貴方も語れるスティック型掃除機 !01 「自立式」とは?
エレクトロラックスのエルゴラピードのものすごい完成度。
2021年春は後日、スティック型掃除機の大きな節目と言われるかもしれません。
それはダイソンが「Dyson Omni-Glide」を世に出したからです。まだ完成度は高くありませんが、期待できるものがあるのです。
それを分かってもらうために、ちょっとスティック型掃除機の詳細解説してみたいと思います。
◾️コンセントからの解放!
キャニスター型掃除機をかけてると面倒に思うことがあります。
1つは、「電源ケーブルの範囲でしか掃除できない」こと。このため、あちらのコンセントからこちらのコンセントへ、渡り歩きます。多くの場合、今掃除機に電気を供給しているコンセントは、掃除が済んだ場所にあります。たった数mですが、そこまで戻るのが面倒です。
腰をかがめて引き抜いて、腰をかがめてまた挿して。
必要なことなのですが、なんか空(むなし)い感じもします。
このコンセントからの解放が一つの大きな課題でした。
そしてもう1つは、高さに弱いこと。ペンダントライトの傘、ボードの上、棚、等々。
できないわけではないのですが、本体を足下まで引き寄せて、あとはフレキシブルホースの長さが決めます。微妙に届かなかったりする時もあります。こんな時は、本体を持ってと言うことになりますが、排気を浴びるなど、散々な思いもします。50年以上、番を貼ってきたキャニスター型ですが、完全ではないことがわかります。
不完全な部分があると、掃除機をはじめどんなモノも、ちょっとしたキッカケで変わることになることがあります。
「コンセプト」「設計」「デザイン」「技術」、そして「価格」。モノを形作る5大要素ですが、そのキッカケは、この5つの要素が動くことにより生まれます。今回のスティック型掃除機の推進力になったのは「技術」。進化する「バッテリー」と進化する「小型モーター」が大きな推進力になっています。
そしてもう一つ、「設計」が重要なポイントとなります。
◾️それは「自立型」から始まった。
この動きをいち早くとらえたのは、スウェーデンの雄 エレクトロラックス社です。日本での知名度は、まだまだのところもありますが、創業は1912年。100年を超える大ブランドです。当然「世界初」の製品も多くあります。
その中の一つが、家庭用電気掃除機。と言うより、1912年の創業家電が掃除機でした。ビジュアルは、ゴミ箱にホースを付けた感じ。まだ動かすことはできません。
それにそり(スキー)を履かせ、移動できるようにします。ここは北国らしいアイディア。キャニスター型の始まりです。
部屋の中に雪は降りませんから、それが車輪に変わるのは自明の理です。
そして、ロボット掃除機も初めては、ここ。名前は「トリノバイト(三葉虫)」。1954年放映の「ゴジラ」の中で、ゴジラがいた痕跡として出てくるのが、絶滅生物「トリノバイト」。(山根博士が三葉虫と言わず、「トリノバイト」と言うのが思い出されます。)確かに、ゴジラに踏みつけられ、ペシャンコになっているトリノバイトに似たデザインです。
エレクトロラックスの初代機に共通して言えることは、先進の設計思想。この完成度が高い。感心してしまいます。
そして、それは初代スティック型掃除機にも言えることです。
彼らが2004年に採用したのは「自立型」。なぜ、彼らは「自立型」に着目したのでしょうか?
◾️スティック型掃除機の弱点
スティック型掃除機のメリットは、コンセントフリーとなり自在に掃除できることです。しかし、最低でもバッテリーは加わります。そして重いと、自由度はグンと下がります。そうスティック型掃除機は重さとの戦いなのです。
そしてもう一つ。スティック型掃除機の本体は、ハンディ掃除機です。それにヘッドを付けて逆側に柄を付けたものが「自立式」。ハンディ掃除機にポール(延長管)そして、それにヘッドを付けたのが「手持ち式」。どこかが違うのかというと手にかかる重さです。
言葉で書くと、ただ順番が違うような感じですが、実際は手にかかる重さが全く違います。低重心で床がかなりの重さを支えてくれる「自立型」。そして、一番重たい本体を手で持つため、手に重さがズシっとくる「手持ち型」。
最近は「手持ち型」が優勢ですが、それには理由があります。ポールを外すと、ハンディ掃除機として使えるからです。その代わり、手に負担がかかります。ただし今は、バッテリーも、モーターもかなり軽くなっていますので、以前より負担は少ないです。
しかし、2004年の頃は違います。スマホはまだ世にありません。今をときめくテスラが創立されたのが2003年。生産を始めるのは、2009年となります。似た境遇にあるルンバは2002年に出て、2004年は2世代機が出たところです。
要するに、まだ軽量モーターも軽量バッテリーもない時代です。どうしても重くなります。必然的に「自立式」にせざるを得ません。しかし、ただ単に組み立てただけでは、すぐハンディ掃除機をとり出すことはできません。
◾️オリジナルとは、こう言うことだ!
そんな中で考え出されたのが、フレームを使う方法です。
ヘッドに柄の付いたフレームを付けます。そして、そのフレームにハンディ掃除機をはめ込んだ構造を作り出します。
「2 in 1」と呼ばれる設計です。これほどの設計は中々ないと思います。
エルゴラピードは、数年前、大幅なデザインチェンジをしていますが、この設計思想は継続されています。と言うより、初めから完成度が桁違いに高いのです。
スティック型掃除機の一つの理想型と言っても過言ではないでしょう。
では、この時、スティック型掃除機はバリバリに売れたのでしょうか?
答えは、それなりです。
というのは、まだキャニスター型に対して未成熟なところがあり、この時期とって変わることはできませんでした。
特に、吸引力と持続力。バッテリーとモーターの小型化、高出力化が求められます。また、充電時間と使用時間のバランスも取らなければなりません。
見事な設計で、スタートダッシュには成功したわけですが、未成熟な技術の部分は、技術の成熟を待つ必要がありました。
◾️ダイソンが「自立式」をセレクトしなかった理由
現在、日本市場のトップのダイソンは「自立式」を採用していません。
理由は何でしょうか?
ここから先は憶測でしかありませんが、考えられることとして、エレクトロラックスとの対決を避けた可能性があります。
と言うのは、エレクトロラックスのフレーム構造を凌駕する自立式のアイディアは、現在でも出ていないからです。
今の世の中、アイディアは特許で守られます。期間は20年。要するにこの間、全く同じモノを作ることはできないわけです。しかし、それがパーツの一つ、例えばモーターなどの場合は、一部変更したモノは出すことができます。
しかし、それが「構成」のような場合はどうでしょうか? 変えようがない可能性があります。そうなると同じ構成にする場合は、使用料を支払う必要があります。この使用料は値下げ交渉はできても、確実にコストダウンできるわけではありません。このためメーカーは、この特許の縛りから逃げようとします。
要するに、一番最初に追従ができないレベルのモノが出てくると、市場を活性化させる模倣者が出にくいのです。そして画期的な商品でも、一社で新市場を開くのは、なかなかできません。
逆に言うと、それほどの設計完成度を持っていたといえます。
そしてもう一つ。ダイソンは、小型モーターとそれに合うバッテリーを開発し続けました。
また、並行して、縦型掃除機とも言うべき、「自立式」に近いレイアウトで、電源ケーブルの付いた、DC24から始めるシリーズを作ります。しかし余り感心はしませんでした。その一つには、時が経つとエルゴラピードに置いていかれるだろうと言う気持ちもありました。
バッテリー駆動のスティック型掃除機が出てくるのは、2011年のこと。型番は、DC35。正直、性能的には満足できるものではありませんでしたが、レイアウトは「手持ち式」。モーターとバッテリーの開発に自信があったのでしょう。
そして、ダイソンのスティック型掃除機の設計が固まるのが、その5年後。2016年の V8シリーズからです。逆に言うと、そこまでは吸引力、持続力どちらかが欠けていました。
それは、エレクトロラックスも同じです。すごい設計でも、満足の行かない部分があったわけです。克服するのに、発売後、12年もかかったわけです。
12年も似たデザインで市場にあると、今の時代「定番」ではなく、「古い」と見る人も多いです。またダイソンほどの知名度をエレクトロラックスは持っていません。
今、スティック型掃除機の日本のトップシェアはダイソンです。そして、商品に目垢の付いたエレクロトラックスは、フルデザインチェンジを行っています。
「設計」だけでは戦えない。先述の5つの要素を満たして初めて、ヒット商品となるのです。
◾️言いたかったこと ・スティック型掃除機には、「自立式」と「手持ち式」がある。
・スティック型掃除機を、2004年に世界で最初に上市したエレクトロラックスは「自立式」を採用。
○当時、モーター、バッテリーとも十分な軽量型がなく、手で本体を支える「手持ち式」では、商品化しても受け入れられないと判断したのだと思われる。
・「自立式」の欠点は、掃除の途中で、即時ハンディ掃除機化できないこと。
・「ヘッド+本体+柄」と言う構造を「ヘッド+フレーム+柄」にし、フレームに本体をはめ込む構成に。これにより、自立式のハンディ掃除機化し難いと言う欠点を克服。
○余りにも設計が優れており、有力なフォロワーメーカーは出なかった。
また当時、モーター、バッテリーの重量、能力もユーザー要求を満たすモノではなかった。
(○は筆者の推測)
次回
貴方も語れるスティック型掃除機 !02 「手持ち式」でダイソンが、スティック型掃除機日本市場でトップを取った理由(わけ)。
商品のより詳しい情報は、以下のURLでご確認ください。
https://www.electrolux.co.jp
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2021年5月8日