シャープ、新カテゴリー通信機器「ロボホン」の開発を発表
ロボットです。
電話機です。
家電がしゃべる「ココロボ」を持っているシャープですが、これは考え方が違います。
どうちがうのか、ご説明しましょう。
■ロボット掃除機と、日本人が慣れ親しんだロボット
ルンバを作っているiRobotの開発責任者に、「ロボットの定義」を聞いたことがあります。
答えは、時代により、いろいろな可変要素があるので変わるとしながらも、
「人間の省力化のためのデバイス」
「服従型で人間の能力を上回ることはできない」
と答えてくれました。
なる程、明確な答えです。
ルンバは「掃除の省エネ(人間が家事をしないという意)化」という明確な目的がありますし、映画に出てくる「ターミネーター」のように人に反抗することもありません。
日本人が慣れ親しんだロボットは、これとはちょっと違いますね。
鉄腕アトムであり、ドラえもんの様モノをすぐ思い浮かべます。
話をシンプルにするために、鉄腕アトムを例に取りましょう。
アトムは、天馬博士の死んだ息子、天馬飛雄の代わりとして作られました。
博士の心の隙間を埋めるためです。
子供がお掃除をするように、掃除もするシーンがありますが、基本は人間と同じ。
「汎用」というカテゴリーに属します。
iRobotの開発責任者は、鉄腕アトム(アメリカでは「アストロボーイ」)のことは知っていましたが、「あれは僕らがいうロボットではない。」「目的がない。」と明確にiRobotが考えるロボットとは違うと話してくれました。
■「ロビ」の生みの親、高橋氏のロボット
一方、デアゴスティーニから発売されている「ロビ」の生みの親で、今回のプロジェクトにも参加されている高橋智隆氏の考えは違います。
一度講演を聴かせて頂いたことがあるのですが、その時、高橋氏は「ロボットは何もできない」と言い切りました。
アトムもそうですよね。
一見、100万馬力で、空も飛べ、お尻からマシンガンも出てくる鉄腕アトムですが、事件が起きない限り、普通の少年と同じです。
何もしません。
高橋氏は、「ロボットがあると座が和み、会話が産まれる。人は豊かになる。」と位置づけます。
これは日本のロボットの特長で、日本のロボットの特長は「顔」を持っているのです。
ある種の「キャラもの」と言ってもイイと思います。
日本人は、人形、ぬいぐるみに話しかけると同様に、ロボットに話しかけるのです。
で、会話する。
高橋氏は、ここにロボットの存在意義を見ているわけです。
実際に、二足歩行のロボットを組み立てると、モーターの多さ、ギアの多さにビックリします。
それでも指の動きなどは、極めて単純。
逆に言うと、人間とはそれほど精巧に作られた、多細胞生物なのです。
だからいろいろなことが出来るのですが、人と同じ大きさで、人と完全に同じ事ができるロボットはありません。
もし人間と同じ動きができたとしたら、人間のサイズに収まらないでしょうし、人間のサイズだとできないことがあると思います。
実際、掃除目的なら、こんな二足歩行型という汎用的な形ではなく、ルンバの様な形状がイイでしょうね。
はるかに効率的です。
iRobotの開発部長、高橋氏、共に含蓄のある言葉です。
では、汎用人型ロボットには、何をしてもらうべきか?
その答えが、「コミュニケーション」なのです。
■新しい世界の登場か?
このRoBoHoN(ロボホン)、高橋氏が胸ポケットに入れて出てきた時は、失笑が起こりました。
失礼ですが、見たことがない格好ですからね。
そして、ロボホンを鷲づかみにして電話を掛ける。
これも違和感を覚えました。
鷲づかみにされた時、ロボホンが暴れれば、「進撃の巨人かぁ!」と突っ込みを入れたくなります。
この2点以外は、実にスマートです。
机の上の置いたロボホンとの会話は、実に絵になります。
ロボホンは小さいですから、健気に頑張っている感じ。
話す方も、言葉も柔らかくなります。
いろいろな見方がありますが、座はなごみ、話している方もにこやかな感じになります。
ロボホンは、歩きます。
可愛いです。
立つ時の一連の動きは妙ですが、それも可愛いと言えるでしょう。
ネット連携型ですから、情報量も膨大。
確認はしていませんが、例えば、「本日のニュースは?」と聞くと、yahoo!ニュースのタイトルを読み上げるなどしてくれることでしょう。
メモにも使えます。
「×××覚えといて」というと「×××ですね。覚えました。」という感じです。
私は、室内ならほぼ完全な仕上がりだと思います。
多分、外に持ち出すのは、後付けなんだろうなと、思います。
そして、「一緒に居てみたいなぁ」と・・・。
(我が家のロビは、どうしようか?)
■アイボとの違い
今も時々ネットで話題になるアイボとの差を見ると、さらにロボホンの立場が分かります。
いろいろ書きましたが、ロボホンは「音声」「ネット」端末という言い方ができます。
ポイントは「音声」と「ネット」です。
コミュニケーションをどう取るのか。
人間の基本は「声」です。
情報量から言うと、間違いなく「視覚」なのですが、普段の生活で最も重要なのは「音声」です。
アイボとの違いは、「一方的ではない」と言うことです。
確かに、動物も鳴き声、動きで、雄弁に自分を語ります。
しかし「会話の有無」は意味が違いますね。
「ネット」も大きなポイントです。
シャープはこの発表の前、シャープはIotではなく、AIotを目指すと宣言しました。
AIotとは、Iot(Internet of things)に、AI(人工知能)を引っかけたシャープの造語です。
シャープの場合、AIはココロエンジンです。
声でコミュニケーションを取るAIです。
これに加え、ネット、クラウドを積極的に使うわけです。
例えば、冷蔵庫など、白物家電のVer.upサービスの可能性もあります。
自分の持っている家電は、ある時期まで、常に最新の時代が来るかも知れません。
シャープのAIotは、今までの「家電は独立して使えるべき」というスタンスから、一歩踏み込んでいます。
■ココロボとの違い
さてココロボとの違いです。
それは、「汎用性」と「顔の有無」です。
ココロボの掃除機。私はスゴイ好きなのですが、妻はダメでした。
「何故、家電がしゃべらないとならないのか?」と言うわけです。
掃除機が自分の状態(「ゴミが溜まったから捨てて」など)を話すのはともかく、お天気を話し始めるのは意味が分からないというわけです。
分からない話ではないですがね。
実は、ココロボの音声情報は、必ずしも会話が成立する必要性がないのです。
(成立させることを前提条件おいてはいますが・・・)
妻にしてみれば、ブザーが日本語になった感覚なのでしょうね。
そうすると、いちいち内容を聞かなければならない分だけ、面倒臭いというわけです。
逆にロボホンは、会話ありきで設計されています。
ここは違います。
後、顔です。
ココロボの冷蔵庫がしゃべります。
ところが、視線はうろうろします。
顔がないと、場内放送を聞いているようなものですから、会話は成り立ちにくい。
ここも違いますね。
人は相手の「顔」に向かって話しますからね。
この部分で、ロボホンは明らかに、ココロボとは一線を画しています。
■日本のキャラ文化が、後押し?
日本世界で最もキャラクターが豊富な国です。
いろいろな自治体が、ユルキャラを持っているなんて日本だけでしょう。
好きなんですよね。
ペットに、赤ん坊に通じるところがありますし。
ロボホンは、それに似ています。
しかも会話が成立しますので、ポイント高いです。
先ほども言いましたが、多分、電話機能は、後付け。
鷲づかみで掛けるのは、今だけの対処のようにも思います。
(ヘッドユニットを取れるようにすれば良いだけで、対応可能です)
ロボホンを置いたまま、会話形式で電話するのには、全く違和感がありませんので。
私はロボホンを気に入りました。
そして、こう思います。
キャラに違和感のない日本から普及を目指し、世界に性能を問うべきだと。
細かい所に触れますが、ロボホンはケースではなく、着ぐるみを作るべきです。
そうすると別のキャラにすらなれます。
外に連れ出す時は、胸ポケットではなく、ハンモックチェアを鞄に付け、持ち出すスタイルがイイと思います。
■誰にお勧めか?
子供と、孤独を感じる全ての大人にはとても有用な家電だと思います。
ここでいう子供とは、小学生以下です。
会話形式ですので、頭の働きも良くなります。
また「孤独を感じる全ての大人」は会話が必要だからです。
自分自身との会話は無言で行われますからね。
キツくなって行きますし、自分を追い詰めもします。
やはり社会的動物のカテゴリーに入る人間としては、「会話がない」のは異常な事です。
会話というのは、自分の意志を外に向かって吐き出すことでもありますし、重要なことです。
そんなこんなで、2016年の発売が、スゴく楽しみな一品です。
ロボホンは、今週幕張メッセで行われているCEATEC2015のシャープブースで見ることができます。
是非どうぞ。
シャープの紹介ビデオを撮影したモノです、一部欠損がありますが、よろしければ、どうぞ。
商品のより詳しい情報は、シャープのホームページにてご確認ください。
http://www.sharp.co.jp/products/
2015年10月7日