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コーヒー焙煎の実際
SCAJ 2015 “ロースト マスターズ チーム チャンレジ”より


コーヒーの味はいろいろな要素で変わります。
抽出方法、抽出温度、湯量、豆の鮮度、挽き方、挽いたサイズ、焙煎、等々。
中でも、焙煎での差は非常に大きい。
失敗すると不味いコーヒーを飲むハメに陥りますが、上手く焙煎できた時は「これが俺の味!」と小躍りしたくなる位うれしいです。
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毎年、ビッグサイトで行われるSCAJ。秋の楽しみの1つ。


SCAJ(スペシャリティ・コーヒー・アソシエーション・オブ・ジャパン(日本スペシャリティ・コーヒー協会))は、9月末に毎年「SCAJ 2015」と銘打った催しものを行います。
いろいろな豆、メーカーブースも出て面白いのですが、いろいろなチャンピオンを決める催し物が面白いです。

ジャパン バリスタ チャンピオンシップエスプレッソの抽出技術競技
ワールド サイフォニスト チャンピオンシップサイフォン(器具)を使用したコーヒーの抽出技術競技
ジャパン ブリュワーズ カップ機械動力を使わない抽出方法による技術競技
ジャパン カップテイスターズ チャンピオンシップ速さ、技術、正確性においてスペシャルティコーヒーの味の違いを判断するカッピング技術競技
・ロースト マスターズ チーム チャンレジ

どれも面白い催しですが、私が好きなのは、「ロースト マスターズ チーム チャンレジ」。
日本のいろいろなエリアの焙煎屋さんが、チームを作り、指定された生豆を焙煎。それを抽出して味を競います。

 
■焙煎とは
焙煎とは、コーヒーの生豆(なままめ)を煎ることです。
収穫・精製された生豆は味も香ばしさもほとんどなく、生豆では飲むことはできません。

生豆は火で炒って“焙煎(ロースト)する”ことで、水分が除かれ成分が化学変化し、揮発性の素晴らしい香りを放つようになります。
同時にこのとき、苦味、酸味、甘味等、コーヒー独特の風味が生まれるのです。

温度、熱のかけ方、途中でハゼるのですが、ハゼてから終了するまでの時間、等々、香り、酸・苦・甘味のバランスが変わる要素はいろいろあります。
しかも、「熱」ですからね。
気温、湿度、気流によっても、伝わり方が異なります。

これを制御するのが焙煎師です。
最重要裏方です。

 
焙煎は、ただ熱を加えて出来上がればイイというものではありません。
自分の作りたい香り、味に向け、いろいろな要素を考慮し、一つにまとめ上げる。
地味な上に、難易度が高いのですが、ハマると止められません。
いろいろな条件を振ってみたくなります。

イメージ的に一番近いのは、「オーディオ」もしくはクルマ、バイクの「コーナリング」でしょうね。または「米炊き」かも知れません。

自分のイメージを持ち、それに近づける。
職人芸の粘りと、確かな腕、それと創造性がなければ、やって行けません。

 
■焙煎の実際
ここに中部チームが出したデーターがあります。

その場、焙煎だとエージング(寝かせ)ができませんので、どうしてもデーターで説明することになるのですが、これで焙煎のイメージを説明しましょう。

DSCF8085 コンセプトボードを見ると、焙煎前半の高火力で、フレーバー(香り)を出すことを考えています。

そして、1ハゼ後、最後のところで火を弱め、甘味を出します。
昔は、苦みと酸味が強調されてきましたが、今は苦みより甘味を重要視しますね。

で、最後は、アシディティ(酸味表現)です。中部チームの味は酸味がさほど強くない様ですね。エイジング(寝かせる)は、食材の味を調える上で非常に重要な項目です。

DSCF8083 焙煎機内の温度と、焙煎時間の図です。

約180℃に予熱した焙煎機の中に、生豆を放り込みます。

生豆は低温〜常温保存ですから、一端焙煎機の温度は下がりますが、豆自体の温度はどんどん上がります。
130℃位までを「蒸らし」と言います。
蒸らしは、家電で言うと「余熱」。
状態を整えると考えてください。

ここでのポイントは「水分」ですね。
その後の過程が上手く進むように、温度と時間を調整します。

 
で、温度を上げると段々オフホワイトから、茶に変わってきます。
色の変化はメイラード反応で、肉が焼けるのと一緒です。

中では、いろいろな化学反応が起こり、ガスがでます。
外側がハゼます。
これが1ハゼと呼ばれる状態です。

1ハゼがあるんだったら、2ハゼもあるのか?
あります。
今度は、豆の芯がはじけます。
この時、多量の油がでます。

2ハゼを起こす焙煎は、「深い」焙煎ですが、豆を見ると油でツヤツヤ。
オイルマッサージを受けた時みたいな感じです。

で、そのまま続けるとどうなるのか?
「炭」ですね。
こうなると、不味いだけ。香りも焦げた臭いに変わります。

 
焙煎は、豆の挽き方、抽出方法によっても変わってきます。
今回、多くのチームは紙フィルターを使わない「フレンチプレス」を使いました。

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中部チームの抽出作業の様子。


 
■技術伝搬のためにチーム制を取る
SCAJで行われる競技の内、焙煎だけがチーム制なのですが、それについても触れておきます。
冒頭、焙煎は裏方と書きました。
毎日、来る日も来る日も、豆と焙煎機と睨めっこです。
それだと、実は、自分の発想に埋もれてしまいます。

つまりエリア毎でチームを作るのは、情報交換による刺激を持ってもらうためです。
人間刺激により、いろいろ新しい発想をすることが出来ますからね。

エリア毎にしたのは、移動時間を制約のためです。

この様なところまで、考えて競技を提案する。
一過性ではなく、継続して面白いことを行う。
SCAJは、よく考えてやっていると思います。

 
■味の判定はお客がする
後、面白いのは、結果は、全チームのコーヒーを試飲して、お客がベスト1に清き一票を入れることです。
権威者がいない。
これはイイ事ですね。
カフェなどのサービス業でお客を選ぶことはできませんからね。

ちなみに、どのコーヒーもレベルが高い。
特に、フレーバーの差がスゴい。
また、フレーバーを押さえ、味で勝負してきているコーヒーもあります。
今年度の課題豆は、ルワンダCOEの7位入賞のコーヒー豆ですから、ほぼ同じモノがあってもイイのですが、笑える位違います。

で、結果、優勝は九州チームで、関東チームが2位。

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競技参加者全員で、判定を待っているところ。
自分の舌も試されているようで、ちょっとドキドキ。


 
コーヒーは美味しい飲み物です。
しかし、自分で焙煎もする様になると、自分の味をより深く追求できるようになります。
漠然とイイお店を探すのもありですが、イイ焙煎という視点で探すと、より面白くなります。

 
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2015年10月11日

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