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【洗濯機 2019】これからの洗濯機を考える。
〜独ミーレの洗濯機「W1」は洗濯の教科書みたいな出来〜


11月29日、第0回「センタクカイギ」が行われました。私も、傍聴しましたが、なかなか興味深いモノでした。洗濯機を見直すヒントがそこにはありました。
 
■洗濯は、他の家事に比べて分かりにくいのは何故?
カイギは、洗濯の「四変数」の確認から始まりました。
その時出された「四変数」とは、
1)水質:酸性よりか、アルカリ性よりか?硬水か、軟水か?等。
2)素材:衣類の素材のこと。ただし最終的には、縫製なども含む。
3)資材:洗剤、柔軟剤など、洗濯を助けるために、使用するもの。
4)機材:洗濯機のこと。
です。

要するに、これらを全て把握しないと、きちんとした洗濯はできないというわけです。このため「変数」という奇妙な表現を使ったわけです。

ちなみに、布の性質に書かれた本、洗剤に書かれた本は、いろいろあります。ところが、それら統合した洗濯について書かれた本は、ほとんどありません。理由は定かではありませんが、変数が多いため、書き切れないからだろうという指摘がありました。変わる条件が多く、複合的に効いてくるのですから、当然、よく分からないところも多くあります。それが洗濯という家事なのです。

 
■アイロンは洗濯に入れるべきなのか?
メンバーの一人に、洗濯王子こと中村氏がいらっしゃいました。
親しく話したとき、彼は「洗濯という行為は、服を買った時点に戻すことだ」と語ってくれました。洗って、乾かして終わりではないわけです。形が整えられ、着こなせる状態になってこその洗濯なのです。卓越したモノの見方です。

となると、当然「アイロンがけ」は必須となります。
そうすると変数がもう一つ増えるわけです。

洗濯はきらいな家事NO.1に良く上げられます。多分、ここで多くの人はこういうでしょう。「クリーニングがある!」

 
■究極の洗濯機は「二槽式」!??
カイギが進む中、洗濯機の話になりました。面白かったのは、究極の洗濯機は「二槽式」ではというのがありました。縦型洗濯機で脱水槽が別にある洗濯機のことです。全盛期は昭和中頃ですから、今となっては古典的。と言うか洗濯中、フタをする必要すらありません。幼いころ、グルグル回る渦の中央にこんもりとした泡の塊を見て楽しんだ記憶もあります。しかし、原始的な分、自分で好きなように設定ができます。プロの料理人が、愛用の品は?と問われて、古ぼけた鍋をだすような感じです。

まぁ、ここまでできるのは、スゴい人ということで、ちょっと置いて置くとして、いい洗濯機について考えて見たいとおもいます。

 
■生活家電.comの考えるイイ洗濯機とは?
では、一般の人にとって、いい洗濯機とは何でしょうか?

条件は次の4つだと考えています。
1)汚れが落ちる。
2)衣類を傷めない。
3)自分の生活スタイルに合っている。
4)納得できる価格である。

 
▪️汚れを確実に落とすなら「湯洗い」
まず基本中の基本、洗濯機の汚れ落としについて考えて見たいと思います。それには「己を知り、敵を知れば、百戦あやうからず。」の例え通り、汚れを知らなければなりません。

汚れは、大きく4つに分けられます。
1)汗など水溶性の汚れ
2)皮脂など油性の汚れ
3)固形物が繊維に挟まった泥汚れ
4)血液の付着など特殊な汚れ
4)はさておき、1)2)は普段遭遇します。3)は道路が舗装されていない時代はともかく、今だとアウトドアなどでの遭遇ですね。

洗濯は、「衣類の汚れを水に移す行為」と言えます。

1)の汚れは、水に溶け出します。つまり、水につけてさえ置けば、汚れは落とせます。しかし、2)はそうではないですね。水と油と言う言葉がある通り親和性がとても悪い。その親和性を良くするのが「洗剤」です。では、3)はどうでしょう。繊維のスキマに入り込んでいるわけですから、物理的な力で叩き出す必要があります。つまり「洗濯機」の能力が重要になるわけです。センタクカイギで、4変数とありましたが、それは衣類の汚れの種類が複合的だからです。

そしてもうひとつ。
汚れは、1)2)3)が単独で来るわけではありません。多くの場合は、複合的です。シャツの襟が汚れる時を考えてみてください。まず首が襟に触れると、汗がまず付着します。その後、肌が擦れで皮脂が付くわけです。
このため、布地へ付着した汚れは、ほとんどの場合、水溶性の汚れを油性の汚れが覆っている場合が多いです。

 
これから言えることは、洗濯は冷水ではなく、お湯洗いがいいと言うことです。皿洗いでも、油がべっとり付着した場合は、お湯洗いしますよね。そちらの方が、速く、確実に落とせるからです。

 
■日本で流通しているドラム式は、洗濯乾燥機型ばっかり
この湯洗いが標準なのが、欧米です。洗濯機としては「ドラム式」になります。

欧米のほとんどは硬水です。ヨーロッパアルプスは元々海だった地盤が隆起してできました。そこを水源に、ゆっくり川が流れるわけですから、カルシウムなどがたっぷり入り込みます。このミネラル成分は、洗剤の機能を阻害します。泡立たない。

お湯洗いは、洗剤をサポートします。だから硬水でもOKとなるのですが、お湯が使えるのは、「水少なく洗濯できる」ドラム式だからと言えます。お湯を大量消費することになると、経済大国でも、「なんとかして〜ぇ」となるでしょう。

 
このドラム式、日本でこのドラム式を買おうとすると高いです。理由は、仕様が「洗濯乾燥機」になっているからです。

海外ではそんなことはありません。「Washer」(洗濯機)、「Dryer」(乾燥機)、「Washer & Dryer」(洗濯乾燥機)にきちんと分かれており、最も品数が多いのが「Washer」(洗濯機)です。
今、60℃のお湯で洗濯すると、ニオイ菌を殺すことができるので、部屋干しでも臭くならないということで、ドラム式洗濯機が見直されています。もう少し待てば、安い、洗濯機だけのモデルが増えると思います。

 
■ステージ衣装から、宗教服まで対応の独ミーレの洗濯機
さて、先日、ローマ法王が来日しました。キリスト教最大勢力のトップ。その影響力は一国の元首よりスゴいです。さて、その服はどうされているのでしょうか?神の意志を伝える法王は、神に近いモノと言えます。宗教服は「手洗い」が原則なのです。機械などで楽をするのは罰当たりと言うわけです。

が、バチカンの地下には洗濯部屋があるそうです。設置してあるのは、独ミーレ社の洗濯機。丁寧な手洗いに匹敵するということでしょう。
笑い話でなく、高名なバレエ団もミーレを愛用します。公園を続けると言うことは、善意賞を洗濯、新品同様にケアするということです。よく、サーカスの移動シーンなので、列車に装備を積み込むシーンがありますが、それと同じで、バレエ団は、団員と一緒に多数の衣装、洗濯機も運ぶわけです。繊細な仕事ができると共に、タフでなければダメです。

ちなみに、日本で巡業する歌舞伎の場合、劇場毎に契約クリーニング屋があり、そこが頑張っているそうです。

 
■洗濯の教科書通りの仕様 ミーレ「W1」
2019年7月に発売されたミーレのドラム式洗濯機「W1」の仕様を見て見ましょう。
まず、新型だけあって洗濯プログラムは多いです。

「コットン」「ミニマムアイロン」「デリケート」「ウール」「シルク」「シャツ」『エクスプレス20」「濃い色の衣類・デニム」「アウトドア」「撥水加工」「スポーツウェア」「自動プラス」「枕」「カーテン」「ダウン」「新しい衣類」「羽毛布団」「すすぎのみ・糊付け」「排水・脱水」「庫内洗浄」。
これにオプションが、加わり、「短縮洗い」「プレアイロニング」「ウォータープラス」「しみ」「予備洗い」「つけおき洗い」「インテンシブ」「エクストラクワイエット」「エクストラジェントル」「衛生洗い(インテンシブ)」。

もうわけが分かりません。

 
でもすぐ気付くことがあります。「標準」は?、「おまかせ」は?
そうです「標準コース」もしくは「おまかせコース」はありません。

皆さんが最も多用しているコースだと思います。条件は、水は水道水、衣類はコットンもしくは混紡、洗剤は自由ですが、これでは、汚れ、特に皮脂汚れは落ちきらないのです。そして残った皮脂汚れが、黄ばむのです。

つまり、洗濯の第一目的、「汚れを落とす」に対しては中途半端なのです。

 
ミーレの場合は「コットン」を選択すると、次にお湯温度を聞いてきます。主には「40℃」「60℃」「90℃」からセレクト。40℃はお風呂ですから、垢がそうであるように、汚れが柔らかくなり、皮脂も落ちやすくなります。
60℃は、今、服に付いているニオイ菌、部屋干しすると変なニオイを出す菌を殺します。90℃はいわゆる煮粗い。煮沸消毒です。当然、90℃などは、普段使いません。しかしパンデミックの可能性がある今、心強い機能です。

そして衣類の量に対する適切な洗剤量を量り入れるのはW1の方でしてくれます。

ミーレは専用洗剤も開発してしまう。
理想を追求した時のあり方でもある。


人が真剣にすべきは、洗濯物を布種に分けること。どのような仕上がりにするのか考え、それに対する手段を決めることです。
洗濯のセオリー通りです。

 
■デリケートな衣類が得意な「W1」
デリケートな衣類を洗うときですが、「つけ洗い」という方法があります。濃度、温度を管理した洗剤水に洗濯物を浸しておく洗い方です。
洗濯機だと、回さない洗い方です。

ミーレの洗濯機は、このような方法も含め、実に多彩な方法で洗濯物の汚れに立ち向かいます。だから、先述した通り、宗教服、ステージ衣装もOKです。

 
私もマウンテンパーカーをミーレで洗ったことがあります。時間もかかりました。が、新品かと思えるような仕上がりでした。その時思ったのは「衣類に負担をかけないんだなぁ。」ということ。その代わり「時間」が掛かります。

 
■ミーレは果たして高いのか?
ミーレは世界で唯一の「高級家電」と言われています。
プライスリストを見ると確かに高いです。が、それには明確な理由があります。
「20年持たせる設計で組み立てられているからです。」

洗濯機で一番負担がかかるのはモーターです。なかでも軸は、ドラムの重さ、振動などを受け止めるため、負担が大きいです。

このためミーレは自前の製鉄所を工場内に持っています。スウェーデンなどが、近くにあるのにも関わらずです。理由は品質の確保です。

また、今は、樹脂が多用されています。しかし、樹脂は必ず、かなり速く劣化します。みーれは、そんな時郎は必ず金属で対応します。

 
このため高いです。W1は、445,500円(消費税、送料込、設置料は別途)。
20年持つとして、10年だと225.500円。日本メーカーのほぼ倍です。が、その価値は充分あります。特に、服が好きな人にはたまらないと思います。

 
■日本メーカーは、設計思想を学んで欲しい
「ミーレ社が開発した洗濯機や乾燥機のデザインは素晴らしい。これらの製品には、ここ数年どんなハイテク機器にも感じたことのない興奮を覚えた。」

ミーレの洗濯機を見たスティーブ・ジョブスの言葉です。

お金持ちのジョブスが、ミーレを買うのはありがちな話だと言えますが、あの目利きをここまで言わせるのは大したものだと思います。ただし、ここでいうデザインは、形という実ではなく、設計、設計思想と言えます。

 
ミーレの製品はブレない。120年4代に渡り、連綿とよりよくすることを追求してきたわけですから知見は膨大なモノです。その間、洗濯という重労働で、いろいろな知識、智恵を総動員しなければならない家事を、よりこなすために脇目も振らず邁進してきたわけです。

 
一方、日本の洗濯機は、誰でも使えるようにいろいろな機能を付けてきました。が、重労働である洗濯という家事から、人を解放した反面、汚れをおとしきらない洗濯機を上市し続けてきたように思えます。

確かに洗濯という行為の結果は自己満足ですし、縦型が主流の時代ドラム型は高嶺の花の設計で良かったかも知れません。が、泥汚れが少なくなり、部屋洗いが普通になりつつある今、お湯洗い=ドラム式は、当たり前になりつつあります。

しかし、それにアプローチしているのは、ハイアール傘下のアクア、新規参入のアイリスオーヤマと、動きやすいメーカーばかり。

 
四大家電(エアコン、洗濯機、テレビ、冷蔵庫)の内の一つだから、今までと同じように様子をみながらと思っているのでしょうか?

もし、この分野を大事にしたいと思っているなら、もう一度、原点に返り、洗濯とは何かを追求した洗濯機が必要だと思います。日本メーカーもただお湯洗いができるというのではなく、洗濯物とは何か? どう分類してもらうのがイイのか? 洗濯機が自動ですべきことは何か? そんな根本的な問いを組み上げた洗濯機が必要だと思いました。

また、日本で洗濯をする人の知識もプアです。フランス、イタリアはファッションで有名ですが、これらの国は、ママの洗濯術がまだ生きており、親から子へ洗濯方法が、料理レシピと共に引き継がれているそうです。ファッションは一日にだけのモノではないですから、衣類ケアは当たり前というわけです。こちらの啓蒙もお願いしたいモノです。

 
#センタクカイギ #ミーレ #W1 #生活家電.com

2019年12月3日

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