いろいろなメディアで紹介ている人気家電、シャープの『ヘルシオお茶PRESSO』をレポートします。
美味しくてしかも、健康にイイとの評判です。さて、その実態はどうでしょうか?
■同じ嗜好品ではあるものの
お茶とコーヒー。
喫茶の代名詞のような二品(ふたしな)ですが、随分扱われ方が違うように思います。
一寸言うと、お茶は家で飲むもの。コーヒーは店で飲むものという感じですね。
なぜかというと、お茶は「煎茶」という、ごく簡単に飲める方法が開発、普及したからです。
茶葉を急須に入れて、お湯を注ぎ、成分を抽出する方法ですね。
それまでは、どうしていたかというと、茶の湯ですね。
今、茶の湯、茶道というと、古典芸能の様な感覚ですが、商人から武家、大名に拡がった時期はエキサイティングだったようです。
その様子は、山田芳裕氏のマンガ「へうげもの」に詳しいです。
主人公は、古田織部。あの織部焼きの創始者。
鎌倉時代、禅と共にもたらされた茶現在は、奈良時代には飲まれていたことが分かっている。ただし遣唐使の廃止と共に、一端は廃れた。このため現在の茶は、臨済宗の開祖:栄西が中国より持ち帰ったものが祖先となる。
が、新しい価値として武将に認められ始めた戦国時代のことです。
特に、既成の価値に重きを置かない、織田信長は茶を好みます。
信長は南蛮文化が好きな「華美」な価値観。
それとは別に千利休が「わび、さび」の価値観としてまとめ上げようとしていました。
そんな中、そこまでは行かないが、各武将は自分の茶=自分の価値観として色々な思いを寄せます。その中で頭角を現す古田織部。
形骸化していない「茶」ですし、新規ビジネスの作り方としても、とても面白いです。
もともと茶は、座禅の眠気覚ましにもたらされた興奮剤の役割だったそうです。
江戸時代の狂歌にもありますよね、「太平の眠りを覚ます上喜撰 たった四杯で夜も寝られず。」
ペリーが黒船(蒸気船)でやってきた時の状況を、当時最高級の茶であった「上喜撰」に引っ掛けます。
現代ほど刺激物のない時代ですからね、濃いお茶はよく効いたと思います。
戦国時代もそうですね。
戦(いくさ)は体力勝負。昼夜分かたずですからね。
現在なら、後ろに手がまわる「覚醒剤」に当たるようなものとして、茶を飲みます。
茶葉を急須に入れて、なんて近代的な飲み方ではないです。
抹茶飲みです。
「へうげもの」はそんなシーンを巧みに織り込んでいます。
陣を敷き終わると、茶臼でゴリゴリ茶葉を挽く様子が描かれています。
それを湯に入れてかき混ぜて飲み、「功名」を狙うわけです。
疲れた所に、興奮剤ですからね。
効果はバッグンだったようです。
江戸時代にもたらされ、「不味い」と評されたコーヒーと違い、「茶」は美味しいものであったようです。
特に、利休の入れた茶は、絶品であったとか。
タイムマシンがあれば、是非一度飲んで見たいです。
安土桃山時代。この時代は、農業もグンと発達し、茶の作り方も発達します。
それがもとになり、江戸時代は手軽にお茶が飲めるようになって行くわけです。
■茶の種類
茶は大きくは、抹茶(まっちゃ)と煎茶(せんちゃ)に分けられます。
抹茶は、碾茶(てんちゃ)を茶臼で挽いたものを用いますが、碾茶の作り方がまた面倒。
新芽が出る直前に葭簀よしず。夏の海などで直射日光を遮る道具です。すだれより大きく立てかけて使います。と藁を用いて直射日光を遮り被覆栽培茶の木は半陰樹であり、直射日光をきらう性質がある。、芽が葉になるのを待ちます。
茶葉は薄くなるのですが、旨味やコクが出るそうです。
碾茶を作るには、こうして育てた茶葉を年1回手摘み。
当日、蒸し、柔捻せずに乾燥させるそうです。
蒸すのは、茶の葉を摘むと始まる酸化発酵を止めるためです。
また同時に、生葉の青臭さを取り除きます。
さらにいうと、通常の日本茶である煎茶を作る場合、揉捻という茶葉を揉む工程が入るのですが、その時揉みやすいように全体を柔らかくする意味もあります。
先ほど申し上げたように、碾茶は揉みません。
つまり茶葉には葉の薄い部分、葉脈のやや堅い部分、茎の堅い部分が存在しています。
不均一は、味をダメにしますので、挽く前に葉の茎の部分を切り取ります。
そうした碾茶を茶臼で挽くのです。
しかも茶を挽く茶臼と、麦、蕎麦などを挽く石臼は、違います。
茶臼の方がより細かく挽けるように工夫がされているのです。
また、熱も厳禁。
先ほど「蒸し」の工程のお話をしましたが、周りは高温でもお茶の葉自体に伝わっている温度は人肌。
そして時間は20秒〜1分。
そんなお茶ですから、茶臼の摩擦熱が必要以上に上がると風味がなくなります。
抹茶が高価なのは、手間数が多いからです。
江戸時代、吉原には「お茶を挽く」という言葉があったくらいです。
これは、指名されなかった遊女が茶を挽いたことに由来するそうです。
ようするに石臼で茶を挽くのは時間が掛かったのです。
当時吉原は最高級サロンでもありましたので、手間も暇も掛けてイイモノだけ揃えるのです。
さて一方「煎茶」です。
「蒸し」の次に「揉み」ます。
大きく分けると2つの意味があります。
1つ目は、この次の乾燥工程を上手くことなうためです。
できる限り、全体から均一に水分を飛ばす必要があります。
葉っぱと幹、どちらから水分が飛びやすいかというと柔らかい葉ですね。
要するに、葉の薄い部分、葉脈など堅い部分、それらを全て均等に柔らかくし、水分を均一に抜けるようにする。そのための作業です。
2つ目は、茎内部に含まれる成分が出やすいようにするためです。堅いと水分が抜けないように、成分抽出も難しいです。
「揉む」の後、「乾燥」させます。
これがよく見る日本茶となります。
ちなみに、葦簀掛けしてという茶葉の育て方は、「抹茶」と煎茶の最高級品「玉露」です。
通常、庶民が飲む「煎茶」をそんな丁寧に育てたら、経費が幾らあっても足りません。
煎茶を入れる時は、急須を使いお湯で戻し、成分をお湯の中に出させます。
抹茶がお湯と混ぜて味を楽しむのに対し、煎茶は抽出。コーヒーと同じです。
■ヘルシオお茶PRESSO
今回お茶に対し大胆なアプローチをするのは、シャープです。
「目のつけどころがシャープでしょ」という巧みな切り口で、面白い提案をしてくれます。
ヘルシオお茶PRESSOの惹句は「粉末茶にするから、茶葉まるごと、おいしく、効果的に。」
「お茶の栄養成分、まるごと召し上がれ。」
これ意味は、お茶の葉から抽出、お茶だけ飲むより、葉ごとの方が栄養価が高い。
要するに健康効果ありまっせ!
という意味です。
「おいしく」とはありますが、実際どうなのでしょうか?
ま、とにかくまずは一杯という思いで飲んでみます。
「う、うまい。」
予想をはるかに上回る美味しさです。
観光地、茶所で、抹茶を出す店は多いですが、美味しいとなると、本当に数えるほどしかありません。
「面白れぇ。」
「日本茶再認識」の瞬間でした。
■ヘルシオお茶PRESSOの構成
茶の湯と比較しながら、ヘルシオお茶PRESSOの構成を確認しましょう。
茶道具はいろいろありますが、大きく3つに分離されます。
1)茶葉を保存したり、持ち運んだりする道具
2)お茶を点(た)てる道具
3)茶室のための装飾品
ヘルシオお茶PRESSOは、(2)です。
(2)で通常使われるのは、湯を沸かす「茶釜」、炭を焚く「風炉」もしくは「炉」、茶を一時的な保存容器(肩付)から取り出す「茶杓」、茶と湯を混ぜる「茶筅」、そして「茶碗」です。
ただ機能的には、「湯を沸かす」「適量の茶を取る」「湯と茶を混ぜ合わせる」という機能です。
「えっ、石臼で挽くのはされていないの?」
と聞かれますが、現代日本では、これはお茶屋の仕事だそうです。
実は、茶葉ですが、日本茶なら、煎茶、碾茶と書きたいのですが、時期が時期だと。碾茶はおいそれと手に入りません。少なくとも私は入手し損ねました。
秋口になると茶葉の味が変わるので、全部挽いて抹茶にして、缶入りさせてしまうためだそうです。
茶は湿気をすごく嫌います。
コーヒー豆と同じなのですが、日本文化に根付いたお茶の扱いはスゴいです。
大量に扱う場合は「茶箱」を使います。
これは日本最高の保存箱でしょうね。防虫、防湿がほぼ完璧。
よく母が、セーターの保管に使っていたのを思い出します。
時代が変わった今は、小売は密封缶、もしくは真空包装が一般的です。
これに比べるとコーヒー豆は、ラフです。
日本で茶がいかに大切にされたかが分かります。
もう一つ言うと茶臼です。
今は目の詰まった黒目の花崗岩を使うのが一般的ですが、昔は石は特殊で石臼と同じ花崗岩は用いられなかったとのことです。
臼は回せばイイのでは? と言われそうですが、それではまともに挽けません。
大工道具と同じように目の手入れが必要です。
逆に言えば、仕事と生活が密着していた昔なら兎も角、今そこまでキチンと出来る人は余りいません。
茶の湯は、日本茶を温度を上げないように、茶臼でゆっくりと挽きます。
木目の細かさが茶臼の命。
ある人に言わせると、抹茶の平均粒子径は5μmだとか。
空気中を漂うと、PM5.0と呼ばれてしまいますね。
ちょっとスゴい。
一方、ヘルシオお茶PRESSOの茶臼です。
セラミックブレードをバネで押しつけながら回転させます。
後、摺り合わせが直線同士ではありません。
できる粉末サイズは、20μmレベル。
こちらもスゴすぎて、唸ってしまいます。
次は湯沸かしです。
茶の湯なら、釜ですね。
香りが飛ばない適温にするのは難しい。
時間も含め、慣れが重要です。
最後は、茶筅(ちゃせん)ですね。
三遊亭金馬師匠の十八番に「茶の湯」金馬師匠の「茶の湯」「居酒屋」を聴いてみてください。本当に笑えます。聴かないなんて勿体ない。がありますが、その中では「ざしきざさら」とか「泡立たせ」といわれてます。
茶碗の中に入れてお茶をかき混ぜ、泡立たせます。
一方、ヘルシオお茶PRESSは、パルセーターのに似たものです。
茶筅とは雰囲気が違いますが、家電ならではの面白みとしましょう。
実はもっとも感心したのは、ここですね。
中々イイ感じなのです。
実は、お茶屋さんには、「挽き煎茶」というものを売っています。
単純にいうと業務用の茶臼で煎茶を挽いたモノ。
ヘルシオお茶PRESSOと同じです。
聞いてみると、かなり人気があるということで、比較のためこちらも購入しました。
ところがこれを上手く混ぜ合わせるのが、かなり大変。
茶筅を使わずに混ぜるとなると、一番楽なのが「ステンレスボトル」に入れてシャカシャカ。
それでも力の割りに、混ざらない時があります。
ところがヘルシオお茶PRESSOは、上手く混ぜますね。
正直美味しいです。
■使い勝手の良さ
ヘルシオお茶PRESSOは使い勝手がイイです。
特にイイのは手入れですね。
部品が少ない!
これはイイです。
後、茶殻がでないのもプラス。
茶殻は完全に急須から取り除くのが一苦労ですし、水を切らないと捨てられません。
これ割と評価高いです。
■デザインは・・・?
性能、使い勝手共に中々のモノなのですが、ちょっと面白くないのがデザインですね。
正直もう少し主張が欲しいのです。
茶の湯ですからね。
個人的には、翔んだ感覚が欲しかったですね。
例えば、平蜘蛛釜蜘蛛が這いつくばっているような形の釜。戦国武将 松永久秀が所有しており、織田信長に信貴山城を攻められた際、平蜘蛛を渡すなら命を助けようと言われました。意見が合わず、久永は平蜘蛛と共に爆自殺したと伝えられる。を気取るなど、遊びが欲しいですね。
後、頂けなかったのは、土台部分です。
上が液の通り口があるのでお分かりの様に、この水洗いできない台の部分が最終的にはこぼれた飲み物を受けることになります。
ラテがあるということは牛乳も受ける可能性があるということです。
少なくともこの部分は外して水洗いできるようにして欲しかったですね。
牛乳だと、本当に良く洗わないと、拭く布巾も臭うことがありますので・・・。
■嗜好品の収支計算 -茶だとどの位まで遊べるのか-
嗜好品の2大巨頭は、お茶とコーヒーです。
で、ちょっと収支計算をしてみましょう。
コーヒー豆:600円/100gとします。
10〜15g/杯なので、平均で12.5g/杯としましょう。
75円/杯です。
お茶の場合は、薄い、濃いがありますが、1.2g/杯です。
使うのはコーヒーの1/10の量。
要するに、10倍の金額のお茶を買って同じ金額になる算段です。
6000円/100g。
6000円/100gというのは、スゴい値段です。
貴金属でいえば「銀」より少し安い位。
まあこんなに高いお茶はほとんどないですからね。
ちょっと高級なお茶を買ったということで、2000円/100gとしましょう。
それでも24円/杯。
実は茶、高いと思われがちですが、割と安上がりです。
■拡がる面白さ
粉末茶の面白さは、「混ぜればできる」ことです。
お湯でなくてもイイ。
今時分なら冷水でもイイですし、冷えた牛乳でもイイ。
こんな時でも、あの電動茶筅ともいうべき機能はすごく優秀です。
当然、抹茶を混ぜた料理にも使えます。
混ぜるだけ、料理の場合は振りかけるだけもありですので、飲む場合よりよほど簡単です。
火とかを使うこともないですから、とても楽です。
が、先ず一番は美味しい茶葉を探しに行くことです。
美味しいコーヒーも、好みの味のコーヒーを見つけることから始まりますからね。
ま、自分の好みを見つけるのは嗜好品のセオリーでもありますので。
今回、新茶で試してみましたが、碾茶と同じ茶の葉を使う「玉露」を買うべきだったと、ちょっと後悔です。
こちらは急須で飲もうかなぁ・・・。
「挽き煎茶」があっても「ヘルシオお茶PRESSを勧めるのか?」ですって。
オススメですよ!
ヘルシオお茶PRESSOがあると、好きな茶葉が使えるのが第一の理由。
もう一つの理由は、コンパクトで道具が散らからないからです。
古風に茶臼を買ったとするじゃないですか、大きい、重い、高い。
しかも手入れが大変です。
その上、茶筅の所も工夫が必要!
となると、茶道の免許皆伝でも目指しますかとなりますが、ヘルシオお茶PRESSだとそんなことはありませんから。
嗜好品に必要な創意工夫が出来る、ヘルシオお茶PRESS。
お茶好きには堪らない一品です。
商品のより詳しい情報は、シャープのホームページにてご確認ください。
http://www.sharp.co.jp