思うこと

アイリスオーヤマが、B to B向けロボット掃除機でトップを取った理由


アイリスオーヤマ。家電では、決してビッグブランドではありません。が、ユニークな切り口(機能)とリーズナブルな価格をうまく組み合わせた商品開発で、参入後、名を馳せてきました。昨年秋口に発売、発表したテレビには、大手家電メーカーからみると「邪道」と言われかねない、白内障の人を考えに入れた「はっきりモード」を搭載。高齢化社会に寄り添います。

今回のお題は、業務用ロボット掃除機。
メーカーは、現在No,1シェアを誇るアイリスロボティクス ?!!


しかしアイリスオーヤマの真価が発揮されたのは、コロナ禍と言う閉塞的な状況で、出した数々の製品である様な気がします。「国内生産マスク」を皮切りに、「業務用非接触型温度計」の取り扱い、テレワークに欠かせない「webカメラ」などなど。そしてこの春は、テレワークで使い易い「ノートPC」を発売するなど、実に幅広い製品を用意、色々な要望に答えています。

加えて、アイリスオーヤマとペッパーくん(ジャンプの「呪術廻戦」でもネタにされていますね。)でおなじみのソフトバンクロボティクスが合弁会社「アイリスロボティクス(株)」が設立されました。法人向けのロボットサービスの本格展開をするとのことです。

何故、業務用ということと共に、今、各社が始めているエンターテイメントロボット(シャープのロボホン、ソニーのaibo(アイボ)、パナソニックの二コボ(Makuakeでテストマーケティング中)、日立GLSと資本提携したGroove XのLOVOT(ラボット)など。基本的に、「役に立たない」のが特徴。)への布石でしょうか?

アイリスオーヤマの業務用ロボットを取材レポートします。

 
◾️AI除菌清掃ロボット「Whiz i アイリスエディション」
まずは、売り物のロボットを見せてもらいに、浜松町のアイリスオーヤマへ行ってきました。

一眼見て驚愕しました。そこで出会ったお掃除ロボットは、芝刈り機の様に大きな取手を持つ、タンク型の給水タンクの様なロボット。可愛い「お掃除」と言う言葉が、それなりに似合うiRobot社のルンバと違い、威圧感たっぷり。業務用製品の特徴に「タフ」であることがありますが、それを地でいく様なゴッツイ佇まいです。「お掃除」と言う口語ではなく「清掃」と言いたい感じです。空港で時々見かける高さ1m以上ある床掃除機を半分にちょんぎったモノというべきでしょうか? お世辞にでも、家庭で使うモノではありません。

聞いて驚き、見て目が点になった、業務用ロボット掃除機。
AI除菌清掃ロボット「Whiz i アイリスエディション」。


そして、使い方の説明を聞くうちに、更にびっくりしました。
それは家庭用ロボット掃除機とは、思想が全く違ったからです。

例えばルンバのフラッグシップモデル「ルンバ i9」。スィッチを入れると、初めはフラフラと何かを探す様に動きます。しかし「壁」を探し当てると、あとは、隅から隅へと勝手に掃除をしてくれます。

ところが、 Whiz i アイリスエディション(以下 Whiz)は、全然誓います。人がコースを覚えさせて、そのコースに沿って掃除をしていくものです。

どうやってコースを思えさせるのかというと、まずスタート地点にQRコードを貼ります。デジカメで認識。そして・・・。取手を持って人が掃除したいコースを動かします。で、出発点に帰ってきて終了。その時のコース通りに移動し、掃除を完了するのです。

片や、最新AIを駆使して、自分で位置も把握して掃除を続けられるロボット掃除機。片や、人の教えた通りに動くだけのロボット掃除機。余りにも思想が違いすぎて、笑ってしまいました。

しかし人と同等ですから確実にきれいになるとして、本当にこのやり方で、会社、病院他、公共施設で使うのとも思ってしまったのも事実です。



 
◾️業務用掃除機ビジネスが好調な理由
実は、このWhiz、業務用掃除機として売り上げ No.1なのです。

ますます驚愕です。AIと言いながら、そんなに自律性のない人の動いたところを通るだけ。しかも、ペッパー君のようには、愛嬌のあるタイプではありません。

売れる理由は「コロナ」です。セールス資料を見せてもらうと、米国疾病予防管理センター(CDC)のデーターが掲載されています。資料によると、コロナ患者の放ったコロナウイルスを含む飛沫は、時間が立つと床に落ちるのですが、再度、空気中に飛ばされ、感染の原因になる旨が書かれています。(出典:https://wwwnc.cdc.gov/eid/article/26/7/20-0885_article

私も初めて聞きました。花粉のように硬く大きいモノが踏みつけられた弾みに飛ぶというのは分かります。ところが、このセールス資料は、脆弱なウイルスも同じようなことが起こると言っているわけです。よく知られているように、飛沫がついた取手を手で触ってしまった、その飛沫が付いた手で口を拭いてしまい感染したと言う接触感染ならよくわかるのですが、ウイルスはタンパク質の塊。飛沫に守られていても1週間持つか持たないかの脆弱性。それが床に落ちても、再び宙に浮き問題になると言うのは、想像もしませんでした。付着ウイルス対策は、手洗いなど手先消毒で対応できると考えていたので、見識を改めなければなりません。(出典は、2020年7月に出されたモノ。学説は新しい事実で、すぐ無効化される。チェックは必要。)

 

カタログに掲載されている、床のウイルス量と空気中のウイルス量のデーター。


要するに、多くの人が通るところは、日に何回も掃除しなければ、ならないと言うことです。特に感染の可能性がある場所、病院、公共施設、会社は特にです。病院は院内感染を防ぐ必要がありますし、公共施設は使用者を、会社は自社の社員を守らなければなりません。そんな時、確実な動作で、確実に掃除してくれるのが、Wizと言うわけです。

確かに、売れなければ、おかしいです。

 
◾️コロナで民生用ロボット掃除機は売れるのか?
しかし、業務用ロボットの「床に落ちたウイルス飛沫が再浮遊する」と言う理論は、一般民生用のロボット掃除機には通じません。感染者がいない限り、ウイルスは床にありません。
しかし、民生用ロボッそ掃除機の売りはコロナで伸びていると言います。こちらの理由は、在宅時間が延びたことによります。要するに汚いところに居たくない。しかし人が居ると必ず汚れます。要は面倒くさいのですね。

またiRobotが進めている、リーズナブルプライス モデルの充実も功を奏していると思います。

 
◾️何故、アイリスオーヤマは「コロナ」関連をビジネスにできるのか?
昨年、コロナ禍でいろいろなモノが売れました。多くのところで、アイリスオーヤマの名前が上がりました。冒頭に述べた通りです。何故そんなことが可能なのでしょうか?

一般に言われるのは、社長の判断が早いことです。ありますね。他の会社が1ヶ月かけて判断するのを、1日で判断する感じです。他社からみると、すごい即断即決です。ビジネス的には理想とされる態度ですが、もう一つあるのはハズレが少ないことです。今回のロボット掃除機もそうです。「アイリスオーヤマ がNo.1」。

判断が速ければそうなるのでしょうか?

 
◾️災害はいつ何時来るのか、わからない
実はアイリスオーヤマは、ここ1年災害対策品も急速に立ち上げています。電力不足でも使えるLED電球は元から販売していましたが、自治体と災害時の物資供給の契約。災害救急セットの販売、パックごはん、缶詰の生産と販売、そしてミネラルウォーターのボトリングと販売・・・。また、不織布マスクは災害時にも役に立ちます。

これはアイリスオーヤマの本社が仙台の近くにあり被災したこと、復興には積極的に手を貸した経験などが練りこまれています。

それはどんな経験かと言うと、「すぐ」対応しなければならないと言うことです。そうしないと人が死んだりしますからね。要するに、ある種の危機感をビジネスに持ち込んでいると言えます。

それは「判断」だけでなく「判断できるようにする」のもそうです。非接触型温度計を発売が、コロナ流行後、あまりにも時間が短かったので、どうして可能だったのか聞いてみました。答えはやはり「社長の判断」でした。ただし、その時はまだ後があり、その後の対応の枠組みが予め組み上がっていたからだそうです。

そして、情報をうまく使える人は、往々にして人の使い方もうまいものです。すべきは、同じ方向を向く(すべきことをしっかり認識している)ことと、動ける環境を整えてやることです。そしていつでもコミュニケーションが取れるようにしてやる。それを如何に短期に整え、現場がフルパワーで動けるようにしてやる。これが下手な人が上にいると、下はすごく苦労します。少なくとも短納期は実現できません。

ビジネス書として、戦国時代の話を好む人は多いのですが、戦国の話で忘れてはいけないのは、常に「時は今」ということです。他国に攻められるのも、相手から「×月×日に攻め込むからよろしく」なんて通知は来ません。即断即決で対応しなければならないのです。そして即決しても、その後が動かなければ意味がありません。割とこの連携を忘れている会社は多い。経営者は判断したらひと段落。後は下に任せるというやつです。今の政治のように、よれでは後手に回ることも多いです。

大地震と言う大天災を経験したアイリスオーヤマは、判断を早くするために何をしなければならないのかを骨身に染みて理解している人が多いのではと思います。

 
◾️アイリスオーヤマが苦手とする製品
このようにアイリスオーヤマは、明確な方向性、即断即決で機会を逃さない、買いやすい価格で製品を作っており、どんな製品でも強そうですが、弱点はないのでしょうか?

あるとすると高額商品だと思います。商品提案は価格が社長に認められてからと言われるアイリスオーヤマですが、その理由の一つは、ホームセンターを重視しているからでしょう。ホームセンターでは、ほとんど高額商品は扱われません。このためでしょうか? テレビなど、それなりの価格が避けられない商品は、テスト販売で確認しながら、商品化しています。

確かに、高額商品が持つ華麗な華は、アイリスオーヤマにはありません。逆に、野に咲く名も知らない花のような強さがあります。コロナ禍に対抗するに最もふさわしい、強く、たくましいブランドなのかも知れません。

 
商品のより詳しい情報は、以下のURLでご確認ください。
https://www.irisohyama.co.jp/b2b/robotics/
 

 
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2021年4月6日

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