トレンド

空気清浄機の技術


インフルエンザ、流行の兆しです。2月以降は、花粉も飛び、黄砂、PM2.5が話題として出ます。
そんな時、話に出るのが「空気清浄機」。本日は、そのトレンドを!
■公害と共に歩んだ歴史
空気清浄機は、いつ頃からあるのか・・・。
産業革命前後と言われています。
ロンドンが霧に覆われた頃ですね。
「霧のロンドン」と言うと、映画のタイトルのように優雅ですが、これは大きな間違い。ロンドンの霧の正体は、石炭をガンガン使うようになったため発生した煤煙です。
スモッグ、つまり公害です。

ある人によれば、現在の中国より酷かったと言います。

煤煙はすぐ煙突に溜まったらしく、当時煙突掃除人という職業さえ出来たそうです。
映画「メアリーポピンズ」は、煙突を上手く使っていますが、中に大道芸人のバートが煙突掃除人に扮するシーンがあります。
その時の曲が、「チム・チム・チェリー」。ユーモラスな名曲でアカデミー歌曲賞を取っています。

が、事実はユーモラスでも何でもありません。
文明が進化すると共に、人は空気を汚してきたのです。

一つのピークは、1960年代。
その頃、クルマの排気ガスをキレイして排気するという考えはありませんし、工場も排気をキレイにするという「余分な」設備には投資しません。光化学スモッグが発生。公害による呼吸器の病気はうなぎ登り状態でした。

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1981年の多摩川。家庭用の中性洗剤の泡で
川の大半が覆われている。
以降浄化が進み、鮎が戻るほどに。

子供への影響は深刻な問題でした。
1970年の前半には、ゴジラが公害怪獣「ヘドラ」と戦う1971年の「ゴジラ対ヘドラ」のこと。ちなみにヘドラは英語では「Smog Monster」と訳される。など、公害をモチーフとした怪獣ピープロの「スペクトルマン」が端的な例。「公害怪獣」「公害人間」に加え、「ゴキブリ」「ダスト(ゴミ)」などが暴れまくった。が流行しました。
川も海も臭くなり、自然が遠くなった頃です。正義の味方は子供のため、公害と闘う羽目になったのです。

で、日本の家屋は、夏を旨とした風通しの良い家屋から、密閉型住宅へ変化します。

人間、完全密閉された部屋にずっといると、酸素がなくなり、終には死んでしまいます。
TVの推理ドラマでよくある話です。
いわゆる「空気が汚れてしまった状態」ですので、ドア、窓を開け、空気を入れ換えます。換気ですね。

ちなみに、日本の建築基準法では、その部屋の空気を1時間に2回換気ができることを義務づけています。
通風孔を付けなければならないのは、法律で義務づけられているのです。

ま、これが山の中なら窓を開けて終了。
空気はキレイになったし、窓から出た空気は植物を含む山の環境がキレイにしてくれるしなのですが、実際はそうは行きません。

つまり空気は汚れているのです。
冒頭に書いた色々なものが含まれているので、何とかしなければなりません。

こんな感じで、空気清浄機は、1970年位から立ち上がります。

 
■空気中の有害物質
空気中の有害物質は、「ハウスダスト(ダニの糞、ダニの死骸)」「花粉(スギ、キク科他)」「カビ」「細菌」「ウイルス」「黄砂」「微粒子(PM2.5)」等です。

分け方には2つの方法があります。

1つはサイズです。
「豆知識」空気中 浮遊物大きさ比べ / バイ菌とPM2.5はどちらが大きい?

そして、あと1つは有機体(生物)であるか、否かです。

 
■有害物質に対する医療技術
有害物質は人間の健康に被害をもたらすモノであるため、医療でも有害物質を取り除こうとします。

医学は実効性のある技術の集大成とも言うことが出来ます。
正確で、かつ使える技術と言えます。

例えば、医療で「無菌」は、存在確率で示すことです。小さいものが、数少なくなった場合、顕微鏡でも見つかるモノではありません。このため「いる」「いない」が水掛け論になる可能性があります。
存在確率:10-6(10のマイナス6乗)です。
このレベルになりますと、細菌、ウイルスも少ないので、まず発症はしません。

で、この様な状態を作ることを「滅菌」と言います。
「殺菌」ではありません。殺菌は菌を殺せば殺菌で、レベルを考慮しなくても良い場合に使います。
逆に言えば、「「殺菌」しました。でも菌付いています。」はあり得るのです。
「滅菌」は菌を殺し、存在確率:10-6(10のマイナス6乗)にすることを言います。

では、どんなことをしているのかですが、大きくは4つに分かれます。
「加熱」「電磁波」「化学作用」「分離除去」の4つです。

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(株)サンポーの、加熱滅菌器。

加熱はよくご存じですよね。火炎を使うものから、蒸気を使うモノまで色々ありますが、単純に言うと180℃のオーブンの中に30分入れて初めて滅菌レベルになるので、空気清浄機には使えません。
電磁波も、ガンマ線なのですので、これも家庭向きではありません。

医療の技術で、家庭用空気清浄機に応用できるのは、次の2つです。

1)「化学作用」の中の1つ。「過酸化水素低温プラズマ滅菌」過酸化水素水を電磁波によりプラズマ化させ、フリーラジカル、紫外線、過酸化水素により細菌などを殺滅させる方法と言われる技術の応用。
2)「分離除去」技術です。単純に言うと「フィルター濾過」です。

 
■低温プラズマ滅菌の長所と弱点
実は、この技術は「加熱」できない器具を滅菌するための技術です。

長所は、分子レベルの技術を使うため、ウイルスレベルのサイズのモノに対しても効果があることです。
これはかなり優れた長所と言えます。

では、逆に弱点は何でしょうか?
ある機械のスペックでは、容量:152L、標準滅菌時間:約47分とあります。
閉鎖空間でもある程度時間が掛かるということです。
何故でしょうか?
要するに、フリーラジカルと「菌」が出会うのに時間が掛かるためです。

これを解決するためには、フリーラジカルの濃度を上げます。

が、フリーラジカルは人間の細胞も攻撃します。
人間の細胞は、菌、ウイルスより丈夫に出来ていますが、ダメージも受けます。
人間も菌も同じ地球上の生物ですからね。

使う場合は、バランスをうまく取るが必要なのです。

 
■フィルター濾過の長所と短所
長所は、濾過できるサイズまでは、確実に対応できると言うことです。

では、短所は・・・。
いろいろあります。

最も大きな短所は、現在の技術で量産できるフィルターの径は決まっていると言うことですね。
単純濾過ですとウイルスは全部フィルターを通過してしまいます。
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2つ目の短所は、トラップされた菌がフィルター上で繁殖する可能性があること。

3つ目の短所は、フィルターは必ず詰まると言うことです。
交換しなければなりませんし、目が細かいフィルターは値も張ります。
が、フィルターは素材ですので、量産可能になると値が下がります。
昔は高かったHEPAフィルターも安くなりました。

 
■現在の技術トレンド
現在の基本は「空気濾過」です。

フィルターの基本はHEPAフィルターサイズです。
が、これだけだとウイルスが、トラップできません。
で、各メーカー毎に工夫を凝らしています。

次に細孔フィルターは空気が通りにくいです。
パワフルなモーターを付けます。
対応体積に対し、建築法にある2回/時間を超える空気を浄化するのが一般的になっています。

これに除電技術、低温プラズマ滅菌を組み合わせたモノもあります。

 
■ウイルス対応
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Harper,G,J.:Airborne micro-organisms:
survival tests with four viruses.
J.Hyg.Camb.,59;479~486,1961
ダイナエアー(株)のHPより引用

空気清浄機で対応が厳しいのはウイルスです。
サイズがフィルターより小さいので、どんなに頑張っても取り切れません。

ウイルスで怖いのは、「インフルエンザウイルス」と「ノロウイルス」ですが、ノロウイルスは経口感染ですので、主な相手はインフルエンザウイルスとなります。

インフルエンザは、「冬」に猛威を振るいますが、理由は「低温低湿」だからです。
ウイルスが死ににくいのです。

ウイルスは一般的な生物と異なります。繁殖は人間の細胞内だけでしか行われません。
このため空気中のウイルスはある割合で死んで行きます。
高温高湿と低温低湿で、ウイルスが死んで行く割合が異なるのです。

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タニタの季節性
インフルエンザ予防温湿度計
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このため部屋を加湿することが1つ打てる手です。
リビングなどには、温湿度計があると便利です。

ただし、加湿が過ぎると結露が発生します。
「細菌」「カビ」はウイルスと異なり、栄養があれば増殖します。
空気清浄機のフィルターは、これらが多く付いていますので、湿度のかけ過ぎには注意してください。

カビたら、そのカビをまき散らすことにもなりますので・・・。

2014年1月20日

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