11月6日、パナソニックからスマートコスモ(新・分電盤(配電盤とも呼ばれます))が発表されました。発表会の状況と共に、これがもたらす影響をレポートしたいと思います。
■HEMSのキーパーツ、分電盤
HEMS、ホーム・エネルギー・マネージメント・システム、最近名前を聞くけどよく分からない人が多いと思います。
そうですよね。
私も、この夏、安く設置できるという広告を見て、詳しく聞いてみると、まだまだと言うことが分かり付けるのを止めました。
(設置料ただなので、取りあえずと思ったのですが、5年間は付け続け、データはその会社にも渡すことが条件だったのです。このどんどん技術が進化して行く時代、古い設備で5年契約はありませんよね。)
でも取り付ける気になって話をすると、すぐ分かったのは分電盤周りに手を入れる必要があることでした。
家の電気は全て分電盤を通し、各コンセント、プラグ類に送られるわけです。
家の電気管理は分電盤が最も有利なのです。
電気の入力も今まで電力会社だけだったのが、太陽光パネル、エコキュートなどと複数になっただけです。
HEMSは管理システム。分電盤は重要なキーパーツなのです。
■分電盤の技術
古い分電盤は、過電流が流れた時(例えばショートさせた時)など、それを他に伝えないようにするためヒューズが付いていたそうです。
幼い頃、母親が「ヒューズ」が切れたと言って父と直していた(母親は懐中電灯で手元を明るくする役)のを見た記憶があるだけです。
1970年代になると、安全ブレーカーの時代です。家は築50年持つとすると、現在も使われている技術ですね。
過電流が流れた時、ブレーカーが跳ね上がる仕組みです。
とにかく、スイッチ1つでON/OFFです。
お世話になるのは、タコ足とか、電子レンジ&エアコン&ドライヤーなど、一時的に電気を大量に使う時ですね。
これ以降の技術は、小型化&省施工化です。
1970年と今とでは圧倒的に家電数が違います。
エアコン、電子レンジ、PC等々、24時間運転なども含め、必要コンセント数が増えました。それの対応ですね。
玄関、台所、脱衣所など、家の目立たない所に設置されている分電盤ですが、実は「安心」して電気が使える必須の技術が詰まっているのです。
■新型配電盤スマートコスモの特長とパナソニックの宣言
パナソニックは1年ごと、HEMS系の発表を行っています。
2011年は、太陽光パネル、エコキュート、蓄電池などの「創畜連携システム」。2012年は、HEMSで採用された通信手段、WiFiシステムが構築できる「AiSEG(アイセグ)」。そして今回は、新・分電盤「スマートコスモ」ということで、今回で基本システムは全て揃った形になります。
パナソニックが、新・分電盤に与えた機能は4つです。
●スマートに施工
配電盤の回路は電気を流すのが役目。ブレーカーは過電流への防御が役目。どちらも電力を測る機能は付いていません。
このためHEMS化に当たっては、電力センサ(CT(Current Transformer)センサとも呼ばれます。計器用変流器のことです。)を各回路に付けなければなりません。
この配線は非常に面倒。見た目 配線も複雑です。
「美しくない基板は使ってはダメ」と豪語した某PC会社だと、即NGレベル。
スマートコスモでは、全回路に電力センサが内蔵されています。
施工時間で約77%短くなるそうです。
逆に言えば、今までの配電盤をHEMS化させるためには、この時間分の工事費が必要な分けです。
●スマートなデザイン
今、HEMSのため各家電も過渡期です。HEMS対応のため、家電近くの壁に通信ユニットを付けてくださいというのが大多数です。
分電盤もそうです。前項の電力センサ情報から電力を計測する計測ユニットとか、太陽光パネルのブレーカーを付けてくださいとなります。
次項で詳しく述べますが、スマートコスモはそれらを全て自分のボックス内に入れることができます。
外からはきれいな、薄い、すべすべした白い箱が壁に掛かっているだけです。
●スマートにつなぐ
今までの家電では、ほとんどなかった考え方です。
それは、小さく薄く軽い方が良いというのが家電の考え方だからです。
身長、手のひらなど使い勝手で必要な場合を除き、ギリギリで家電は設計されますし、ユーザーもそれを望んできました。
HEMSではどうでしょうか?
当然今は無くても、後で付けるものも多いです。
○スマートメーター用アダプタ
○AiSEG(WiFi)用アダプタ
○太陽光発電用ブレーカー
○創畜システム、電気自動車への通信アダプタ
スマートコスモは、これらの4つのための増設場所、「レディ」を搭載しています。
一番似ているのは、タワー型PCの拡張ベイかも知れません。
PCの急激な発達は、この大きさと入出力形式が決まったベイによる所があります。
拡張できるシステムに、ちゃんと拡張部位を持たせるのは非常に重要です。
それと、パナソニックはこの説明時に「ECHONET Lite」に触れました。
「ECHONET Liteに準拠しているものにはつなげられるようにする」と、宣言したのです。
この業界で宣言は非常に珍しいです。
デジタル時代、商品での差別化、特に品質差が小さくなり、品質の差別化ができなくなってから、メーカーは全てを自社の製品にしてくれると、こんなに便利ですよというアピールを繰り返してきました。
今回は違うようです。
HEMSは、まだ未完成のシステムですし、全てのメーカーがシステムを作れる分けではありません。
例えば、ダイキンの様に、「メーカーとしてHEMSシステムを作ることはできないが、HEMSの通信規格として国が推奨している「ECHONET Lite」に準拠している」と明言しているメーカーもあります。
いろいろなメーカーが、参入できるようになれば、コストダウン、サービスも含め、一気にリーズナブルなシステムになる可能性が生まれます。
パナソニックがHEMSの最終着地点をどこに置こうと考えているのかは分かりませんが、質問時に、システム価格は将来的に10万円を切ることを考えていることは分かりました。
大きなポイントです。
●スマートなサービス
HEMSの一番の魅力はサービスです。パナソニックは4つのカテゴリーに分け、次のようなサービス例を出してきました。
かしこく節電 | 2016年に行われる電力小売り自由化実施時の料金メニューにも対応し、もっとも効率の良い使い方をアドバイス。 |
料金の高い時間帯には、ピークカットを行う。 | |
便利が進化 | 節電案(例えば省エネ家電への買い換え)を出す。 |
メンテナンスアドバイス。 | |
安心がひろがる | 1人暮らしの高齢者の安否情報。 |
子供の帰宅情報。 | |
快適にくらす | 温湿度や空気室の情報を判断しアドバイス。 |
どちらかというと受け身よりのアイディアである、十分に活用されていないように感じます。
ここはアイディア次第ですし、個別に出来るならもっと面白くもできます。
今回で、取りあえず基本的なシステムは揃ったという感じです。
ECHONET Liteでつながると言うことは、この分野には誰でも入れることを意味します。
ここでキラーサービスが出れば、普及もすると思います。
しかしそれは「管理サービス」ではないと思います。
受け身ではなく、攻めのサービスを期待したいところです。
発売は、来年春からです。価格未定ですが、HEMS全体でいろいろなバリエーションがあるが、平均:10〜15万円位ではということでした。
■お願い
より詳しい製品情報は、パナソニックのホームページをご覧下さい。
http://panasonic.jp