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ミーレ訪問記05 そこで仕事をしたという証(あかし)


誰が何をしたのかと言うのは、中々残りません。
家族でもそうです。父の仕事は知っていても、祖父の仕事を知っている人は稀です。
それが会社のサラリーマンだとどうでしょうか? 退社した瞬間ダメでしょうね。去る者は日々に疎しですし。
まぁ、サラリーマンは歯車の一つと言われれば、その通り。
そうすると人間、金、金、金なのでしょうか。
よく問われる問題なのですが、まだ私は納得が行く回答を聞いたことはありません。

 
■今年、ドイツでも最も就職希望が高い会社に選択されたミーレ
ミーレが、今年、ドイツでも最も就職希望が高い会社に選択されたそうです。
公式文章での情報入手ではありませんので、確実とは言い切ることができませんが、ブランド支持率の高さから考えても、十分あり得ることです。

BMW、フォルクスワーゲン、等、ドイツには国際競争力を持つ会社が数多くあります。
それらより、若者の支持を集めていると言うことです。

これは黒字であるだけでなく、魅力ある会社であることを意味します。

 
■今の会社は魅力的か?
90年代後半、グローバル化が叫ばれました。

資本主義は一種のネズミ講と言えます。これは自国市場を食べ尽くしたので、他国市場の冨を得ようとする試みでもあります。
これ以降、日本は変わりましたね。

世界をリードは、マイクロソフト、アップルにとって変わられ、世界的な強みのあるエレクトロニクス分野は、韓国の猛追を受けます。
国内景気は低迷、B to C は儲からないと言うことで、B to B に方向性を変えた会社には、創立の目的から大きくずれ込み、会社の名前と中身が一致しないことも次々。
ブラック企業と言われる会社も跋扈し始めました。

しかし80年代の企業は違っていたかというと、違いますね。
時間外労働を見る限りでは、実感レベルで余り変わらないと思います。
ただ搾取のされ方が違うのです。

バブル景気もあり、もっと上への時代の80年代。
メーカーは、よりスゴい未来に向けて、自社で技術を開発、生産し、頑張っていました。
そして、失敗が許された時代です。全社挑戦者と言ってもいいです。皆、自分の仕事で名を上げようと、どちらかというと戦国時代的な感覚と言えるかも知れません。

今は違いますね。
兎に角、今を維持する。隙あらば討って出る。というと格好は煮ていますが、失敗が許されない。
しかも評価が、短期で襲ってくる。
こうなると失敗が許されるどころか、成功だけが許されます。
必然的に、冒険もしない。理想も掲げられない。
メーカーも、××で世に貢献などはお題目。儲かるモノなら何でも・・・。
仕事も、書類の端々まで揃っていなければならない・・・。
極端にいうと、そんな感じです。

そうして、利を上げるのですが、大半を会社が持って行く。
内部資産は、今までよりも多い。
しかし、それでも評価が低かったりします。
従業員還元はない。
ここに負のスパイラルが完成します。

働けど働けど、楽にならざる、じっと手を見る。
一億と言われる人口のかなりの人数が、そう感じていると思います。
少なくとも、今の多くの会社には、昔ほどの面白みはないように思われます。

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ミーレ 100周年の記念壁


■「お金」より大切なこと
会社、とくにメーカーで最も大切なのは、技術でも、資金でもありません。
「人」です。
技術も、資金も、人に付いてくるモノだからです。

このため、日本が基本的に終身雇用の時代、社員教育にお金を掛けました。
人を育てて使うわけです。

そして人を育てるのには、「評価」は大事です。
が、多分もっと大事なことがあります。
それは、「その人の存在を意識する」ということです。

人間関係で、愛の反対語は「無関心」だそうです。
それは、その人を「認めない」ということだからです。

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壁には、創業家の2人の顔がタイルに描かれている。


■ミーレ博物館の、100周年記念タイル
ミーレの総業は1899年。
100年以上の歴史を持ちます。

その博物館には、いろいろなモノが収められているのですが、その中の一つに、100周年記念タイルと言うのがありました。

このタイルの表面、あるモノが焼き付けられています。
それは、全従業員のサインでした。

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当時の全世界の従業員数、13268名のサインが
タイル化されて貼られている。


これは結構スゴい。
活字でも、印でもなく、肉筆です。
有名人ではないので、市場価値はないでしょう。
しかし、心情価値は計り知られぬものがあります。

サインした従業員がミーレを辞めた後も、残るわけです。
これはスゴいことです。

DSCF6249 23~60歳を企業人として過ごす人は多くいます。
しかし、その名前は、コンピューターの片隅に、数Bitの記録として残るだけが多い。

100周年タイルは一過性かも知れません。
が、ミーレという会社が、「人」をどの様に捉えているのか、垣間見ることができます。

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その当時のミーレ・ジャパンの方々のサイン。


今年、ドイツで就職したい企業No.1に選ばれたのは、単に仕事が優良なだけでなく、このように人を大切にするということが感じられているからかも知れません。

2016年11月26日

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