美味しいコーヒーは淹れられるが、初心者には分かり難い、ツインバードのコーヒーメーカー『CM-D457B』で、家電を考えてみた
ツインバードのコーヒーメーカー『CM-D457B』。
ツインバードが、満を持して昨年10月に出したコーヒーメーカーです。
コーヒー好きの私は、昨年の内に全評価を終えていたのですが、考えあぐねるところがあり、レポートを今年に持ち越してしまいました。
その理由は・・・。
■コーヒーは嗜好品 嗜好品をネット検索すると「栄養をとるためでなく、その人の好みによって味わい楽しむ飲食物。茶・コーヒー・酒など。(デジタル大辞泉)」とあります。この定義が的確か、否かは置いておくとして、人間とはつくづく刺激を求めて止まない動物だと言うことがわかります。
そしてもう一つ面白いのは、人の情報の85%弱は視覚、残る15%弱は聴覚。残りが臭覚、味覚、触覚とまで言う人がいるにも関わらず、嗜好品は人としては稀な情報に依存しているということです。だからこそ、手に入れにくい。このように、嗜好品は生きて行くには必ずしも必要がないもの関わらず、それがないと生きて行けない様に言う人もいます。不思議なものとしか言い様がありません。
扱いも人によって様々です。ちょっとした差を針小棒大のように騒ぎ立てる人もういます。中には差が分からないと言いつつ、高いお金を出すして人もいます。コーヒーは、どちらかというと安価な嗜好品です。コンビニで100円、駅前のカフェでも300円あれば事足ります。まあ安いといっても「スタバ貧乏」という言葉があるぐらいですから、やはり高いのかもしれませんが・・・。
また、嗜好品は 色々な方向性があります。極めようと思ったら大変です。スペシャリティコーヒーの様に、品質劣化を防ぐため、シャンパンボトルで豆を保存。3000円/杯のコーヒーもあります。(スペシャリティ・コーヒーは、生産、流通記録が全部分かるコーヒーのことです。その理由は、繊細な味をキープするためです。結果、酸素に触れささないようにするために、シャンパンボトルを使ったり、高くなったりします。)
嗜好品に対し多くの場合、人は二つに分かれます。
一つは 時間をかけて、ゆっくり楽しむ人。いわゆるマニア層です。
もう一つは、手軽に楽しみたい人。こちらは一般層です。
コーヒーメーカーは 基本、手軽に 楽しみたい人向けです。このため、あまり凝ったことはしません。しかし、それでも嗜好品ですから色々な工夫がされています。
■ツインバードの反省 実はコーヒーメーカー事態は、大それた技術がなければできないというものではありません。
コーヒー自体、その抽出も含め、色々と科学されていて、何℃で淹れるとと美味しい。1杯飲むなら、この位の豆の量がベスト等々、色々な情報が手に入ります。
むしろ必要なのは、「丁寧さ」です。コーヒーの豆を保存する時、高温、高湿にさらさない。冷蔵庫で保存させるとき、ニオイの強いモノと一緒に置かないなど、細やかな神経です。これは一手間かけた料理に通じるところがあります。
しかし、「最高のモノ」をと言われると その道は平坦ではありません。道も一つではありませんし 、答えも数学ではないのですから、一つではありません。
また、努力しても、自分が進んでいる方向が正しいとも限りません。コーヒー一杯せよ、「極める」ということは、多分できないのではと思います。
ツインバードは『CM-D457B』を出す前にも、コーヒーメーカーを発売していました。それは、「とりあえずコーヒーが飲める」というレベルだそうで、余りイイモノではなかったと、言います。この言葉は、メーカーとしては思っていても言ってはならない言葉です。ユーザーへの裏切りですから。
しかし、そう宣言したツインバードが、お客様に美味しいコーヒーを飲んでもらうべく、奮起したのが『CM-D457B』です。
■『CM-D457B』の出来はすこぶるイイ 先に結論から言うと、『CM-D457B』は5指に入る優れたコーヒーメーカーです。
『CM-D457B』は、非常に丁寧に作られたコーヒーメーカーです。嗜好品を扱う場合、「丁寧」というのはとても重要です。
コーヒーの味を損なう要素、ミルの熱持ち、抽出温度、湯の量、蒸らし時間、等々、実に丁寧に作られています。今のコーヒーメーカーのベスト5に入ります。特に美味しい豆を美味しく淹れられるのが素晴らしい。発表会場では「ゲイシャ」も出されていましたが、これも見事でした。
また、その後、何度も、いろいろな豆で試しましたが、とびっきりの時もあれば、普通より少しの時もありますが、美味しいコーヒーを淹れてくれます。
■『CM-D457B』に対する違和感 ~発表会場で思ったこと~ 発表会での、ツインバードの説明で「あれ」と思った言葉があります。それは、「私たちは 美味しいコーヒーが分からない。」という言葉でした。
一般に、その人が嗜好品を極めたいと思うようになるのは、感動を覚えた時です。「ああ美味しい。」 そこから始まります。そしてそれ以上の感動を求めて、皆彷徨うわけです。彷徨ううちに、いろいろな感動があることが分かります。その中で、自分の好みが見えて来ます。嗜好品に関していうと、そこまで分かって、初めて自分の作るモノの目指す方向性が決まります。
しかし、ツインバードは「味づくりが分からない」と言います。ツインバードがとった方法は、コーヒー業界の第一任者に聞くという方法でした。バッハ・コーヒーの田口護さんです。そしてツインバードは盛んに言います。「田口さんに認めてもらいました」と。
私は思うのです。それなら「それはツインバードの製品ではなく田口さんの製品ですよ」と。
コーヒーは好みです。だから嗜好品なのです。人々により変わります。バッハコーヒーは確かに美味しい。しかしそれは、田口氏が選んだ豆であり、田口氏が選んだ淹れ方なのです。言うなれば「田口ワールド」なのです。
一般的なコーヒーメーカーの発表なのに、バッハコーヒーの発表会になっている。とても違和感を思えました。
■『CM-D457B』に対する違和感 ~使ってみて思ったこと~ 先に書きました通り、『CM-D457B』で淹れたコーヒーは美味しい。今あるコーヒーメーカーの中でも、五指に入るでしょう。
しかし、このコーヒーメーカー、「自動モード」もしくは「標準モード」がないことです。
それは私が、「コーヒーメーカーは家電」であり、家電ならば全ての人が「その効果=今回は、美味しいコーヒー」を享受できなかればならないと考えているからです。当然、初心者、コーヒーのことを分かっていない人も、それに属します。
コーヒーのことをほとんど知らない人が、スーパーでコーヒーの粉を買ってきても、それなりに納得のできる味、カフェで豆を買ってきても、それなりに納得できる味。それを「自動モード」ボタン一つでできる様にしてあるのが、優れたコーヒーメーカーだと思います。
■『CM-D457B』は未完成!?? 趣味性の高いコーヒー、そんな中コーヒーメーカーの自動化は、「可能か」と問われれば、「可能」です。
理由は、大多数の豆に合わせれば良いからです。
CM-D457Bのマニュアルは、「豆の煎り方に合わせて豆の量を計る」ことから始まります。
コーヒーの豆と言うのは、コーヒーチェリーと呼ばれる赤いコーヒーの実の種です。この種、リンゴの様に茶ではなく、白っぽい色をしています。
これを煎る(焙煎する)ことで、豆の成分が化学変化を起こし、甘味、酸味、そして香り、風味が産まれます。「焙煎」で、同じ豆でも、こうも違うのかというコーヒーになります。が、余りにもディープな世界で、ハードルも高いです。また、焙煎は店の、メーカーの価値でもあります。単なる素材の生豆を、味のいいコーヒー豆に加工するわけです。
そしてツインバードは、専用の計量カップを使い、自分が淹れたいカップ数に合わせ、コーヒー豆を計量するように書かれています。
問題は、この焙煎情報、必ずしも開示されていないことです。確かにバッハ・コーヒーは焙煎具合が書いてあり、8目盛りなので、知識がある人は8段階焙煎だと閃きますが、普通の人はまず分かりません。また、コーヒー豆の色の識別もかなり難しいと思います。
しかし、マニュアルを熟読すると面白いことが分かります。
実は日本の普通のコーヒー、ストレート、ノーシュガーで楽しむ人が多い場合、コーヒー豆の焙煎は、深くても「中深煎り」です。深煎りすると香ばしさは立つのですが、苦みが強烈にでるため、繊細な甘味、酸味、柑橘系の香りなどが出て来ないからです。
このため、煎りが分からなくても、計量カップは「浅」目盛り、挽き方は「中挽き」抽出温度は「83℃」で、ほとんどの人は満足できると言うわけです。
「コーヒー入門」などで、「まずは」と教えられることです。
私は『CM-D457B』は美味しいと前述しましたが、全てこの条件です。
そして美味しいのは、愚直にその温度で抽出出来るように条件をセットして行ったからだと思います。湯の温度は、センサーの位置で変わるので、「83℃抽出」とはいうモノの、実現には大変な苦労が伴います。
つまり『CM-D457B』は、誰でも気軽に楽しめる、美味しいコーヒーを淹れられる能力を持っていながら、私が見る限り、帰って分かり難いコーヒーメーカーになっているのではないかと思います。
特殊なボタンがなくても、「標準」という言葉を「浅目盛り」「中挽き」「83℃」に添えるだけでも、コーヒー初心者の満足度が違うと思います。
もうワンランク広い視野で、製品を仕上げてもらうことを期待します。
商品のより詳しい情報は、ツインバードのホームページにてご確認ください。
http://www.twinbird.jp
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2019年2月10日