泉精器製作所の電気カミソリ、『IZUMI 5枚刃シェーバー IZF-V948』
あるいは、電気カミソリは、どの時点で評価するのか?
電気カミソリを長年使っている人ならピンとくると思いますが、電気カミソリは時間を掛けて評価しなければならない家電の一つです。
理由は「刃」にあります。
■ブラウンの刃を「なまくら」にして使う友人H
亡き父は二枚刃のカミソリを愛用していました。毎朝、お湯を沸かし、顔を熱いタオルで蒸し、粉石鹸を泡立て、ゾリゾリと時間を掛けて剃る人でした。私のヒゲ剃りの原風景です。
その内、大学生になると、男子はヒゲ剃りをするようになります。ここで二分されます。お風呂に入ったときに剃る人と、朝剃る人と。私はヒゲが薄かったのでお風呂派でした。銭湯で3日に1回のレベルで剃ります。当時、一番安いカミソリが10円。一枚刃のカミソリで、3日もほったらかしておくとサビがうくシロモノのでした。しかし、初回の切れ味は抜群。湯で顔を温めた状態で、ゆっくり剃ったものです。
この時、電気カミソリは、認知されていました。なんせ、ブラウンのCM(ブラウン モーニング・レポート)が毎朝流れるのです。
「今朝、顔を剃ってきましたか?」
「はい。」
「では、ブラウンでもう一度剃って下さい。」
ジー、ジー。
カパっと開けて、トントン。
「どうです、まだ残っていますね。」
「本当だ!」
深剃りの効く、ブラウン
そんな感じでした。有名なゾーリンゲンの刃物があるドイツですから、「刃」で負けられないと言うわけです。
そんな中、友人のHがブラウンの電気カミソリを買いました。
しかし、Hが言ったのは別の言葉でした。
「イタイんだぜ!」
深剃りは、何らかの方法で、ひげを外に大きく出しカットします。誤るとその時、皮膚の一部も削られてしまう。特に、刃が鋭いときには、皮膚へのダメージが大きいわけです。
1週間後、彼は自慢げにそれを克服したことを報告しました。
彼の取った方法は固いモノに刃を押しつける方法でした。要するに刃の切れ味を少し悪くすることにより、肌を滑らせ、ヒゲのみ切る刃にしてしまったわけです。これはちょっとしたアイディアだと思いました。
■刃と接触面積
私も、彼に負けず劣らず繊細肌です。
正直、電気カミソリで、イイ当たりと感じたのは、パナソニック社の5枚刃と、フィリップス社の製品。これらは当たりを工夫しており、やわらかい当たりです。しかし、それだけに深剃りが効きにくく、いろいろな工夫もなされています。
が、それでも一部の「深剃り派」は、お気に召しません。柔らか過ぎると言うわけです。
当たりが柔らかい電気カミソリの特長は、接触面積が大きいことです。特にフィリップスは3枚の円形刃が同時に当たるため、円を描くように剃らないと、動かせないほどです。
個人的にはということだと、当たりが柔らかい電気カミソリに高い評価を入れたくなるわけですが、「自分の肌に合うからお勧めというのは」プロとは言えません。
■「慣らし」が終わると、まるで別物
今回、テストしたIZUMIの5枚刃、IZF-V948(洗浄機が付くと、IZF-V998-S)は、泉精器製作所の製品です。泉精器製作所は老舗メーカーです。
多くの人は、IZUMIは最近、リーズブナブル・プライスを武器に、新しい勢力として台頭してきたメーカーの様にお思いでしょう。しかし、このメーカー、電気カミソリの様な特殊刃は大得意のメーカーで、昔はセイコー(SEIKO)が出していた電気カミソリの刃を納入していたほどの老舗です。
セイコーもスゴい会社で、日本の時計の歴史を作り上げてきた会社ですし、プリンターのEPSON。あすこは、SEIKOから派生した会社です。とにかく精密機器は大得意。そこが扱う、電気カミソリの刃を任されたのですからスゴいものです。
昔、友だち(ブラウンとは別の友だち)の部屋に行くと、彼が旅先で1000円で買ったというセイコーの電気カミソリが、テーブルの上に投げ出されていました。当ててみると、スゴく具合がいい。友だちはニヤリを笑い、「イイだろう!」とちょっと自慢げでした。今思えば、この刃が泉精器製だったわけです。
で、今回サンプルを借り、使ってみた第一印象は、
「イタイ。5枚刃とは思えない位イタイ。」
それを我慢して、使いました。
バッテリーが99%から77%になった頃(延べ使用時間:約20分)、愕然と変わります。
当たりが柔らかく、5枚刃の利点が全部出てきた感じに変化したのです。
「イイ電気カミソリじゃぁないか!」
当たりがつき、実にイイ感じです。
■刃の寿命と関連
クルマの慣らしではありませんが、金属と金属、固い物同士が触れあうときは必ず慣らしが必要です。今、慣らしして欲しいというメーカーはありませんが、それでもクルマも長い期間、気分良く乗るためには1000km位の慣らしはして欲しいといいます。
それは人間の作るモノの精度には限度があります。どんなに精度が良くても、実際に当てて慣らしを行った物には敵いません。レーシングエンジンは、慣らしを行ったエンジンをばらし、研磨しなおし、再度組み立てて精度を上げる位です。
刃も同じです。
しかし、パナソニックの5枚刃は初めからOKだったのに、IZUMIは厳しかったのか?
その回答は刃の寿命にあります。電気カミソリの刃は内刃と外刃がありますが、双方1~2年で取り替えるのが基本です。包丁も研がなければ、なまくらになります。電気カミソリの刃は研ぐことができないので、交換です。
IZUMIの刃は、この寿命がなんと「3年」。当然「超」硬質です。これが軟らかめだと初めからイイ塩梅。ですから、IZUMIは、慣らしが終わり、当たりが出るまで、時間がかかったわけです。
シェーバーの命は「刃」。初見で決めるのもありですが、プロとしては、初見と、最低当たりが出たモノ、双方を確認したいモノです。
■IZF-V948の刃以外の特長 その1 〜大容量バッテリー〜
IZF-V948に採用されている5枚刃の特長は、接触面積が多いため、肌にやさしいのが一番です。これには、もう一つ高速モーターが不可欠です。今回採用されたモーターは、10,000ストロークを出すことができる高速モーター。
ただし、その振動も上手く受け止めてやらなければなりません。そこで刃枠は金属ダイキャスト。必要なところにしっかりお金を掛けています。
当然、キャッチトリマー、スイング角の工夫など、しなければならないことにも的確に対処しています。
しかし、特筆すべきは「バッテリー」でしょう。
うたい文句では、満充電時から1日1回3分使用で約4週間とありますが、私などは3分/回も使いません。このため延々持ちます。77%の慣らしが終わるまで、約20分もヒゲを剃ったことになりますが、土日のように剃らない日もあるので、1ヶ月近く掛かっています。
ま、旅行には持って来いです。
しかも、IPX7で、水洗いOK。清潔好きで知られる日本人にぴったりですし、メンテナンスが超楽です。
■IZF-V948の刃以外の特長 その2 〜洗面台に置くとき〜
旅行時でないとき、電気カミソリの置き場は、洗面台です。
しかしここは激戦区。
家族分のハブラシ、コップ。そして歯磨き粉、洗顔、手洗い用の石鹸。そして自分と嫁さんのブラシとスキンケア用品。そして、場合に寄ってはお嫁さんの美容グッズも・・・。
まぁ当然、電気カミソリを置く場合でも、場所は争奪前となります。
今も洗浄台付きで販売をしてはいますが、やはりそれだけのスペースがある家は少ないとのことです。
しかし心配ありません。
置くだけなら、スペースはたったこれだけです。
もし、ACに差し込んでも、10cmの奥行ですみます。
充電は、別エリアと思いきれば、本当に、イイ感じになると思います。
ここはいろいろなメーカーが工夫を凝らしていますが、泉精器の工夫、グッジョブです。
■恐るべきコストパフォーマンス
電気カミソリの「刃」は消耗品です。実は、良い切れ味で使うためには、刃を交換してやる必要があります。
次に掲げるのは、泉精器と、パナソニックの5枚刃の電気カミソリを10年使用した時に必要なコストの試算です。
まず見て頂きたいのは、替え刃のトータルコストが本体価格を上回っていることです。泉精器は、刃の寿命が長いため目立ちませんが、パナソニックはちょっとスゴいです。これは外刃の交換が1年毎であるためです。
パナソニックの5枚刃は、「官能的」と言えるレベルの、他に類を見ない実に気持ちのイイ剃り味を実現しているのですが、その代償と考えても構いません。道具と言うより、実用的な工芸品に近い形で設計されています。
逆に、泉精器はヒゲを剃る道具として、実に実直に出来ているとも言えます。
泉精器の担当者は、「うちはまだブランド力がないもので・・・」と言いますが、実力は一級品。ただし慣らし必要。
実(み)にしっかりお金が掛かっている、渋い大人を感じさせる逸品です。
商品のより詳しい情報は、泉精器製作所のホームページにてご確認ください。
https://www.izumi-products.co.jp/kaden/
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2019年1月18日
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