テクニクスの「熱い」新製品:SC-C500 “OTTAVA”は、新しい未来を開くか?
パナソニックのテクニクスへの想いは、「熱い」です。
一度途切れたユーザーとの絆を再度結ぼうと、発表会でも熱く語られますし、新製品も、丁寧に作られています。
その魅力、ちょっと語らせてください。
■ステレオコンポとウォークマン
その昔、オーディオという趣味に、一つの条件がありました。
「部屋」です。
左右で、音像をずらして音を出し、立体音響を作るのがステレオの技術です。
ステレオを楽しむと言うことは、立体音響が聞こえる位置に自分がいるのが条件です。
すなわち、どの位置で、どんな姿勢で聞くのかを決めることでもありました。
それに対し、1978年に発売されたウォークマンは、発売当初から爆発的なヒットです。
こちらはヘッドフォンで聞きますから、場所を選びません。
と言うより、音楽ですからね。
クラシックのワルツも含め、ダンス系の音楽だと体を動かしたくなる。
「ステレオで聞くために、この位置と言われても・・・」ということも含めての、大ヒットだと思います。
■聴き方はどうあるべきか?
クラシック愛好家の私にとって、椅子に座り続けることは余り苦痛ではありませんが、普通の人にとっては、1時間以上同じ姿勢で聴き続けるのは大変だと思います。
しかも、最近のポップスのライブは、初めから総立ちですし。
こうなってくると、部屋の中、どこでも同じ様に音楽が聞こえるのがベストです。
これは、どちらかというとステレオの考え方とは違います。
少なくとも、繊細な音に対し耳をそばだてるような感じではないです。
しかし、今は、聴き方を問わないのが普通になりました。
多くの人、特に若者がヘッドフォンを好む理由の1つです。
■SC-C500 “OTTAVA”
OTTAVA(イタリア語でオクターブ(8度音程))と名付けられた、このステレオシステムの特長はいろいろあります。
私が注目したのは、次の2点です。
1つめは、無指向性のスピーカーを用いていること。
2つはCDシステムであることです。
1つめの「指向性」というのは、音をある方向に押し出すという意味です。
具体的には、「前」へです。
そうすると音に「勢い」があります。
「熱さ」があります。
実感が伴います。
このため、多くのスピーカーは、指向性です。
無指向性とはこの逆です。
漂う音という言い方が、イイかも知れません。
部屋中を同じ音で満たす感じです。
いうなれば、音の金太郎飴です。
今の様に「ながら」で聞く分には丁度イイ。
ただ前に出ない分、指向性に比べると音に鋭さはありません。
しかし指向性が持ち合わせていない、音の柔らかさを持ちます。
原音は、双方の要素を併せ持っています。
このため、どちらの方法が正しいということはありません。
自分の好きな方を選んで頂ければと思います。
■無指向性スピーカーの技術
音の高低と指向性は次の関係にあります。
高い音は、指向性が強く、遠くまで響かない。
低い音は、指向性が弱く、遠くまで響く。
このため、OTTVAのトール型の小型スピーカーには、高域用のスピーカー(ツィーター)が3つ、3方向に配置されています。
つまり、音がきちんと聞こえるエリアを少しでも多く確保しようとする考えです。
さらに凝っているのは、このツィーターがホーン型ということです。
ホーンは”角笛”のことです。
身近にあるので有名なのは「メガホン」ですね。
要するに音を前に出す仕組みです。
要するに、部屋のいろいろな所で、高音がキレイに聞こえるようにするために、ホーン型にしたわけです。
当然指向性は強くなります。
ですから、数を増やし、いろいろな方向へ出すわけです。
しかし小型スピーカーですから、ツィーターを3つも詰め込むのが大変です。
が、それを何気なくやってのける。
テクニクスの懐の深さです。
■何故、CDなのか?
現在、音源は多数あります。
レコードプレーヤーを使う人もいれば、DATを使っている人もいます。
が、メジャーなのは、CDとハイレゾでしょう。
OTTAVAは、双方に対応していますが、CDは8cm/12cm CD、CD-R、CD-RWです。
同じ光ディスクでも、音のよいSACDには対応していません。
これは個人的な感触ですが、テクニクスは今までのピュア・オーディオ ファンではなく、オーディオに余り興味がなかった人に興味を持ってもらうために、OTTAVAを設計したのではと思っています。
パナソニックは、総合家電メーカーで、当然AV機器も製造販売しています。
ところが、それでもテクニクス・ブランドを立ち上げ直したわけです。
ピュア・オーディオと呼ばれるカテゴリーです。
このカテゴリー、場合によっては3人という会社もありますが、多くても100人前後で頑張っている会社が実に多い。
で、国内だけかというと、海外メーカーも実に多い。
音のニーズは多種多様ですからね、製品は深く、販売は浅いカテゴリーなのです。
例えば特殊なAMPを作ったとします。
年間 100台売れば、食べていけるとします。
日本で10台。
これでは食べていけませんが、アメリカで10台、イギリス、フランス、ドイツで、各8台。
どんどん販売網を広げるわけです。
特殊なのでお客は離れない。
販売網も深く作る必要はありません。
特殊なので、バカ売れしないのはわかっているからです。
このため、ある国でそれなりに売ったら、別の国で販売するのです。
これも身軽だからなせる技なのです。
ピュア・オーディオの問題は、新しくこの趣味に入る人が少ないことです。
オーディオは現在デジタル技術で成り立っています。
そうすると、あるレベルの音までは技術保証ができます。
それで出来たのが、CD規格。
1983年に製品として世に出ましたが、サンプリング周波数:44.1kHz、量子化数:16Bit。
当時のデーター処理能力で、ギリギリ。
そのCDの音を、それ以上悪くするのは、中々難しいのです。
その逆も、また真なり。
規格に縛られているの、なかなかイイ音が出せません。
ハイレゾは、CD規格を大幅に破ったモノですので、音がスゴいのです。
こんな状態の中、テクニクスが取ったのは、「CDでもイイ音を出すこと」です。
CDは、ほとんどの家庭にあります。
使ったことのない人は少ないでしょう。
でもイイ音で聞いているとは限りません。
だからこそ、CDでイイ音を体験してくださいと言うわけです。
「スゴいなぁ」と思ってもらえたなら、オーディオ・ファンが増える可能性があります。
OTTAVAは、今のユーザーの好みの聴き方に合わせながら、音楽の感動を、オーディオのスゴさ、面白さを伝えるために設計されていると思います。
■音は・・・スゴい!
視聴させて頂きましたが、いい音です。
無指向性でありながら、骨太、なおかつ綺麗な音です。
「ありながら」と書いたのは、そうは思えないということです。
音の面白さではなく、音楽の熱さがきっちりと伝わってくる。
そして伝わり方が、どちらかというと、指向性に近い。
その音が、真正面だけでなく、横でも楽しめます。
たしかに、2つのスピーカーの中央はイイのですが、横でも文句はでないでしょう。
イイ仕事、イイ商品です。
■20万円という値付け
ある意味安く、ある意味高いです。
元々ピュア・オーディオを趣味とした人からすると、安いでしょう。
しかもベストポジションに、コンポを置けないリビングなどでは、特に最適です。
また、CDだけでなくハイレゾも使えますので、そのユーザーも射程距離内であることも事実です。
さらに言うと、CDを一杯持っている音楽ファンで、コンポを探しているならお勧め機種の1つしょうね。
しかし、大学生、新社会人に取ってはちょっと高いかもと思います。
若い人で、音に興味ある人は、まずはPC、ハイレゾソフト、高級ヘッドフォンで、ハイレゾを試してみると言われています。
まぁ、安上がりの上、はっきり違いが出ますからね。
また、機材もヘッドフォンですので、集中しやすい。
機材は、お金のかけ方にもよりますが、10万円以下です。
OTTAVAは、その倍ですからね。
15万円前後なら、話はかなり違ってくるのではと思います。
この話、個人的な思いです。
何にせよ、このOTTAVA。
新生テクニクス魂を見る思いがします。
店頭で見かけられたら、触るなり、視聴してみてください。
音、音楽に対して新しいイメージを持たれることと思います。
興味のある人は、下のURLにどうぞ。
専用試聴室の情報があります。
商品のより詳しい情報は、テクニクスのホームページにてご確認ください。
http://jp.technics.com/
2015年10月13日