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『広島県因島産 はっさく(ビール)』とかけて『ミモザ』と解く。その心は・・・。
次なる銘品はこれ!02


『ミモザ』というカクテルをご存じですか?
シャンパンを、オレンジジュースで割ったカクテルです。今回、スプリングバレーブルワリー東京が造り、限定販売する『広島県因島産 はっさく』を試飲して、思い出したのが『ミモザ』でした。

本日は、「広島県因島産 はっさく」(八朔ビール)のレポート。
レギュラーサイズ(360ml)/1杯930円(税込)と高めだが、その価値は十分にある。


■酒税法改正でフルーツ・ビールもビールの仲間入り
県の特産で、果実を上げる県は多いです。青森のリンゴ、山形のサクランボ、山梨のブドウ、静岡のミカン、鳥取のナシ。瀬戸内にいたっては柑橘類の宝庫で、ポンジュースで知られる愛媛県には学校にオレンジジュースがでる水道があるとか・・・。

お酒も果物から取れるお酒がいっぱいあります。
ブドウはワイン。オレンジからはグラッパ。サクランボはシェリーになります。また、お酒にその果実のエッセンス(果汁)を混ぜ、上手く発酵させるお酒もあります。

例えば、フルーツ・ビール。ビール王国で有名なベルギーでは「クリーク」がそうです。サクランボ・ビールともいうべき、このビール。見事に、「酸っぱい!」。ビールなら普通「苦い」なのですが、これに関しては実に酸っぱい!。ここまで爽快だと、また飲んでしまうと言う、素晴らしいビールです。(味わうなら、ベルギービール・ウィークエンドをお勧めします。)

ベルギービール・ウィークエンドで味わうことができる
フルーツビール


ところが、ドイツと日本は、こんなビールを持っていません。ドイツは、バイエルン公ヴィルヘルム4世が定めた「ビール純粋令1516年4月23日に制定した法。ビールは、麦芽・ホップ・水・酵母のみを原料とすることが定められている。」ドイツは以降連綿と守り続けていますし、日本はドイツビールをお手本に酒税法を作ってしまったわけですから、混ぜモノをしたビールをビールと呼ぶことができませんでした。酒税法で酒の種類が決められているので、ビールに何か副原料を混ぜると、ビールとは言えなくなります。お客さんに問われても法律上「ビール」とは言えない、さりとて発泡酒でもないということになり、店も扱いかねていました。

これが変わり、2018年4月に、ビールの副原料が認められ、今ではベルギーのフルーツ・ビールも含め「ビール」となりました。それまでは、クリークなどは、ラベルには「ビール」と書かれているのですが、日本語で追加されたシールには「その他の雑酒」。無形世界遺産に対して失礼な話でした。

 
■副原料 八朔(ハッサク)について
広島で育ったので八朔はよく食べていました。1月が過ぎ、2月に入るとコタツの上のミカンカゴの中に温州がなくなります。代わりに出てくるのが八朔です。温州と八朔は全く違いますね、まず皮が厚い、小さい頃は母が包丁で切れ目を入れてくれたモノです。その上、房袋の皮も厚い。白い筋の部分から皮を剥きます。味も全く違います。温州の甘酸っぱい感じから、ホロ酸っぱくて、ちょっと苦い。その上、ややパサつきます。

原産というか、原木が見つかったのが、広島県因島(いんのしま)。それが江戸も末期の1860年。因島というと元々「因島市」今は「尾道市」に合併されました。があった位栄えた島であり、本州四国連絡橋の尾道・今治ルート、通称:瀬戸内しまなみ海道が通っています。世界的にも有名なサイクリングロードです。

昨今では、和田竜の『村上海賊の娘」ですかね。景は現代に翻訳すると男装の女性士官でしょうから、宝塚でも取り上げてほしいものです。それは置いておくとして、・・・。

 
八朔はちょっと面白いところがあります。まず名前の由来は、「旧暦の8月1日(現8月30日頃)」、八朔から取られています。これは、八朔ゆかりの寺の和尚が「八朔ごろには食べられる。」と言ったからだそうです。しかし、一番実が大きくなる冬場に収穫して、冷暗所で1〜2ヶ月熟成させて出荷するのですから、ちょっと違うのではとは思います。が、そのまま木で熟成させる方法もあり、こちらの出荷は4〜5月。「さつき八朔」と呼ばれている位です。8月には近づきますが、何故和尚が「八朔」と言ったのかは分かりません。

あと、八朔には2種類あるそうで、通常の黄色みの強い「八朔」と濃いオレンジの「紅八朔」があります。通常のは「八朔」とか「ふつう」とか呼ばれているらしいですけど、元祖ですから、あたりまえとも思います。「紅八朔」は主に関西に出荷。人気が高いそうです。

元々、八朔は柑橘類としては果肉を楽しむのが主だった上、加熱すると苦みが増すため、なかなかジュース他加工できませんでした。が、今はイオン交換法で苦みを取り除きジュースにもされています。が、個人的には果肉で楽しみたいという感じですね。因島にある「はっさく屋」が出している銘菓「はっさく大福」は、八朔が1房分まるごと入っており、はっさくの酸味、白あんのスッキリとした甘さ、みかん餅のやわらかい粘りバランスが取れていて、お勧めの美味しさです。

はっさく大福。お勧めの一品。


 
■スプリングバレーブルワリー東京の試み
「スプリングバレーブルワリー」というのは、明治時代のビール醸造所。場所は横浜にありました。始めたのは、ウイリアム・コープランド。ノルウェー生まれのアメリカ人です。

初めてというのは、何でも苦労が絶えません。が、それを乗り越え、彼のつくるビールは、横浜居留地に住む多くの外国人たちの間で話題となり、やがて日本人にも飲まれるようになり、スプリングバレーブルワリーは、ビール醸造所として、日本で初めての商業的な成功を収めたそうです。

彼は、ビール醸造だけではなく自宅の庭を改造し日本初のビアガーデンをつくるなど、人生をビールへの情熱に傾け続けました。その土地はジャパンブルワリー、後のキリンビールへと引き継がれます。

そして時は、平成の御代、2012年。キリンビールの中で、「脈々と受け継がれる日本のビール文化を、もっと面白くしたい」という社内ベンチャーが始まります。世界的にはクラフトビールを含め「多様性」が求められている時代です。

そして、2015年に代官山と横浜に醸造所併設店舗がオープンします。名前は「スプリングバレーブルワリー東京(以下 SVB東京)」「スプリングバレーブルワリー横浜」。横浜は生麦工場内です。首都高の横羽線から巨大なタンクが見えるところです。

むしろ地理的に良いのは、代官山。渋谷から電車で2分。歩いても15分ですから近いです。ビールは規模を問わなければ、かなり小さいスペースでも醸造が可能です。逆に言うと、「トライ&エラー」が負担にならない。と言うことで、アクレッシブな活動ができると言うわけです。

そのSVBが掲げたのが、「SOCIAL BREWERY」。
個性あふれるモノづくりを通じて、人と人をつないでいくことで、人の心を豊かにするとともに、社会を少しずつ良くするきっかけとなる「場」を作るブルワリーになりたいと言うこと。

その中の1つの試みが、「FARM to SVB」。国内各地と連携したビール造りです。これも副原料を認めてくれたからこそのアクション。いろいろな味が楽しめますし、ビール王国へ対し、日本の醸造技術がどこまで頑張れるかでもあり、実に面白い見ものでもあります。

「広島県因島産 はっさく」に最も近い色味の写真。
果汁を強く感じさせる。


■美味しい「下品」
さて、ここでタイトルに戻ります。「ミモザ」は美味しいカクテルで、女性に勧めると必ず喜ばれます。が、これを「下品な飲み物」とする人も多くいます。それは、シャンパンは多くの場合、ワインより格上、最高の飲み物と言われるからです。それを「事もあろうに、オレンジジュースなんぞで割るなんて!」というのが言い分です。

その形で行くと、フルーツ・ビールは「邪道」と言い出す人が必ず出てきます。ビールもある意味完成されたお酒ですから。が、私はミモザも八朔ビールもそうは思いません。香り高く、美味しい。漫画が面白ければ連載されるように、美味しい飲み物は人の顔をほころばせます。

「広島県因島産 はっさく」は、香り高く、一口目は、かなり強く八朔の味がします。八朔ジュースかと思える位です。その位、上手く味が調って(ととのって)います。特に、ポップの苦みが邪魔をしていません。前述のベルギービールの「クリーク」も古いポップを使うそうです。要するに果汁とどう喧嘩を避けるかということです。八朔の場合は、八朔が苦い分だけ、ポップを減らしたそうです。なるほど、味が喧嘩をしていないのは、ビールが譲歩することにより、八朔の美味さを取り入れた形です。

『広島県因島産 はっさく』のビールカード。
運が良ければ入手できる。


こう書くと、楽々作れたようですが、実際は違います。まず八朔を手動の搾什器で搾ります。100kgから30kgの果汁。部屋には八朔の香りがむせかえるようだったそうです。そうして取った果汁は苦み成分がほとんどなく、酸味&少しの甘味。苦み成分は果皮にほとんど集中しています。果肉を食べる時に、苦みが感じられるのは皮の一部が果肉に付いているからです。そしてこの2つを加熱殺菌した後、再度混ぜ合わせ、上手くバランスを整え、八朔の味に仕立て上げるわけです。熟成途中のビールに入れてですから、腕が必要なところです。

アルコール度数:4.5°。色は八朔より淡い黄色。香りと酸味と苦みのバランス。実に美味しい仕上がりでした。

 
■洒落たゲストタップ 今回の「広島県因島産はっさく」は全部で、900L。約2,300杯分作られています。このためSVB東京のみで、4月5日(金)からの発売。当然、「生(ドラフト)」のみ。代官山へ来て下さいとなります。

そして「広島県因島産 はっさく」の発売に合わせて、瀬戸内のブルワリーや食材を使用したメニューが展開されます。

そのゲストタップが、「大三島ブリュワリー」(愛媛県)です。ここからは、八朔に対抗というわけではないでしょうが、「いよかん」と「デコポン」のビールが提供されるそうです。同じ柑橘系と言っても、「八朔」「いよかん」「デコポン」は全く異なりますからね。この比較は楽しみ。(味比べセットが欲しい所です!)

限定フードでは、廣島赤鶏砂肝と葉ニンニクのアヒージョ、瀬戸内レモンとミントのフェットチーネ、揚げもみじまんじゅうとクリームチーズジェラート。面白いのは、揚げもみじまんじゅうでしょう。地元では定番の食べ方ですが、東京では珍しいかも。くどい甘味がないので、ビールにも割りと合います。

廣島赤鶏砂肝と葉ニンニクのアヒージョ


瀬戸内レモンとミントのフェットチーネ


揚げもみじまんじゅうとクリームチーズジェラート


平成最後に、今後を先取る、今まで認められていなかった上質の味を是非お試し下さい。
美味しいですよ。

 
より詳しい情報は、以下のホームページにてご確認ください。
https://www.springvalleybrewery.jp/pub/tokyo/
 

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2019年4月5日

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