レポート

【オーブンレンジ解体新書 01】
朝食にオーブンレンジは使えるか?
必殺技 「目玉焼きとトースター同時焼き」で、オーブントースターに対抗。


今ドキ美味しくトーストする場合、多くの場合、オーブントースターが使われます。理由は簡単。手間いらずで早く焼けるからです。
一方、オーブンレンジ。重さ、価格とも、オーブントースターとは一桁違います。キッチンで冷蔵庫に続く巨大家電です。ところが多くの場合、朝食では出番がありません。
オーブンレンジの真実を詳らかにするために、「トースト」の話からレポートします。

今回のテストは、シャープの看板モデル、ヘルシオ「AX-XA20」で行った。


 
◾️オーブンレンジで使われない「トースト」機能
どんな料理にも対応している、マルチ調理家電「オーブンレンジ」。フラッグシップは10万円以上。レシピ集を見ると、天ぷら以外できない料理はないのではと思えるほど、できるメニューも豊富です。
ところが使いこなすとなると、途端にハードルが高くなります。特に「ちょっと使い」に弱いのです。

一番顕著な例は、「トースト」。食パンを焼くことです。
できないことはないのです。しかし、一度使って見ると以降使わない人が多い。理由は何なのでしょうか?

 
◾️どこが問題なのか?
オーブンレンジでトーストすると、次のような欠点にぶち当たります。
●焼く時間が長い。(5分以上)
●両面が同じように焼けない。焼くためには、途中でひっくり返す必要がある。

では、どうしてこういう問題が出てくるのでしょうか?

 
◾️オーブンレンジの構造的な問題点
これはオーブンレンジが、機構的に抱える問題だと言えます。
オーブンレンジの母体は、電子レンジです。しかし、電子レンジでは、「温め」「下ごしらえ」はできても、料理を作ることはできません。しかし、レンジは最低でも10L以上、大きめの庫内を持っているのですから、いろいろなことができそうです。

メーカーサイドは、これに「オーブン」機能を持たせることにしました。
というのは、電子レンジの庫内で、金属は御法度。電子レンジは、マイクロ波=電波を発生させ、この マイクロ波が食品内の水分を振動させることによって熱を発生させて食品を温めています。 しかし、金属の表面には自由に動ける電子があり、マイクロ波の振動により激しく動き回ります。一部の電子は空中に飛び出します。放電が発生するからです。

このため、電子レンジ内で「剥き出しのヒーターを使うことはできません」。ヒーターは庫内に廻らされた遮蔽壁の後に位置します。つまり「放射熱」を使うことになります。「放射熱」を熱源とするのは「オーブン」。そうしてできたのが「オーブンレンジ」なのです。

 
◾️日本で役立つのは、オーブンよりグリル
しかし、日本人は「オーブン」料理と言われてもピンときませんね。というのは、日本人の「焼き」は網焼き、つまり「グリル」が一般的だからです。特に、動物性タンパク源として、魚を多用する日本は焼き魚は七輪による網焼き、もしくは竹串を打って囲炉裏端に刺して焼きます。遠赤外線もあり、実に美味しい。それ以外は、生の刺身か、煮付け。煮付けは「鍋」。

日本で「放熱」を使い調理したのは、戦国時代の鋤(すき)焼きではないでしょうか? 農具で平たい大きい刃が付いている鋤の刃の部分を火の上に乗せて肉を焼いたそうです。この調理法は、どうもヨーロッパから伝えられたようです。それを日本流にアレンジした感があります。

「オーブン」のいいところは、熱がじんわりと奥まで染み込むことですね。塊肉がうまく焼けます。日本の場合、肉は貴重品であったことにも由来するのか、薄く切るものが多い。逆な言い方をすると、オーブンを使う家庭料理が日本にないのです。

 
このため、オーブンレンジの多くは「グリル」機能を持っています。そちらの方が日本の場合、使い勝手がいいのですね。グリルは、ヒーターで上下(または上だけ)から表面を直接炙ります。ここで問題が出てきます。一つは、ヒーターが剥き出しでないこと。そしてヒーターと食材の間に距離があることです。片方はパワーで帯なうとしても、30Lのオーブンレンジの場合、当レポートでモデルとして使うシャープ オーブンレンジ ヘルシオ AX-XA20で、庫内高さは24cm。真ん中においてもヒーターとのとは12cmです。

AX-XA20の庫内寸法図。


実際は、深さ2cmの黒い角皿の上に高さ4cmの焼き網に6つ切りパン(厚さ:2cm)を、高さ12cmのところに設置しますので、パンは上面:8cm、下面:14cmのところに位置します。ただし下面は角皿に熱を遮られてしまいます。その上、熱を上手に使うためには、オーブンほどではありませんが、庫内をある程度まで温める必要があります。

 
当然、トーストするためには、時間がかかります。
また、下面は焼けても、焦げが付きません。両面に焦げ目を付けるためには、上面が焼けたあと、ひっくり返す必要があります。

 
◾️オーブントースターはどうか?
では、ポップアップトースターを抑え、日本で全盛のオーブントースターでは、これらはどうなっているのでしょうか? シロカの「すばやきトースター」を例にとり説明しましょう。

まず「レンジ機能」がないため、ヒーターは庫内剥き出しです。ヒーターは上面に太いのが1つ、下面には2つ。全部、カーボンヒーターですから、2秒もあるとパワー全開になります。
焼き網も設置済み。上面ヒーターから10cm。パンの厚みを考えると、パン上面:8cm。ここまでは同じです。

カーボンヒーターなので、オレンジに輝く。


ところが、下面はヒーターから3cm位。しかも網です。14cm、角皿ありのオーブンレンジとは、すごく違います。庫内は特殊形状ですが、カタログ値より大まかに算出すると、10Lもないでしょう。

庫内寸法。上面の距離以外、全部がコンパクト。
特に下面からの距離が全く異なる。
ちなみにいろいろな料理ができるよう、業界で最も高い。


要するに、短時間で熱をコントロールするのにすごく適しているわけです。

焼くための時間は、なんと1.5分(焼き色 ふつう)。最速です。裏返す必要は全くありません。
「すばやき」はパワーがあるタイプですが、普通のオーブントースターでも、5分以内で焼き上がると思います。

すば焼きのトーストメニュー。
焼き色「こい」でも、2分。業界最速。


 
◾️オーブンレンジに出番はないのか?
では、朝、オーブンレンジは出番がないのでしょうか? 高いマルチ調理器を買ったのに、似たオーブントースターを買わなければならないのでしょうか?

答えは「ノー」です。
折角、買ったのですから、上手く使いこなせばいいのです。

マンガ、アニメで、トーストを口に加えて走る女の子が、いっぱい出るようになり、トーストは単独の食べ物のようにみられがちですが、実はそうではありません。目玉焼き、サラダなどと組み合わされて食べられます。

 
この目玉焼き、オーブンレンジの場合、トーストしながら作ることができます。
実際にやってみました。



裏面に焦げ目が付いていないのですが、焼きは十分。また、目玉焼きは「標準」という感じで焼けていました。決して、ハードではありません。

 
◾️最後に 上手に使えばとっても便利な家電
実はこれ、後片付けでは皿一枚洗うだけの、実に簡単調理なのです。
また、待っている間に、生野菜を用意。お皿に入れると、ほぼ完全食でしょう。

折角、高いお金を叩いて買った調理家電。しかもデカく、重い。それなのに、小さいの(オーブントースター)を買い直すのは、ちょっと嫌だと思います。

その家電が持っている特性を理解すると、うまく使えます。これだけ物理要素に差があっても、見方を変えるとなんとかなるものです。家電は「上手に使えばとっても便利」なのです。

 
 
商品のより詳しい情報は、以下のURLでご確認ください。
https://jp.sharp/range/products/axxa20/
 




 

 
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2021年9月9日

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