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IFA 2015 06
IFA基調講演 LGディスプレイ Han氏が語った「完璧なディスプレイ」とは


ディスプレイという家電を語る場合、1つの方向性として、「解像度」が上げられます。
やれ、「ハイビジョン(2K)」だ、「4K」だ、いや「8K」だと言うわけです。
この話は、日本のテレビの将来を語る場合、よくされる話です。
しかし、今回のお話は、「完璧なディスプレイ」とは何かという、もっと根本的な話です。
■テレビは、自己発光型が基本だった
テレビの考え方は元々かなりデジタル的な考えです。
写真を細かいマス目で区切り、そのマス目に対し1つの色を配色し、画をこしらえるわけです。
このため、解像度を上げれば上げるほど、色数が要求されます。

テレビは、3色の光(赤、緑、青)を組み合わせることにより、無数の色を出すことができます。
そのためには、自ら純度の高い色に発光してくれるのが基本になります。
そして発光しない時の色、黒も問題になります。

何気なく書きましたが、「自ら純度の高い色に発光してくれるのが基本」。
ここがポイントなのです。

今は液晶が全盛期ですが、液晶は自ら発光しません。
バックライトから出る光を、カラー液晶を通過させることにより色を付けます。

このため、液晶テレビでよく言われたのが、フィギュアスケートの残像ですね。
これは光を通過させる液晶の応答スピードが追いつかなかったために発生した現象です。

また、黒色がやや白っぽく見えることも、ずっと言われ続けてきました。
黒は本来「光なし」なのですが、バックライトをその一点のみ切ることはできませんからね。
黒色の液晶で遮るわけです。
が、遮れきれない光があるので、白っぽい黒となるわけです。

このため、ハリウッドなどと付き合いが深いパナソニックは、自己発光型のテレビ、プラズマを最後まで捨てようとはしませんでした。パイオニアもやめ、価格的に追い詰められても、自己発光型のテレビの優位性を信じたわけです。
生産コスト引き下げのため、大工場も建てました。
パナソニックの経営難を引き起こした事例が、ここで続々出てくるの分けですが、よりイイ画をユーザーに届けるというのはテレビメーカーの信念でもありますことを、テレビ事業部の名誉のために書き添えます。

 
■OLEDという技術
DSCF6308OLEDとは最近の呼び方。数年前までは、有機ELと呼ばれていた技術です。
単純に言えば、自己発光する膜です。
赤色発光の膜、青色発光の膜、緑色発光の膜を組み合わせ、色を出します。

薄い膜ですからね。
向こうが透けて見える。
丸めることができる。
などの特長を持ちます。

また、面発光できる照明としての用途もあります。

 
問題は、素材が有機であることです。
有機物質の塊である人間に寿命があるように、有機素材には寿命があります。

原理的に有望な素材が見つかっても、テレビという製品の寿命を満たさなければ使えません。
しかし、有機素材は薄皮を剥ぐように、少しずつの開発が当たり前です。
難易度は、非常に高い。
今もそうですが、テレビ事業の採算性は家電メーカーにとって生死を分けることですから、自己発光型テレビの開発凍結、事業化中止などが相次いだわけです。

 
また、一部、製品として出したメーカーもありました。
ソニーですね。

が、価格がこなれきって、技術的にしっかり整ってきた液晶テレビですからね。
OLEDは、素性は天下一品でも、修行をこなしていない天才武道家の様なものです。
一方、液晶は素性はそれなりでも、百戦錬磨の磨き上げたわけですから、そう簡単には勝たしてもらえません。

 
■LGディスプレイの勝利宣言
今回、IFAの基調講演 “HOW DISPLAYS WILL CHANGE OUR LIVES” で、LGディスプレイ Han氏は、「完璧なディスプレイ」ができたと説明しました。

DSCF6291 要素の1つは、Realityです。
これは、色、黒、そして光(白)が完全であること、つまり自己発光型を意味しますす。
もう1つは、Dynamic form。
これは、ディスプレイ自体の薄さ、透明性、そして曲げられるという、薄膜であることを意味するそうです。

DSCF6298-2

右)展示されていたOLEDのパネル。厚みは、液晶パネルの1/3程度。


そして、先般発売された、LGの55型の曲面テレビは、液晶テレビに優れているとしています。

 
■4K時代のテレビ
今、家のテレビはパナソニックのプレズマ、42型、フルハイビジョンを使っています。
買ったのは北京オリンピックの時ですから、もうそれなりに古いのですが、売り場で最新の液晶ですと言われても、画質的に買い替える気が起きないのです。

時代はゆっくりですが、4Kにシフトしつつあります。
50〜80型が適切なサイズ。
そして、IFAでは曲面テレビが多数出展されたのですが、50型以上だと、曲面テレビは映像に包み込まれるようで気持ちがイイですね。

確かに、その時、発光型のOLEDだと申し分有りません。
画質にこだわる人にもお勧めです。

 
■パナソニックの画作り技術
IFAでは、LGはOLEDの盟主的に扱いになっていましたが、自己発光型をプラズマで追いかけて来たパナソニックも負けてはいません。

DSCF5999 OLED、展示してありました。
プラズマとの比較が出来るようにしてある、暗室での比較を見せてもらいました。

これはスゴかった。

プラズマに対して、画が作り込まれていることが、一目で分かります。
特に輝度の快調が、やや硬めですが見事。美しい。

これに適切な色を乗せるのですから、もう誇大広告かくあらんやというばかりの美辞麗句を並び立てるしか表現のしようがなくなります。
久しぶりに、イイ画質を見せてもらったと感じました。

これはパナソニックが、映画関係でハリウッドと長年培ってきた色再現の技術を入れたからです。

料理に例えると、OLEDは素材です。
それから美味を引き出すのは料理人の腕。
これに関してパナソニックは、LGよりかなり先を進んでいます。

OLEDは自己発光という、本来ディスプレイに求められていた素材ですから、またかなりの進化が期待できるわけです。

 
■デジタル・サイネージの可能性@サムソン・ブース
DSCF6552

紫の服の女性はPLEDの画。
後ろのソルトは本物。
ピンぼけ (^^;;


一方、サムソンのブースに展示されていたのは、デジタル・サイネージ。
透けるという特性を活かした見せ方です。

デジタル・サイネージは、広告というかなりお金が掛けられる分野です。
しかも、人にズキンとくるような表現を求めています。
鮮やかな色、透明、曲面。
大きな市場であることは一目瞭然です。

 
今回の、IFAで、液晶の先がいろいろな人に認識されたのは事実です。

これでシャープが液晶事業を売却することにでもなると、2015年という年は、「自己発光型テレビ、復活元年」と呼ばれそうですね。

2015年9月5日

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