先日、山本電気の精米機をレポートしましたが、それと同時に使ったパナソニックの炊飯器をレポートします。
■炊飯器が行うこと
米を炊く前に行うことは、「洗米(研ぐ)」「浸漬」「水切り」の3工程。
炊いた後、行うことは、「むらし」「ほぐし」の2工程 です。
「洗米」は、主にはヌカを落とすためです。
「浸漬」は、お米への水の浸透力を高め、熱伝導を均一化するためです。
「水切り」は、「洗米」「浸漬」中に出てきた微細な不純物を取り去るために行います。
いずれの場合も、米の種類、米の状態により変える必要があります。
「むらし」は、炊きムラを無くし、米の芯まで水分を入れる工程です。米を美味くするためには絶対に必要です。飽和温度により水が芯まで行き渡ります。
「ほぐし」は、ごはん粒に冷気を当てて、表面の水蒸気を飛ばす、表面のデンプンを固定させ、歯ごたえを作ります。
全部ではありませんが 現代の炊飯器は、「浸漬」「むらし」の工程を持ちます。
(残念ながら「水切り」は飛ばし)
「浸漬」を自動でやってくれるのは、楽です。
■嗜好品用の条件
嗜好品用なので、機能、使い勝手、デザインともに良いものがいいです。
しかし、食味を第一にします。
嗜好品用ですので、ここは、「自分の好きな銘柄米」で美味しいことです。
ただ、一家で2台の炊飯器は、余りにも現実離れした条件になりますので、普段使いでも余り不便でないことを条件とします。
■美味しく炊くには
米炊きの口伝は、「始めチョロチョロ、中パッパ、ジュウジュウ吹いたら火を引いて、赤子泣いても蓋とるな」です。
まずは、緩やかな温度上昇。ここで水が米にどんどん馴染んで行きます。
中パッパは急激な温度上昇で沸騰させることを意味します。釜中では対流により米がまわり、おどる状態。水の抵抗を少なくする方向に米は並びます。水の動きは下から上、上から下。お米が立つ瞬間です。重さは胚芽がある方が重いので、凹みがある方が下となります。おねばもここで出ます。
水が少なくなりますので、火を止めます。ここで昔は吹きこぼれていたのですが、蓋はとりません。デンプンが含まれた水が熱により固化し、釜と蓋をくっつけます。
そして、「蒸らし」。ここでの待ちが重要です。
高温で、30分位蒸らすのです。芯まで完全に熱が通ると共に、水分も入りふっくらします。
で、「ほぐし」て、美味しく頂く訳です。
これができるのが良い炊飯器と言うわけです。
時々、釜さえよければと言う人もいますが、釜はあくまでも炊きを支えるツールだと思います。
■パナソニックのここに注目
家電の華の1つである炊飯器に、メーカーは、得意技ともいうべき技術を持っています。
パナソニックの強みは、IH。今は無きサンヨーの強みは、加圧スチームでした。
皆様もご承知の通り、サンヨーの炊飯機のメンバーはパナソニックに移籍しました。実は技術は簡単に伝えられるものではありません。技術の長所、短所を知った上で、技術が機能する様、使いこなすことが必要です。人もそうですよね。自分を理解してくれる人と一緒だとポテンシャルを出せるわけです。技術は人と同じなので、単純に2つの技術を一緒にしても良いものができないわけです。
今回のパナソニックの特長は、Wおどり炊き。
パナソニックと、サンヨーの技術が高次元で「フュージョン」した機器です。
それぞれの技術、「炊き」「むらし」が活かされた一品です。
まあT「銘柄炊き分けコンシェルジュ」機能にも注目です。
主要15銘柄、16種に対して、最も最適なプログラムで炊くことができるのです。
今回は5合炊きで、標準モード、銘柄炊き分けコンシェルジュ(通常、魚沼産の2種類)モードで比較。
■その他の条件
(1) | 米:コシヒカリ 生産地:新潟県越後滝谷町 特別栽培米:減農薬・減化学肥料栽培 造り人:今井農場 今井昭 購入:カワキタ商店@成城(家に近いところで、玄米売りが基本であるため) 玄米、5kg(2012年生産分) |
(2) | 水:サントリー 南アルプスの天然水(洗米水も含む) |
(3) | 精米機:山本電気[匠味米]RC23 玄米→上白米、5合 |
■標準モード
扱いは楽です。
洗米(研ぎ)は、いろいろ考えましたが、内釜に5合入れ丁寧に力を入れずに研ぎました。
パナソニックの取説にも「内釜で研いでも問題ない」との記述はあるのですが、力を入れて研ぐとテフロン加工をだめすることがあります。炊飯器で最も発生しやすいトラブルだそうです。それ位米は硬いのです。
逆もまた真なりで、精米は旨味(サピオ)層が剥き出しになっている状態ですので、旨味も逃げます。
後は、スイッチONするだけ。
半時間もすると美味しいお米が炊きあがります。
「むらし」まで終わった状態ですので、これを「ほぐし」ます。
ほぐしの目的は、ごはんの粒を冷やし表面の水蒸気を飛ばし、表面のデンプンを固定させ歯ごたえを作ることです。バラ寿司関西の言い方。関東ではチラシ寿司。家庭で色々な具を混ぜた寿司のことをいう。お祝いの定番メニューでした。を作る時、平たい桶に釜からご飯を開け混ぜる時、うちわで仰ぎますよね。米がしまり、混ぜても美味しくなりますよね。それと同じです。
コツは2つ。
95℃ 熱いうちにほぐすことと、ほじくり返す感覚ではなく、切るような感覚でほぐすことです。
で、コシヒカリを味わいます。ポイントはコシヒカリ特長が出ているのかと、美味しいかです。
標準の仕上がりは、香りはやや少なめで、お米がしっかり立った出来上がり。
白い光沢は標準。モチモチ感もほどよく、甘みがじんわり出てくるというコシヒカリの特長を良く引き出していました。
美味しく仕上がっていました。
■「銘柄炊き分けコンシェルジュ」による炊き方
これを使うためには、アンドロイド型のスマートフォンが必要です。
パナソニックのホームページによりますと、「Android OSバージョン2.3.3以上で、おサイフケータイ Felicaソニーが開発した非接触型ICカードの技術方式。SUICA、パスモ、お財布携帯で使われている技術。または、NFC近距離無線通信(Near field communication)の略。ISO(国際規格)化されたもの以外に、Felica、Bluetoothを含ませるのが一般的。に対応する機種(一部機種を除く)」だそうです。
女性の所有率が高いiPhoneには対応しておりません。ちょっと残念ですね。
インストールするソフトは、「パナソニックスマートアプリ」。
スマホのソフトを扱うサイト(Google Playなど)から無料で手に入れることができます。
インストールし、機器登録が済むと、日々は次の手順となります。
黄色の丸の部分を操作し、先に進みます。
この「銘柄炊き分けコンシェルジュ」にアンドロイドが使われているので、プログラムの追加、変更に自由が利きます。
当初は、10銘柄11種からスタートしました。コシヒカリ、魚沼産コシヒカリ、ヒノヒカリ、ひとめぼれ、あきたこまち、キヌヒカリ、ななつぼし、はえぬき、きらら397、まっしぐら、つがるロマンです。
銘柄は、2011年度 作付けトップ10で決めたそうです。
また今秋、ゆめぴりか、つや姫、森のくまさん、さがぴより、にこまる が追加されています。店頭に並ぶかなりのお米に対応しています。
で、コシヒカリとコシヒカリ(魚沼産)の差ですが、魚沼産の方が甘いと定義されていまました。
私の用意したお米は、新潟県越後滝谷町の今井農場の米です。
結果、コシヒカリ(魚沼産)モード、コシヒカリ・モード、標準モードの順に美味しかったです。
差が出たのは、甘みとモチモチ感です。特にコシヒカリ(魚沼)モードで炊いたものは、水加減がとてもよく、歯触り、ほのかな甘み、もっちゃりした感じが強くなっていました。
■最後に
パナソニックの炊飯器は、使い易い上、米がほんとうに美味しく炊けることが分かりました。
ただ、これを買ったから、必ず嗜好品と言っても良いような米が食べられるかというとそうではありません。
米に気を遣い、水に気を遣い、研ぎに、ほぐしに気を遣う必要があります。
ちょっと手間が掛かりますが、口福な一膳がそこにはあります。
どうぞお楽しみ下さい。
■主な仕様
サイズ 26.6(W)×33.9(D)×23.3(H)cm
重さ 約7.3kg
容量 1.0L(0.5〜5.5合)
炊飯時間 銀シャリコース(48分)、高速(21〜33分) 他6種
炊き分け 銀シャリ5種類炊き分け(通常、かため、もちもち等)
色 2色(ルージュ×ブラック、ホワイト)
希望小売価格 オープン
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