現在、アメリカ、西海岸で流行しているコーヒー・スタイルに「サードウェーブ」と呼ばれるスタイルがあります。
これって、よく聴くと日本の喫茶店に近い飲み方です。
Wasyoku(和食)も、世界無形遺産で評価を得ていますが・・・。
慌ただしい出張も含め、海外に行くと次のことを体で感じます。
1.土地の食は、その風土で成り立っていること
2.日本の「水」は、世界に冠たること
3.日本人の自然とのつきあい方が生み出したのが、日本の食べ方であること
■土地の食は、その風土で成り立っていること
これを痛烈に感じたのは、インドです。
極端な言い方をすれば、インドでの食事は常にカレーなのです。
しかし美味い。特に豆のカレーなど野菜系は絶品です。
菜食主義者になるのなら、インドに住むのは一つの手だなぁと思った位です。
ところで、インドの人は当たり前のように、3食カレーを食べます。
私は、さすがに4日もカレーを食べ続けるのは無理。
ニューデリーのハンバーガー屋に逃げ込みました。
しかし、ここもカレーの臭いが・・・。
何故こうもカレーでしょう。
単純に言えば、カレーを食べていると食あたりしないからです。
膨大に入れる香辛料が、その役割を果たしていると言われています。
つまり衛生環境が良くなく、物が腐りやすいインドの地で、カレーは必需品の健康食なのです。
さらに言います。
現地で美味しいと思って買ってきて、日本では美味しくなかったものってありませんか?
例えばインドではカレーはライスもしくはナンを合わせます。
このライスは長米。日本では不味いと言われるあれです。
が、現地では美味いのです。
その土地の水を含め、土地に馴染んだものが、その土地の食と言えます。
■日本の「水」は、世界に冠たること
海外に行く度に、ホテルにチェックインした後、すぐに行うのは「水」の確保です。
スーパー、コンビニで、ミネラルウォーターを買います。
これは3つ意味があります。
1つはインドのように、衛生的な問題。
地元の人には悪いのですが、インドの水道水は、遠慮させて頂きました。
2つめは、「硬さ」ですね。
日本の水は、まれに見る「軟水」です。
この差は大きいです。
生活で水に関わらない所はないですからね。
しかも料理。この差は大きいです。
例えば、中華料理。中国は基本的に水が悪い。なんたって「黄河」。
砂まじりの茅ヶ崎ではありませんが、黄砂が多量に混じっています。
清流溢れる日本の比べることはできません。
そこで彼らは、水の代わりに油を駆使します。
中国料理の技術は、「火」と「油」ですが、それは水の悪さから来たものなのです。
3つめは、「味」です。
例えば、米国ラスベガスの「水」を飲むと塩味です。
ここら辺の砂漠は、昔の海底が隆起し塩分を含んでいるためです。
しかも日本の場合、雨が降り海に流れ出すまでは他国に比べ非常に短期ですから、味も極端には付きにくいと言えるかも知れません。
海外に行くと、日本の水環境のすばらしさに改めて気づきます。
■日本人の自然とのつきあい方が生み出したのが、日本の食べ方であること
アニメ「もののけ姫」ではありませんが、日本人は自然を畏怖すると共に、愛し、共存を図ってきた歴史があります。
山の幸は山の神様が、海の幸は海の神様が下さる考え方です。
次に、自然の愛しかたも全く異なります。例えば国民的に虫を愛する文化が日本にはあります。
実は鍬形虫は、韓国、台湾などは、どうでも良い虫なのです。現地で、一晩眺めて見ようと、コンビニのライトの下で捕まえた時、現地の友達から「信じられない」と口々に言われたことがあります。
「虫を愛でる姫君」などはもっての外。
これと同様なものが、わび茶の茶碗。日本人が愛する形が歪な茶碗は、海外ではほとんど認められません。あくまでも人間の意志(人間が作ったと分かる抽象性)が出ていることが必要なのです。
一寸の虫にも五分の魂ではないですが、日本は自然の良さを認め、というより自然の意志を認め、それを活用しようとしてきました。
刺身は極端な言い方をすると、魚を切っただけですが、それは自然の旨味を尊重しているためかも知れません。
共存もそうですね。
自然に対し、力と力では絶対に負けます。現在「想定外」と言う言葉を使う人が多くいますが、真のプロは恐怖心を持っていますので、自分以外を認めないような「想定外」と言うような言葉は使いません。
ちょっと脱線しました。
日本が取ってきた手法は、その力をまっすぐでなく、矛先を剃らし力を削ぎ対応する方法です。信玄堤をその例としてあげます。
実は、この方法は凄く面倒くさいのです。その自然の癖を知らないといけないのと、かなりの技術がなければ対応できないからです。
お分かりだと思います。日本人のキーワードは「活かす」なのです。「借景」もそうですし「和食」もそうです。
日本人で原理原則を生み出した(見いだした)人は多くいません。(世界でも少ないと思います。)
ところが、ある概念、目的を持ってきて、皆で上手く仕上げてしまうのは、日本らしいところです。
ところが自然感は日本人、かなり共通しています。
海外のように自然を「征服」してやるという発想はなかなか出てきません。
ここがポイントです。
■サードウェーブって何?
サードウェーブ。
アメリカでは、いろいろなことにママ使われる表現らしいのですが、私が覚えているのは、1980年に出版されたアルビン・トフラーの本のタイトルです。著書は未来学(!、凄い、日本の大学ではない学問!)者で、農業革命を第一の波、産業革命を第二の波、情報革命を第三の波としていました。
ま、その通りの未来が来ているわけですが、それに準じたコーヒーの呼び方です。
第一の波はコーヒーが全世界に拡がって飲まれるようになったこと。
産業革命で紅茶が一気にイギリスを席巻。紅茶の重税に対する権利を要求するアメリカは独立するコーヒーの一大消費地になるわけです。ポイントはコーヒーが紅茶を凌駕し、世界で冠たることになることです。
次、セカンドウェーブは、1970年から顕著になったエスプレッソの流行です。
深入り焙煎が特長ですが、もう一つのポイントはエスプレッソは、豆がある程度悪くても美味しく飲めるのが特長です。
そうブレンド技術、抽出技術が重要です。
ちなみにスターバックスの躍進は、まさにセカンドウェーブそのもの。世界的なイタ飯の流行と共に世界を席巻しました。
サードウェーブは、端的に言えばスペシャリティー・コーヒーの飲み方を指します。
豆はブレンドせず、どちらかというと浅煎り。フレンチ・プレスも使われますが、ハリオが円錐形ドリッパー「V60」を開発して以降、ハンドドリップも高い評価ですし、サイフォンも見直されています。
しかし今見直しが強いのは、農園と焙煎でしょうか。
「えっ」と思われた人も多いと思います。
サードウェーブと称していますが、サードウェーブというのは日本の喫茶文化が大きな要素となっています。
■日本の喫茶の特長
日本の喫茶店は趣味性が高く、店主がセレクトした焙煎豆からお客は好きなものを選ぶ。
それを店主は丁寧にハンドドリップ他で淹れるというスタイルです。
ストレートはブレンドにも増して、豆が命。それを活かすには「浅煎り〜中煎り」で、豆と会話しながら淹れるのが重要。
ドリップは蒸らし時に、蒸らした時に出てくる泡の状態で、微調整が可能ですから。
要するに豆を自然を「活かそう」とする方法を、日本はキープし続けたということです。
当然、大きなエリアではなく、ワインが畑の名前で語られるように、農園毎に語られる様になります。
その上、日本は、水が美味い。
世界から見た場合、反則技でしょうね。何故、極東の島国がこんなに恵まれているのかと、思っている人も多いと思います。
そして落ち着いた空間。
活気溢れる空間が「カフェ」なら、「喫茶店」はかなり異なります。
多分、わび茶の「お持てなし」「一期一会」「自然への畏敬」があるからだと思います。
そう「腕を振るった お・も・て・な・し」の飲み方なのです。
■映画「おいしいコーヒーの真実」
さて、サードウェーブの特長である農園を語る上で、外してはならない映画をご紹介しましょう。
「おいしいコーヒーの真実」です。
2006年公開。
元々は英国TV会社のドキュメンタリー番組を英米合作でリメイクしたドキュメンタリー映画です。
原題は「Black Gold」。
20億杯/日消費されるコーヒーの状況を、エチオピアでのコーヒー生産農家の地位向上(もっと言えばコーヒー生産で食べて行ける)のために活動するタデッセ・メスケラに焦点を当て描いたものです。
ドキュメンタリー映画としても出色の出来で、世界経済・貿易の不均衡と搾取の実態の汚さも生々しいが、コーヒー農家の人が金を手にした時、全員が「学校を作れ」と答えた時には、本当に落涙しました。
そう、コーヒーという嗜好品は、農家には富をもたらしていなかったのです。
サードウェーブが日本の喫茶文化だけで、できあがっていません。
サードウェーブのポイントは、美味しいコーヒーを永続的に飲めるようにしようとしている活動でもあることです。
多くのコーヒー豆は、2大市場であるロンドン、ニューヨークに出されます。
ここでは植民地との貿易さながら、買い叩き中間業者が潤います。
サードウェーブの場合は、この様な巨大市場に出しません。
値を保証するのです。見返りは「品質」です。
例えば、「ネスレ」「スターバックス」などは、そう宣言しています。
搾取が多い流通を通さず、オリジナルのルートを開拓する。自由経済なら当たり前です。
豆の品質も上がります。何よりも「子供が学校へ行けます」。
これが今いわれる、サードウェーブです。
あのブレンド技術が、外れているのです。
日本人に取り、非常に馴染みやすい動きです。
■コーヒー家電も影響を受けつつある
この流れがコーヒー家電にも影響を及ぼしています。
「ネスレ」の「ネスプレッソ」「ドルチェ グスト」なども含まれるのですが、今回は新しいものを紹介します。
●2種類の豆が使えるコーヒーメーカー IFA フィリップスの記事で紹介した2種類の豆が使えるコーヒーメーカーです。
豆を変えることにより、楽しみが拡がりますので、サードウェーブの主旨に沿った家電と言えます。
⇒IFA PHILIPSの記事はこちら
●ドリップ・サポート・マシン コーヒーメーカーと言っても良いのですが、実はハンドドリップで一番難しいお湯を注ぎ込むことをしてくれるマシンと言った方がより正確だと思います。
その他は手作業と同じ。自分の意志で決めて行きます。このため豆に関しての勉強が必要となります。
詳しいことは、ハリオのホームページでご確認ください。
http://www.hario.com
●家庭用焙煎機 豆をいじるという意味では、欲しかった焙煎機も電動制御でコントロールし易いものが、手頃な値段で登場します。
豆の香りは焙煎で決まります。
9月に、日本スペシャリティーコーヒー協会が行った展示会で、焙煎のコンテストがありましたが、その時の豊かな香り、柑橘を含め7〜8種類の香りが一斉に立ち上るコーヒーは凄いものでした。
現在、焙煎は、マンガ「しろくまカフェ」でも取り上げられ、最近は注目度アップ。
これは電気ですので、コントロールし易いです。
注目カテゴリーの登場です。
Behmor 1600の詳しい情報は、http://www.roast72.com GeneCafeの詳しい情報は、http://www.tonya.co.jp でご覧下さい。
●真空保存容器 最後は、大事な豆をお手軽に長期保存できる容器と真空ポンプです。
ポイントは、真空化が電動でできるのです。
楽です。
商品名は「エアレス」です。
詳しいことは、ラッキーコーヒーマシンのホームページでご確認ください。
http://www.lucky-coffee-machine.co.jp/