レポート

日常力の指標となる家電。
シロカ「ちょいなべ」は買いか?


電気ケトルでインスタントラーメンを作り、そのまま食べる人がいるそうです。そう聞いたのは、ホテルへ備品を諫めている家電業者から。電気ケトルの面白話として教えてくれました。しかし、聞いていて私は、とんでもないやつと思いましたね。それは電気ケトルはラーメンを作る様に設計されていないからです。
 

シロカ ちょいなべ。他に白色がある。


 
◾️「ほんとかよ」って思った出来事がコンセプト
 
自分の所有物だと、まぁ、そういう使い方をしてもイイかも知れません。ただし壊れても自業自得。決してメーカーに泣き付かない様にしてください。メーカーが想定している使用法以外での保証、サポートはありません。またホテルではやめてくださいね。日本のホテルマンはやさしい人が多く、見ぬふりをしてくれると思いますが、海外では決して通用しません。「器物破損」で料金に上乗せされる可能性があります。

 
さて、それはともかく。商品企画をする人は、こんな話を聞くと、新しいニーズを見つけたと大喜びしますね。インスタントラーメンを、そのまま食べられる電気ケトルを作れば、新製品として売れるということです。そんなことから「ちょいなべ」は開発されたそうです。

 

湯切りはフタに付いている。汁なし麺も大得意。
ただし直に食べようとすると、深い。


 
しかし、鍋から直に食べるのは、漫画的表現ではあるものの、皆さんしていることなのでしょうか? 私もトライしたことはあります。しかし、「いざ」となると、侘しく、あまりにも品位がないというか、人間性をなくすような気がして、実行には至りませんでした。

 

ちょいなべで、寄せ鍋をしたあと、中華麺を入れ、
ラーメン化させたところ。美味い!冬は鍋!


 
◾️コンセプトの成功、可否は?
 
私は鍋から直接食べることができませんでした。理由は、発想が発想なのかも知れませんが、鍋は食事を作るツールであり、食器ではないからです。
ところが、そういう私も山行時は違います。コッヘルで作ったインスタントラーメンは直で食べます。

これは山で余分なモノを持ちたくないということもありますが、コッフェルのサイズも大いに効いていると思います。丼をちょっと大きくしたサイズ。山の携帯品は小さく軽いことが前提。このため、容器としての蓄熱性もほとんどありません。口もつけやすい。つまり容易に食器化するのです。飯盒もそうですね。ちなみに、盒はフタのある容器の意味です。

逆にいうと、このコンセプトを追うということは、鍋をどこまで食器に近づけることができるのかが、成功の鍵と言えそうです。

 
◾️電気ケトルとの違い
 
「ちょいなべ」のカテゴリーを見ると、シロカは「お料理ケトル」としています。

確かに、元の発想は「ケトル(やかん)」なのですが、電気ケトルが、「やかん」より支持されている現在、その様に言うのは、かなり無理がある様な気がします。

 
その理由は3つあると思います。

1つは、電気だとコンセントさえあれば、どこでも使えるということです。電気全盛の時代ですから、コンセントの数も多いですし、基のアンペア数も高い家が多い。問題もありません。

2つめは、手早く沸かせる上、沸いたことを教えてくれ、かつモデルによっては保温もしてくれる。すこぶる便利。1、2は使い勝手が良いと言うことです。

そして、3つめ。
ケトルはインテリアとしても馴染むということが言えます。調理器具の中でも傑出しています。これは、お茶、コーヒーが醸し出す喫茶の文化に必要だからと言うことも関係していると思います。キーワードでいうと「ちょっとした」「ちょっとしている」「様子がいい」。お湯を沸かす日常的な行為に、本格的にも、ちょっとしたも、ないようなところがありますが、それでも自分がいいと気分がいいものです。

 
ところがチョイ鍋は、ケトルではありません。デザイン要素が決定的に足りません。小型なべとしては、悪くないデザインですが、美術品としても扱われる「器」としてもパワーはありません。デザイン性が足らないのです。

 
🔳電気なべは、超便利
 
それでも、ちょいなべは売れています。それはやはり、超便利だからです。ケトルもそうですが、両者に共通しているのは、温度コントロール機能です。ただ沸かすのではなく、「何度」にするというのがポイントです。これはコーヒー、お茶の種類とも、淹れるのに美味しい温度がマチマチだからです。それまでは100℃のお湯を、「湯冷まし」などで、冷まし使っていましたが、もうそんな時代ではありません。ダイレクトにその温度にすることがポイントになります。

 

ちょいなべのコンソール。
W数とかでなく、温度で設定できるのがすこぶる便利。


沸騰状態。温度計を入れると99〜100℃。
吹きこぼれない微妙な温度制御、


 
これは料理も同じ。吹きこぼさず長時間煮る。人肌に御燗する。もうじき試される女子力「チョコレート湯煎」など、温度コントロールは大きなポイント。料理は「愛情」と言われますが、そのために必要な手間が火加減。ガスだとこの調整がなかなかに面倒くさい。電気だと、それが楽にできる。

 
通常の「電気なべ」に「電気圧力なべ」。電気なべは、双方持っていても損はありません

 
◼️食器としては、不満足
 
さて、料理が出来上がったところで、食べてみましょう。
正直、不細工。あまり良くない。 まず、手元に置くには大きすぎます。底は木のテーブルでも跡がつかない様に工夫されているそうですが、それよりも大きすぎると言うのがダイレクトな感想です。

 

調理次持つのはともかく、食事時には持ちにくく、思い。


 
これは取っ手がとれないことも一つの要因です。取っ手が取れるなべは、ティファールが有名ですが、ティファール方式だけが、取手のないなべを作る方法ではありません。ここはもう一工夫欲しかった。

ちなみに、今の取っ手は、なべとちょっーと離れたところを持つ設計になっており重さを感じますね

そして、口が付けられない。これはある意味当たり前なのですが、さりとてレンゲをさしっぱなしにできない。ラーメン丼と違いレンゲに対して大きすぎるのです。

 

底に段差があり、中身をさらいにくい


 
それは箸にもいえます。ラーメンを食べている時、一口お水が飲みたくなったら、箸を丼に置いてとなりますが、それがでません。ギリギリ置くことは可能なのですが、塗り箸をなべの縁に置くのには、ちょっと抵抗がありますね。

 

割り箸を置いたところ。縁ギリギリ。
実際、なべから直に食べる時、箸は置けない。


 
冷めると、食べやすい方向へシフトするのですが、それは保温性の高いなべの反対の意味ですから、痛し痒しのところです。

 
◼️食器との融合性
ということで、ちょいなべは単なる電気なべとも言えます。そして、そのまま食べるかと言うのはユーザーにお任せしますと言う感じの家電です。逆に言うと、食べられますと言う割に、通常の電気なべとの違いが盛り込まれていない様に思えます。

もし、そのまま食べることを強調するなら、なべの部分を金属ではなく、「やきもの」で作るのはどうでしょうか?
実は、シロカ、この組み合わせは実用化したことがあるのです。「かまどさん電気」。伊賀焼で作られた長谷川園の炊飯土鍋「かまどさん」はガス前提で作られているのですが、それの電気化したもの。

シロカ、かまどさん電気。
これで炊いたご飯は、すこぶる美味い。


これを作っているわけですから、できないわけではないと思います。

 
◾️ちょいなべは買いか?
 
このちょいなべ、買いかどうかと聞かれたら、買いですしかしそれは、これ一つで食事までするということではありません。よくできた、安価な電気なべで、時たまダイレクトに食べられるということを、でこしていません。

要するに潜在ニーズを、言語化し、今ある(できる)商品に落とし込んだだけであり、「すげー」という感じではありません。しかし、モノとしては、それなりによくできていますし、お買い得感もあります。食器要らずを強く意識しなければ、ありありの選択と言えます。

もう一つのポイントは置き場所ですね。常にテーブルの上にあっていいデザインとは言えません。少なくとも、優雅と言えるデザインではないですね。電気ケトルはあー見えて、テーブルにマッチするデザインです。そこはなべ、ケトル並のデザイン洗練性はありません

デザインは、個人の許容レベルで大きく異なってきますので、ここは、ご自身で判断をしてください。

 
商品のより詳しい情報は、以下のURLでご確認ください。
https://www.siroca.co.jp
 


 

 
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2021年1月11日

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