2018年のめっけんもん炊飯器、象印『炎舞炊き 5.5合』【太鼓判認定】
炊飯器。
日本の家電の御三家は、冷蔵庫、エアコン、洗濯機です。何故御三家ですかって。
理由は簡単。この三部門の売りが大きいからです。当然、掃除機は、この三部門で勝利してからです。だからでしょうか、掃除機は、海外の専業メーカー、ダイソン、iRobotの後塵を拝します。
しかし、別格が一つだけあります。日本人の魂とも言うべき、「炊飯器」です。
■「主食」という言い方は日本だけか?
日本人は「お米は主食」といいます。英語で言うと、”staple food”です。しかし、stapleというのは「主要な」という意味です。しかも用例を見て笑いました。”Potatoes are the staple of his diet.”『ジャガイモは彼の主食だ。』(プログレッシブ英和中辞典より)。
新米を食べるとき、日本人なら思いますよね。「あ〜、米が美味い!」。
漬け物だけでバグバグ。なんてことは当たり前です。しかし外人で、「あ〜、パンが美味い!」、添え物(ハムなど)は要らない!って絶対言いません。肉くれ、卵くれ、サラダくれ、コーヒーくれとなります。欧州のホテルのパンは美味いのですが、それでも、パンだけむさぼり食う外人に合ったことはありませんし、外人にいろいろ聞くときでも、パンが主食なんて話しは一度もありませんでした。
■炊飯器は家電メーカーの『日本刀』なのか?
今から論じるフラッグシップモデルの炊飯器ですが、白モノ家電の中では完全に別格です。
言っては何ですが、儲け頭の「冷蔵庫」「エアコン」「洗濯機」とは一線を画します。
そのこだわり、迫力は、日本刀に近い。
凄まじい執念を感じますね。縄文中期から入り、弥生時代に定着したお米。元号の歴史よりずっと古い。そして、江戸時代までは、サラリーは米。石高です。こんな扱いをされたのは、食べ物は、多分、日本の米だけでしょうね。
それを炊くのですから、凝って当たり前とも言えますが、2018年の3モデルには、特にその気迫を感じます。
今回は、その中の一つ、象印の「炎舞炊き」のお話しです。
■「南部鉄器」よ、さようなら!??
象印の高級炊飯器といえば、鉄(くろがね)にこだわった、「南部鉄器 極め羽釜」。
美味しくお米を炊きあげるのですが、如何せん「重い」。内釜の重量:1.8kg。今日、携帯用PCでも、これより軽いです。お米を入れて、水を入れると、3kg近い。流しから炊飯器にセットするのが嫌になる重さです。私は日常使い出来ない(重すぎていやになる)として、「太鼓判」を押せませんでした。
また、今後、5.5合炊きではなく、3.5合炊きが主流になるとの考えで、軸をそちらに移していましたので、小さい内釜、それでも重いのですが、ならokとして、象印の3.5合炊飯器はいいとしてきました。
象印によると、同じ事をユーザーからも指摘されたそうです。
しかし「南部鉄器 極め羽釜」をメインに売り出してもいますし、軽い素材に乗り変えて同じ味になるのかも分かりません。メインの売り出しは、メーカーの「信」を問われる話しでもありますので、もし変えるとしたら、同じ味ではだめです。一段別の、高い境地(味)にしなければなりません。「炊飯」と言う、ある意味やり尽くされた技術に、新しい鉱脈は眠っているのでしょうか?厳しい開発となったわけです。
■現場にお百度!「炎舞」を見いだす
頭がいい人はとかく頭で考えてしまいます。
しかし困ったときには現地現物。人と言うのは案外見逃しがあるモノです。炊飯の基本は「かまど炊き」です。特に象印は、かまどで使う「羽釜」をそのまま取り込んだようなメーカーです。
で、見ていると、気付いたのは炎が舞うということです。
火と電熱では、全く性質が違います。
火の最大の特徴は、「燃焼」で得られる「高温度」です。遠火でも遠赤外線効果で魚が焼けるほどです。それぐらいのパワーをもちます。かまどなどは火を直接当てますので、強火も強火、すごい強火です。それともう一つ、「ムラ」があることです。
キャンプファイヤーを思いだしてください。
パチパチと燃える薪は、常に同じ様に燃えているわけではありません。
「ゆらめき」、焦がすのです。
大正時代の画家に、速水御舟という人がいます。
代表作は「炎舞」。ゆらめく、炎の上を舞う蛾が題材です。身を焼くような蛾は怖くもありますが、激しい美しさを持ちます。が、炎がゆらめなかったら、この画も成り立ちません。そんな厳しい美しさを持った画です。
電熱は「一定」です。科学は均一の中に理を見いだす学問ですから、その子どもである生活家電も「均一」の落とし子です。そこに「ゆらめき」を入れ込む。象印は、新しい炊き方を見いだしたわけです。
■炎舞炊きを支えるローテーションIH構造
このために象印が開発したのが、「ローテーションIH構造」。
今までの同心円ではなく、3つの円に分けて巻き、廻して使うのです。
■それでも「鉄(くろがね)」が好き
こうして新しい炊き方は見いだせたわけですが、問題は内釜です。これを軽くできなければ、問題は何も解決しません。
IHの基本は有磁性の「鉄」もしくは「ステンレス」です。しかし、それでは、重い。このため、一部を軽いアルミに変えます。アルミは熱を伝えやすいですから、ステンレスをIHヒーター側にして熱を作り、アルミに伝え、それがお米と水に伝えるという形が多いです。
象印は、このステンレスとアルミの間に、鉄を入れ込みました。
着眼点は、ステンレスとの差異。ステンレスは鉄とクロムの合金ですが、鉄より発熱性、伝熱性など劣ります。これを補助するために「鉄」を使うわけです。
このため、外側より、「ステンレス」「鉄」「アルミ」の内釜となったわけです。
そして、重さは、1.8kgから1.2kg。2/3の重さになったわけです。
実際は、一番内側に、扱いをよくするために、「うまみプラスプラチナコート」をほどこしています。
底も、ローテーションIH構造に合わせ込んであります。
結果、新内釜の熱伝導は非常にいいです。直接、南部鉄器内釜と比較したデーターはありませんが、システムとしては高効率だと思われます。
元々炎舞は、火の当たり具合より見いだしたものです。火は火力が強いので、ちょっとでも当たると瞬間温度上昇します。これに似た状態を、IHで作り出すためには、熱伝導がよくないと自在に操れません。上手く誂えたものです。
新しい内釜の特長は、もう一つあります。
厚みのある釜のふちです。見ても、触っても、ぼってりしています。
内釜の外の熱は、このふちに取り込まれ、内釜の中へ行きます。
この新しい釜の名前は「鉄 ーくろがね仕込みー 豪炎かまど釜」。
私なんぞは、永井”豪”原作 黒”鉄”(くろがね)の城こと「マジンガーZ」を思い出しましたね。
超合金Zに包まれた無敵のロボットほどではないですが、ある意味、スゴいものです。
■お味は? 私は、家でご飯を炊くときは、基本「土鍋」で炊きます。これは、自分の舌をメーカーの味に慣らさないためです。というのは、高級炊飯器と言っても、そこまではスゴくはありませんでした。
しかし、今回は、驚きました。
「すごく美味い。」
ほぼ、ガス炊きの土鍋と遜色ありません。実際はもうホンのちょっとかための方が好みなのですが、ほんのちょっと、電気だとコントロールしやすいですから、追い込めます。
ただ、象印のポリシーで、意見が分かれるところがあります。
それは「焦げ」。土鍋も含めてですが、火はその火力のために、焦げを伴います。それも含めて「香り」が立ちます。象印のポリシーは「お焦げなし」です。
お焦げが付けられるモードがあるので、こちらも追い込むことができます。
南部鉄器に寄らない炊き方「炎舞炊き」のスゴさを思い知りました。
■使い勝手 「炎舞炊き」の良さは、それに留まりません。
まず、本体が小さいです。これは内釜の形状が関わってきます。今までやや平たかったのを、普通めにしたのです。要するに設置面積を小さくした。高さがないのはメリットですから、ここは努力してキープです。
感覚的に話しても拉致があきませんので、数値で比較してみましょう。内釜の厚みは、5mm厚くなっていますが、重さは3kg軽くなり、大きさも2周り位小さくなっていることが分かります。
その上、デザインがいい。シンプルで、美しくもあります。私は、象印は「黒」のデザインが上手いメーカーだと思います。とにかく使い飽きのこないデザインが素晴らしいです。
次にコンソールパネル。日常的に使う機能は、ほぼ直感で使うことが出来ます。マニュアルがいらないレベルです。
そうかと言って、コンソールがゴチャッとしているかというとそうではありません。
次は、もっとスゴいです。
洗いは、内釜を入れて3点だけです。何気に、「スゲー楽」。
普通、美味いモノを作るとなると手がかかりのが常ですが、それが全くありません。
こだわりの凄いやつです!
こんなスゴい「炎舞炊き」ですが、残念なことがあります。
それは、現時点で、3.5合炊きがないことです。象印によると「考えています!」とのこと。
この5.5合の炎舞炊き。生活家電.com の「太鼓判」炊飯器です。
商品のより詳しい情報は、象印のホームページにてご確認ください。
http://www.zojirushi.co.jp
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2018年11月7日