レポート

コーヒーの深みが分かる逸品!
ドリップ式最強のコーヒーメーカー HARIO『V60 Auto Pour over SMART7』


IFAベルリンで行われる世界最大の家電ショーに取材に行くと、必ずフィルハーモニーコンサートホールのこと。ベリリンフィルハーモニー管弦楽団は現地では「オーケストラ」もしくは「ベルチンフィルハーモニー・オーケストラ」(以下BPO)と呼びます。に行きます。レギュラーシーズンBPOの定期公演のこと。10月頭に始まる。欧州は夜長に、コンサートなどを楽しむのです。は始まっていないのですが、代わりに「ベルリン音楽祭」が行われます。世界各地から、腕利きのオーケストラなどが集まり、いろいろな演奏を聴かせてくれます。

世界の名ホールの1つ。フィルハーモニーの外観。
ホールが5角形のため、独特な形状をしている。


音楽好きにはたまらないイベントで、忙しいのについつい聴きに行ってしまいますね。
また、それ以外の楽しみもあります。
同好の士ですから、その後、近くのビヤホールで飲みながら、2時間位話をするのが、また楽しい。

フィルハーモニーのすぐ近くにあるビアホール「リンデンブロイ」。
コンサートの帰りは、必ず立ち寄ります。


そんな時に出た話が、「いいコーヒーメーカーはありませんか?」でした。

 
■ホコリを被ってしまったカプセル型
コーヒーはノンアルコール飲料で、お茶と世界を二分する飲み物です。
昔の日本では、どこかに入るとまずは一服ということで、夏は冷水、冬はお茶がでてきました。
が、今はかなりの所でコーヒーが出てきます。

そんなコーヒーの最近のトレンドの1つに、「お家カフェ」というのがあります。
家で、外のカフェ並みのコーヒーを楽しもうと言うわけです。

ここで一躍名を上げたのは、「カプセル型」のコーヒーメーカー。
挽いたコーヒー粉が一杯分カプセルに収められており、それを抽出するのですが、多数あるカプセルの中から自分の好きなモノを選ぶことができる。少々値は張りますが、便利と言えば、便利です。

友人のAさんは、カプセル型を持っているのですが、好みの味に会えなかったと言うことで、カプセル型のコーヒーメーカーを使うのを止めてしまったとのことでした。
カプセル型の場合、抽出もフルオートですので、抽出要素を変えて味を好みの方向へ持って行くことはできません。このため、基本、カプセルの種類が味の種類です。(正確には、ミルクの有無などでやりようがあります。)

ちなみにAさんはブラック愛好家です。

 
■A氏の出した条件
オーディオは、いろいろな方法により、音を自分好みにして楽しみます。要するに、自分好みの音探しです。
コーヒーも同じですね。自分好みのコーヒー探しです。
音と同じ様に、コーヒーも抽出の要素を変えることにより、ずいぶん味を変えることができます。
例えば、抽出の湯温。熱いとコーヒー豆の成分が全てでますので、苦みが強くなります。逆に温度を下げると、酸味が強くなります。一つ一つ抽出条件をを追い込んでやると、自分の好みにすることができます。

さて、A氏と話した条件はと言うのは、以下の通り。似た条件の人はかなり多いと思います。
1)コーヒー粉から抽出する。(コーヒー豆を自宅で挽かない)
2)一度の抽出は、1〜2杯。
3)方式は、ドリップ、またはそれに近いモノ。
4)ある程度、抽出の条件を振ることができるモノ。
5)後片付けが楽なモノ。

 
で、私が用意したのは、HARIO「V60 オートプアオーバー Smart7 EVS-70」です。

HARIO「V60 オートプアオーバー Smart7 EVS-70」
Smartはデジタル化したことから、7は形から。


■HARIO「V60 オートプアオーバー Smart7 EVS-70」
HARIOは、創業が1921年の日本メーカー。
ガラスの王様と呼ばれる「玻璃王」の音をもらい社名にしています。このことからお分かりのように、耐熱ガラス一本槍の会社です。ちなみに国内の耐熱ガラス工場を持つ唯一の会社でもあります。

で、HARIOがまず始めたのは、理化学用ガラス器具です。
思い出す人もいるかも知れません。そう、私の記憶が正しければ、小学校の理科の実験の時見た記憶があるので、40年以上のお付き合いということになります。

この理科の実験用具に近いのは、調理器具ですね。
化学と調理は似ており、黄金を求めて化学を飛躍的に進歩させた錬金術は、台所から生まれたと言われたものです。
中でも、コーヒー関係の器具は、理科用品と似ており、HARIOは調理分野にも進出します。

中でもコーノ社から利用許諾を得て2005年発売された、円錐形のスパイラルの凹凸が入ったコーヒー用ドリッパー『HARIO V60』は、現在ドリッパーの世界定番の位置を確保。
サードウェーブと呼ばれる、ブルーボトル・コーヒーなどの世界的なムーブメントを生み出しました。(逆に、ドリップ愛好家で、V60の名前を知らない人は、チョッチです。)

付属のV60ドリッパー。円錐形なのでコーヒー粉の層が深くなり、
お湯が長く触れるのでしっかり抽出可能。スパイラルリブは、ペーパーとドリッパーの密着を
防ぎ、スムーズな抽出を促し、大きな1つ穴は、お湯溜まりがないため 注ぐ速度で
味の違いをしっかり出す。


今の世、そんなHARIOもコーヒーメーカーを作ります。
それは、普通に使えるドリップ式のシステム(ドリッパー、紙フィルター、コーヒーサーバー)をまんま取り入れたコーヒーメーカー。名前を「V60 珈琲王 コーヒーメーカー EMCM」。
要するに、難しいと言われる、湯を少々注ぎ、蒸らし、そして抽出するのを自動でするわけです。
なーんだと思われる人もいるかも知れませんが、HARIO ご自慢の世界標準ドリッパーのポテンシャルをフルに出すコーヒーメーカーと言い換えても構いません。

 
そして、一昨年の秋、SCJA(Special Coffee Association Japan)の展示会に行ったとき見つけたのが、今回の「V60 オートプアオーバー Smart7 EVS-70」。
フルデジタル制御なので、湯の温度、使用する湯の総量、蒸らし湯量、蒸らし時間、抽出湯量、抽出時間、つまりバリスタが神経を注ぐ部分の大半をSmart7は再現してくれるわけです。

ハンドドリップのシステムをまんま使う。


しかも、横から見ると数字の7に見える Smart7、小さく、かっこいい。

展示会場で、即価格を聞きました。
展示会場での価格は、オーバー5万円。高くて泣きました。

現在の市場価格は、4万円前後。

 
■「Auto」モードでも十分美味い!
高価格帯モデルですので、付属品が非常にイイ感じです。
プラスチックスではありません。
特にドリッパーは、樹脂製が多いのですが、耐熱ガラス製。HARIOのメイン品番です。
コーヒーサーバーも、きちんとしたものを使っている。

オーディオマニアは、素材にもこだわります。素材で音が違うからです。
このため、きちんとした素材を使うのはイロハのイです。

そしてセット。
Smart7はドリップシステムを支配するのではなく、寄り添うようです。コーヒーのドリップ抽出は、コーヒーの良いところだけ抽出する様なものですので、雰囲気ピッタリです。

自動抽出の「Autoモード」と、自分でいろいろ設定できる
「My Recipes」(マイ・レシピ)が選択できる。


Autoモードで小手調べ。湯温:93℃で抽出です。
飲むと、酸味がかなり感じられる今ドキのスペシャリティ・コーヒー。ペーパーフィルターも手伝ってエグミがほとんど感じられません。
これで豆の挽き方などを追い込んで行けば、十分店で通用する味です。

追い込めば、これ以上のレベルで!
オーディオマニアがイイ機材を手に入れたときの様ににまついてしまいました。

湯温:93℃、抽出時間:1分26秒、使用湯量:270mlとある。
抽出時間は、湯温が93℃になってからなので、トータルでは4分位かかる。


 
■欠点もある
欠点もあります。
それは水タンクへの注水です。後ろからしか入れられない仕組み。
まぁ軽く、小さいので、ちょっと前に出せば、入れることができます。
逆に固定して使う場合は、後ろから水を入れられるように設置しなければなりません。

斜め後ろから見た水の注ぎ口。前から入れられないことが分かる。


もう1つの欠点は、次ぐ量が2杯以上になるということです。
これはこのコーヒーメーカーの欠点と言うより、ドリップ式を美味しく淹れるためと言った方がイイです。圧力(プレス)を使うと違うのですが、重力だけで抽出するドリップ式は、ある程度の量がないと安定して美味しく出すことはできません。これが2杯と言うわけです。

と言っても、使用湯量は約270ml。抽出は約マグカップ1杯分で、そんなに多いものではありません。

 
ちなみに最大は5杯分。保温瓶に詰めて外に持ち出すのには丁度イイ分量。
コーヒーサーバーから入れられるのでラクラクです。

 
このため欠点はあるものの、気にしないでもイイかも知れません。

 
■いいね!買いましょう!
さて、A氏に、Autoモードで一杯淹れて飲んでもらったのですが、「いいね!買いましょう!」と即決。

最後に付け加えますと、「コーヒーの最高峰は、ハンド・ドリップだ!」と思っている人もお勧めと言うことです。
えっ、と思われるかも知れません。
そちらを極めるためには、「ひたすらハンドの方がよくないのか?」と思いがちですが、ハンド・ドリップの場合は複雑な条件に中々挑戦できません。人間、そこまで正確でありませんので。

Smart7で条件出しして、それをハンド・ドリップで再現するのは有りなのです。

 
コーヒーの懐に入ることができる一品と言えます。

 
商品のより詳しい情報は、HARIOのホームページにてご確認ください。
http://www.hario.com
 
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2017年10月12日

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