地方に行った時、懐かしい友だちに会い、交友を温めます。ま、おじさんですから、お酒を飲みながらの四方山話ですがね。
そんな中、岐阜に住まいするエヌ氏は太陽光売電を始めたとのこと。元々興味があった分野ですので、取材させて頂きました。
■四方山話01 〜特殊な家電〜
現在、色々な会社が元々の分野以外に取り組んでいます。
新規参入分野ですから、多方面から徹底して分析します。
その中で異色だったのは、「太陽光パネル」です。
どこが異色かと言うと、民生用家電の中で取り付けるだけでエネルギーを生み出す家電なのです。
取り付けるとお金を生み出してくれる家電と言ってもイイでしょう。
他の家電は価値がドンドン下がります。
ところが太陽電池だけは、お金を生み続けます。
私は、何故メーカーなど大きな建物(工場)を持っている会社がトライしないのか不思議でした。
理由は明確ではありません。
が、多分、投資回収に長期間掛かるためだと思っています。
頭10年近く投資回収できませんから。
■四方山話02 〜経済優先の世の中とは〜
司馬遼太郎という作家がいます。
「国盗り物語」「竜馬がゆく」「功名が辻」など、大河ドラマにもなっておりますので、大抵の方はご存じのことと思います。
彼の作品の中に、「アメリカ素描」というアメリカに行った時の雑感をまとめたものがあります。
その一節に、カリフォルニアの描写があります。
余りにも的確なモノの見方なので引用してみます。
『私ども日本人は、ほんの百十数年前まで、木材で煖をとり、煮たきし、また菜種油を灯心にしみこませて夜のあかりにしていた。エネルギーは、それだけですんだ。人力や牛馬の力以外にエネルギーがあったとすれば、水車ぐらいのものであった。その記憶は、たれもの胸の中で詩になっている。
そのくせいまはエネルギーに飼いならされてしまい、いまや人類の生命そのものを托してしまっている。
「エネルギーがなくなったら、人類は死滅するでしょうね」
と、十余年前、対談のときそういわれたのは向坊隆博士だが、その後、私は人類のはしくれとしてそのことがずっと気がかりだった。
考えるよりも、カリフォルニアに来て典型をみたほうがてっとり早かった。ここでは、大地に人間が載っているのではなく、エネルギーの上に載っているのである。さらに奇妙なことに、ここの人間たちは、一方でエネルギーを使いつつも、一方ではエネルギーを汲みあげてもいる。高速道路のわきにさえ油井があり、米つきバッタのような汲みあげ機が動いているのである。
見ようによっては現代文明の頼もしい象徴だが、見方を変えれば地球を食うことによって全世界に食糧をくばれるだけの農業を成立させているという矛盾の光景でもある。』
■四方山話03
産業革命は、イギリスの蒸気機関から始まったわけですが、それはイギリスが石炭の産地だからでもありました。今まで木材で賄ってきたものを、木材が変化したもので賄ったわけです。
そして石油。そして原子力。
それが進化としたいのですが、石油と原子力の間には、大きなギャップがあるような気がしませんか?
そう、石炭も石油も、元々は生物ですが、ウランは違います。
地球の中の物質です。
逆に、石炭、石油は太陽エネルギーが変化したものということも可能です。
生物は、膨大な太陽エネルギーを適切に受けることができる地球で繁栄しました。
これは地球に降り注ぐ太陽エネルギーは使いやすいことを意味しているのではないでしょうか?
逆に人間は地球のエネルギーを有効活用できたことがあったでしょうか?
火山の噴火、地震、等々。
制御できませんよね。基本的に一気に爆発するエネルギーですから。
核もこの中に入ると思います。
「制御できる。できる。」と言いながら、できていませんね。
直ぐ実用化できたのは、核爆発ですからね・・・。
こんなことからも、私は次世代エネルギーは、太陽エネルギーからもらうべきだと考えています。
「水力」「風力」そして「太陽光」が三羽烏です。
それに今後は「太陽熱」を入れてもイイかも知れません。
■土地の有効利用
そんな太陽電池発電に力を入れているというエヌ氏。
岐阜駅で待ち合わせ、まず彼が今後、太陽光発電を行うという所に案内してもらいました。
岐阜駅からクルマで北に30分。
着いてみると、田んぼの中。家もまばらな土地でした。
その中の縦8m、横40m程度の、すごく細長い土地です。
が、南向き、日当たり良好。
東京なら、小さな家を3つ建て直ぐに売りに出される大きさです。
が、エヌ氏によると、四辺の内、道路に面しているのは、縦の一辺のみ。あとは畦。
このため、クルマが絶対条件(しかも人数分必要)のこのエリアだと、土地内に道路を設けなくてはならないため、幅が狭くなってしまうため、非常に使いにくい土地とのこと。
聞いてみると、坪当たり2万円を切る価格でした。
そうエヌ氏は、この土地を整地、太陽光パネルを敷き詰めて発電しようと言うわけです。
土地(設置場)以外に、必要なものは以下の通りです。
太陽光パネル | モジュールとも呼ばれます。太陽光発電の効率を決める重要なパーツです。 |
接続箱 | 太陽光パネルが発電した直流電流を集め、パワーコンディショナーに送る。 |
パワーコンディショナー | 通常パワコンと呼ばれます。接続箱から送られてきた直流電流を交流に変えます。 |
昇圧トランス | パワコンの交流電流の出力電圧を、電気会社の系統に連系できるように、電圧を昇圧するシステム |
例えば高効率のパネルを買ったとして、パワコンの変換効率が悪いとどうでしょうか?
そうですね。高効率のパネルが活かされませんね。
全体効率を見ながら設備費を決めるのは重要です。
また、工事費として、パネル及び各機器の設置代。そして、送電線日本全国張り巡らされている電線のことです。への接続費用が必要です。
さらに売電契約、そして補助金の申請、という事務手続きが必要になります。
彼の土地の近くは、幸いなことに電線が走っていますので、接続費用は余り掛かりませんが、遠いとかなりお金が掛かります。
エヌ氏は緻密な人ですから、電線が近くを通っているのも条件に含め、じっくり探したのでしょう。
■業者が作ったシステムと、田んぼの跡地のシステム
さて、近くに業者さんが作ったシステムがあるというので、見に行きました。
そこは、土地をコンクリートで固めた上に、太陽光パネルが敷き詰められていました。
何故、コンクリートで固めるかというと草が生えてこないようにするためだそうです。
草と言っても数mの高さに達するモノもあります。
そんなのが生えるとパネルに影を落としますので、発電量が変わるというわけです。
周りを囲む金網には「先進の太陽光発電で、発電事業主になりませんか! 高利回り 約12% ※当社施行例」の広告。
色々な見方が有りますが、銀行預金よりは余程、良いようです。
次にエヌ氏の友だちが始めた、田んぼ跡のシステムを見せてもらいました。
町工場の北側に当たる田んぼ跡のシステムです。
町工場の日陰にならないように、離して設置され、地面には他の雑草が生えないように背の低いクローバーが先に植えられています。 どちらかというと、コンクリートが苦手な私にはイイ感じです。
で、見て歩くと、所々で区切ってあります。
売電の単位(10kW)で区切ってあるそうです。
日本は平野部は極めて少ないです。
そして都市集中型です。
東京などは、蜂の巣のような高層マンションが幾棟も建っています。
が、米作を少なくした結果、地方では土地が余っているのも事実です。
「「米」の代わりに「電気」かぁ。」
食料とエネルギー。双方共に太陽(天)の恵みですが、受け皿は土地ですから、土地を持っていると強いわけです。
ちょっと複雑な気分になりました。
■自宅の屋根のメリット、デメリット
岐阜市の南側に住むエヌ氏は、自宅、倉庫など、所有する全ての建物の屋根に太陽光パネルを付けています。
こちらは余剰売電だそうです。
説明を忘れておりましたが、今までの例は全て全量売電です。
比較表を作って見ました。
名称 | 余剰電力買取 | 全量買取 |
対象 | 一般住宅 | メガソーラー、工場、学校、集合住宅、等 |
出力 | 出力10kW未満 | 10kW以上 |
固定買取期間 | 10年 | 20年 |
買取価格(税別) | 37円/kWh | 32円/kWh |
また設置時の補助金なども差があります。
実際、電気の購入価格は平均:22円/kWh(税抜)と言われています。消費電力を算出する時に使うモノですね。
このため全量販売して、必要なだけ電気を買う方が安く付くわけです。
今、買取価格が高いのは、自然エネルギーの比率を増やすために、国が「再生可能エネルギーの買取に関する特別措置法案」を作ったからです。
しかし、電力会社も高く買って、安く売ることをしていたら儲かりません。
このため、「太陽光サーチャージ」をユーザー負担にすることが認められています。
これって言い方を変えると「高く買う差額は、ユーザーで負担しましょう」というわけです。
最後にまとめて書きますが、太陽光発電を行うためには数百万円掛かります。
つまり、それだけの投資ができないと、取られる一方というわけです。
ちょっと手厳しい格差でもあります。
余剰か、全量かは置いておくとして、屋根つけた場合のメリットは大きく3つあります。
1. 設置するための土地代がタダ。 2. 屋根の上に載せるため、屋根に断熱材を被せたような効果をもたらす。つまりエアコンが効きやすい。
3. 管理するために、出歩く必要がない。
実際、太陽光発電を行うようになって、厳しいのは3つ目だそうです。
エヌ氏は、大手企業を退職の後、中小企業で働いています。
で、休みの日を「管理日」としているのですが、見に行くだけで半日潰れるといいます。
それはそうですね。
クルマでの往復、現場でのチェックで半日ですから、これに太陽光パネルの掃除などが加わりますと、ほぼ1日潰れるかも知れません。
遠いとガソリン代も馬鹿になりません。
やはり自宅はイイということです。
デメリットは、岐阜という土地柄 「雪が多い」ということだそうです。
考えてみると、東海道新幹線は関ヶ原の雪でよく遅れますし、かなり北になりますが、あの白川郷の合掌造り集落も岐阜県です。
年間日照時間ランキングでは、2,121時間 全国第9位の岐阜県上から山梨、高知、群馬、宮崎、静岡、長野、和歌山、徳島、岐阜と続く。全国平均は、1,865時間。ですが、パネルの上に雪が被さっていると発電できません。
ということで「発電量が足らないの?」と聞いたら、「設置時、屋根の雪止めを外したら、雪がドバッという感じで落ちるんだよね。」とのこと。
設置場所毎に色々な悩みがある様です。
自宅に使っているのは、三洋時代の「HIT」だそうで、薄暗くなっても発電していたのは印象的でした。
三洋はよい技術を持っていましたからね。
■関ヶ原 第3発電所
翌日に連れて行ってもらったのは、関ヶ原。
自宅が第1、岐阜の北側を第2にすると、ここは第3というわけです。
合戦場の程近く、山田の上にありました。
ここは太陽光発電用に売りに出されていた土地だそうで、業者プランを使ったそうです。
行って見ると、まるで木造住宅の骨組みです。
檜の柱を並べ、屋根のように太陽光パネルを載せます。
外壁がないと、なんか柱の多い、倉庫のようにも見えます。
出入り口が小さいので、中は使い物になりませんが・・・。
自然に囲まれた中、静かな工場が「エネルギー」を粛々と作っているのが印象です。
管理という意味では、遠すぎるのですが、「イイ所に作ったね。」と思いました。
■ソーラーシェアリング
当日、中日新聞に新しい動きとして「ソーラーシェアリング」が掲載されていました。
ソーラーシェアリングとは、耕作地に地上から3mの位置に藤棚の様に架台を設置し、短冊状の太陽光パネルを幅を持たせて並べ、営農を続けながら太陽光発電を行うことです。
これは、植物が光合成で使う以上の光量が太陽から降り注ぐためです。
30%カットしても収穫には影響がないとの算出もあるそうです。
その30%を太陽光発電に頂こうというのが「ソーラーシェアリング」です。
収入が不安定な農家に、年百万円以上の定額収入が入ることになります。
が、デメリットも多くあります。
大きくは2つでしょうかね。
1. 設備投資が掛かる。
今の農家は、機械だらけです。鍬で畑を耕しという感じではありません。トラクターで田起こし、田植えは田植機ですね。
収穫はコンバインですから、それだけでも3種類の機械が必要。
当然、更新もしますから、毎年のようにお金が掛かる。
それに加えてですからね・・・。
2. 作業がし難くなる。
田んぼ、畑に柱を立てますと、機械の取り回しが難しくなります。
当たらないように神経を使わなければなりません。
■太陽光発電の投資回収
エヌ氏によると、現時点で電力会社と売電契約すると20年後、ざっくり投資額と同等の利益が見込めると言います。
要するに、投資額の10%位づつ、毎年回収できると言うわけです。
で、10年で投資回収終了。
後の10年は純利益です。
例えば2000万円の投資で、年200万円ですから、贅沢さえ言わなければ、老夫婦が暮らせる金額です。
東京だと、すでに山梨県の太陽光発電に投資されている人もかなりの人数にのぼるとか。
株式などに比べると、長期に渡りますが、ローリスクの買い物になると思います。
当然リスクもあります。
まだ確認しておりませんが、エヌ氏によれば、地震保険の適用はないようです。
後、イイ業者に当たるかも、大きな違いになります。
さらに言うと、20年後にこの事業を辞める時は、全部産廃処理が必要ということです。
それは、先に積み立てておくべきでしょうね。
しかし、日本が抱える問題、エネルギー、食料、資源の内、エネルギーがなくなったら、これはスゴいことだと思います。
子供の明日を買うための投資としては、一番有効な投資かも知れません。
ちなみに、右図はドイツの太陽光発電のデーターです。
個人と農家で太陽光発電の50%を超えます。
これが意味するのは、エネルギーが点在するということです。
こうして初めて、エリア毎にエネルギーの管理を行うスマートグリッドが成立します。
個人がエネルギーを持つべき時代が来たのかも知れません。
エヌ氏の様な投資が、これからの日本を切り開くのかも知れません。