マスクの歴史は古いのですが、有用とされたのは、スペイン風邪(インフルエンザ)。当時、行っていた第一次世界対戦を終了せざるを得ない位の猛威でした。
それからほぼ100年。コロナで、世界は大騒動。
毎日のように、マスクの話題が、ネットで広まっています。手作りから、N95まで、いろいろ言われています。
ここら辺で原点に帰り、「マスク」とは何かを見直してみたいと思います。
▪️材料による分け方
マスクは、もともと針金のような金属で四角いフレームを作り、そこに布を当てて作っていたそうです。考え方から言うとろ過、空気清浄機のフィルター方式と同じ発想です。
このため、当てるもので、どれほど使えるのかが決まります。厳密に言うと、マスクを通さないところからも空気の行き来はありますので、完全ではないと言えますが、考え方はその通りです。
現在、ここは極薄のフィルターがはめられています。
いいマスクには必ずフィルターが入っています。フィルターは多くポリプロピレンで作られています。
さて現在、「布マスク」「不織布マスク」に大別されています。布の多くは、柔らかさを求めてガーゼが使われます。赤ちゃんの衣類に多用されることでもお分かりの通り、ガーゼは当たりがとても柔らか。このため、女性、子どもに人気があります。が、逆に言うと目が粗い。このため、何重にもしなければなりません。が、それでも目は粗いのです。不織布は逆に目が密です。このため防御効果は高いです。しかし、それでもフィルター入りには敵いません。
防御効果が高い フィルターあり>不織布のみ>布のみ
ということです。
板切れ1枚でも、ダンボールでも、隔離された感じはします。マスクもそうです。どんなに空気の通りがよくてもマスクをしている感じになります。しかし、それは甘い考え方で、フィルターを持たない布マスクは、それほどの防御力を持ちません。
手作りマスクの過信は禁物です。
◾️使用法による分け方
マスクの統計データーは、一般財団法人 日本衛生材料工業連合会(以下 日衛連)から発信されます。
ここに記載されている統計データーでは、マスクは家庭用、医療用、産業用に分けられています。
家庭用マスク、医療用マスクには、それぞれ以下の注釈がつけられています。
家庭用マスク | カゼ、花粉対策や防寒・保湿などの目的で日常に使われるマスクです。素材や形状、サイズなども豊富で、フィルター性能と通気性のバランスがよいため、長時間に渡り、快適に使用できるのも特徴です。 |
医療用マスク | 主に医療現場もしくは医療用に使用される感染防止マスクで、外科手術などの際に使われます。“外科の・手術の”と言う意味から「サージカル(surgical)マスク」とも呼ばれています。 |
ですが、別ページには、次のようにあります。
「オフィシャルな測定方法や国家検定規格が定まっている「産業用マスク」と異なり、「医療用マスク」「家庭用マスク」は、「日本国内において薬事法に該当しない雑貨品扱いとなり、検定規格がありません。」
つまり、よほど特殊な仕様でない限り、「医療用のみ」というマスクは存在しないのです。
考えてみると、当たり前です。
もともとマスクができたのは鉱山の粉塵を防ぐためです。このためフィルターは明確に定義され、マスクも密閉性が高いです。(毒ガスの用のマスクを想像してください。)このため、産業用は、フィルター他規定がされています。
しかし、医療用、一般用はそれがありません。理由は、急激に広がったからでしょう。広がったのは、スペインかぜの時。20世紀初めの有名な感染症で、第一次世界大戦終結の一因になった位です。マスクは、この時もガンと広まります。当然、今と同じ様に手作りでも対応します。昔の女性は、裁縫は身につけていましたからね。これだと規格の作りようがありませんからね。
◾️サージカルマスク(医療用)の考え方
今、メディアではマスクが足らないという国民の声と並行して、医療現場からマスクが足らないという声を聞きます。布マスクの作り方が、あれほどネットで出ているのに何故でしょうか?
それは、医療の現場では、フィルター付き、使い捨てが当たり前だからです。
私が幼い頃、注射器の注射針は、煮沸消毒して何度も用いられていました。しかし、今どきそんなことをする病院はありません。院内感染を防ぐためです。
院内感染防止は、一種の物量作戦です。
歴史を遡りますが、クリミア戦争に従軍で病院での死亡率を下げ、人々の命を救い白衣の天使ナイチンゲールがいます。彼女が務めたのは、衛生のキープでした、当時病院はきれいなところではありませんでした。そのため、病院にいるために、別の原因(主には感染症)で死ぬ人も多かったのです。負傷により抵抗力が落ちていますので、通常なら問題ない病気でも、致命傷になってしまうわけです。このため、彼女は再三再四、援助を政府に要求します。政府が動かないとみた彼女は、私財を投じ、医療用品を買い現地の病院に投入します。当時の金額で7000ポンド。現在に換算すると35万ポンド(4650万円)だそうです。
結果、42%の死亡率が、5%にまで下がったと言います。
物資が切れた病院は逆にいうと非常に危ないのです。看護師が、最後のマスクを使い回しているとの記事が掲載されますが、本来、それはあってはいけないことです。
では、サージカルマスクの考え方です。
よく布マスクは、自分が感染している可能性があるため、相手にうつすのを少しでも防ぐためと言われます。しかし、医療の場合は、それとは真逆です。「うつされない」が一番重要です。となると、フィルターありが、マストとなるです。
フィルターには以下の5つの試験があります。
1)N95 これは、NIOSH(米国労働安全衛生研究所)規格です。Nはオイル耐性がないこと、95は細菌や空中浮遊物など直径0.3μm(300nm)以上の微粒子を95%以上捕集できるという意味です。コロナウィルス単体は、それより小さいのですが、エアロゾル感染なら対抗することが可能です。厚生労働省では、SARS(重症急性呼吸器症候群)、MERS(中東呼吸器症候群)、新型インフルエンザや結核菌の対策指定品の一つとしています。
2)BFE(Bacterial Filtration Efficiency) バクテリア飛沫(細菌)捕集(ろ過)効率と呼ばれる規格です。試験では黄色ぶどう球菌が使われています。菌のサイズは0.8〜1.0μmですが、テストはエアロゾルで行われます。
3)VFE(Viral Filtration Efficiency) ウイルス飛沫捕集(ろ過)効率。2)のウイルス版。VFE試験では、φX174と呼ばれるウイルス(大腸菌のみに感染・増殖するバクテリオファージ)を使用します。バクテリオファージのサイズは10〜100nm。ですが、こちらもエアロゾルでのテストになります。
4)PFE(Particle Filtration Efficiency) 微粒子捕集(ろ過)効率。 0.1μm(100nm)粒径の試験粒子を使用したろ過テストです。
5)花粉ろ過効率 花粉代替粒子を物理的に捕集(ろ過)する性能。試験に用いる花粉代替粒子には、粒径がスギ花粉と同等の約30㎛で、アレルギーの知見が報告されていない天然粒子を使用します。
1)〜4)はアメリカの規格、5)は日本規格です。というのは、花粉症は海外にないからです。
サージカルマスクに用いられるのは、1)もしくは、3)、4)。2)、5)だけだと使えるシーンが限られると思います。
メーカーは、これらの試験に通ったフィルターを搭載している場合、パッケージにその旨を記載しています。
それだけいい性能だということです。
◾️品質規格はあるのでしょうか?
税金を投入したアベノマスクの品質がわるいことが問題になり、メーカー回収が起こりました。
では、業界で、品質が決まっているのかというと、1つだけ決まっています。それは含有ホルムアルデヒドです。ご存知の通り、ハウスシックの原因になる物質です。
しかし、ハエが混じっている、カビが生えているなどは、明文化されていません。こちらは常識の範疇として、各メーカーに任されています。
ちなみに、消耗品での利はかなり薄いのが常です。マスクも例外ではありません。このため、不良品を作らないように製造技術を高めていきます。利が薄い場合、不良品率;100ppmは切りたいところ。ところが先日のニュースだと、0.1%、1000ppm台。これではビジネスとしてやっていけません。
原因ですが、私は、2月に中国はマスク生産を6億枚/月から36億枚に増産させてます。これはかなり無理がある数字で、不良品がかなり入っていると思います。中国でもまともな生産をしているメーカーも多いのですが、中には急増ラインでの製造、手作業も多いと思います。慣れるまで、不良品はかなりでます。
こんな時は不織布マスクを選ぶことです。不織布マスクは作る時に、クリーンルーム内で行うのが普通です。また、工程も人の手がほとんど入りません。その逆が布マスク。手作業部分が実に多い。実は不良品というのは、人の手が入れば入るほど多くなります。それは人は必ずミスをするからです。このため、完全機械化の方が不良品は発生しにくいのです。
◾️まとめ
この様にマスクはかなり曖昧なもの。ですが、フィルターを使うことにより、その性能をキープしています。マスクを買うときは、サイズの次に、「フィルター」をチェックするといいでしょう。次の目安は不織布が使われているものを選ぶことです。具体的には、後ろの一覧表もしくは、VFEなどの表記の有無で判断します。
しかし、そのマスクを活かして使うコツはあと2つ。
1つはきちんと装着すること、もう1つはマスクを過信しないことです。今回の新型コロナは、まだ感染方法が完全特定できてはいません。空気感染の可能性がないわけではありません。そんな時、ベストな方法は、その場から逃げ出すこと。そういう考えをしながら使うと、マスクも上手く使われたという感じになります。
日本衛生商品のより詳しい情報は、以下のURLでご確認ください。
http://www.jhpia.or.jp/
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