海外メーカーと日本メーカーで分かれたトレンド
空気清浄機2016 07 技術トレンド
室内の空気をキレイにするという命題に対し、こうもと言えるほど海外メーカーと国内メーカーでアプローチが異なる空気清浄機。2016年のあり方をまとめてみました。
■空気清浄機の基本
空気清浄機の基本技術は、空気のフィルタリング(濾過)。
「ホコリ」「花粉」「アレルゲン」などの有害物質を目の細かいフィルターで捉え、ニオイなどを活性炭フィルターで捉えるのが一般的です。
このため、室内の空気をどの位の時間で、どの位までフィルタリングできるのかが重要になります。HEPAフィルターが主流となった現在、フィルタリングできる粒子サイズに決定的な違いはありません。差として現れるのは、フィルタリング・スピードです。
このフィルタリング・スピードは、工業試験で定められた方法でテストされ、ユーザーに示されるのですが、アメリカと日本では大いに違います。
日本の場合、換気と同じスピードというのを目安にしています。
30分に1回、室内の空気を全部取り替えるという考え方です。
人一人、1時間あたり、30m3の換気が必要だと言われています。
日本の天井までの高さは2.4mが平均。20畳のリビングで、約33.1m2(1畳:1.6562㎡換算)なので、体積は、79.5m3。3人だと、1時間に1回の換気が必要です。
6畳だと23.8m3ですので、1時間に1回は換気が必要となります。狭い部屋だと、もっと短い時間での換気が望まれます。
これから算出されたのが、換気の1時間に2回です。
空気清浄機のJEMA規格(日本電機工業会規格)は、30分で1回清浄ができることを目的に立てられています。
それに対し、空気はなるべく手早くキレイにするとい考えがアメリカです。
AHAM規格(米国家電製品協会規格)では、12分で1回清浄するということになっています。
このためには、モーターも強力、フィルター性能も強化しなければなりません。
お金も、技術も必要です。
どれ位違うのか、適正床面積で見て見ましょう。
ブルーエア クラシック 480iを例に取った場合、AHAM規格での適正面積:40m2(24畳)、JEMA規格:55m2(33畳)ですから、約1.4倍。
レベルは機種により違いますが、まず差があることを知っていただければと思います。
■海外メーカーと日本メーカーのフィルター
海外メーカーの「ブルーエア」は、AHAM規格でも1、2を争う実力を持つメーカー。
現在、最強とも言われるフィルターを使っています。
しかし、欠点もあります。24時間使い放しの想定で、約半年でフィルターを替えなければならないことです。
つまりランニングコストがかかるわけです。
国内メーカーも段々、日本の工業会規格から、AHAM規格を重要視し始めましたが、まだ完全適合しているとは言えません。
また、日本人は、ランニングコストを嫌う傾向があります。また手間も惜しみます。多分、持ち物が多くなり過ぎたのでしょうね。
このため、2016年のトレンドとして名乗りを上げたのが「フィルターの自動掃除」機構です。
実は、海外メーカーのフィルターは、「ダスト用」「ニオイ用」に分かれています。
日本メーカーも同じなのですが、日本メーカーは更に「ダスト用」は、2つに分けています。大きなホコリを取る「プレ(前段階)フィルター」と細かなダスト用の「ダストフィルター」です。目詰まりを起こしやすいのは「プレフィルター」。このプレフィルターは、日本の家庭のホコリが綿ボコリであるため、非常に有効です。海外は靴&絨毯文化ですので、土ボコリ。日本の様に、ホコリが舞うということは余りありません。
日本の空気清浄機メーカーの多くはエアコンを作っています。つまり、エアコンフィルターの自動掃除メカを持っているわけです。
プレフィルターの自動掃除を行います。こうすれば、ダスト用、ニオイ用フィルターは基本10年保つというのが日本メーカーの考え方です。
日立、シャープなどが採用しています。
■イオン発生機の有無
日本メーカーの空気清浄機は、「イオン発生機」を付けているところが実に多い。
これは日本メーカーの空気清浄機の最大の特長と言ってもいいでしょう。
効果は、イオンが空気中に放出されると、ウイルスなど人体に悪影響を与えるモノを分解するとしています。
シャープの「プラズマクラスター」、ダイキンの「アクティブプラズマイオン」、パナソニックの「ナノイー」。
2000年代初め「マイナスイオン」商品が大流行。健康にイイとされた「マイナスイオン」を使った商品が無闇矢鱈と出されました。効果のあるモノから、とりあえず名前を付けましたというモノまで、本当に数多くの製品が出されました。
これを一掃したのが、2003年の景品表示法の改正。以降、研究データーを提示できないメーカーは効果をうたうことができなくなりました。これで一気に下火。紛いものの様な商品がいっぱいあったわけです。
まじめに研究して家電メーカーは、当然研究データーもあります。当然、かなりの開発費をつぎ込み、作った技術ですから、投資回収したいという思いもあったでしょうし、実効果もあるので、何時かは認められるという思いもあったと思います。
この技術がリファインされ、空気清浄機に搭載されるわけです。
これらの効果は、化学式で表すことができますので、理論的に嘘はありません。ただし、条件があります。幾つかありますが、一番重要なのは「濃度」です。例えば、ウィルスに対し効果があるとしても、ある程度イオンが部屋に充満しないと、ウィルスにまで行き着きません。
つまり、イオンの効果は大きい部屋より狭い部屋で、より発揮されるわけです。
シャープが、LED照明とプラズマクラスターイオン発生機を組み合わせて作った天井設置型イオン発生機 IG-HTA30がありますが、これをテストした時は、スゴかったですね。トイレが全く臭わなくなりましたからね。予期したこととはいえ、余りにも見事でした。
空気清浄機とイオン発生機の組み合わせは、基本プラス方向です。
が、部屋が広ければ、広いほど、効果が出にくくなることは承知していていださい。
また、イオン発生機は寿命があります。先ほど、フィルター:10年と書きましたが、数年でイオンが発生できなくなるモノもあります。
■加湿機能
さらに日本の場合、加湿機能が付いた製品が非常に多い。
こちらも日本独自の風土によるモノと思います。
空調家電と呼ばれるものは、エアコン、空気清浄機、扇風機、ヒーター、加湿機、除湿器、サーキュレーターがあります。エアコン以外は、フロア設置型。全部置くとスペースがありませんし、使うときだけ出すとしても押し入れは一杯になります。
しかも日本はカビが生えやすい。ホコリ&湿気があるモノを押し入れに入れっぱなしにしておくと、カビの温床になる可能性もあります。
特に加湿機は、きちんと手入れをすることが重要です。
今、モノをよく知っているメーカーは超音波方式の加湿機は作りません。
超音波方式の場合、(あってはならないことですが)水槽内に発生したバクテリア、カビなども一緒に空気中に飛ばしてしまう可能性があるからです。
でも冬場の日本はかなり乾燥します。そんな時、やはり加湿機は欲しいものです。
しかし単独だと、場所も取ってしまいます。それでは、ということで、空気清浄機と融合させたわけです。
空気清浄機だと何が有利かというと、日本の場合イオン発生機が搭載されているからです。
カビの胞子をイオンで分解することが可能だからです。ホコリ、水、つまり食料と水があっても、元になる胞子がなければ、カビは繁殖しませんからね。
いわゆる、「Win Win の関係」というやつです。
日本でもっとも空気清浄機が使われるのは、「春」「秋」。花粉が飛び回る時期です。加湿機は「冬」。加湿機を加えることにより、シーズン家電ではなく、通年家電へと変わったという言い方もできます。通年使うモノは目を掛けてもらえますからね。メンテナンスもしてもらえるというわけです。
似た考え方に、ダイソンの扇風機とファンヒーターを組み合わせた空気清浄機があります。
海外メーカーで加湿機機能を付与しないのは、メンテナンスしないと空気清浄機がカビの巣となる可能性があるためだそうだ。いろいろな国で、同じ仕様で販売するためです。
■家具調デザイン
日本メーカーのトレンドとして、デザインを上げておきましょう。
と言っても、「色」の方です。
ダイキンのビターブラウン、パナソニックの木目調、日立のグラディエーションブラウン。白が基調の空気清浄機ですが、常に出しているとなると、余り目立たない方がイイですからね。
■次のの一手「IoT」と取り込んだ海外メーカー
今年は IoT元年と言ってもいいでしょう。
日本メーカーは、毎年モデルチェンジをするので、付ける時がくればと考えているのかも知れませんが、2016年に新しいモデルを出した海外メーカー、ブルーエアー、ダイソンは、IoTに対応しています。
本格稼働は今からという感じですが、スマホを介在して、いろいろな情報、操作をすることができます。特に空気環境は室内だけでなく、室外のデーター(近くの観測所のデーターを使用)を提示するのですが、これは節電しながら「自動」でもっとも良い状態を作るのに、一番必要なデーターであるばかりでなく、ユーザーの見識もアップします。
日本メーカーの場合、IoTは時が来れば対応しますという感じですが、海外メーカーは、乗り遅れたら大変とばかり、次々発表しています。
さて、空気清浄機は10年の寿命と言われていますが、IoTがここ数年で立ち上がるとすると一寸、悩んでしまいます。
■トレンドまとめ
海外メーカーと日本メーカーで二分。
海外メーカーは、「フィルター」に重きを置く。ただしフィルターは使い捨てであり、ランニングコストがかかる。湿度との連携はないが、「IoT化」が始まっており、「自動運転」機能が高められている。
日本メーカーは、フィルタリングを基本に、イオン発生機でサポートするタイプ。フィルターはプレフィルターに「お掃除機能」が設けられており、10年間フィルター交換不要が売り。
また加湿機能も含まれている。
通年出して置いても気にならないように、「家具化したデザイン」モデルもラインナップ。
残念ながらIoTには未対応。
以上、今年の空気清浄機のトレンドでした。
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2016年10月30日