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ビールの世界をより深く楽しむ4つの方法


年々、賑やかになっていく「オクトーバーフェス」。南ドイツで行われるビール祭り(収穫祭)です。
日本の大手メーカーは、自分の会社名を付けたビールを作り倒していますが、実はあれは「ピルスナー」と呼ばれる種類。現在のチェコで産まれたビールです。

美味さもそうですが、黄金色が当時売り出し中のボヘミアングラスに栄え、瞬く間に世界を席巻しました。
が、今注目されているのは、エールと呼ばれるピルスナーより作りやすいタイプ。アルト、ヴァイツェン、ケルシュ、IPAなど、種類も豊富です。今、クラフトビールと呼ばれているのは、日本各地に点在するビール蔵のエールビールのこと。種類ででもそうですが、蔵毎に味が違うため、かなり楽しめると言うわけです。

ビールを楽しむためには、ビールの種類以外にも、香り、温度、泡、摘まみ(マッチング)が、重要です。一つ一つご説明しましょう。

 
■その1 香りを楽しもう!
日本人は、割とビールを飲む時、グラスに無頓着です。それなのに、ワインとなると皆さんワイングラスを持ち出してきます。何故でしょうか?
一番大きく変わるのは、『香り』です。

ワイングラスは、ワインの香りを『溜めて』楽しむために、丸まった形(ボールと呼ぶそうです)をしています。このボールの中に香りを溜め、楽しむわけです。

日本酒もそうですね。丁寧に作られた吟醸酒は吟醸香と呼ばれる、甘い香りを出します。このため、今、吟醸酒用のグラスは、ワインのボール部分で形成されています。

では、ビールはというとこれも同じ。種類によりいろいろな形が提案されています。
が、基本はワイングラスと同じようにボールを持ち、その下に太い柄を付けた形です。この太い柄は飲む度に、ビールが壁面に当たり、泡を出すことを目的に作られています。

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クラフトビールの種類により多少アレンジはされるが、ワイングラスに似たボール部を
持つこと、持ち柄の部分が液溜まりになっているところは共通。


では、何故、今まで無頓着だったのでしょうか?
それはピルスナーの香りがあまり強くないことが上げられます。その上、喉を潤すために一気にがぶ飲み。つまり香りを楽しまなくても、イイとした飲み方だったわけです。
もっと言うと、一敗目はできる限り冷やし、一気に流し込む、のどごしの感覚が重要視されたわけです。どこのビールがこれでシェアNo.1を取ったかがわかりますね。

日本酒では吟醸酒、ビールだとクラフトビールという選択が当たり前になりつつある今、それではもったいない。まず、グラスに凝ることをお勧めします。

 
■テイスティング・セミナー
と言っても、無闇矢鱈に試す(コップを買うと)とお金が幾らあっても足りません。
また、不要だからと言ってもまだ使えるモノ。かなりもったいない。

私のお勧めは、リーデル社が行っているテイスティング・セミナーへの参加です。90分で、3つのグラスに3種類のクラフトビアの飲み比べ。参加費は、5000円オーバーで少々お高くはありますが、グラスは全てもらえます。これはかなり効率よく、ビールの香りとグラスの関係のイメージを掴むことができます。

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3種類のビールグラスと、標準コップ。
リーデル社は驚いたことに、コカコーラ専用グラスも持つ、


 
■その2 適正温度で楽しもう!
さて次のポイントは、温度。
ビールは、よく4℃が適温と言われますが、それはあくまでも目安。特に、今までビール=ピルスナーであったことを考えてください。喉を潤すことが目的なら、低めに設定した方が飲みやすいですが、温度が低いと香りが抑えられ、クラフトビールとしては面白くありません。むしろ8℃を目安にして振ることをお勧めします。

温度の振り方ですが、自分の想定する最も低い温度を冷蔵庫の温度とし、それ以上は、冷蔵庫から出した時間で調整が割と楽です。
温度で、香りの立ち方もかなり違います。

 
■ワインセラー
ただし、4℃はともかく、8℃だと冷蔵庫の設定温度としては少々高め。こんな時、醸造酒(日本酒、ワイン、ビール)が好きなら、小さいワインセラーを買うのも一つの手です。

ワインセラーのイイところは、温度管理だけではありません。そこはかとなく中身が見えること。これ実はかなりリッチな気分になります。
でも長期熟成はしないしですって。これはいろいろな認識がありますが、ベルギービールなどは基本長期熟成型。(熟成を止めるには加熱します。)ワインと同じで賞味期限などはあってないようなモノ。ベルギービールの賞味期限の表示は、ビールに詳しくない係官が無理矢理付けさせたとか。
自分の好みでセラーを一杯にすると、得も言われぬ快感。酒を楽しむ一つの方法です。

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シロカ LOUNGE 6本収納ワインセラー LNE-W306B
温度:8~18℃、消費電力:90W。実勢価格:1.5~2万円。
小さいが使える一品。


 
 
■その3 泡はやはり重要!
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どの様に次ぐべきか、
記載されているビールもある


さて、次はビールの泡。

これは他の飲み物にはないビール独自の特長。炭酸入りの酒はシャンペンを始め、いろいろありますが、ビール程の泡はでません。ビールの泡の多さは、ビールの成分に由来します。ここで覚えて置いて頂きたいことは、2つ。

ビールの泡はビール自体より苦いこと。そして、ビールの泡には役割があるということです。逆に言うとビールは「泡がある内に飲め。」ということです。
これを守ると言うことは、適温の内に飲むと言うことでもありますので、間違えなく美味く飲めます。

ビールと泡の比率は、7:3がベストと言われております。口への含み方にもよりますが、まぁ、間違えない味です。

さて泡を上手く出すには、コップを清潔に保つことと、つぎ方が重要です。つぎ方は、いろいろなビールメーカーが指導しているので、そちらを参照頂ければと思います。

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■ビールアワーで余裕の大人
つぎ方に自信がない人には、ビールサーバーもしくはビールの泡立て器を使って見てください。
しっかりサポートしてくれます。
というより、コップの素材などにも依りますが、面白いほど泡が立ちます。

タカラトミーアーツの「ビールアワー」シリーズは玩具メーカーの製品ですが、性能はしっかりしたもの。どこでも持ち出せるポータブル型もあり、かなりお勧めです。
これ、バッテリーを巨大化すると、携帯用バッテリーとして、常に持ち歩けるのにと思うのは私だけでしょうか?



また、後、いろいろなところがビールサーバーを出しています。
それを使ってしっかり作るのも一つの手です。

 
■その4 ツマミは自家製で!
ビールのお供、ツマミの話です。
コーヒーなどでも食べ物と合わせるマッチングは、最近非常に注目されています。料理を選ばない、つまりどんな料理にもあるビールを上げよと言われると、大手メーカーが作るピルスナーでしょうね。特に日本のビールは、飲み心地(食感)という世界でも珍しい要素が加えられています。日本の夏料理はしっこくなくて、さっぱりしたのが信条。代表的なのは、白身魚の刺身ですが、残念ながらクラフトビールはちょっと重すぎますね。ヱビスビール、サントリーのプレモルなどは、ピルスナーの中でも大変美味しい。これがイイ感じですね。
クラフトビールはこれより重い、肉系が合います。ソーセージ、アイスバイン。
そしてジャーマンポテト。和食的に言うと、ちょっと重めがいい。
ブルーチーズなどもかなり合います。

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けむらん亭で作ったスモークチーズのイメージ写真。
ここまで強くスモークしなくても美味い!


 
■燻製が「あれよあれよ」と言う間にできるパナソニックの「けむらん亭」
個人的にお勧めは燻製。中々手に入らないと仰っている方には、パナソニックのロースター「けむらん亭」がお勧め。肉、魚は言うに及ばず、チーズ、餃子、かまぼこ、ツナ、卵、等々なんでも燻製にしてくれます。
嬉しいのは特殊な材料を使わなくていいこと。スーパーの特価品を、成城Iのような高級スーパーの定番品化します。元なんかはすぐ取り返せます。

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通常のオーブンを横に割ったような雰囲気のパナソニック「けむらん亭」
減煙、減臭の効果がよく、魚、燻製も自室で可能。重宝な家電。


 
■番外 麦のワインに挑戦
2015年の春だったと思います。
クラウドファウンディングで、「麦で作るワイン」と書かれたビールのサポーターを募っていました。

今は、それなりの知名度が出てきた、麦のワインこと「バーレーワイン」です。

ワインは暖かいエリアのモノ。というのも原材料の葡萄は寒さに弱いですから。
このため、ヨーロッパの強国でありながら、イギリスはワインを作ることができません。
ならばと、ビールの原料で、ワインのような風味をという独特のビールを開発しました。
それが、「バーレーワイン」。

BAREY-1 特長は、アルコール度数をワインに寄せたことです。
通常の場合、アルコール度数:約4%。これが、約10~14%になります。
そしてポートワインに対抗と言うべきか、アルコール度数が高すぎるためと言うべきか、長期熟成型なのです。

麦芽が通常の約2.5倍。ポップに至っては約6倍ですから、原材料も大盤振る舞い。
ビン内発酵も含め、熟成させます。

完成したビールは、通常の数倍の甘味、苦みがあります。
それと共に、通常のビールとは全く違うお酒となります。
ちなみに価格も、全く違います。原材料の使用量、熟成期間、双方とも醸造所に負担をかける方向ですからね。
大英帝国の意地が作った、珍しいビールです。

 
確か、3,000円/720ml換算で手に入れたこのビール。
馴染みの居酒屋に、持ち込みしてもらい、皆で味わいました。

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ビンも非常に美しい「蔵ビール」のバーレイワイン。
長期熟成が当たり前のため、2015年のラベルが貼ってある。


しかし、これは失敗。
バーレイワインは、「食中酒」には重すぎたのです。
ポートワインは、基本食後に味わうのが一般的。つまり、味の重いモノは食中酒には向かないのです。
酒は、それなりに美味いのですが、食事と合わない。

別の機会。友だちが通っている銀座のバーに行きました。
そこで、バーマンに味を見てもらい、出されたツマミは、オレンジピール・チョコ。
お酒の甘味とオレンジピールの軽い酸味、お酒の苦みとチョコの甘味が渾然一体となり、口の中でハーモニーを奏でます。
酒が美味い!

「なるほど、これはいける!」

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グラスの中はバーレワイン。ビールにして、ビールにあらず。


バーマンの知識の確かさに助けられ、また一つ枠が拡がりました。

仕事でクラウドファンディングの確認をしていたことから、こんな世界も拡がりました。
儲かりにくい酒があることも分かりましたし、それに挑戦する心意気も良し、という感じです。

これもビールの一つの楽しみ方だと思います。

 
どうですか、「とりあえずビール」というつまらない世界から、より自分が楽しめる「新しいビール」の世界へ行って見ませんか?

2016年12月18日

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