のキレイさ」ですね。
短所は、「重さ」「大きさ」です。
このため、なるべく軽く、なるべく小さく、そしてできればバッテリー内蔵がベストです。
では新型の「風神」、2014年モデルを見て見ましょう。
実は、本体仕様は、2013年モデルとほとんど変わっていません。
バッテリーを内蔵しない、サイクロン型です。
字面だけ見ると、どのメーカーも持っているモデルです。
新しいギミックはありませんが、実は王道モデルといっても過言でないモデルでしょうね。
実際、本体はよくできています。
幅狭(21.6cm)だから、引っかかりにくい上、どこでもスルリと入る。
「吸い込み」もイイですし、サイクロンですから吸引力も落ちない。
ゴミ捨ても楽。しかも完全水洗い。
排気もキレイですし、臭わない。
排気にチリ・ホコリが含まれていないことと、臭わないことは違います。
臭気は、臭い分子であり、フィルターでシャットアウトできません。
これは、ゴミを通過せずに空気が流れるルートを確保しているからですね。
2013年モデルで、不満があったのは、ヘッドの方です。
バランスとメンテナンスに関して、です。
■掃除する姿勢を見直す
モノを扱う上で、姿勢は非常に重要です。
家事の場合、姿勢が悪いと、腰が痛くなります。
労働時の姿勢は余り指摘されませんが、健康に生きるためには姿勢は非常に大切です。
三菱が改良したのは「グリップ(持ち手)」です。
メイン・グリップを手首をまっすぐにしたままで、保持できるようにしたのです。
これはイイです。
リラックスした姿勢で掛けられる上、パイプが自分の腕の延長線上にあります。
これは楽です。
ロスなく力が伝えられますからね。
ヘッドも自在に動かせます。
後、高い所などを掃除する時に使うサブグリップも、同様にとてもイイです。
私は、月に一度エアコンの上など高い所も、掃除した方がよいと考えていますが、キャニスター型でなかなかイイ掃除機がないです。
パイプと同一直線上で持てないので、妙にグラグラしていますのです。
それが、同一直線で持てるようになった。
これは、握力の弱い女性には特にお勧めです。
自分の身長+腕+パイプ+アタッチメントで、4m近くまできちんと掃除ができます。
天井から下げたペンダントライトに当たるなどと心配しなくても良いです。
しかも、三菱のブラシは馬の毛。
このしなやかで、かつ腰のある硬さはイイ。
ダイニングなどでは、油物を多用すると、ペンダントライトのコードにホコリが付き、それが取れないこともありますが、三菱のブラシはしなやかなため、丁度「コ」の字のように当たってくれる。
コードを拭くように掃除ができるのです。
■ヘッドにも工夫が一杯
ヘッドは非常に重要なパーツです。
理想は、「自在に動かせる」、「吸い残しがない」、「メンテナンスがし易い」、です。
自走式のパワーヘッドは、2013年モデルより軽い操作感です。かなり振り回せる感じです。
ただ、これはグリップの向上も一部効いていると思います。
吸い残しは、ないです。
2013年モデルよりも少ない。
これはゴミの吸引を、中央一カ所から、左右二カ所にしたのが功を奏していると思います。
ヘッド内にゴミが入った時、ゴミと吸引口が近くなったためです。
このため、同じ吸引力でも、より効果的に使われています。
メンテナンス。これは全く違います。
2013年はヘッドを脱着させる方式。
一度絡みついた髪の毛は、基本ハサミで切り除去します。
週一度の面倒なメンテナンスです。
今回は引き抜けば絡みついた髪の毛の殆どを除去する方式を採用しています。
これはイイですね。ナイスです!
■アタッチメントも豊富
スティック型掃除機の泣き所は、床掃除以外は対応しにくいことです。
ハンディ型を内蔵したり、ハンディ型の掃除機からスティック型掃除機に進化させるなど、いろいろなアプローチを試みます。
キャニスター型はホースの先にいろいろアタッチメントをくっつける対応ですね。
このアタッチメントの豊富さもキャニスター型の魅力です。
「風神」TC-ZX30Pは、「2WAYロングノズル」、「2WAYキャッチローラー」、「ふとんブラシ」ですね。
ロングノズルは先ほど写真を出しましたので、「ふとんブラシ」の話をしましょう。
私は、ふとんのアレルゲンとり(チリダニ、フン、死骸)は、ふとん専用掃除機ではなく、通常の掃除機にアタッチメントを付けてする方がイイと考えております。
その理由は、チリダニを殺すには「熱が最も効果的」であるためです。
「紫外線は?」と聞かれますが、紫外線は布団の奥まで届きません。
また数秒の照射で殺すことはできません。
布団の日光消毒のポイントは、布団から湿気除去することです。
低湿だとダニは住みにくい、つまり繁殖しないわけです。
確実なのは「熱」です。
ダニモードを持っている布団乾燥機で、高温殺ダニ。
で、フン、死骸を強吸引力で確実に取る。
寝具は20秒/m2、1回/週、シーツを外したふとんを掃除すること喘息予防・管理ガイドライン 2012が、医療的には推奨されています。
どんな掃除機でも、ゆっくり掛けると多少の効果がでますが、ふとん乾燥機で、ダニが繁殖しく難い状況にした布団にする上に、ダニを熱で殺してしまう。そして吸引力が強い掃除機できちんと吸い出してやるのがベストだと思います。
「風神」は排気フィルターも完備していますし、吸引力も上々。その他いろいろなことに使える布団乾燥機の有効活用をお勧めします。
頭の所で、申し上げました通り、外気環境が悪くなって来ており、布団も室内干しが多くなると思います。
特に花粉症と喘息を併発している人の布団などは、外に干せないですし、きちんとした布団ケアが必要です。
そう考えると、布団乾燥機は見直しの時期に来ていると思います。
■「もっとユーモアを!」、カロナビ機能
Androidを持っている人だけの特典になりますが、「カロナビ」が使えます。
この掃除で消費したカロリー、掃除した面積が、算出される機能です。
昨今、この様な機能を付けるメーカーも増えておりますが、私は実は可笑しいと思っています。
問題は、機能ではなく、Androidスマホの普及率です。
女性全体の30%位だそうです。
残りは、iPhone、もしくはガラゲーガラパゴス携帯の略。日本の携帯電話は、海外とは全く違った進化を遂げたことから、こう呼ばれるようになった。ですから、この機能は使えません。
カタログなどでもアピールされていますが、30%の人だけが享受できるとすると、メリットしては足らないかと思います。
考え方は面白いです。
ただ掃除で100kcal消費しましたといわれてもなぁという感じです。
これが、歩数計、その他家事と連携し、トータルで見ることができるなら、もっと見方があるのですがね・・・。
面積の方は、カロリーより面白いと思います。
極端な表示にして笑いを誘うなどすると面白いと思います。
例えば、130m2掃除したとします。
東京ドームのグランドが、13,000m2なので、100日でグランド全面。
建築面積で46,755m2ですから、359.65日。
「あゝ、私は1人で東京ドームを掃除できる位、1年掃除しているんだなぁ。」
となる分けです。
たらればついでです。
掃除人の給料が30万円、50人。1回/日、ドーム全体を掃除するとします。
そうするとドーム1回の掃除賃は、4.1万円。
え〜っ、もしそうなら、冬のボーナス時に、旦那様から4万円お小遣いをもらっても悪くない・・・。
カロリー見ながら、毎日ビスケットを食べるか、どうか悩むより、自分は掃除機がけだけでも4万円/年の価値があるんだという方が面白いと思いませんか?
■今後の「風神」に期待したいモノ
2つあります。
1つはヘッドの更なるリファインです。
もう少し薄く、もう少し軽い方がイイでしょうね。
そちらの方が、より自由度が高まると思います。
また、柔らかい部分のホコリが取りにくいのです。
素材も進化させて欲しい。
また暗いところでも、確実にゴミが見えるように、LEDライトが欲しいです。
2つめは、ACアダプターからの脱皮です。
単純にいうと充電池の採用ですが、これがうまく行くと、家を一気に掃除することができますので、気持ちが中抜けすることがありません。
キャニスター型と言っても、掃除の方法が変わります。
■まとめ
いろいろ書きましたが、2014年の「風神」は、実にイイできです。
間違えなく、買って損したと思うことはないでしょう。
特に大掃除の時や、床以外のところを掃除しようとする時は、「こいつはスゴい。イイ買い物をした。」となると思います。
問題は、キャニスター型であることだけです。
ちょっとだけ掃除にはモノモノしいです。
AC電源接続が必要ですし、コードが届く範囲しか掃除できません。
収納時も場所を取ります。
それが許せるなら、お勧めの1台です。
商品のより詳しい情報は、三菱電機のホームページにてご確認ください。
http://www.mitsubishielectric.co.jp/index_p.html