ウルトラファインバブルって何?
2017年、東芝の洗濯機『ザブーン』に採用されたウルトラファインバブル。微細な気泡のことですが、次のような定義があります。
■極端な状態になると、通常の常識は通用しない
現在知られている最高速は、光速です。
もし光速で移動するロケットで旅行できる様になったら、そのロケット内で時間の進み方は、地球上の時間の進み方に対しスゴく遅くなります。
アインシュタインの相対性理論ですが、サイズ、質量、温度、速度などの物理量が極端になりますと、通常のモノと違う挙動をするものが実に多いです。
例えば、温度が絶対零度に近づくと起こるのが「超伝導」。電気抵抗が急激にゼロになる現象です。
実は、ウルトラファインバブルもそれと同じです。
バブル、泡、水中で漂っている空気の泡ですが、これも小さくなると、いろいろ特殊な性質を持ちます。現在ある名称は3つです。
■ウルトラファインバブルは、サイズで定義されている
直径:100μm以下の気泡のことを「ファインバブル」と言います。
そして、ファインバブルは、2種類のバブルから成り立ちます。
直径:1〜100μmのファインバブルを「マイクロバブル」と言います。空気中の微小浮遊物、PM2.5の径は、2.5μm以下ですから、かなり小さい。
しかし、このレベルだと、実は肉眼で確認できるのです。
御覧になったことがあると思いますが、水が泡で白く濁っていることがあります。
そう「マイクロバブル」の泡は、見えるのです。ある程度大きいので、光を散乱しますので、白濁でみえるわけです。
それ以下のサイズ、直径:1μm以下の泡が「ウルトラファインバブル」です。「マイクロバブル」は「μ(ミクロン、マイクロ)m」サイズですので、「ナノバブル」だと分かりやすいのですが、「ウルトラファインバブル」という名称に決まってしまいました。
ちなみに、2014.5.12に、ISO(国際標準規格)のニュースでも、同じことが発信されているので、日本だけでなく世界的な名称です。
このサイズだと、光が反射しません。つまり、泡があっても不可視、、無色透明なのです。
■ウルトラファインバブルの効果
実は、ファインバブル学会連合ができたのは、2015年。
非常に若い学会。逆に言うと、まだ分からないことが多いと言った方がベター。
ただ効果はある程度分かっており、以下のような効果を持ちます。
●洗浄効果 公共施設のトイレの新しいものはウルトラファインバブルが使われています。
ウルトラファインバブルの持つ電荷が、微細な汚濁物質を吸着するためと言われています。
洗浄効果が非常に高いため、水を流すだけで、かなりキレイです。
また、水だけでキレイになるので、食品の洗浄などにも使われます。
●滅菌効果 菌の増殖の抑制に非常に大きな効果を持ちます。
自己圧壊作用のエネルギーでにフリーラジカルを出し、それが菌を攻撃すると考えられています。が、まだ証明されていません。
●酸化の抑制 ウルトラファインバブルを含む水は、酸化還元電位が低くなる傾向があります。
つまり酸化しにくくなります。
魚肉などは酸化で、どんどん変色しますが、ウルトラファインバブルを含む水で洗浄すると変色は遅くなります。
■ウルトラファインバブルの特性
ウルトラファインバブルは、1μm以下のサイズ。
このため合っても分からない、不可視であること以外に次の様な特徴があります。
先も書きましたが、一部は仮説です。
●浮上しない 余りにも小さいため、通常の気泡のように上に上がることはありません。
水の中を漂い続けます。しかも割れにくいため、6ヶ月近く存在続けるというデーターもあります。
●自己加圧による圧壊により消滅 水の中のウルトラファインバブルは、界面張力により加圧が生じます。この界面張力ですが、気泡の大きさが小さくなると、圧力が高くなると言われています。
そのため、ウルトラファインバブルは圧力により、一層小さくなり、それがますます圧力を高めます。そして圧壊。消滅すると言われています。
●圧壊によりフリーラジカルを生成 圧壊時は外にエネルギーが放出されます。このエネルギーにより物質が分解されフリーラジカルが生成されると考えられています。
●気泡表面がマイナスに帯電 ウルトラファインバブルは負コロイドとしての性質も持ちます。このため負に帯電しています。このため、ウルトラファインバブル同士は反発。泡がくっつくことはないため、気泡数密度が減ることがありません。
負の帯電を持つので、正帯電する有機物を引き寄せる作用を持っており、このために洗浄効果があるとされています。
■ウルトラファインバブルの作り方
いくつかの方法があります。
●細孔吹き出し攪拌方式 イメージは、魚用の空気ポンプ。液体(水など)を流しながら、多孔質フィルムの管を入れ、そこに「気体+蒸気」を勢いよく、入れ込みます。気体が多孔質フィルムの細孔から出てくることにより、ウルトラファインバブルが出来ます。
●GaLF(Gas Liquid Foam)理論モデル IDEC(アイデック。日本の製造業メーカー)が1990年に作り上げた技術です。
2ヵ所がかなり細くなっている管を思い浮かべてください。
この管にポンプで液体を圧送します。細いところを通る時、この液体の流速は高くなります。圧力的には減圧されたのと同じ状態です。このため、この状態で気体を入れてやると、液体と気体が上手く混合されます。
次に管を太くします。すると流速は落ちます。そして後ろからは押されていますので、加圧状態を作ることが出来ます。ここで、気体を加圧溶解します。
そして、細くなった出口から大気圧に放出。溶解した気体は、気体に戻ろうとします。こうしてウルトラファインバブルが出来ます。
●せん断方式 / 旋廻液流方式 急激に細くなった管に、液体と気体を回転させながら入れます。
そうするとせん断力が働きます。これは加圧と同じです。そして大気圧に開放。
加圧、溶解、バブル化という方法は、GaLF理論モデルと同じ理屈です。
●東芝方式
φ4mmの細い流路に0.6mmのスリットを設け、局所的には圧力差をもうけ、流速を高める。
真空に近い気圧になることで沸点が下がり、水中の空気成分がナノサイズのバブルになる。
いろいろな方式がありますが、できるバブル量が違いますので、ウルトラファインバブルの濃度が違います。状況に合わせ、適切な方法を選択します。
2017年6月5日
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