プログラム教育を考える その1。
小学校の「プログラム教育」。「ミニ ルンバ」でやってみた。
さて、ついに導入された「プログラム教育」。
言い方を変えると、日本語、英語に続く、第3の言語と言っていいかも知れません。しかし、これは驚くに値しません。
今、OSがMac、Windowsに関わらず、ワード、エクセル、パワーポイントを使えない人が就職できるとは思えないですね。しかし、これの使い方は、義務教育も元より、大学でも教えてくれません。もし懇切丁寧に教えてくれるなら、人気の講義になるでしょう。それだけのニーズがあると言うことです。
それとはちょっと異なりますが、今後は「ないプログラムは自分で作ってしまえ」となる可能性は大いにありですね。宣言されて、そろそろ7年近くになりますが、良いやくスマート家電のベースとなるセンサーと通信の搭載が当たり前になりつつあります。しかし、自分のして欲しい動きが、プログラムされていないどは当たり前です。ちなみに、21世紀のファースト・ガンダムとも呼ばれるガンダム Seedの第二話。主人公のキラ・ヤマトは、偶然乗り込んだ新型機動兵器ガンダム(お約束ですね)のOSを、動きが悪いという理由で書き換えてしまいます。まさに、21世紀を象徴するエピソードかもしれません。
アニメだからと笑い飛ばすのは簡単ですが、コンピューターという外部脳を持った人類は、その脳を使いこなすために、コンピューターとのコミュニケーションツールとも言える「プログラム」は必須。と言うより出来なければ、取り残されると言うキツイ言い方の方がふさわしいかも知れません。
そんなプログラム教育に、教育用ミニルンバ(商品名:ルート)を使っている学校があります。
◾️STEM教育
STEM(ステム)と言うのをご存知でしょうか?
S:Science、T:Technology、E:Engineering、M:Mathematicsの頭文字を取った言葉で、科学・技術・工学・数学の教育分野を総称した言葉です。
STEMは、IT社会とグローバル社会に適応した国際競争力を持った人材を多く生み出そうとする、21世紀型の教育システムとして考えられたものです。どちらかと言うと昔でいる「実学」です。
そしてもう一つ重要なポイントは、「教わるのではなく、自分で学び、自分で理解していく子ども」を育てることです。つまり、子どもが大きくなる時の原動力、「好奇心」をエネルギーを学びに使うことです。
今から、当たり前になる人工知能(AI)を使ったり、作ったりするためには、「先生が教え、生徒は覚える」の学びは、ほとんど役にたちません。自分で経験した、自発性、創造性、判断力、問題解決力を養う。それが重要です。このような育ちをした有名人もいます。発明王トーマス・エジソンです。卵がどうして孵るのかを調べるため、自身の体温で卵を温めたエピソードは有名な話です。エジソンは、小学校を3ヶ月で中退しましたが、興味を持った化学は自分でどんどん勉強した上、歴史など、文系科目は母親の指導の下「ローマ帝国衰亡史」で学んだそうですから、すさまじいカスタム・カリキュラムで学んだとも言えます。
プログラム教育は、このSTEM教育に当たります。
◾️iRobotは、2010年からSTEM開始
実は、iRobot社は、2010年から「アイロボットSTEMプログラム」を続けています。初心者向けのワークショップです。
総計120分で、前半45分は子供向けのプログラミングソフトScratch(スクラッチ)を使いながら、プログラムでロボットが動く仕組みを学びます。そして後半は、実際に、ルンバをプログラムして動かします。
私も見学させてもらったことがあります。やってきた子どもは、まず白衣を着せてもらいます。いつもと違うことが始まる感じで子どもたちは、ちょっとソワソワ。その時の挨拶は、CEO コリン・アングル氏。これには子どもたち、ちょっとビックリ。そして、自分がルンバを操作できると言ってワクワク。このワークにエントリーしてくる位ですから、ルンバを持っていたり、ロボット掃除機に興味を持っていたりします。
その子供たちが、にこやかに、にぎやかになったのが後半。トライ&エラーが始まってから。自分が動かせるとは思っていなかったモノを自分の思うように動かせる。好奇心で始めたことが、成果につながったわけです。ドキドキが生まれたわけです。
こうなると子どもの目はキラキラし始めます。ルンバを抱きかかえ、スタートラインに置くと、自分のプログラムがうまく動作するのかを見守ります。上手くいかないと、考え考えします。もう夢中です。面白いワークショップでした。子どもにしても、なかなか得られらい体験だったわけです。
では、なぜiRobotはSTEMを始めたのでしょうか? コリン・アングル氏に聞いてみたところ、「自分たちの仲間となる技術者を、育てるため」だそうです。とにかく、今、全世界的にプログラマーが足りない。iRobotでもプログラマーは足らなくて、いいひとがいれば、何十人でも雇いたいそうです。未来を切り開くことができる技術者を、そうなるきっかけとなるように、STEMを始めたそうです。
日本でも昔の成功者は、故郷に還元していました。その中には、教育関連が含まれます。しかし、今の世の中、そんなことはなく、教育=ビジネスとしか見れない人が多くいます。
老人大国となり、増大する社会福祉費用で大汗の日本ですが、それ以上に問題なのは、未来を維持するために必要な「食糧」「エネルギー」「教育」の方針が由来でいるためです。
特に、大学のランキングでは、日本の最高府である東京大学でも23位。決して誇れる状態ではありません。またSTEMのように新しい方法、と言うよりいろいろなアプローチができる方法には、強くありません。
◾️STEM教育に対する日本の方針
ネットでプログラミング教育の指導要項を検索すると、
「新たに取り組むこと,これからも重視することは?
プログラミング教育
コンピュータがプログラムによって動き,社会で活用されていることを体験し,学習します。」とあります。
要するに、何も決まっていません。海外で行われているプログラム教育の資料などもありますが、あくまでも資料です。確かにSTEMは、創造的なところがあり、幾ら時間、機材、人材を投入しても、終わりがないのも事実です。しかし最低の達成点を明確にしないと、問題も出てくるように思います。
実際、内容、機材、予算などは、各学校に一任されているそうです。
◾️iRobotのRoot
さて私は、iRobotのSTEMでルンバ(正確にはプログラム変更ができるプログラム教育のために開発されたルンバ)が使われるところをみたわけですが、ルンバは最低でも39800円(税込)します。
また子どもには大きく、重い。小学生の教材としては、重く、高価です。
このため、iRobotは教育用に「Root」を開発しました。ルンバの雰囲気を残しつつ、教育用教材として開発されたものです。
いろいろな特徴がありますが、動く以外、大きくは3つの特徴があります。
(1)表現力豊か Rootは、ロボット掃除機「ルンバ」の動き、前進、後進、左右への方向転換を受け継ぎながら、掃除機能は無くなっています。代わりに付け加えられたのは、表現機能。中央にサインペンを差し込むことにより、軌跡で画を書いたり、光らせたり、音を出したりすることができます。R2D2のように「ピポピポ」音で受け答えすることも可能です。
(2)白板で使える 大展示会でよく使われるロボット掃除機の展示方法に壁を昇らせると言うのがあります。吸引力が強いロボット掃除機なら可能なのも事実ですが、目立ちます。Rootは吸引力を持ちませんので、同じことを磁石で行います。白板上を行ったり来たりするわけです。先生が説明する時、とっても使える機能です。
(3)力量にあった方法でプログラムができる Rootには、3つのレベルのプログラム表現方法があります。グラフィカル・コーディング、ハイブリッド・コーディング、フルテキスト・コーディングです。グラフィカル・コーディングは、予め決められたプログラム(例えば8cm前に進む)を1つのブロックとして、そのブロックを組み合わせて、複雑な動きをさせます。前述のSTEMで使われたコーディングで、小学生でも容易にコツを掴んで、使いこなします。ハイブリッドは、そのブロック内のプログラムにいろいろな条件をマニュアルで付け加えるレベル。
(1)(2)でプログラムの基本を学び、(3)で自在に書くことを学びます。Root一つで、小学校〜高校のプログラム教育までサポートできるわけです。
◾️導入校での評判は上々
本来この目で確かめるところですが、コロナ禍ですからチョイと授業参観と言うわけでには行きません。このため録画でチェックさせてもらいました。
そこには、STEMと同じ状況は映し出されていました。まず、子どもたちの反応が違います。デジタル・ネイチャーの彼らは基本、グラフィカル・コーディングは難なくこなしますが、対象への興味があればある程、それは手早く出ます。目標は定められてはいないとは言え、時間に余裕がある限り、生徒にはいろいろいじってもらい、自発的にいろいろなプログラムを組んでもらうことも必要です。そのためには、興味を引く教材であることが必要です。
Rootはそれを軽々クリアします。そりゃそうですね。自分が持っていなくても、友達ん家にロボット掃除機があるとすれば、子どもは興味津々で見に行くことでしょう。そして感嘆することでしょう。そのミニチュア・ロボットを自分の思い通りに操れるのです。テンション揚げ揚げ。当然、授業の効率も上がります。
やはり、ここでも子どもはニコニコ。楽しかった、面白かった。向上の源泉たる好奇心が、表に出ていました。
◾️第二弾 Root rt0
さて、Rootでここまで37都道府県の小学校に採用されていますが、iRobot社は7月8日に Root rt0を発売します。rt0とRootの一番の違いは、(2)の磁石の有無。この機能は、基本教師用のものです。Rootを多く使うのは生徒ですから、無駄な機能とも言えます。rt0は、生徒用のコストダウンモデルと考えてもらえればと思います。ちなみに価格は、24,800円(税込)。5千円安です。
もう一度考えてみて欲しいのですが、このプログラム教育にかける予算はあまりないのです。それでなくても、コロナ禍、デジタル対応(タブレット、安価PC)で、お金がないのが現状。iRobot社は少しでも、それに答えようとしたわけです。
ちなみに時々「デジタル化」で、安価タブレット、安価PCのレポートがメディアに載りますが、その時に出てくるのはお金がない。これはプログラム教育も同じです。お金の問題はついて回ります。
しかしRootは、個人持ちにする必要はありません。とすると、先生用1台、生徒用35台位をひとまとめにして、持ちまわればいいわけです。
29,800×1+24,800×35=897,000円
一校、100万円位です。平成29年で小学校数は、国立、公立、私立合わせて、ほぼ2万校。約180億円です。
お金がないため、シミュレーションだけでプログラム教育を終わらせることを考えている学校もあるとか。幼い頃の体験はとても大切。できる限り、VRではなく、リアルが大切だと思います。私的なつながりで、某学園に補助金を出すなら、生徒を育てる方に税金を使ってはもらえなでしょうか?ちなみに、無駄と言われたアベノマスクの契約総額が260億円。同じ未来を買うなら、私は教育にお金をかけて欲しいと思います。
商品のより詳しい情報は、以下のURLでご確認ください。
https://www.irobot-jp.com/root/
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2021年8月20日