「猛暑用」に設計された「6畳専用」エアコン、アイリスオーヤマのルームエアコン「airwill(エアウィル)」 GXシリーズ
1950年代の家電三種の神器が、「白黒テレビ」「冷蔵庫」「洗濯機」。高度成長期の新三種の神器が「カラーテレビ」「クーラー」「クルマ」。そして、デジタル時代が「デジカメ」「DVDレコーダー」「薄型テレビ」。非常に売れた、時代の象徴するような家電です。
この内、デジタル時代の3種の神器は、1990年は日本メーカーの十八番だったのですが、いまや全部、アジア諸国に持って行かれました。特に日本の家電の象徴的存在だった「テレビ」は、散々な状態になっています。正直、ソニー、パナソニックすら事業継続が厳しい状況です。
一方、アナログ系の家電は、まだまだ世界のトップクラスです。特に、高温多湿の日本の風土に、1990年代後半からの異常とも言える暑さにより、磨き抜かれたエアコンの技術は天下一品。海外でも遅れを取る物ではありません。
今回は、そんな「エアコン」に昨年参入したアイリスオーヤマの「猛暑用」の「6畳エアコン」のお話しです。
■エアコンのラインナップ
エアコンは、大きく3つのラインナップがあります。
1つめは、持てる技術を全て入れ込んだ「フラッグシップモデル」。
2つめは、フラッグシップから、余り使わない機能を除いた「中級モデル」。
3つめは、基本機能に重きを置いた「量販モデル」。
実は、「フラッグシップモデル」と「中級モデル」は、時期を問わず売れる傾向にあります。主な設置場所は「リビング」。基本広いエリアが対象です。
ところが量販モデルは、夏場が最大需要。「暑さに耐えられないけど、今お金がない!」と言う人にバカスカ売れます。こちらは、どちらかと言うと「個室」。メインは、6畳、8畳となります。
今回、アイリスオーヤマが目を付けたのは、この量販モデル。この「基本性能」と「価格」で勝負しているところに「企画」を持ち込んだのです。
■ターゲットは「猛暑」と「6畳」
「量販モデル」のリモコンは単純にできています。「温度」「風量」「風向」、そして「タイマー」が主な操作ボタンとなります。だからと言って、「誰が設置しても性能が同じか?」と問われると大間違いです。エアコンの知識の有無で大きく変わって来ます。
例えば「室外機」。中の熱を外に逃がす働きをします。この効率を上げるには、なるべき「風通しが良く、かつ日陰」がいいです。理由は、熱が籠もるとエアコンの冷却効率が落ちるからです。6畳の部屋に、6畳用のエアコンを付けているのに、効きがよくない人の多くは、設置に問題があることが多いそうです。
仕方がないので、「8畳用」などを買い求める人もいますが、個人的には効き目が薄いと思います。設置を変えないと、やはり効率が悪い。どんどん電気代が嵩んでしまいます。現代日本の家でエアコンなしは考えられないので、設計するときは、室外機をどのようにするにかも考えたいモノです・・・。
閑話休題
今回、アイリスオーヤマは、この量産型の夏の顧客を取り入れるため、「猛暑」と「6畳」をキーワードにしました。
つまり、猛暑も含めエアコンの効率が悪くなる時でも、きちんと冷却できる、6畳用エアコンで、どんな時でも6畳を冷却できるエアコンなら、顧客に訴えることが出来ると考えたわけです。
そして見直したのは、室外機とリモコンでした。
■冷房能力を上げるため、室外機を見直す
エアコンは、室内機と室外機から成り立っています。この内、真の縁の下の力持ちは「室外機」です。
外で、24時間365日、夏の暑い日でも、冬の雪降る日でも頑張らなければなりません。そして、この室外機、サイズを小さくするのがトレンドとなっています。
小サイズ化は、設置の自由度を増やす、より目立たなくするなど、いろいろなメリットがありますが、その一方、外乱に対し弱くなる傾向にあります。
猛暑などはこの外乱に当たります。本当は、ここでグンと冷やしてもらいたいのですが、猛暑などは想定外とするメーカーもあります。特に、室外機を小さくすると、熱も溜まりやすくなるので、不利な方向です。
今回アイリスオーヤマは、やや大きめの室外機を採用しています。
この大きさのため、冷房能力を業界最高クラスの3.5kWを実現させています。6畳は標準:2.2kW。これだと、35℃の室温を24℃まで下げるのに、約50分掛かります。が、3.5kWだと、その半分以下の23分だそうです。
そして、猛暑日の外気温:38℃で、室外機の周りの温度が47℃でも、きちんと冷やせるそうです。
通常なら「省エネ」エアコンなのですが、「いざ鎌倉」となった場合、「猛暑モード」を選択すると、フルポテンシャルで暑さに対抗してくれるわけです。
この性能は、今ある技術で対応可能ですが、どこに主眼を据えるのかで技術の使い方が全く変わります。「量産品だから、今までの流れで」とすると、外乱に強くすることはできません。その点、「猛暑」に目を付けたのはなかなかの着眼点とも言えますし、省エネを追求してきたメーカーからすると、よくないとも言われそうです。
しかし、個人的には、人がいやがる猛暑にまじめに取り組んだアイリスオーヤマに分があるように思います。
この室外機に加えて行ったのが、温度センサーの追加です。通常、エアコンの温度センサーは、空気の吸込口もしくはコントロールボックス内に付いています。
これで部屋温度全体を推し量るわけですが、高級モデルには、それ以外に部屋の温度をサーチするサーモグラフィーなどが内蔵され部屋の隅々まで温度を確認、どこまで冷やすべきなのかを判断します。つまり部屋に温度分布があると言うわけです。
残念ながら、量販モデルにそんな高級な機能は付けることができません。しかたないので、本体の温度センサーで温度管理と言うわけです。しかし、その場合、使い手が感じる温度と異なっている可能性も大いにあります。
アイリスオーヤマのアイディアは、エアコンより人に近い位置にあるリモコンに、温度センサーを内蔵させること。こうして、まずは正確な温度でエアコンをコントロールするわけです。また本体にも内蔵させているので、より人に添った温度設定が可能と言うわけです。
■6畳 一点集中のラインナップ
私が今回、アイリスオーヤマがスゴいなと思ったのは、他の畳数ラインナップを作らなかったことです。
通常のエアコンは、モデルに対し、複数の対応畳数を持ちます。しかし、これが諸刃の剣。バランスよく売れてくれるとイイのですが、そうでない場合、半端な畳数はだぶつきます。在庫があると倉庫代だけでかなりの費用が飛んで行きます。
だからこそ、エアコン参入2年目のアイリスオーヤマは、この猛暑対応という類を見ないモデルを、6畳だけにしたのだと思います。
メーカー製品は、どんなにマーケット調査を行っても5割も詰めることができません。あとの5割はメーカーの意志であり、その市場に合わせた「企画」、「デザイン・技術」、「価格」の持って行き方です。
言い方を変えるとメーカーの新製品は常に「バクチ」とも言えます。ユーザーが認めてくれたらヒット商品となります。このためには商品は尖ったところを持つことが必要ですが、尖りでユーザーを捕らえるためには、半歩だけ新しくすることです。自分の良さを見せようと一歩分新しくすると、かなりのユーザーが理解しにくくなります。
100年間開発されつづけた家電には、今、青色LEDのような「約束された発明」はありません。 端的に言うと「技術」だけでは成功しないのです。そうなると、日本メーカーは、とても弱くなります。デジタル製品がでる前までは、「技術」と「品質」で対応できていました。それはユーザーの要望に「技術」が追いつけなかったからです。
ところが今、「技術」と「品質」を持っているところはスゴく多い。「中国」「韓国」もそうでしょうし、その先には「インド」が控えています。
ベンチャー企業から急成長したアップルは、この「技術」と「品質」はどちらかというと苦手。最終的には、委託生産です。代わりにアップルが駆使しているのが、「企画」「デザイン(設計)・技術」「価格」。日本はモノ作り大国と言われますが、ここがすこぶる弱い。
これに対し、メーカーを退職した人を集め、家電業界に旋風をもたらしつつある、アイリスオーヤマは、「企画」「デザイン(設計)・技術」「価格」で勝負を仕掛けています。が、勝負と言うのは負けるときもあります。その時の被害を最小限にするには、ラインナップ数を増やさないことです。
「airwill(エアウィル)」 GXシリーズは、極めてアイリスオーヤマらしい一品といえます。
■air well GXシリーズ 仕様一覧
商品のより詳しい情報は、アイリスオーヤマのホームページにてご確認ください。
https://www.irisohyama.co.jp/aircon/gx-series/
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2019年5月3日
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