電力自由化を読み解くため、知っておくべきキーワード
「電力自由化」は、今年前半に頻繁に使われる用語です。
しかし、料金プランを読み解くには、今の電力料金の基礎知識が必要です。
それをまとめておきます。
■電気料金の決め方
「電気料金」=「基本料金」+「電力量料金」+「再生可能エネルギー発電促進賦課金」
これが電気料金の算出方法です。
使用量で変わる「電気量料金」に加え、今後のための「再生可能エネルギー」用の費用が加わった形です。
再生可能エネルギーのための費用は、税金みたいなものと考えてもらってもいいです。
契約の基本料金、使用した費用、そして税金で、電力料金はなりたっているわけです。
■三段階料金制度
そしてもう一つ三段階料金制度と言うモノを知って貰わなければなりません。
電力料金は、使用する電力量により、三段階で値段が違うと言うことです。
この制度が設けられたのは、1974年。
前の年に、1973年に起こったのが第一次オイルショック。
もうお分かりの通り、省エネ推進のために作られたのが、この制度です。
料金は、使用量順に、第1段階料金、第2段階料金、第3段階料金となりますが、ポイントは順を追って高くなって行くこと。
大口ユーザーには値引きするのが通常の方法なのですが、省エネ、つまり電気を使わせまいとして作られた制度ですからね。その逆なわけです。
第1段階料金は、 0〜120kWhで、19円43銭。
第2段階料金は、120〜300kWhで、25円91銭。
第3段階料金は、300kWh以上で、 29円93銭。
かなり違います。
ちなみに、第1段階料金は、ナショナル・ミニマム。
日本国憲法 第二十五条に定められた、『すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。』といえます。
一般家庭は、第2段階料金。そして第3段階は、家電が多い「特別な人」向けでしたが、1974年はまだエアコンが贅沢な時代。今とは全然状況が異なります。
今、オール電化まで入れると、第3段階が当たり前の時代になっています。
また、2016年6月1日から、石油石炭税が増税されるため、それ以降の単価は上がります。
第1段階料金は19円52銭。第2段階料金は26円00銭、第3段階料金は30円02銭。
ことある毎に、税金を取られているいやーな気分になります。
■燃料費調整制度
電気料金の「電力量料金」ですが、これは2つのモノを足し合わせたモノです。
一つは使用電力量の料金です。
「電力量料金単価」×「使用電力量」です。料金単価は、「三段階料金制度」が適用されます。
これはスッと腑に落ちると思います。
もう一つは、発電するための燃料のやりくりをサポートするためのものです。
日本は発電のためのエネルギー、石炭、石油、LNG(液化天然ガス)を海外に依存しています。
このため、元の価格はもちろん、為替相場(アベノミクスによりかなりの円安なったことをお忘れなく)も影響します。
これを調整するのが、燃料調整制度です。
具体的には、基準燃料価格(2012年1〜3月平均の貿易統計価格に基づき設定した価格)と、石炭、原油、LNGの3ヶ月実績の差分に基づき算定されます。
2012年という意味お分かりですよね。
原発で予定していた安価な電気がなくなったからですが、原発廃炉の費用などもなかったはずなので、どうにも杜撰ですよね。
調整額は、燃料費調整単価に使用電力量を掛けたものです。
定額ではありません。
■再生可能エネルギー発電促進賦課金
こちらも2012年7月から始まった制度です。
こちらは再生エネルギーの促進です。
こちらも単価に対し、電力使用量を割り掛けします。
■電灯契約
今まで説明してきたのは、電気料金。
その中にもありましたが、基本料金。それを決めるのが、従量契約です。
まず大まかに、A、B、Cと3つに区分けされます。
それぞれ契約アンペア数が違います。
従量電灯Aは、使用する最大電流が5A(アンペア)以下。
これはアパートの共用スペース、廊下の照明などに使われます。
従量電灯Bは、10A〜60A。一般の家庭はこれですね。
契約アンペア数は、10、15、20、30、40、50、60Aの中から選択することができます。
基本料金は契約アンペア数が高いほど、高くなりますが、電力量料金は三段階料金制度が適用されます。
最後は従量電灯C。これは60A以上の場合。
これは電気製品が特に多い家庭、もしくは業務用の大型冷蔵庫を用いる場合の契約となります。
ちなみに従量電灯Cの契約は、Bと異なり、最大電力値を自由に設定できます。
単位は、1kVA。皮相電力と呼ばれる単位です。
目安としては、1kVAで10Aレベルです。
皮相電力が規定されると電流絶対値が決まりますので,必要なブレーカの容量,電線の太さなどが決まります。
多くの場合、10kVA(つまり100A相当)での契約が多いようです。
基本料金は、2808円。60Aの従量電灯Bが、16804.8円ですから、その差、1000円。
ポイントは、どの家電を同時に使うのかです。
例えば、エアコン暖房、洗濯乾燥機、ドライヤー、IHヒーター、電子レンジなどの、消費電力が大きい家電を複数台同時に使いますというと、これは従量電灯Cの契約でしょう。
しかし、全部持っているけど、使うのは1台づつという場合は、従量電灯Bでも問題ないです。
ちなみに、配電盤の中に、アンペア数が明記されたアンペアブレーカーは用いられません。
これが基本になります。
■お得プラン
電力会社も、基本だけではやって行けません。
そこで、この基本をアレンジします。
ポイントは「夜」と「オール電化」です。
「夜」は、今のライフスタイルに関連します。
家には、夜と休日しかいない場合がそれにあたります。
夏の電力需要でもお分かりの通り、ピークは昼。
これは昼間、会社関係がガンガン使うからです。
このため、夜は放出した水を元に戻すなどの行為ができる位、電力には余裕ができます。
余裕ができたから、発電をストップさせるわけには行きません。
そんなことをしたら、発電をスタートさせるのに時間が掛かりますからね。
(工場に務めた人なら、長期休み明け、工場の再稼働にすごく時間が掛かるのを体験されていると思いますが、まさにそれです。)
パターンは幾つかありますが、「朝得プラン(AM1:00〜9:00安い)」「夜得プラン(PM9:00〜AM5:00安い)」「半日お得プラン(PM9:00〜AM9:00安い)」「土日お得プラン」、どれを見ても、会社がやっていない時間安くしています。
オール電化もそうですね。
エコキュートなど、電力消費が多い家電を夜に持ってきてもらうと、昼の電力ピークを下げることができますので、夜の分を安くしようというものです。
これはプランは、会社とユーザーの利害が一致したためのプランです。
ここまでお分かり頂けると、電力自由化のプランで、何のために、どこがどう変わったのかが分かります。
2016年1月8日