外人さんを「焼肉屋」に連れて行くと、彼らは大興奮します。彼らから言わせると、牛肉のカテゴリーに含まれるが、全く別な食材を食べているようなモノだそうです。それは日本人だってそう思います。「和牛最高!」って、しかし、その中で今一番スゴイと言われているのが「田村牛」です。今回は、美味しい牛肉をランチで、それなりの値段で振る舞ってくれるところが有ります。そんな「焼肉 たまき家」(虎ノ門)をレポートします。
■「A5」がスゴイと思っている人は多いですが・・・
A5の肉というランクの付け方が存在します。色々なところで使われてきましたので、A5という言葉は皆さんもご存知だと思います。最上級牛肉の代名詞と思われている人も多いのではと思います。
しかし、それは違います。A5の「A」というは歩留等級を、「5」は肉質等級を表します。
歩留は生産の仕事をしている人なら、畜産、工業に関わらず、使われる言葉です。材料を100とすると、そのうちのどれ位が商品として世に出せるのかという意味です。牛肉の場合は、一頭の牛から、頭、皮、足、内臓など、牛肉でない部分を取り除きた、通常枝肉(えだにく)と呼ばれる牛肉全部から、商品として使える部分がどれくらい取れるのかを示したモノです。実際はある部位を測定し、計算で出します。歩留等級は、Bが標準、Aは実入が多い、Cは実入が少ないとなります。
次に肉質等級です。肉質等級は、「牛肉の光沢」「牛肉の締まりときめ」「脂肪の色沢と質」「脂肪交雑」(肉への脂肪の入り具合)で判定されます。あれっと思った人ももいるかもしれませんが、全部「見た目で判断」します。ちょっと焼いてみるなど「味の判断」はありません。そして、その得点がいかに良くても、最も悪い項目の得点が、その肉の評価となります。
目で食べると揶揄される日本人らしい評価とも言えますが、実はこれ、肉屋の事情とも言えます。肉質等級の良い肉は、見た瞬間に、美味しそうに思います。要するに高値で売れるわけです。そして歩留まりが高いと、そのレベルの肉をたっぷり売ることができるわけです。
このように、A5と言う牛肉は、美味しい牛肉でなく、見た目、美味しそうに見える牛肉だと言うことです。しかも目利きでないと判定できないものではないと言うことです。まぁ、多くの場合、美味しいのですが、それが最高かと聞かれるとちょっと違う場合もあるわけです。
このため、味を追求する焼肉屋は、今、A5判定に重きをおかないそうです。では、どうやって判断するのか? 当然、目利きの仲買人の「目」、そして自分の「目」です。そして、そんなプロが口を揃えて言うのが、「『田村牛』に勝るものなし。」
「田村牛」? どんな牛なのでしょうか?
■なぜ、育成農家の名前が冠されているのか?
皆さんは、いい肉を求める時、色々な言葉を使っていますね。黒毛和牛は「牛種」です。但馬牛、松坂牛、神戸牛、米沢牛などは、「産地」です。そして肉の「等級」を表すA5。そう考えると「田村牛」は田村というマイナーな地名の牛肉と思えます。
ちょっと違うのです。「田村」は、育成農家(農場)の名前なのです。田村さんが育てた牛が、今、すごいと言われているのです。
■妥協のない肥育
田村牛は、全頭黒毛和種。その中でも貴重な純但馬牛及び、但馬系統牛の処女雌のみを理想肥育しています。一言で但馬牛と言いますが、但馬牛自体、素晴らしいブランドです。当然、「但馬牛」名乗ってもいい牛も限られます。具体的には、以下の表です。
血統 | 兵庫県の県有種牡牛の精子用いて歴代に亘り交配した牛(雌牛の規定なし) |
地理的表示 | 出生地が兵庫県内 |
登録・肥育 | 繁殖から出荷まで「神戸肉流通推進協議会」の登録会員が肥育 |
月齢 | 生後28か月以上から60か月以下 |
流通 | 兵庫県内の食肉センターに出荷 |
まず、家畜ですから競走馬と同じ、血統から始まります。競走馬は当たり外れが大きいと言いますが、それでも血統はすこぶる大事。大レースで振るわなかったなどでボロクソに言われる時もありますが、全体を通してみると最も確実。
加えて、但馬牛は平安時代から、牛の産地として名高かったと言います。貴族も「この牛車が速いのは、但馬若牛だから」とか行っていたかも知れません。競べ馬のような競技こそありませんが、毎日使うクルマのようなものですからね。それなりにお金もかけたと思います。ちなみに車で牛のエンブレムを採用しているの、かのスーパーカーメーカー ランボールギーニ社。牛車は平安時代のスーパーカーだったのかもしれません。
閑話休題
とにかく古代から、丹波牛は注目されていたわけです。
田村牛は、その純血種、もしくはそれに準ずる牛を買うわけです。
そして処女雌牛とありますが、これは人間と同じ。筋肉と脂肪の問題です。このため、牡を食育として飼育する場合は、タマを抜きます。(痛そう・・・)ホルモンバランスを雌に近づけ、肉を柔らかくするためです。
そして肥育。食べ物は、人間が食べられるレベルのものだそうです。変な混ぜ物や化学飼料は食べさせないそうです。運動も適度。そして一頭一頭入念に管理します。そうして適正時期に出荷肉にするそうです。年間、約1000頭の出荷だそうです。
芝浦(JRの駅では品川)にある東京都食肉市場では、8000頭/日だとか。田村牛を全部東京に持ってきったとしても、単純計算でも、0.034%の遭遇確率しかありません。ちょっとやそっとではお目にかかれるものではありません。
しかし蛇の道は蛇、お金持ちはよく知っていて、トランプ大統領(当時)が来日した時、安倍総理(当時)が振る舞った牛肉が田村牛だったそうです。すごーーいとも言えますが、アメリカの関心を買えるのなら安いとも言えます。
ちなみに飼育員によると、牛を育てるのではなく「牛を創る」のだそうです。サシの入り方など、物差しで測ったようなところもあり、並の飼育技術でないこともわかります。ここまでくると、和牛の中の和牛と言えるのではないでしょうか。
■実食:飲める牛肉。
では、実食です。「ヒレ」と「サーロイン」です。
まずヒレ。
厚みにびっくり!
そして、ほぼ等間隔に入っているサシにまたびっくり!!
一瞬、浅草橋の食品サンプルを思い出しました。本当に工芸品のようです。しかし、これ味に関係あるのでしょうか?
あるのです。大ありです。肉に火を通していくためには、時間がかかります。このため赤身ステーキの場合、先に表面を焦がし固めてしまいます。その後、弱火でじっくり焼きます。表面が多少焦げますが、これは必要悪のようなものです。
一方、田村牛は鉄板に乗せると、いい脂ですから瞬時に溶けます。脂は熱を持ちやすく、しかも脂と脂の肉の厚みはさほどありません。そう、大袈裟にいうと、瞬時に全体が均一に焼けるのです。
本当のレア。
レアを頼んだ時、表面は焼けているに、中は生ということを経験した人もあると思いますが、田村牛はそれがありません。肉と脂が、絶妙に絡み合った焼き加減です。
私は、それを塩、胡椒で食べました。
まさに飲める肉。噛み締める間もなく、肉は口の奥へ奥へと滑り込みます。昔、映画人は映画フィルムを一万円札を貼って作ったようなモノと表現しました。フィルムが高価で、それがあれよあれよという間になくなってしまうからですが、それと同じ。一万円が胃袋に滑り込むような感じです。忘我の境地で飲み込んでしまいます。もっとゆっくり味わってとも思いますが、体がそんなこと許さない感じです。
お次はサーロイン。こちらも似た感じ。日本の肉系はほとんど薄切り肉ですが、私は箸で切れることを一つの目標にしているのではとおもっています。これ頑張れば、切れるような気がします。そして美味い!試食でしたが、堪能しました。
興奮の冷めない「興奮体験」と言えます。
■まずはランチで
そして、「焼肉 たまき家」(虎ノ門)は、メニューを刷新。タン・ホルモン以外は、田村牛しか扱わないことにしたそうです。
一番安いのはランチ。当然高いランチもありますが、2300円から。2300円は高いとも言えますが、月に一度のご褒美ディなどでしたら、対応できそうです。それくらいの価値は十分あります。昔、六本木で会社勤めしていたころ、時たま「叙々苑」でランチしました。こちらもかなりのお値段。しかし、食べた後は仕事が進む進む。ある種のハイになっているのでしょうね。そうすると2300円の価値は十分ありそうです。味は文句なく、価格を超えるレベルです。
他のランチ、メニューは、財布とよくご相談してください。
特にディナー。お酒が入ると金銭感覚は麻痺しますので・・・。しかし、セラーには、美味そうな赤ワインがどっさり。一度、ゆっくり味わってみたいものです。
田村牛が出るだけあって、実に高級店。しかしその中で、ランチは実にリーズナブル。味を考えると破格と言ってもいいです。
この興奮体験、お勧めです。
より詳しい情報は、以下のURLでご確認ください。
https://restaurant.ikyu.com/110554/?ikCo=10000163&CosNo=10000163&ikyh=p__s_accnm&CosUrl=110554%2F
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