HEMSって何? 2013年版 その1
電力会社とスマートメーター
最近、ちょくちょく目にするようになった「HEMS」のことを紐解きたいと思います。
現在、HEMSは、細部まで完全に決まったものではなく、流動的な状態でもあります。
これから何回かに分け、HEMSの話をなるべく分かりやすくしてみたいと思います。
HEMSとは、ヘムスと読みます。
Home Energy Management System の頭文字を、合わせた略号です。
日本語で書くなら、家庭用エネルギー管理システムです。
色々なメーカーが、HEMSに手を出しています。
しかし判然としません。
何故でしょう。
理由は、HEMSは目的の一部しか決まっていないからです。
さらにシステムは大まかに決まっているとはいえ、細部は任意です。
このため、いろいろな対応のし方があります。
確かにプロトコル(通信する時のデータの条件)は、ECHONET Lite(エコーネットライト)が推奨されています。
が、それ以上の細部は未定なのです。
このため、今、各メーカーは一斉にHEMSとはどういうモノかを画に説明しております。
しかし細部は一致しません。
だから非常に、ユーザーに取っては分かりにくい。
2013年の晩秋の今、そんな状態です。
■地球にはエネルギーが足らない。だから・・・「節電」
東日本大震災。津波の傷跡も深いですが、それ以上に福島の原発事故の傷跡は深いです。
何たって、この狭い日本で住めない土地が出現したわけですから、その酷さは計り知れません。
1970年代。公害が日本に溢れていた時代ですら、少なくとも、住めない場所はありませんでした。
聞くだに背筋が「ぞくっ」とする「水俣病」、「イタイイタイ病」、「四日市喘息」ですら、全員がその土地から離れることはありませんでした。
スリーマイル、チェルノブイリ、福島。
原発の大きな事故ですね。
アメリカ、ソ連、日本。先進国で、技術も進んでいます。
その国の事故ですから・・・。
チェルノブイリ原発、福島原発の周りは人が住めない状況になりました。
しかし、更に原発に参加しようとする国もあります。
理由は簡単です。
現在主力の化石燃料は、どんどんなくなっているからです。
対応策は幾つかありますが、その中に「節電」があります。
恒久対策ではありません。
しかし節電は良いことです。エネルギー消費を遅らせますし、環境への負荷も減らせます。
その間に、再生可能エネルギーをものにできるかも知れません。
実はHEMSは節約型の電力システム、「スマートグリッド」のコンセプトが大本なのです。
■スマートグリッドの条件
グリッドとは、元々、格子、方眼状のものという意味です。
コンピューター業界ではネットワークを介して複数のコンピューターを結び、作り出した仮想的なコンピューターをグリッド・コンピューターと称しています。
スマートグリッドのグリッドとは、こちらの意味です。
まず、発電設備から末端の電力機器までを、コンピュータ内蔵の高機能な電力制御装置同士をネットワークで結び合わせます。
これにより、今までの中央制御では達成できなかった個々の家電が自律的に制御をできるようにします。
チリも積もれば山となるという訳で、電力網内での需給バランスの最適化、事故対応、過負荷対応がスムーズにできる様になります。
しかも発電機への負荷を最小に抑えることができます。
つまり、今、家庭で消費されている電力データが、タイムロスなく一堂に集められ分析され、余っているエリアの電力を使っているエリアに送ったり、使いすぎの場合は一時的なピークカット(エアコンだと、室温 28℃ 以下だと一時的に効きを弱める)を行い、やり繰りをするのです。
条件は、タイムロスなく、情報を集め、分析、指示を出せること。
このために電力会社は、現在のアナログの電気メーター(月に1度、確認しにくる電気メーターです)を、スマートメーターに変えます。
端的に言えば、デジタル化することにより、その時々の消費状況をデーターとして外部に送れるようになる分けです。
もう一つは、家庭内の家電の一律管理です。
もともとの家電の条件は、設定された通りに動くことです。
しかし、今回家電に求められるのは、消費電力を通達することと、管理システムから動かせることです。
この家庭内の管理システムが、HEMSです。
当然、スマトーメーターからの要望(スマートグリッドからの要望)を受けとることもします。
■電力会社の担当部分
電力会社は、スマートメーターの部分を受け持ちます。
例えば、東京電力は管内世帯、2020年度中までに、2700万台を入れ替える予定です。
ビッグビジネスですし、東電に言いたいことは山ほどあるのですが、ここでは不問にします。
むしろ心配なのは、スマートメーターとネットワークの通信方式が各電力会社で、バラバラになっていることです。
東京と大阪で、サービスの違いがでる可能性があると思います。
日本が電力不足になった時、東日本と西日本で、電力周波数が違うことがクローズアップされましたが、こと同じようなことが発生する可能性があります。
何故、そうしたのかは知りません。
もしかしたらバラバラにならずに済むかも知れません。
が、今のままでは、ユーザーである国民のことを考えた仕様とは余り思えません。
まだスマートメーターは普及していませんので、やり直しは利くと思います。
御一考願いたいモノです。
■スマートメーターによるコストダウン
今、電力会社は電力メーターの数値を見るために人を雇っています。
スマートメーターですと、メーターの数値は即送られますので、これの人たちは不要です。
また、契約アンペア数を変える時、工事の人が来ますが、これも自動でできますので、この人たちも不要になります。
スマートメーターは、電力会社に取り、投資しても回収可能な設備と言えます。
■どうしてこの話から始めたかと言うと・・・
それは、HEMSは、ユーザーが節電の意識に目覚めたので出来たのはないこと、を知って欲しかったからです。
節電ですが、例えばエアコンを買い換え、今までと同様に使いますと節電となります。
また小まめにスィッチを消しても節電できます。
節電の方法は、まだ見ぬHEMSだけではありません。
むしろ、HEMSは、スマートグリッドを成功するために必要なパーツとして位置づけられます。
それは、社会要請と言っても良いと思います。
HEMSは、ユーザーニーズから必然的に生まれたものではない。
これがHEMSを分かりにくくしている理由です。
しかし私はHEMSを否定しているわけではありません。HEMSはいろいろな可能性を秘めており、期待できるからです。
アニメ映画「GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊」(1995年公開)のラストシーンではありませんが、「つながる」ことにより無限とも言って良いほどの可能性がでてきます。
次回から、HEMSの構成、技術、未来(可能性)についてお話しします。
■HEMSって何? 2013版
01 電力会社とスマートメーター(本編)
02 HEMSの構成(次編、仮題)
2013年11月27日