日立、スタンダード型のエアコンを見直した「Wシリーズ」を発売
エアコンの記事を書いているのに、読者の皆さんに意が伝わらないことがあります。
理由は、売れるエアコンが「リビング用 全部搭載(プレミアム型)」というのと、「普及型 基本機能のみ」に分かれるからです。
今や、一家に2〜3台のエアコンですから、メインルームのエアコンにお金を掛けると他の部屋にはお金を掛けられない。このため、全部搭載&普及版なのですが、これだと少々不足があります。
リビング用全部搭載は、性能は抜群ですが、かなり高価です。
その上、「巨大」。
今のエアコンは、まだ省エネを追い続けております。効率を上げるためにラインフローファンエアコンに用いられる円筒形のファンの周りを、熱交換器のパイプで覆います。横から見たイメージはラインフローファンの円を熱交換パイプが円状に取り囲んでいる二重丸をイメージして頂ければと思います。
そして、取り付け部分は、日本間の柱間を考慮するので、決まっています。
必然的に前にせり出してきます。
私は、「タヌキの太鼓腹」を勝手に読んでいますが、今のエアコンのパワーを考えると、太々しいほど強かった全盛期の北の湖関のあんこ腹と呼んでもらってもイイです。
正直、落ち着いた感じはしません。
特にワンルームだと、そこで寝もする訳ですから、余りいい気持ちはしません。
そうかと言って普及機は、基本機能以外余り付いていない。
日立の場合は、「お掃除機能」は付けないそうです。
特に、ワンルーム・マンションの場合、リビング兼寝室ですから、温度コントロール、湿度コントロールも重要になります。
そこで、日立は、プレミアム型と普及型の間の「スタンダード型」の見直しを行いました。
スタンダード型とは、省エネ性能はプレミアムと同等。ただし、使用する部屋がプレミアム型より狭いことを考慮し、大部屋用の機能を削ったエアコンを言います。
それが新しい「ステンレス・クリーン 白くまくん」Wシリーズです。
■やはりサイズが重要
日立の資料によると、スタンダード型の設置は、窓の上:42%、窓の横:30%、窓のない壁面:19%、和室の柱間他:9% だそうです。
特に集合住宅では、窓の上:71%で圧倒的な様子。
ところが、新しい住宅は、より窓が大型化されているそうで、この窓上のスペースがどんどん狭くなってきています。
まず、これに適合させなければなりません。
書くのは簡単ですが、筐体の高さを制限するのはもちろん、空気の取り入れ、フラップの動きなどにも左右されますので、なかなか大変です。
また、高さを抑えても、前により突き出すのは、「勘弁してよ!」になりますので、ここも注意が必要。
日立は、奥行き(「出っぱり」という方がらしいですが):31.5cm、高さ:24cmの中に、Wシリーズを作り上げました。2015年のGシリーズは、高さ:26cmですから、本体で、高さ方向 2cm減です。
更に、設置の際に必要な予備スペースは、Gシリーズの場合、上側:5cm、下側:5cm以上必要だったのが、新型のWシリーズでは、上側:3cm、下側:1.5cm!
トータル比較では、Gシリーズが、36cm以上のスペースが必要だったのに対し、Wシリーズは 28.5cm。
10cm近く狭い所でも、設置することができます。
ちなみに、下がり天井などで下に障害物がない場合は、27cm!
かなりスゴいです。
■くらしカメラは狭い室内に合わせて
Wシリーズは、リビング用 Xシリーズと似た名称の「くらしカメラ」が搭載されています。
(Xシリーズは、「くらしカメラ4」)
一番違うのは、気流関連です。
リビング用は、かなりの大きさを意識しており、Xシリーズは29畳レベルです。
このため「気流」関連を意識した作りになっておりますが、Wシリーズは最大14畳。気流を重要視しないですむサイズです。
このため、Wシリーズに搭載のくらしカメラは、気流ではなく、人数、位置、動きなどを把握し、エアコンの最適な動きをさせることに注力させてあります。
ただし、風を直接当てない時に使える、「風よけ」運転モードもあります。
狭い部屋では、気流はそんなに大きな意味を持ちませんから、問題はありません。
■お勧めの「除湿」機能
冬場の湿度は、大きな問題です。
加湿機をぶん回すと、あっと言う間に結露します。
結露を放っておくとカビが生えます。
窓だけでなく、家具の後ろ、絨毯の下など、どこでもカビます。
カビは健康被害を出すこともありますから、大変です。
エアコンは冷房時は除湿できますが、これはエアコンの内で空気を冷やすときに、同時に空気中の水分をエアコン内で結露させその水分を外に出しているからです。
このため、エアコンの「除湿」は多くの場合、部屋の温度が下がります。
日立の除湿は、これに対し室外機で出す熱の一部を使い空気を暖めます。
それから冷やして湿気を取ります。
再熱方式という方法です。
暖房時でもOKです。
これだと、加湿機で加湿しすぎた湿気を取ることができます。
冬場はインフルエンザ、風邪の予防で湿度を入れたいのですが、気温が低いため絶対湿度が低く、結露との戦いになります。
こんな時にも、ちゃんと使えます。
また、湿度の効用もよく熟知しています。
例えば、夏場、少し寝苦しいとき、どうしますか?
設定温度を少し下げますか?
身体に負担が少ないのは、湿度を下げてやる方法です。
体感温度を下がり、涼しさを感じますが、実温度は下がっていないので、身体への負担は少ないのです。
日立は、健康冷房『涼快』と名付けています。
このような湿度コントロールが、ボタン一つでできるのは、Wシリーズの大きな魅力です。
■エアコンのこれから目指す方向に合った仕様
省エネを目ざし、突っ走ってきたエアコンですが、今年以降かなり違った方向へ進むことになると思います。
一つ目は、デザイン(サイズ)。
エネルギー効率を求め続けてきたエアコンは、今や普通の日本の住居では、よほど特殊な地方を除き、最も安い暖房器具となりました。しかし、そのため、冒頭でも書きました通り、大きくせり出した不安定なデザイン。「リビング、寝室で、安定安心なデザインか」と問われれば、ノーでしょう。
これに手を付けたのは、イイことだと思います。
二つ目は、室内環境の制御システムとして、高みに登ることです。
室内環境は、「二酸化炭素濃度」「温度」「湿度」「気流(風量)」「浮遊物」「揮発性有機化合物濃度」で決まります。
このうち、エアコンは「温度」「湿度」「気流(風量)」に関与しますが、湿度は除湿しかできません。
しかも、機種によっては夏場のみです。だからこそ、除湿器が存在するのですが、上の6項目を家電で対応しようとすると、最低「換気システム」「エアコン」「加湿機」「空気清浄機」が必要です。
狭い日本の家屋ですから、できる限り家電は少ない方がベター。
だからこそ、Wシリーズの湿度コントロールは、イイのです。
外観は一回り小さくなりましたが、中身の充実。ここには書いてませんが、まだまだ使いやすい特徴を備えています。
Wシリーズは、イイ感じに進化したエアコンといえます。
商品のより詳しい情報は、日立のホームページにてご確認ください。
http://kadenfan.hitachi.co.jp/ra/
2016年2月22日