先日ある女性とクラフトビールを飲んでいる時、洗濯の話が出ました。その中で、水を使うかお湯を使うのかと言う話題になりました。日本人はイニシャルコストをかけても、ランニングコストを掛けない傾向があり、お湯を沸かして使う(=電気代が掛かる)のを嫌います。
そして、彼女は主張します。「断然水。水の方が汚れが落ちる。」
洗濯の要素は、「洗剤」、「水質」、「温度」、「洗い方」。
これを洗濯物の汚れ方、そして布の種類に合わせで、変えなければなりません。
しかも洗濯機がない時代は重労働。水を吸った洗濯物はかなりの重さになります。
洗濯は家事の中で、最も大変と言って過言ではないでしょう。
時代は移り変わり、現代。
先ほどの要素は、「洗剤」「水道水」「洗濯機」と言い直されます。
温度は、洗濯機に含まれるようになります。洗濯機で加熱、お湯にするわけです。
2014年位から、日本の洗濯機にも「お湯洗い」が用いられるようになりました。ただ、ランニングコストにシビアなためか、最高機種だけに採用されています。
■可笑しな日本の風習
欧米の洗濯機はお湯洗いが当たり前です。
洗剤を活かすことを考えると当たり前ですし、洗濯機がない時代でも、大鍋にグラグラ湯を沸かせて、使っていましたから。
現在の洗剤は、界面活性剤と酵素から成り立ちます。(※酵素にもいろいろ種類がありますが、括った形で説明します)
ポイントの一つ「酵素」。これが汚れを分解してくれるのですが、温度が高くないとダメ。人間の体温位がイイと言います。そうでないと酵素が活性化しないわけです。
お分かりですね。
酵素の活性化温度等を考えても、明らかに違うのですが、日本は水=禊ぎ、清潔のイメージが浸透しており、雑巾の水拭きとも相まって、ほとんどの人は、「洗剤+水」がベストと言う人が実に多い。科学的論陣を張っても、このことに関しては、耳を貸さない人が多く、実に空しい。
高いお金を出して、お湯洗いの機能が付いている洗濯機を買っても、使わない人も多いと聞いています。
日本人は、禊ぎの時、冷水で身を清めることをします。古事記などにも、清水とあるだけで、温度のことは書かれていないのですが、冷たい水だと清められるイメージを持ちます。
「水洗い=禊ぎ」から来ているというのが、私の考えですが、それは兎も角、日本人は水洗いが好きです。
■魔法の水はないのか?
そうなると「水を使ってよく落ちる洗濯機、洗剤はできないか?」というのが商品命題となります。
実際、そういう洗剤も開発されています。
東芝が考えたのは、「汚れを落としやすい水、洗剤を働きをサポートする水はないのか?」ということです。
平成21年(2009年)7月6日のNEXCO西日本が発行したニュースレリースに、「トイレの新しい清掃方法の開発について ― 環境に優しいナノバブル水で効率的な清掃作業とお客さまの快適も確保 ―」というのがあります。この時の、ナノバブルというのは、100nm以下の泡と定義されております。(現在、「ナノバブル」という表現、定義はありません。1μm(1000nm)以下を、ウルトラファインバブル、1〜100μm以下をファインバブルの2種類です。)
効果を数値で上げられているのが、
床清掃時間 | SA:約25分⇒約15分 PA:約13分⇒約8分(5~10分短縮) |
節水量 | SA:約500L/回⇒約5L/回 PA:約200L/回⇒約2L/回(約100分の1の使用量) |
環境負荷の低減 (洗剤使用量の低減) |
SA:約9L/年⇒0L/年(基本的に使用しない) |
■歴史は浅く、まだ十分に認知されていない、日本が世界一の技術
多くの人は、「こんな技術、聞いたことないよ」と言われるでしょう。
これは、まだまだ研究が始まったばかりの技術と言ってもいいと思います。
詳しくは、豆知識「ウルトラファインバブルって何?」を御覧頂けるとありがたいのですが、
ウルトラファインバブルって何?
世界の標準規格:ISOで、定義されるのが、2014年5月12日。そして ファインバブル学会連合が発足したのが、2015年4月1日。かなり新しいです。
また、新しい技術なので、効果が認められる事項(特に生物への効果)への原理説明はできていません。
逆に言うと、まだまだ新しい性質などが出てくる可能性がある技術とも言えます。
■実力は20%増
発表会ですから、自分でテストした訳でないので、汚れ落としのレベルに関して、東芝さんに質問してみました。汚れ落ちがどの位変わったのかです。
答えは「20%アップ」でした。かなりのものと言えます。
しかも、この水、水路を通すだけでできます。要するに、ランニングコスト「0円」。
メインパーツ、機構図、実際のモデルと並べて見ましたが、シンプルすぎてキツネにつままれたようです、
ただ勘違いしないで欲しいのは、ウルトラファインバブルが入っていても、ウルトラファインバブル水より、ウルトラファインバブルお湯の方がよく汚れが落ちると言うことです。
ウルトラファインバブル水は、今までにない切り口で、+αの機能です。このため、酵素が働くのには、多少温度が高くなければならないなどの課題は、今まで通りあります。
今回のウルトラファインバブル洗浄搭載機は、乾燥機機能が付いたモデル(AW-10SV6)があります。
こちらだと、ウルトラファインバブル湯(MAX:30℃)での洗浄が可能です。
このウルトラファインバブル、いい技術なので、認知が進めば、今後、全メーカーが使ってくる可能性があると思います。
■その他の機能と東芝の立ち位置
今回の縦型洗濯機、ウルトラファインバブル以外のめぼしい機能は正直ないです。
その他は、今まで通りです。
このためでしょうか?
ウルトラファインバブルという新しいモノを導入しながら、新しい感じを受けません。
「新しい酒は新しい革袋に入れろ」といいう諺もある通り、革新的な技術が導入された時の製品は、新しい雰囲気を醸し出すデザインをまとっています。
その意味では、洗濯の大要素「水道水」に変革をもたらす技術なのにもったいないと思います。
でもそれは何故でしょうか?
今回の発表会に先立ち、現在の東芝 白物家電の立ち位置が発表されました。
現在、東芝ブランドの白物家電は、東芝ライフスタイル社が事業を行うのですが、ここの株式の80.1%は中国のMidea(マイディア)グループが所持しています。残りは東芝 出資です。
Mideaグループと東芝は、戦略的パートナーシップを結んでおり、「TOSHIBA」ブランドを使用するのは、ここから来ています。
この会社、2016年下期は黒字化しており、東芝ライフスタイル社長の石渡氏がマイディアグループ本社の「Executive Committee」のメンバーになったり、マイディアグループの方(Paul Fang)会長が、東芝ライフスタイルの会長になったりしています。
海外企業は、他企業を取り込む時、それまでの権限を許しません。日本の大手企業の様に、M&Aで大枚叩いて買いました。それまでの権限を与えました。暴走しました。何てことはまずありません。ガンガン自分流に直します。
三洋がハイアール、アクア(AQUA)(中国)、東芝がマイディア(中国)、シャープが鴻海(台湾)となりました。これからどうしましょうと言うのもありますが、面白いかなとも思います。
というのは、まず日本は極めて特殊な市場だと言うことです。
カテゴリーによっては、生活レベル以上の商品を買ってくれるからです。そして日本人は、その商品の良さを理解しようとします。
正直なかなかないスタンスです。
TVだと分かりやすい。
例えば、アメリカなどでは、テレビは買える範囲内で一番大きなモノが売れます。
方式より「サイズ」ですね。
このためアメリカでは、リアプロ(後ろよりプロジェクターで画を出す方式)テレビが売れていました。リアプロなので画はそんなに良くありません。
映画文化のアメリカでは、画質よりも、サイズなのです。
ところが日本は、画質から入ります。
有機ELでも、真っ黒の描写がイイとか、いいとかになります。まるで、テレビの教科書を見ているようです。
別稿でも書きましたが、有機ELの魅力は、「軽い」ことです。壁掛けができることです。
これに画質が加わるのですが、日本はそうなりません、画質が先なのです。
しかし画質は使わない限り分かりません。このため日本人は、画質がイイ雰囲気を醸し出すデザインを求めます。
本来なら、分かり難い汚れを20%より落とすという技術を、デザインに織り込む必要があったと思うのですが、そこまでの雰囲気はありません。
中国メーカーがこれらの事情を十分理解して、日本の開発陣に余裕を持たせれば、よりいいモノが出てくると思うのですが、どうでしょうか。
商品のより詳しい情報は、東芝のホームページにてご確認ください。
https://www.toshiba-lifestyle.co.jp/living/laundries/index_j.htm
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