掃除範囲を拡げる「エアブロー機能」搭載。三菱のサイクロン掃除機「風神」TC-ZXEシリーズ
今、キャニスター型の掃除機は、スティック型掃除機に猛烈な追い上げられています。
これはスティック型掃除機の簡便さが、評価されているためです。
このまま、キャニスター型の掃除機はなくなって行くのでしょうか?
三菱は、新型サイクロン掃除機「風神」TC-ZXEシリーズで、「違う」と明確に言い切っています。
■掃除機に求められること
掃除機に求められるものは、大きく3つあります。
1つ目は、吸引力です。
吸引力は、強さ自体と強さ持続の双方が求められます。
2つ目は、使いやすいことです。
使いやすいというのは、ユーザーの思った通りに使えるということです。
そして、3つ目は、排気がきれいなことです。
3つ目のニーズは、最近のニーズです。
特に都会では、「日のある内は会社」だとか、「女性の一人暮らし」だとかの生活スタイル、また場所を問わず「花粉症」だとか、「PM2.5」だとかの外気状況の悪化で、窓を開けて掃除ができない状況も多くあります。
そんな時、排気がきれいだと、安心して使えます。
■吸引力と使い勝手は、なかなか合わない
吸引力を上げるには、いろいろな方法があります。
一番手っ取り早いのは、モーターを強力にすることです。
もっと単純に言うと、モーターを大きくすることです。
モーターを大きくすると、強力になりますが、重くなります。
また吸引力を保つには、効果的なサイクロンシステムが必要です。
こちらもシステムが大きい方が効力を発揮します。
また、注意して欲しいのは、サイクロン自体は必ずしも吸引力の高いシステムではないことです。
サイクロンは、「吸引力を持続させる」システムなのです。
しかし掃除機の本体が、大きく重くなると、スゴく扱い難くなります。
引っ張っても中々、移動しない上にあっちにゴツン、こっちにゴツン。
このため、掃除機のモーター開発の基本は、『小さくして、軽くして、強力に』です。
そして、サイクロンシステムもそうですね。
『小さく、効率的に』です。
このように小さく、軽くと、強力に、は矛盾します。
掃除機の開発陣は、この無理難題に挑戦し続けるわけです。
■直接吸い込み構造を採用
さて、先の稿で吸引力とモーターのことに触れましたが、実は、新『風神』のサイクロンの吸引力は大幅改善されています。
それは持久力に置いてです。
つまり見直されたサイクロンシステムが着いているわけです。
単純にいうと、ゴミを直接サイクロンボックスにいれる構造を取ったのです。
サイクロンは遠心分離の原理が基本ですので、ある程度の高さを必要とするシステムです。
また、本体をホースで引くことを考えると、本体の下面近くにホースを取り付けるのが常です。
このためサイクロンは、吸ったゴミを含む空気を下面から上に持ち上げ、それからサイクロンシステムに入れ込むことをしていました。
今回の『風神』のサイクロンシステムは、ホースを本体の上部に取り付けてあります。
このため、空気を下面から上に持ち上げる空気の通り道は入りません。
本体がとてもコンパクトになっています。
また、モーターの素材を変えています。
そう、軽い素材を使用しています。
今回は、アルムフレーム化です。
この軽量化により、本体の上側にホースを取り付ける構造にもかかわらず、非常に使いやすい。
使いやすい掃除機になっています。
■『きれいな』排気と『無臭の』排気
日本語は曖昧です。
例えば排気で使われる、『きれいな』と『無臭の』は違う状況を表しているのですが、余り意に介さない人が多いです。
『きれいな排気』とは、その排気の中にゴミを含まないことを指します。
しかし、臭いは分子です。
ゴミが外に出なくても、臭いだけ出すことはあります。
以前、その様な掃除機のテストをしました。
これは酷かった。
ゴミはなくなるのですが、部屋が臭くなるのです。
逆なことも可能です。
活性炭フィルター臭い分子吸着し、臭いを取り除くことができるフィルターを通して排気を出すと、臭いはほぼ取ることが可能です。
しかし、目が粗いと、PM2.5の様な粉じんは、放出されることになります。
何故、掃除機は臭うのか。
それは吸い込んだゴミが原因です。多くの場合、そのゴミにカビが生えるからだそうです。
カビから見ると、掃除機の中は、ゴミ、つまりご馳走の山。
このため、少しでも湿度が高いと『アッ』と言う間に大繁殖します。
この時、臭うのです。
■カビることを抑えるのはできない。ならば・・・
掃除機のダストボックス内がゴミの山。
高温多湿の日本で、カビが生えることを防ぐのは、まず無理です。
「では」、ということで、三菱の技術陣が作り上げたのは、カビが生えやすいゴミの中に風を通さないシステムのサイクロン構造です。
サイクロンの基本は遠心分離。
重いモノから順に分離されます。
カビが生えるような大きなゴミ(三菱の言い方は『固形ごみ』)は真っ先に分離されますので、これを専用のダストボックスに収納。
そこに気流をいれてやらない方式を採用したのです。
実際にダストボックスに芳香剤を入れても、排気中に芳香剤の臭いはしませんでした。
見事なモノです。
さらにいうと、排気を確実にクリーンにするために、排気には、HEPAフィルター、ULPAフィルターを装着してあります。
サイクロンシステムで、0.3μm以上のゴミ:99.9%の捕獲ができますが、あと2つのフィルターを装着することにより、99.999%の最終捕集率を持ちます。
■フロアケアとして発達した掃除機を、ハウスクリーナーへ変化させるには
掃除は、ちょっとしたことができる、できないでずいぶん変わります。
例えば、キーボード。
吸引力が強い掃除機でも、キーの間のホコリは中々取れません。
しかし勢いよく空気を吹き付ければ、ホコリが外に出てくるので、キレイにできます。
それの専用機がありますね。
落ち葉などを片づけるときに、風を吹き付けて落ち葉を集めるブロワーと呼ばれる機械がそれです。
簡易的なモノは昔、日本でも使っていました。
『はたき』です。
家になくても、マンガ『ドラえもん』で本屋のおじさんが、立ち読みの小学生を追い出す時に使うのを見た人は多いと思います。
高いところ、隙間をはたいて、ゴミを取れるところに出す道具です。
ブロワーは、その家電版ですね。
掃除機は、乾燥環境下のフロアケアとしては、かなりの完成度を誇ります。
(フロアケアには、これ以外に湿式コンタクト型の『ぞうきん』系があります)
しかし、それはあくまでも『床』前提。
アタッチメントを付けて、棚、壁、隙間と進出していますが、弱点があります。
吸い込む条件を満たさないと役に立たないのです。
例えば、照明の傘。
掃除機系では実に取りにくい。
形が不定型なので、吸い込めないのです。
今回の、新『風神』は、キレイな、そして臭わない排気をブロアーにして使える「エアブロー機能」が付いているのです。
これは、『床』メインから、『家』全体に変わったといってもイイ変化です。
小さくて、大きな視点の変更。
次の大きな一歩です。
■家の中で使えるブロワーとは
使えるブロワーは、最低でも3つ条件が必要です。
1)ゴミを追い出すに十分な空気が放出できる。
2)放出する空気は、室内と同じ。変な臭いなど付くのはNG。
3)本体が軽く、手に持っても使うことができる。
新・風神は、前述の説明の通り、これらを見事にクリアしています。
エアブローは、室内ではペンダント照明の傘、パソコンのキーボード、TVの裏側、家具の隙間などに使えます。
また、外との境目は特に使えますね。
玄関のエントランス、サッシレール、網戸、ウッドデッキなどなど。
これは幾つ言葉を並べても、その良さは分かってもらえないかも知れませんが、スゴくイイです。
■第一印象
家で三世代前の『風神』を使っていることもあり、ここまで来たかと言う感じです。
本文で触れたところはもちろんのこと、触れてはいませんが、ヘッドも改良、髪の毛除去機能も付いており、本当に悪いところがなくなったなぁというのが実感です。
その上、エアブロワー機能まで付いていますからね。
いたせり、つくせりです。
印象に残ったのは『排気音』。
極端に小さいのです。
聞いて見ると、絶対値としては、1dB位しか小さくなっていないとのこと。
が、耳障りにならないように、音設計をしたとのことでした。
掃除機特有の甲高いモーター音がしないので、印象がまるで違います。
ただ気になったのは、収納ですね。
昔、本体は直方体を斜めに切り落とした格好でしたので、本体を仕舞う時は、立てて仕舞います。
底面積を小さくして、小さく収納というわけです。
本体底面には、その時、ヘッド部を引っかけるための切り欠きがありました。
つまりホースを付けたまま、やや縦長になりますが、仕舞えたわけです。
今回は、どちらかというと立方体。
このためでしょうか、本体底面にヘッド部を引っかけるための切り欠きがありません。
いろいろと試しましたが、上手く行きません。
聞いて見ると、本体とホースは切り離して収納して欲しいとのこと。
本体は、小型化されているので、スペース的には問題がないのですが、毎回本体からホースを外すのはなんとも・・・という気がしました。
逆にいうと、それ以外はバッチリ。
『フロアケアから、ハウスケアへ変わるんだなぁ』と、つくづく感じたモデルです。
商品のより詳しい情報は、三菱のホームページにてご確認ください。
http://www.mitsubishielectric.co.jp/home/cleaner/
2015年8月10日