電力自由化に向けた動き その1:残すは”低圧”のみ
来年4月から開始される、電力自由化。
全てのエリアを網羅することは厳しいので、生活家電.comでは、東京電力の動きを中心にレポートして行くことにしました。
メニュー(料金体系)が示されるのは、来年1月。その前に、知っていた方が良いことを順序よく書きだして行きたいと思います。
■電力小売全面自由化
まず、日本の電気販売は、電圧によって3種類に分かれます。
20,000V以上の特別高圧、6,000V以上の高圧、そしてそれ以下の低圧です。
特別高圧、高圧は、工場、ビルディング、スーパーなどで使われ、我々が家で使うのは、低圧です。
そして、2000年(平成12年)から、特別高圧の電力小売全面自由化がスタートしています。
で、2005年4月に、高圧までの電力小売全面自由化がなされています。
しかし、余り新規参入の話はないですね。
これは顧客数が限られている上に、一顧客が使用する量が半端でないですからね。
設備投資にお金がかかります。
このため、新規参入はほんの一部、全需要の2.2% だそうです。
来年から始まる低圧の電力小売全面自由化は、状況がちょっと違いますね。
一顧客の使用する量は少ないですから、発電設備にそんなにお金を掛ける(あくまでも、特別高圧、高圧に比較して)ことなく、特定地域の需要を賄うこともできます。
そうなると市場の競争原理が働き、電気が安く供給される。
つまりモノの価格を下げることができるわけです。
■電力システム改革
原子力発電が安い、安全、だから未来も安心という話が、全く当てにならないことが分かりました。
つまり日本は、エネルギー危機のままなのです。
今は、まだ売ってもらえるのですが、国の方針で売らないと言われると日本は泣きの涙に暮れることになります。
まぐろ、うなぎで世界的に不足していますが、これに関しては日本人の乱獲が要因の一つといえます。
ソドムとゴモラではありませんが、驕り高ぶるのもそろそろ止めにしなければなりません・・・。
金さえあればと言う気持ちは、やはりイイモノではありません。
脱線しました。
とにかく電力をもう一度組み立て直すことが必要なのです。
2013年4月、政府は一体となって電力システム改革を着実に実施するための改革方針を示した「電力システムに関する改革方針」が閣議決定されました。
目的は次の3つ。
1)安定供給の確保。
2)電気料金の最大抑制。
3)需要家の選択肢や事業者の事業機会を拡大。
1)は停電をなくすということです。
2011年 東日本大震災により、福島原発も被災。
現場のがんばりにも関わらず、メルトダウン。
この時、東京では計画停電も含め、いろいろ対応がなされましたが、やはり困るのは停電です。
こんな時、隣の中部電力、北陸電力から、電力がもらえたら状況はかなり違いますね。
これを考えているわけです。
2)も同じですね。
最近、携帯電話が家計を圧迫しているとして、安倍総理が指摘したところ、「企業努力は怠っていない」と答えがされましたが、圧迫しているのは事実です。
世帯当たり、(家族の人数+家)×5000円が相場ですからね。
4人家族なら、2万5千円前後。
手取り35万円とするなら、家計の7.1%。
スマホは最悪使わないと言う手がありますが、電気は完全な必需品ですからね。
これは安くしてもらわないといけません。
■改革3つの柱
目的に沿って、改革のための3つの柱があります。
それを順に行い、先ほどの3つの目的を達成しようというわけです。
1つめは「広域系統運用の拡大」。
先ほど書きました通り、他の区域からの調達です。
場合によっては、鹿児島の発電所の電気で、北海道帯広の暖房機が使われるかも知れません。
(伝送ロスが大きいので実際はありえませんが・・・)
自由度を上げる基礎となります。
これはもう実行に入っています。
2015年4月1日に、電力広域的運営推進機関が発足されました。
2つめは「電気の小売業への参入の全面自由化」です。
今しているこの話がそうです。
実施は、2016年4月。
新規ビジネスということで、いろいろな話が出ています。
ただし、2020年4月1日までは、経過措置も取られます。
4月に向けていろいろなメニュー(料金)が用意されます。
しかし、判断に困ることもあります。
また、料金が高くなる可能性もあります。
経過措置とは、今までとほぼ同等の料金で、供給しなさいということです。
3つめは「法的分離方式による送配電部門の中立性の一層の確保」です。
これは、ソフトバンクが通信に参入した時の事を考えて頂ければと思います。
固定電話の電話線は、NTTからのレンタルでした。
ここでNTTがレンタル料を凄く高くすると、参入障壁となるわけです。
このため、どのエリアの送配電用の電線も公平に使えるようにと言うわけです。
そして、これが実施される2020年4月1日は、経過措置が外され、完全自由化になります。
先日、東電は、4つの会社に分かれましたね。
燃料・火力発電事業会社の「東京電力フュエル&パワー(株)」、一般送配電事業会社の「東京電力パワーグリッド(株)」、小売電気事業会社の「東京電力エナジーパートナー(株)」、そしてその上の持ち株会社である「東京ホールディンス(株)」です。
会社として、別に行動させることにより、法的な中立性を保とうと言うわけです。
現在はまだ、東京電力以外にこのような体制を取っている電力会社はありません。
しかし、これが「法的」という意味ですので、全電力会社が、同様な措置を取ると思います。
さて、以上が、電力自由化の概要です。
次回から、新聞、ネットを賑やかしている、実際にどうなって行くのかを説明して行きたいと思います。
2015年10月18日