iRobot、ルンバ880のレポートをします。
前モデルとの間は、3年。時間を掛けただけあって中身は別物といっても過言ではありません。どうスゴいのか、レポートして見たいと思います。
■ルンバのコンセプトの前に
まず iRobotのロボット群を見てみましょう。
1991 | 地球外探査ロボット Genghis(ジンギス) |
1996 | 磯に埋められている地雷を探査・除去するロボット Ariel(アリエル) |
1997 | 多目的作業用ロボット Urbie(アービー) |
2001 | 9月、米同時多発テロで被害を受けた世界貿易センタービルの瓦礫の中で、多目的作業ロボット PackBot(パックボット)が活動 |
2007 | 雨樋清掃ロボット Loogi(ルージ) |
2010 | メキシコ湾の原油流出の現場で、海洋探査ロボット Seaglider(シーグライダー)が活動 |
2011 | 3月、福島第一発電所の内部調査に、PackBot(パックボット)とWarrior(ウォリアー)が活動 |
お分かり頂けると思いますが、iRobotのロボットは人間が行けないような危険な所で頑張っています。
これが可能なのは、iRobotのロボットに、自分で判断することができるプログラムが組み込まれているためです。
そうでなければ、あっという間に地雷除去ロボットなど、地雷を踏みます。数百、数千万円するロボットもバラバラになります。
そうなのです。ルンバを支える技術の1つとして、自分で判断することができる優れたプログラムが上げられます。
■コンセプトは、「メイン」クリーナー
皆さんはロボット掃除機に対し、どんなイメージをお持ちですか?
おもちゃ?
勝手に掃除してくれる掃除機?
人間のパートナー?
いろいろな夢が拡がる家電ではありますが、ルンバ880のコンセプトは、「メイン・クリーナー」です。
「ルンバ880で掃除をすると、そんなに不満がない。」と言い換えてもいいかも知れません。
では、部屋を「万遍なく」掃除するにはどうするのか?
掃除という行為は大きく分けられます。
1)その部屋の中、掃除機を隅々まで移動させる。
2)掃除機にゴミを吸わせる。
1)は、命題的には「そのエリアの地雷を全部除去して安全にしろ。」に似ていますね。
そう、iRobotは、それに長けたプログラムを持っているのです。
(2)は掃除機としての性能です。ロボットとしての性能は(1)です。
■「状況判断」が大切!
例えばマンション。
隣の家と間取りは同じ。そこをルンバに掃除させました。
ルンバは同じ動きをするでしょうか?
正解は「違う」です。
何せ、部屋の使い方は持ち主により千差万別。
家具の数も、配置も全く違います。
つまり、自宅と呼ばれる所に、1つとして同じ部屋は存在しないと言ってもいいでしょう。
ここで活きるのが「判断力」です。
ルンバには数十のセンサーが付いています。
でも、色々とぶっかっています。
目を持たないルンバはぶつかった時の情報や、他の情報をセンサーで手に入れます。
目の不自由な人の歩き方に似ています。
ステッキで行こうとする方向を叩く。音、感触等々、五感というセンサーで情報を得る分けです。
で、この膨大な情報を使い、60回以上/秒の状況判断をします。
その状況判断より、40以上の用意された行動パターンからベストな行動を選ぶわけです。
人間が何かをする時には、「意志」と「状況把握」が重要とされますが、ルンバもそれと同じです。
■覚えていない・・・!? お前はホームズか?
よく皆さんから聞かれる質問があります。
コンピューターですから、一度掃除した部屋は、覚えていて次はより上手く掃除するのでしょう。
人間でいう「経験」というものです。
しかし、ルンバはそういう記憶はしないそうです。
初めて聞いた時は、吃驚しました。
生活していると、重いテーブルでも生活していると、多少位置が変わります。
機械ですから、情報は緻密です。
イメージとしては、クルマで、悪路を如何に速く走るかを競うラリー競技のナビゲーター情報に似ているかも知れません。
ラリーのナビは速く走れるようにドライバーに指示を出す役目です。
ドライバーがコーナーに突っ込んでいく際、コーナーの状態、視界は?、曲率は?、グリップは?、進入速度は?といった多くの疑問に瞬時に回答を出します。地図見ても書いていません。
ラリーチームは、競技コースを何度か走り、今いったような情報が記載されたレッキ帳を作ります。
虎の巻です。
しかし、ルンバは俯瞰ができませんし、時速120kmで部屋の中を走る機械でもありません。
レッキ帳を作ることも可能ですが、次回も同じ状態か、どうかは分かりません。
このため取れるだけの情報を取り、自分で判断しながら、部屋の掃除をするのです。
どの部屋でも、同じように掃除ができる様なレベルまで、プログラムが鍛えられているとも言えます。
この説明を聞いた時、シャーロック・ホームズを思い出しました。
デビュー作の「緋色の研究」で、ワトソンはホームズが地動説を知らないことにびっくりします。
で、ワトソンは地動説に関して説明するのですが、理解後ホームズが、その記憶を忘れようとすることに、またびっくりします。ホームズ的にいうと、不要な知識は頭脳の使える部分を狭くするのでいらないというわけです。
その後、ワトソンはホームズが、思考機械とでもいうべき名探偵であることを知るのですが、ルンバも何か近いところが有ります。
使えないかも知れない記憶より、最新の情報による論理的な判断。
機械の癖なのでしょうかね。
■どうやってゴミがなくなったと判断するのか?
ルンバは、室内をスムーズに動くプログラム「iAdapt(アイ・アダプト)」と、次回お話しする「掃除機」の部分から出来ています。
では、どうしてゴミがなくなったと判断するのでしょうか?
人間のように俯瞰して、ゴミの有無を判断することはできませんからね。
実は、ゴミの有無は判断していないというのが正解だそうです。
必要な時間、掃除したら終わるのだそうです。
なら終了時間は、どうやって決めているのでしょうか?
これが非常に巧みです。
頭、10分間、ルンバは部屋の大きさを探る動きも含めてしているそうです。
どの位直進できたか、どの位ぶっかったか、壁らしい沿って移動できるものはあるのか 等々の情報を得ます。
その情報から、予想される部屋の大きさを計算。次いで、その部屋のあらゆる点を4回通過するために必要な時間を算出します。頭の10分に、その時間を足したのが、ルンバの活動時間と言うわけです。
4回通過するのは、まず間違いなくゴミが取れるからだそうです。
統計学通常の社会で、最も活用できる数学分野。を駆使して、導いた結論だそうです。
■ルンバの上手い使い方
この情報から、ルンバを上手く使うコツが分かります。
ルンバにきちんと掃除させるためには、なる程度以上長い時間掃除させる必要があります。
そのためには、頭10分、余りぶつからないようにしてやって、大きい部屋だと錯覚させてやれば良いわけです。
例えばスタート地点。
基本的には部屋の隅ですが、ぶつかる所が多いところは避けた方がいいです。
また、ルンバが通過するには幅40cm必要です。
アメリカなど家具が大きい国では、大半の場合40cm以上でルンバは通過できるらしいのですが、日本は割とコンパクトですからね。ぶつかります。
特によくぶつかるのは、椅子ですね。
椅子は単独ではなく、椅子の脚と椅子の脚との間、テーブルの脚との間、等も十分気を付けてください。
隙間を作ってやることにより、よりルンバも活躍できます。
さて、取りあえず頭10分間の目立った動きを撮影してみました。
我が家の居間は狭いので、あちこちにぶつかります。
結局、見事に狭い居間と判断され、その後15分、計25分で掃除終了。
まだ追い込めておりませんが、もう少し頭の時点で広いと思わせると、ガンガン掃除してくれると思います。
頭がイイ家電ですので、知恵を使うのも重要です。
「上手に使うととっても便利」なのです。
次回は、実際に掃除させて見てのレポートです。
お楽しみに!
■関連記事 新製品「iRobot、ロボット掃除機ルンバ800シリーズ 新製品発表会」
レポート「iRobot、ルンバ880 その2 スゴいぞ、新型ローラー!」