新製品

ダイキン、クラウドファンディングを使って、ポータブル・エアコン他 新製品を導入


靴屋のセールスが2人、AさんとBさんは、南の島へ自社製品を売り込みに行きました。Aさんはこうレポートしました。「靴をはく習慣なし。この島でのセールス活動はできません。」ところがBさんは、真逆のレポートを会社に送りました。「誰もはいていません。島にいる人の数だけ売れます。」
 

今、Makuakeでクラウドファンディングされている
ダイキンのポータブルエアコン「Carrime(キャリーミー)」


こんなふうに、同じことを見ても、見る方向で全く違うのがマーケティングです。このため、家電メーカーは市場調査を何度もかけます。ところがこの市場調査、かなり費用がかかります。そして、調査の仕方が下手だと、何の価値もありません。市場調査はわりとバクチに近い性格を持っているのです。

空調専業メーカーのダイキンは、これまでエアコンを中心にビジネスを展開してきました。昔は、かなりピンチの時もありましたが、今や、民生用も、業務用も好調。空調のトップメーカーです。

そのダイキンが、今までにない商品を世に出そうとしているのですが、彼らが選んだのは、既存の開発、生産、販売ではなく、クラウドファンディングを利用することでした。

 
■クラウドファンディングとは何か?
 
クラウドファンディングとは、「群衆(クラウド)」と「資金調達(ファンディング)」を組み合わせた造語です。その意味は、「インターネットを介して不特定多数の人々から少額ずつ資金を調達する」ことです。

資金調達といえば、一般的には、金融機関からの借入や関係者・ベンチャーキャピタルによる出資などがあげられます。金融機関、キャピタルなど出資者が事業の成否を予測し、出資を判断します。それに比べ、クラウドファンディングは、出資者=ユーザーで死から、今までの資金調達にはない「手軽さ」や「拡散性の高さ」、「テストマーケティングにも使える有用性」といった点が魅力的な新たな資金調達の仕組みとして近年注目されています。

特に、「こんなモノやサービスを作りたい」「世の中の問題をこう解決したい」といったアイデアや想いを持つ人は誰でも“起案者”として発信でき、それに共感し「応援したい」「モノやサービスを試してみたい」と思った人は誰でも“支援者”として支援できる、双方にとっての手軽さがクラウドファンディング最大の特徴といえます。

今、同様に、Makuekeでクラウドファンディング中の
タイガー魔法瓶の「LOVE TIGER COLLECTION」


 
■何故ダイキンは、クラウドファンディングで新製品を立ち上げようとするのか?
 
日本のメーカーの多くは、技術は一流と言われます。技術=人ですから、技術者が多くいると言い換えてもいいと思います。しかし、技術がある=売れる製品ではありません。また、技術がある=いい製品でもありません。
前者の場合、製品プロデューサー機能が欠けていますし、後者の場合、品質への落とし込みが必要です。

今まで、ダイキンが頑張ってこられたのは、「エアコン」という既成製品だったからと言います。ダイキンが鳴かず飛ばずの状況になったのは、「湿度コントロール」という技術まで入れた技術てんこ盛りエアコン「うるるとさらら(通称:うるさら)」を導入したからですが、これはできる技術の結集でした。

以降、ダイキンは復活するのですが、それ以降スゴく特徴的な機能を付けたか?と問われると、そうではないですね。空調の要素(温度、湿度、風(気流)、二酸化炭素濃度、浮遊物(花粉、PM2.5)など)を詰めることと、国からも指導されている「省エネ」を詰めてきました。が、これは、全メーカー同じです。結果、エアコンはなかなか差別できない商品になってしまいました。

逆に言うと、これ、マーケティングが不要とも言えます。白物家電全般にいえますが、5年後の生活自体は、そんなに大きくは変わらないだろうという見方は決して間違っていません。ただ、いろいろな要素のバランスが違うのです。

例えば、テレビ。2K⇒4K⇒8Kという進化は予定通り。しかし、PC、タブレット、スマホなどが大きく普及した結果、ホームエンターティメントが大いに増え、テレビに重きが置かれなくなりました。結果、高いテレビはいらない。中国製で十分。要するに、高いテレビに重きを置く日本メーカーは、1〜2社位あればいいわけです。技術と価格のバランスが大きく逆転した好例です。

 
エアコンも同じですね。今や、各部屋1台。各家庭に3台あるのが普通だそうです。昔なら、1台30万円でOKだったのでが、今は16万×1台+8万×2台というふうにシフトさせざるを得ません。その上、年々、使用寿命は延びており、今は13年だそうです。つまり、モノの循環がゆっくりになっているわけです。

 
と言うことで、課題は、今までにないモノを商品化することです。が、今までに無いものとは何でしょうか?そう、南の島の靴です。このニーズは計りがたいところがあります。それで取った施策が、クラウドマーケティングと言うわけです。

 
■ポータブル・エアコンは、ある意味エアコンの「ウォークマン」
 
で、発表会で提示された新製品は、4種。プロジェクト名は、「DAIKIN LAUNCH X」。内、クラウドファンディングされる、ポータブルエアコン「Carrime(キャリーミー)」をクローズアップしてみます。

キャリーミーは、どこでも持ち運べるエアコン。サイズはそうでもありませんが、重さはそれなり、6kgあります。どこでも使えて涼しい、というのが売りです。

が、間違えないで頂きたいのは、このポータブルエアコンは、部屋を冷やすことはできません。それはポータブルの場合、エアコンの室内機と室外機を同じ筐体の中に入れ込んであるからです。

室内機側では冷たい風がでてくる反面、逆の室外機側からは熱風がでるからです。このため、開け放した部屋、アウトドアでの使用が前提となります。(密閉空間では、室温は上がると何度も念を押されました。)

同じ筐体内に、室内機、室外機を持つ。


私が、これを見たとき思い出したのが、「ウォークマン」です。
オーディオ趣味の良識派からは、スピーカーがない、録音ができない、音が悪いとさんざんぱら言われました。いうなれば半端者です。

しかし、皆さん、ご承知の通り、ウォークマンは音楽のあり方を変えたわけです。
半端物 上手に使えば とっても便利! と言うわけです。

エアコン、使える範囲に限りがあります。吹出し部の温度は、周囲温度 -7℃ですが、すぐ暑くなってしまいます。このため、送風範囲が適正でしょう。かなり狭い。しかし、気温:35℃、湿度:70%の場合、台風並みの50m/秒でも、計算では、30.7℃。4℃強しか下がりません。これより低い、28℃ですから、実にスゴいと思います。しかし、風が届く範囲までです。

モックアップ展示ながら、細部の作り込みもキレイ。


あと問題は、価格。
ウォークマンは、当時:2万円前後。今現在だと、だいたい4.5万円位でしょうか。
民生用の1つの目安は、5万円です。このポータブルエアコンは、6万円ですから、ちょっと高いです。

39,000円(税抜)なら売れるだろうなぁ〜。
希望小売価格だと、ちょっと高いか。


このモデル、11月4日で、予定資金の60%が集まっています。頑張って欲しいと思います。

11月4日の昼間の時点の情報です。


 
 
■「DAIKIN LAUNCH X」の、その他商品
「LOOP STREAMER(ループストリーマー)」は、下駄箱、クローゼットに置きっぱなしにしても問題ない、コードレス脱臭器。2020年の発売を目指すそうです。

 
アシストサーキュレーター「エアリンク」は、室内の空気を撹拌するサーキュレーター。サーキュレーターはエアコンのサポート役です。結構いろいろな商品がでています。「エアリンク」のイイのは、設置の自由度がすこぶる高いことです。床への横置き、縦置きはもちろん、壁掛け、天井など、いろいろなところへ取り付けることができます。

 
また、無線LAN非搭載エアコンのサポートもします。エアコンと連携し、「エアリンク」を中心にネットワークを形成するわけです。

 
そして、IAQセンサー&AIコントローラーの「Beside」。こちらは、香港で設立のIoTスタートアップ企業 Ambi Labs社との提携で生まれたモノです。

センシングは「温度」「湿度」「天気」(天気はネット情報)「照度」「CO2」。汎用の場合は、これに加え、「花粉」「PM2.5」「VOC(Volatile Organic Compounds)揮発性を有し大気中でガス状となる有機化合物の総称」などが必要なのですが、Besideはエアコンに絞った形です。
 
Besideでも、分かりますが、かなり仕様を絞り込み、その分、価格他に反映させようとする考えが窺えます。

 
さて、アグレッシブに動くダイキンを市場は、どう評価するのでしょうか?

 
詳しい情報は、DAIKIN LAUNCH Xのホームページにてご確認ください。
https://www.daikin-launch.jp
MakuakeでのCarrimeはこちらから
https://www.makuake.com/project/carrime/
 

 
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2019年11月4日

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