歯磨きから、コップ洗い、掃除機に至るまで、キレイにするための基本道具として、ブラシがあります。
毛で構成されているので、隙間まで毛が入り、ゴミを掻き出す。複数の毛を使うので短時間でキレイにできる。等々の利点があります。
ところが、ルンバ880はメインシステムにブラシを使っていません。
■「床の上のゴミを取る」という行為
ロボット掃除機のロボット部は、基本的に部屋の隅々までロボット掃除機を運ぶためのものであることは、分かってもらえたと思います。
逆に言えば、掃除機部に求められることが分かります。
「本体の下のゴミを残らず取る。」
これが求められることです。
人間が手で操る掃除機(この稿ではロボット掃除機以外は、キャニスター型掃除機のことです。)でも、残らず取るのは難しいです。
普通に取る、ダメなら右からアプローチ、それでもダメなら左からと、何度も掃除機を行ったり来たりさせる場合もあります。
キャニスター型は、かなり改良度が進んでいます。
強力な吸引だけでなく、ヘッドには回転ブラシが付き、ゴミを絨毯の毛の間から掻き出したりもします。
多分、ロボット掃除機本体のデザインは、このミニチュアですよね。
本体の吸い込み口の所に、2本のブラシ。ゴミを取り出しながら吸引。それでゴミを拾い上げるわけです。
一見良さそうに見えますが、問題は多々あります。
■自動でゴミを取る時の問題点
1つの大きな問題は、「髪の毛」です。
老夫婦である場合を除き、人間が生活していますと必ず頭髪は抜けます。
この細く、そして極めで丈夫な長い紐状の物体は、ブラシに絡まります。
酷い場合には、ブラシの回転を妨げることにも。
これは伝説かも知れませんが、海の難所に、サルガッソーと呼ばれる海域があります。
長い海藻が辺り一面生い茂り、入って来た船のスクリューに絡みつき、スクリューを動かなくしてしまう。
で、遭難というわけです。
要するに回転体に、長いものが絡みつくと、ろくなことはないわけです。
ロボット掃除機は手がないですので、絡まったらそのままです。
もう1つの大きな問題は吸引力です。
家電に興味ない人にも、「吸引力の変わらない掃除機」というキャッチで、ダイソンの名は知れ渡っています。
何故、そうなったのでしょうか?
理由は2つあると思います。
1つ目は、吸引力が高いとゴミが、確実に、というより見る間に吸い込まれます。
鮮やかと称すべきモノでしょうね。
子供の頃、掃除機にいろいろなゴミを吸わせて、「かなり遠くからでもゴミを吸い寄せるんだ! スゴい!」と思った記憶があります。
強い吸引力は、現在の掃除機に不可欠なのです。
2つ目は、吸引力が弱くなると、ゴミの吸い残しが発生する場合があるということです。
ルンバの場合は、同一地点を4回通るように設計されています。
が、あくまでも設計ですから、できる限り1回で取れるに越したことはない。
角度が悪くて取れないならまだしも、吸引力が下がり吸い残すのでは、お話になりません。
お分かりですね、ゴミを捨てた後の良好な吸引力を保てる。
これは、常に掃除しやすいということを意味します。
だから「吸引力の変わらない掃除機」というキャッチは、インパクトがあったのです。
ロボット掃除機を「メイン・クリーナー」にするには、この2点をクリアしなければならないのです。
■「ブラシ」を捨てる!
i-Robot社が取ったのは、2つですね。
1つはゴミを取り込む構造の見直し、2つめは吸引力の見直しです。
1つ目のゴミを取り込む構造の見直し。
これは心底スゴいと思いました。「3年掛かった」と言われると「なるほど」とうなずけます。
「ブラシ」を「特殊素材のローラー」に変えたのです。
この技術的なジャンプはできそうで、中々できることではありません。
しかし、非常に理にかなっているのです。
吸引力が強い掃除機の場合、ゴミを吸うためのポイントは、床等に軽くトラップされているゴミをフリーな状態にしてやれば良いのです。
ブラシの場合、毛での書き出しがそれに当たります。
では特殊ローラーの場合は・・・。
全てのデーターを開示されたわけではないので断言は出来ませんが、「素材変形によるゴミの包み込み」ではないかと思います。
まず、ゴミは床面に接しています。上からローラーが覆い被さると、その他の部分 要するに床面より大きな面積でゴミとローラーが接します。
接触面積が大きい方が摩擦が大きいですから、ゴミはローラーによって運ばれ始める。
床との接触が大きい場合でも、ちょっとは浮くわけです。
浮いた所を、5倍もの吸引力で、吸い上げるわけです。
またローラーには、矢印が切ってあります。
端のゴミを中央に寄せる工夫です。より確実にゴミをトラップします。
素材の開発は、短期間でできるものではありません。
アイディアが出ても、試行錯誤の連続です。
よくぞ、モノにした!と感じます。
■使ってみてマスマス感心!
しかし、実際に使うとこのローラー、さらに感心します。
使って3日目。
第1回目のチェックです。
清掃能力としては、部屋も以前のタイプより、ややキレイかなという感じを抱いたのですが、ここは実験室で正確なデーターを取っているわけではありませんので、あくまでも主観です。
むしろ狙い通りの機能をしているのか、メンテはし易いかなどを確認します。
裏を返してみますと、ローラーには、ブラシより少ないながらも髪の毛が絡まっています。
「新型ローラーといえども回転体。髪の毛に弱いか・・・」と思いながら、ローラーを外しました。
ここから目から鱗が落ちるような体験。
スルリと髪の毛が取れるではないですか!!!
そうなのです。凹凸がある柔らかなローラーですので、髪の毛が引っ掛かる部分がないので、なんなく取れるのです。
普通髪の毛が絡まったら取るのは一苦労です。
ハサミを持ち出し、長い髪の毛を短めにカット。ホコリの付いたブラシからホコリと共に取り除きます。
時間も掛かるし、本当に面倒臭い。
ローラーだと、そうではないのですから。
マスマス感心しました。
■吸引力5倍と共に、ダストボックスの大きさがイイ
次にゴミです。
我が家は7人家族ですので、ゴミ、ホコリは多いです。
3日でダストボックスの1/2位溜まりました。
吸引力を増すために、モーターの強化。
そして空気の流れを生み出すため、ダストボックスも1.6倍に大きくしたのが功を奏していますね。
これでも、後、2日位は対応できそうです。
家族の少ない人だと、一週間に1回でよいでしょうかね。
これはありがたいことです。
ローラー掃除、ゴミ取りだけだと3分もあれば可能ですので、お風呂に入る前、ちゃっちゃとメンテすることもできます。
フィルターは、PEPAフィルターだそうです。
ロボット掃除機を、外出時に使うとなると部屋は密閉状態ですので、これは必要です。
■ルンバは「メイン・クリーナー」になり得るか?
ルンバに限らずロボット掃除機は、掃除できない部分が必ず有ります。
四角い部屋角などですね。
このため、もう1つ掃除道具を用意することは必要です。
が、「平日はルンバでOKか?」と尋ねられたら、「かなりいけます。」が解答です。
その位、ルンバ880は出来がイイ! お買い得かと聞かれれば、「その通り!」です。
単純に「いける」と言えないのは、部屋によって向き、不向きがあるからです。
しかし掃除する時の椅子の置き方などで、かなりイイところまで対応できます。
部屋がOKなら、特にお勧めなのは、共稼ぎの方。独身の方。
いない間に、掃除が済みます。
さらに言うと、赤ちゃんができて、かがめなくなってこれなら大丈夫。
将来でも使えます。
■主な仕様
型番 | R880060 |
色 | ブラック |
電源方式 | 充電式ニッケル水素電池(充電時間:約3時間) |
サイズ | 353(最大幅)×92(H)mm |
重さ | 約3.8kg(含バッテリー) |
アイロボット公式ストア価格 | 76,000円 |
商品のより詳しい情報は、ロボット掃除機 ルンバのスペシャルサイトにてご確認ください。
http://www.irobot-jp.com/roomba/800series/#top
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