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IFA 2015 25
パナソニック、テクニクス・ブランドの本気を窺う


昨年復活した、パナソニックのオーディオ・ブランド『テクニクス』。
昔は、総合家電メーカーは、固有のオーディオ・ブランドを持っていました。
松下(現パナソニック)の「テクニクス」、東芝の「オーレックス」、三菱の「ダイヤトーン(スピーカーのみ、現時点も使われているブランド)」、日立の「ローディ」。
復活二年目の今年、本気度が窺える一面を見ました。
■「パナソニック」と「テクニクス」は、被っている!
松下電器の名称が、「パナソニック」に変更され、それと共に白物家電で使ってきた「ナショナル」ブランドを「パナソニック」に統一すると発表された時、大いに違和感がありました。

パナソニックは、映画のワイド系の画面サイズの1つ「パナビジョン」と音を示す「ソニック」の合成語で、単純な見方をすると、AVメーカーの名前と言っても可笑しくないのです。

「ナショナル」は海外では「国産」を意味するため商標として使えなかったそうですが、AVメーカーが炊飯器を、掃除機を作るのか?と大いに違和感を思えました。
まぁ、ないことではないですが、ソニーが炊飯器、掃除機を作って販売する時の様な違和感です。

逆に、ここで思ったのは、「テクニクスの復権はないなぁ。AVとオーディオだから被るからなぁ。」と言うことでしたが、予想は見事に外れたわけです。

 
■マニアのためのオーディオ
現在のオーディオは、三分化されます。

1つは、「PCオーディオ」と呼ばれ、PCで曲を買ったり、CDから読み込んだりして、PCに保存、管理。
必要に応じて、iPhone、iPod、ウォークマンのような携帯機器に転送。
それを(高級)ヘッドフォンで、聴くと方法です。

正直ほとんどの人は、これでしょうね。
PCは多くの人が持っていますし、音楽マニアでないと所有する音楽量も知れています。
iPhoneはスマホとして所有していると、後必要なのは、いいヘッドフォンだけ。
安く音楽を楽しめます。

 
が、やはりマニアは存在します。
そのマニアに、今大受けなのが「ハイレゾ」です。

皆さんはCDがデジタルメディアということをご存じだと思います。
CDの生産が始まったのは、1982年ですから、30年以上経ちます。

実はデジタルで30年以上というのは、とてつもなく古い規格なのです。
と言いますのは、デジタルは”0″”1″の演算処理で、音楽情報を音に変えます。
30年前のCPUでも演算できるレベルの音、それがCDよくも悪くもCDです。

CDは、その手軽さから、全世界に普及。べらぼうなインフラを持ちます。
これを変えるには、CDよりものすごく便利なモノが出てきて、それがスタンダードと認知されて、十数年かかるレベルです。

CDの音は悪いですかと問われれば、それなりです。
理由は簡単で、その当時に言われてきた耳の能力に対し、基本的にはマッチさせているからです。
サンプリング周波数:44.1kHz、量子化ビット数:16bit。これが、CDスペックです。

ところが、今は違いますね。
機材の性能が桁違いに上がったため、384kHz、32bitでも処理できます。
この音を聴くとどんな感じかと言いますと、濃厚です。
例えるなら、ネスカフェと、エスプレッソ位の差です。

デジタルは規格なのですが、ハイレゾは、正式な規格ではなく、96kHz/24bit以上のことを意味します。
再生だけでも面白いのですが、生録すると間違えなくハマります。
濃密な、常に自分だけのために演奏してくれているような音の世界です。

これがハイレゾです。
これが2つ目の人たちです。

 
3つ目は、オーディオマニアと呼ばれる人たちです。

最後は、オーディオのために、部屋を作ってしまう人たちのことです。

分かりやすいので、マンガにも出た逸話を紹介しましょう。

オーディオマニアは振動を気にします。
このため、オーディオ機器の下に制振ゴムを付けるのはもちろんのこと、上に鉛の板を置いたりして、マッドサイエンティストの様に鬼気迫るモノがあります。
これだけではダメ、家が自動車の振動などを受け揺れるというので、地面の基礎からコンクリートの土台を作り、その上に機材を置く強者もいます。

伝説の人は、それでも心配で、岩盤に当たるまで掘り、全部セメントで固め、その上に機材を置いたとのことです。笑い話ですが、オーディオマニアの多くは、絶対羨ましいと思っていますね。

兎に角、音のためなら、何でもやってしまう。
見境が付かない、これがマニアです。

 
テクニクスは、2番目と3番目の人のブランドなのです。

 
■メーカーの実力のうかがい方
最近の日本のAV機器を見ると思うのは、媚びている気がします。
一頭地抜け出た感じの製品はないですね。

むしろ海外メーカーの方が抜けていますね。
ある海外メーカーのスピーカーは、女性ボーカル(しかも弱音)は最高なのですが、他の音はグニャグニャというものがあります。
魅力的かと問われると、スゴく魅力的。
絶世の女声ですからね。引き込まれると、元には戻れません。(笑)

 
しかし、日本のメーカーの中にもイイのはいろいろあります。
どちらかというと、魅力集中型ではなく、バランス型ですがね。

ただ展示会場は、ガヤガヤしているので、見分けるのは難しい。
視聴室でもその通りです。
日本人の多くは、どこでも同じ心で対応できるほど、神経がタフにはできていませんからね。

では、このような展示会、どこで実力を図るのかですが、機材のセッティングが最も手っ取り早いです。

オーディオは余分な振動で音が濁りますからね。
それをしないことが条件です。

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左)パワーアンプルの下には振動を寄せ付けないための板が引かれている。
また台も床の振動を直接拾わないため。右)スピーカー台。スパイク他で振動を拾わない。


スピーカーの下、アンプの下。
きちんと防振処理がしてあることが重要です。
機材の上に機材を乗っける人もいますが、余程のことがない限り、NGでしょうね。

そして美観あふれるセッティングであること。
これにはいろいろな意見があると思いますが、展示会の場合、仮設ですから、部屋の響きがプラスには働いてくれません。
基本は直接音で勝負です。

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スピーカーも整然と並べるのが基本。奇をてらわない。


 
ところがヘッドフォンだけで育つと、このここらが分からない人もいると聞きます。
マニアなのですが、オーディオ的(ハード的)に音が追い込めないわけです。

 
で、テクニクスのはどうかというと、大変見事でした。
このことからも、テクニクスは、きちんと人と技術を維持していたことが分かります。
特に、マニアが喜び製品は、作った人の顔が見えるレベルでないとダメです。

 
■テクニクスの方向性
今回のテクニクスが出したのは、DDモーター。
要するにレコードプレーヤーの技術です。

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今度のレコードプレイヤー。新型DDモーター。アルミの削り出し筐体。
テクニクスは、DJが使うプレーヤーとしても定評があった。


まぁ、これで旧テクニクスの基本技術が復活したわけですが、私は2つのことをテクニクスにはお願いしたいと思っています。

1つは、指向性スピーカーです。

今の日本でヘッドフォンが流行っているのは、それなりの大きさの音で音楽を聴きたいからですが、逆に言えばスピーカーを使うと音がダダ漏れになるからです。
で、ハイレゾレベルで使える指向性のスピーカーです。

そうでないと、ハイレゾ組、つまり音に興味を持ってくれている層を伸ばすことができないと思います。

 
2つめは、ルームです。
条件は、太陽光発電を前提としてです。
当然、無音エアコンも入れてです。

日本はいろいろな意味で電化製品にとっては不利です。
電圧も100Vですし、部屋が狭い。
このため皆、地下に作るのですが、これはかなりのお金が必要です。

2階6畳間などで手軽に展開できると、状況はグンと変わるのですがね。

今、モノから生活へ目を向け始めたパナソニックならではの商品になると思います。

 
■CEATEC 2015
このIFA 2015とほぼ同等の展示が、10/7〜10/10、幕張メッセで行われるCEATECでも行われるらしいです。
行かれる方は、是非CEATEC テクニクスの視聴室へどうぞ。
本格的なセッティングを含めて、オーディオの面白さをお楽しみにください。

2015年9月27日

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