レポート

【太鼓判】1.1kgは愉悦の重さ。使いやすさに太鼓判。
日立 スティック型掃除機「ラクかるスティック PV-BL3J」。
後編「1.1kg化はどうしてなし遂げられたか。その成果は。」


さて、後編では、日立 スティック型掃除機「ラクかるスティック PV-BL3J」が、1.1kgを達成するために、どんなことをしたのか検証し、軽量化により得たもの、失ったものをレポートします。
 

●日立 スティック型掃除機
「ラクかるスティック PV-BL3J」


 
■スティック型掃除機の最重量パーツ、バッテリーをどうするか?
スティック型掃除機をバラせるためだけバラし、重さを計るとすぐわかるのですが、一番重いパーツは「バッテリー」です。バッテリーの充電量は「セル」数によります。セルというのは電気を溜めるユニットのことです。

スマートホン、電気自転車、電気自動車、そしてスティック型掃除機などなど、バッテリーがもたらした恩恵は、計り知れません。しかも、まだまだ開発の余地があります。とはいえ、LEDも白色照明に不可欠の青色LEDが、なかなか作れなかったように、高容量で、軽く、そして安全な充電池の秘密はまだ途中です。

ギリシャ神話によると、人間に火をもたらした巨人族 プロメテウスは、ゼウス神に捉えられ、コーカサスの岩山に鎖で繋がれ大鷲に肝臓を啄まれるという刑を与えられたそうです。夜の間にプロメテウスの肝臓は元どおりに回復するので、苦痛は毎日というとんでもない刑に処されます。と言うのは、人間が闇を恐れなくなったからです。(別の言い方をすると、神に近づいたから)

これ以上、人間が我がもの顔でのさばらないように、新技術開発の邪魔をしているのでしょうかね。

 

●スティック型掃除機の中核をなす、ハンディ掃除機。
「本体」と呼ばれることもある。


 
それはさておき、バッテリーはとにかく重い。モデルにもよりますが、ハンディ掃除機の場合、1/3はバッテリーの重さと言って間違いありません。その位重い。その上、使われる充電池は、横並びに「リチウムイオン電池」。このためどのメーカーも、軽くする決定的な方法を持ちません。

日立が取ったのは「目標割れ」。「標準モードで60分」と言うユーザーニーズを未達成としたのです。着地地点は、標準モード:30分、強モード:8分。これはスティック型掃除機が商品価値を持った時、スティック型掃除機の原点とも言えるスペックです。ちなみに日立は、ヘッドに電動ローラーを使っています。標準モード:30分2022年6月9日修正。自動モード:20分→標準モード:30分、強モード:8分は、電動ローラーONの状態でです。これをOFFにすると標準モード:45分、強モード:8分。目標は達していなくとも、かなり頑張っていること、それでも電動ローラーは必要と日立は考えていること。強モードの電力消費は、凄まじいことが分かります。

 
色々な考え方がありますが、今回バッテリー以外の部分をかっちり設計しておけば、バッテリーは毎年性能が上がりますので、あとはその成果を積み、毎年のように動作時間を延ばすことができます。そう言う意味で、この野心満々な超軽量モデルは、必要最低限なスペック、原点に戻り設計されていルトも言えます。

 
もう一つ面白いのは、バッテリーの取り付け方です。日立はメーカー方針として、スティック型掃除機のバッテリーの交換システムを持ちます。利点は、バッテリーを交換することにより、動作時間を延長できることです。例えば一つのバッテリーで30分なら、フル充電バッテリーを2つ用意すると60分使えるわけです。

 

●バッテリーを止めてああるビス。
その左横(写真)を通る窪みは、バッテリーは
元来取り外し可能であったことを示唆する。


ところが、PV-BL3Jのバッテリーはネジ止め。交換できないようになっています。パーツの線から考えると、交換システムを使えなくして、ネジ止めにしてあります。

正確な理由はわかりませんが、幾つか考えられます。が、一番考えられるのは、バッテリーサイズが小さくなったので、日立が今まで設計していたでは使えなくなったことです。また、交換システムは可動システムですので、普通の部分より壊れやすい。特に、ギリギリまで軽くするため、樹脂厚を薄く変更した場合は、壊れやすくなります。それを防ぐためというのも考えられます。

交換システムが健在なら、標準で30分しか持たないバッテリーでも、交換して、60分と使えますからね。そして、交換システムをなくす代わりに、ネジ止め。とても強い意志を感じます。

 
■掃除機モーター
掃除機のモーターは、できる限り効率よく高回転型のモーターが求められます。。EV(電気自動車)用のモーターで5万rpm(revolutions per minute。回転毎分。)で高回転、すごいすごいと言われていますが、スティック型掃除機のモーターはそんな回転数ではありません。有名なところでは、ダイソンの国際標準モデルと言える「Dyson V12 Detect Slim」には、最高12.5万rpmのDyson Hyperdymiumモーターを採用しています。1秒間に2083回転。1回転に要する時間は、0.00048秒。
では、ダイソンV12が最も良いのかというと、一概には言えません。重さが2.2kgもあるのです。駆動系で重いのは1にバッテリー、2にモーター。パワフルな高回転型のモーターを使うとどうしても、消費電力が多くなるので、バッテリーのセル数アップ=重くなります。つまり、軽量モデル場合、駆動系により吸引力アップはほぼ望めません。

 
■吸うべき空気を少なくする
では、軽さと吸引力を両立させるためには、どうするのか?

それは吸わなければならない空気をなるべく少なくするのです。

まず、ヘッド。できる限り小さく、吸い込むべき枠を小さくします。ヘッドは床を長方形に切り取り、その長方形内のホコリを吸い取ります。そして、その長方形が移動していく形で全面を掃除を行います。

●ヘッド。
ちなみに、軽量モデルにも関わらずパワーブラシを採用している。


●緑の輪郭に沿ってフェルトが貼られ、境界を作っている。


●別の方向から見たフェルト。非常に重要なパーツ。


 
ヘッドは、基本、前後に移動するよう設計されています。実際は移動しながら、ホコリを吸い込むため、ヘッド前方はやや開け気味に設計します。そこから、前方にあるゴミ、ホコリを空気と共に吸い込むのです。しかし吸い込んでいる大半は空気です。このため、前方の隙間を狭くしてやれば、空気の吸い込まれ速度が上がるため、パワーがない掃除機でも上手く吸い込むことができるのです。

●ヘッドフロントの黒い部分は、薄手の硬質ゴム。
確保された隙間からヘッドローラーが見える。
上部にはLEDを装着、ホコリの存在を視認し易い。


 
加えて、軽量化モデルは、吸えるゴミサイズを小さく設計してあります。空気流量を減らしているからですが、当然、使用する樹脂量が減りますので、軽くできるからです。スティック型掃除機は、50mmまで吸引できるように設計しますが、軽量モデルは30mmの場合が多いです。

こぼれ話的ですが、昔「カール」という超太めのスナック菓子がありました。これ径:30mmだと詰まるのですね。詰まらせて後悔したことがあります。まぁ、令和に「カール」は販売されていませんが・・・。

しかし、径:30mmだと、つなぎめのところ、方向が変わるため、かっぱえびせんでも詰まることがあります。まぁ、落ちたスナック菓子は手で処分することが多いと思いますが・・・。

とにかく、色々な部分をギリギリまで細くすることで軽量化をはかります。

とにかく、音が小さい=パワーがないと悲観することはありません。良心的なメーカーの技術者は、軽量化の影響が、吸引力に出ないよう、考え抜きます。

 
■数字で確認

●とにかくヘッドが小さい。実用面積は180×35mm。
これだけ小さいと、どこにでも入れることができる。


●ヘッド前の隙間は、2〜3mm。


 

●ヘッド内部。(ヘッドローラーを外したところ)
吸引口に向かい、どんどん狭くなる様設計されている。


 
 
 
■1.1kgのメリット 〜軽い掃除機は七難隠す〜
では、実際にはどんな効果があるのでしょうか?

まず買って帰るのがすごく楽。小さく軽いのだから当たり前です。

しかし開けて、一番驚いたのは、スタンド。通常は最も重いバッテリーを支えるべく長い支柱があるはずなのですが、PV-BL3J にそれはありません。全体が軽く丈夫なので問題ないのです。ちょっと見られない光景です。

●PV-BL3Jのスタンド。支柱がない。


 

サイドビュー。安彦立ち(ガンダムの原画
担当、安彦良和氏が描く人物の立ち
かた)のとうにスクッと感がある。


そして使ってみると、これはすごいと思いました。ヘッドが小さいせいもありますが、自在に動かせます。掃除機を使っている感がほとんどありません。「西遊記」(「ドラゴンボール」でも構いません)の主人公「孫悟空」の得物は「如意棒」のように扱えます。

ちなみに、正式には「如意金箍棒」と呼ばれる如意棒の材質は「神珍鉄」。重さ一万三千五百斤(約8トン)の棒状の重りです。長さ、太さ、などを自在に変えられるので「如意(意のまま)」と命名されたようです。

重いのですが、さすが石猿。この如意棒を自在に扱い、大暴れ。使わないときは小さくして耳に嵌め込みます。耳が余裕で8トンの重さに耐えるのですから、自在に振り回します。

1.1kgの掃除機も似た感じ。前後左右。自在に振り回せます。ただし、吸引力はそれなりですから、ゆっくり目にかける必要がありますが、軽いので、どうってことありません。

 
よく、色白は七難隠すと言われましたが、まさにそんな感じ。自由に操れるということが、「掃除機でもこんなに楽なんて」という感じです。

 
■欠点があっても納得で使える
欠点は、なくはないです。例えば、自動で20分しか、掃除できないのは、もう少し欲しいと思う人もいるでしょうし、吸引力もほどほどというと、吸引力は強くなくてはね、と言う人もいるでしょう。

しかし、この軽さは、掃除を負担としません。その位軽いです。このため、動作時間、吸引力という重要な要素さえも、まぁいいか、許しちゃおうという感じになります。

●ポール(延長管)。ランダムな横の凹凸がダメです。
桜の樹皮は好きなので、合理的な理由は付きませんが・・・


ただ、個人的に受け付けにくいところもあります。それはポール(延長管)のデザイン。強度確保のため凹凸を付けてあるのですが、個人的には、そう少し流麗なデザインにして欲しかったというのが本音です。

 
■「理想」を追求した掃除機
日立 スティック型掃除機「ラクかるスティック PV-BL3J」はある意味、掃除機の理想である「軽さ」をとことん追求したモデル。しかもそれは、手に負担の少ない「自立型」を凌駕する感じです。

そしてそれは、とても魅力的。動作時間が少ない、吸引力が少々弱いという、通常なら欠点とすべきものを欠点とできないレベルです。当然、当モデルは、今後、開発された技術を導入することにより、欠点を無くしていきます。が、やはり期待したいのは、今の重さを維持することです。

その位、ぶっ飛んだ軽さです。当然、太鼓判モデルです。

 
●前編はこちらから 【太鼓判】1.1kgは愉悦の重さ。使いやすさに太鼓判。
日立 スティック型掃除機「ラクかるスティック PV-BL3J」。
前編「何をもって軽量と言うのか?」。


●商品のより詳しい情報は、以下のURLでご確認ください。 https://kadenfan.hitachi.co.jp/clean/lineup/pv-bl3j/
 
 

*当モデルは、レポートしたモデルと異なります。

 

 
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2022年6月6日

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