エアコンによる「知的生産向上オフィス」は実現可能か?
〜NEC&ダイキン工業の実証実験の意味するもの〜
7月に発表されたNECとダイキン工業の実証実験(執務空間の知的生産性向上に効果的な温度刺激の与え方の実証)は、いろいろな意味を持っていると思います。今回は、それをレポートします、
創造性がある仕事。魅力的ですよね。誰でもやってみたいことです。しかし人の仕事の大半は、単純作業といえます。何事も基本は単純作業の積み重ねですから、これは仕方ありません。しかし、単純作業だと眠くもなります。特にポカポカ陽気の春の昼下がり、昼食後などはヤバイです。
NECとダイキン工業の実証実験は、この眠気に対抗するための処置でした。
■どうやって眠気を防ぐか 人の行動は突き詰めると、刺激に反応(行動)していると言えます。例えば、テレビという刺激により、感情が左右され泣き笑いするとか、美味しくない味という刺激に対し、顔をしかめるなどです。
この刺激が過ぎると死に至りますが、あるレベルの刺激は有効活用されてきました。例えば気付け薬。アンモニアなどの刺激臭をかがせ、意識を取り戻させます。アンモニアの刺激はかなり強く、毒性もあります。それだけ強烈だからこそ、意識を取り戻させることができるわけです。
眠気もそうですね。昔、勉強をしていて眠気がくると錐を腿に突き刺し、その痛みで気を取り直し勉強した人の話しを聞いたことがあります。今はもっぱら化学的です。刺激性の強いガムを噛むとか、栄養ドリンクで体内の状態を一気に変えてやるとかです。寝ないと、体を損なうので、それを妨害するわけですから、かなり強い刺激でもあります。
今回 NECとダイキンが目指したのは知的生産を最高に持って行く環境です。この環境は、眠くもなく、また極端な興奮・緊張もない状態のことです。別な言い方をすると、軽い刺激を送り続けている状態とも言えます。
ただ、この様な環境を作り出すのに特別室を作るわけではありません。エアコンのように付ければ、涼しくなるようにこの環境を作り出す必要があります。使ったのは、温度(エアコン)、照度(照明)、芳香です。基本環境の温度:27℃、照度:700lx(ルクス)、芳香なしに対し、温度は、27⇒24⇒27℃、照度は、150lx⇒1500lx⇒150lx、芳香は、なし⇒あり⇒なしと変えてやります。芳香はローズマリー系。ローズマリーには、記憶力、集中力を高めると言われております。また、同時に刺激剤としても高い評価を得ています。
■オフィスで使える刺激とは 実証実験結果を見る前に条件を考察してみましょう、今回使われたのは、どれもかなり「弱い」刺激です。例えば温度。冬場で危ないと言われるヒートショックは15℃以上の差。しかし、温度5℃以上だとヒートショックがでる可能性があるそうで、2〜3℃です。誰でもが享受できるショックというわけです。照度は暗くなりますが、目の前にはPC画面がかなりの照度で眼を釘付けにしています。芳香は、微香にしなければなりません。強い香りはオフィスでは使えません。香水を付けすぎた女性とエレベーターに一緒に乗った経験は多くの人がお持ちだと思いますが、この時は香りというより臭いに迫られている感じです。どんな美人でも、暴香族というべき存在になってしまいます。オフィスでの刺激は限られるわけです。
■実証実験結果は、温度が有効 結果は、温度が一番と出ました。
しかし、65分では覚醒度変化量がマイナスになっています。実証実験時は、人がその刺激に慣れない様、工夫しているのですが、やはり人は必ずその環境に慣れてしまうようです。慣れると言うことは、刺激を刺激として認知しなくなるということです。
黒船が来た時、「太平の眠りを覚ます上喜撰(蒸気船) たった四杯で夜も眠れず」という狂歌がありますが、四杯で夜も眠れぬと言われた上喜撰は上等のお茶。刺激溢れる現代では、よほど感度の高い人でないと、興奮剤にもならないと思います。
それはさておき、温度は素早く効き、照度はほとんど効果がなく、芳香は後で効いてくるという結果です。あくまでも、前述の条件下ではという話しです。
■眠くなったあとでは、通じない微弱な刺激 面白いのは「眠くなった」と思った後では、効果が薄いと言うことです。本当に眠くなったら、最終的には腿に錐を突き立てても、眠ってしまいます。弱い刺激で覚醒を狙うわけですから、これは当たり前とも言えます。
■眠気が差してきたことを察知するには 眠いとあくびがでるわけですが、このシステムでは、眠さを認識することが必要です。実現したのはNEC。まばたきで人間の覚醒状態を察知するのです。眠くなるとまばたきの回数が増える、眼を閉じている時間が長くなるのをカメラで検知することで、眠気を察知します。
この検知には、毎秒15フレームの処理が必要です。映画のフレーム数は毎秒30フレームですから、その半分です。が、撮影した画像をどんどん認識して行かなければならないので、その処理は大変です。パソコンでもトップクラスの性能が欲しい所です。
このためNECでは、これを1/5のコマ数、毎秒3フレームでも検知できるようにしました。つまり1/5のデーター数で処理出来るようにしたわけです。これで通常PCでの処理が可能になりました。つまり、特殊なPCなど入れなくてもイイと言うわけです。
■5分トライの印象
発表会当日、私もトライして見ました。時間は5分。する単純作業は暗算です。スタートして分かったのは、カメラで見られていると思うと落ち着かないと言うことです。無理矢理集中して暗算をしてみましたが、競争でもないので、集中は途切れ気味になります。何度か、温度を下げたり、照度を下げたりしたらしいのですが、よくわかりません。刺激としては、やはり微弱でした。
終了しても残ったのは、ずっと「監視」されているというのは不愉快であり、不自由だということです。経営者からすると、数多い単純作業を確実にこなしてもらわなければなりませんから、まぁこんな装置を入れても能率をあげたいと思かも知れません。経営者は、確かに管理権限を持っています。しかし、それが後にデーターが残る「監視」となるとかなり意味合いが違ってくるのではないでしょうか?
効能もさることながら、使い方の洗練が必要と思いました。
■攻めのエアコンの可能性 しかし、今までの概念と一番違うのは、空調はどちらかというと快適温度を作ればいいと言う「守り」の家電であったのが、攻める武器ができたと言うことです。これは今までの空調家電になかったことです。
私は、オフィスより、自宅の書斎他、子ども部屋などにニーズがあるのではと思います。受験は厳しいですから、常に冴えた頭は求められます。そして、覚醒モードでも眠くなったら潔く眠り、起きて続きをする。そんな体に変な負荷をかけないこともあると思います。
単にB2Bで会社に売るのではなく、覚醒しやすい環境としてのエアコンはありだと思います。エアコンも刺激製造器と考えると、また別の展開が開けそうです。
商品のより詳しい情報は、ダイキンのホームページにてご確認ください。
http://www.daikin.co.jp/index.html
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2018年8月20日
タグ: NEC, エアコン, ダイキン, ホームシステム家電, 執務空間, 実証実験, 温度刺激, 知的生産性向上, 空調家電