新製品

アクアの力量 その1
2015年モデル 洗濯機『スラッシュ』


新製品発表会だけ見ると、ハイアールは他のメーカーと全く違ったことをしているように見えます。
先日もある発表会で、『ハイアールの今の動きをどう考えますか?』という質問が出た位です。
しかし、実際に販売されているモノはどうなのでしょうか?
アクアの2015年洗濯機 2モデルをレポートします。その1は、『スラッシュ』です。
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アクア 縦型洗濯機 8kg 「スラッシュ」 3色


 
■家電のマーケティング
新製品を出す時には、必ずマーケティングデーターが提示されます。
多くの場合は、ユーザーが不足していると思う機能を上げてもらう方法ですね。
新製品は、『その不足に対し回答を出しました。』
めでたし、めでたし、というわけです。

これを続けていたら、スゴイ画期的な商品が産まれるのでしょうか?

実は産まれません。
理由は簡単です。

ユーザーが勝手に枠を作っていて、その中の話に終始するからです。
例えば、通常の縦型洗濯機を使っているユーザーは、『ドライクリーニングと同じことが、洗濯機でできたらなぁ』等と回答しないというです。

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スラッシュは、ターゲット・ユーザーに意見を
聞いて開発されたタイプではない。


実際、ユーザーは、洗濯物の区分け、手洗い、洗濯機での洗い、乾す、取り込む、アイロン掛け、片付け、そして一部クリーニングへと広範囲のことをしているにも関わらず、『洗濯機はこうだ。』と決めてかかっていることが多いからです。

ユーザーから聞くという方法は、改良型はできても、新しい世界を提示するモノを作り出すことは難しいのです。

 
逆に、メーカーが『こうでなければならない』と世に問うモノもあります。
イイ例が、ダイソンの掃除機ですね。
今、スタンダード技術となったサイクロン方式ですが、技術開発が終了、いろいろなメーカーに売り込みに行った時は全部断られたそうです。

ダイソン氏は、自分が『こうでなければならない』と思ったサイクロン方式の掃除機を世に問い、財団を作るほどになりましたが、これも製品のありかたです。

 
■アクアの『スラッシュ』
アクアの『スラッシュ』はどちらかというと、メーカーとして『洗濯機はこうあるべきだ』という考えで産まれました。

洗濯機は、日本で主流の『縦型』と欧米で主流の『ドラム式』があります。

縦型は、豊富な水量の中、洗濯物を撹拌させ、洗濯物同士、もしくは洗濯物がドラムと『こすれる』ことにより、汚れをこそぎ落とす方式です。
逆に、ドラム式は、水量は少ない中、洗濯物を持ち上げては、ドラムに叩き付け、汚れを『押し出す』ことできれいにする方式です。

軟水で水の豊かなアジアと、硬水、ともすれば水の少ない欧米の違いがはっきり出ますね。
欧米では、この少ない、しかも硬水を使いこなすために、お湯洗い、そして洗剤のポテンシャルをフルに発揮できるような仕組みを取り入れています。

 
縦型は一見、アジアに適したように見えますが、問題もあります。

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縦型ななめドラム洗濯機!
この少し前傾が、新しい!


1つめは、水がそれなりに必要ということです。

実は乾燥機能を使わない時の、洗濯機は余り電気代を使いません。
一番お金が掛かるのは、水道代です。
このため、風呂の残り湯を使うのは当たり前なのですが、それでも水道代は嵩みます。

 
2つめの問題は、衣類が傷み易いということです。
先ほど書きました通り、衣類と衣類をこすり合わせるわけですので、原理的にも傷み易い。
傷めないためには、豊富な水量で、こすれを緩やかにしてやる必要があります。

 
この根本的な問題に対し、アクアの開発陣が出した解答が『スラッシュ』です。

 
■ななめドラムと専用パルセーター
スラッシュは、単純な言い方をしますと、「縦型洗濯機」に、ドラム式の「ななめドラム」を組み合わせたものです。
そして洗い方は、「縦型」に準じます。

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アクアの説明会資料より


ななめドラムと書きましたが、45°も傾いているわけではありません。
数度です。
これで効果があるのかと、いうと効果がスゴくあります。

例えば、お菓子を作る時、ボールの中で卵3つをかき混ぜ均一にする時を思い浮かべてください。
ボールを少し傾け、一気に回しますよね。

そしてコンクリートミキサー車。
均一状態を保つため、中でずっとゴロゴロしているのですが、これも斜めです。

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何気なく斜めにしているが、それはよく混ぜられるから!


つまり、平面の円運動を少し傾けることにより、重力による上下運動を加えてやるわけです。
これで撹拌時の運動が複雑になるため、少ない水量で、高い撹拌効果をだせるのです。

こうした『スラッシュ・ドラム』の効果をより高めるために産まれたのが、『スラッシュ・ウィング』。
専用のパルセーターです。

パルセーターで重要なことは、衣類に当てられる水量、循環水量を増やすことです。
衣類と水が同じ方向に同じスピードで動いていると、どんなに速いスピードで回っていても、相対的には動いていないわけですので、汚れを落とすことはできません。
洗濯物と水の動きを変えてやり、速度差を出し、衣服を傷まないように十分な水量を確保すること、それが「循環水量」といわれるモノです。

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スラッシュ専用のパルセーター


スラッシュ専用のパルセーターは、アシンメトリーです。
そして大きな凸が付いています。
これで上下の動きを確保しようというのです。

結果、衣類の四方八方から水が動くことになりますので、非常にきれいになります。
また循環水量が多いということは、衣類がムダに絡まないことを意味します。
つまり、汚れも落ちるが、衣類にやさしいわけです。

 
■使い勝手
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上フタを上げたところ。
手前側が非常にすっきりしている。
コンソールは右サイドにある。


ドラムがお辞儀したような状態のスラッシュは、実際とても使いやすいです。
まず手前が低いですからね。
洗濯槽の底までよく見えますし、手もラクラク届きます。

毛布などの大型洗濯物も楽に出し入れできます。
『楽勝』といわんばかりです。

今回のスラッシュのデザインの良さはコンソールパネルを横に持ってきたことにあります。
それのため、引っかかりのない操作を可能にしています。

斜めにはなっていますが、手前にいろいろなことに使えるミニスペースがあります。
汚れの酷い部分に液体洗剤を付けるのも、ここでできます。

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手前の部分、約10cm。
ここで液体洗剤を付けたりすることが可能


■スラッシュの先進性、3つの標準プログラム

スラッシュの先進性は、今の衣類事情に合わせてきたことです。
衣類には、選択条件を指定した洗濯タグが必ず付いています。

最近は、Tシャツなどの木綿でも、「弱指定」が多いのです。

例えばラバーブリントされたTシャツ。
洗濯すれば、する程、ラバープリントは粉々になります。
古着屋からいうと「味が出た」ということになるのですが、服屋からみると、「あーぁ、折角のデザイン部分がダメになった」ことになります。
こうしないために、「ネット指定」や「弱指定」がやたら多くなるわけです。

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二昔前なら、標準洗いの衣類だったはず。


これに対応するためにスラッシュは標準コースを3つ用意しています。
最近、ハイブリッドな素材を使っていることなどが多いですが、それにもピッタリです。
やさしく 衣類長持ち重視 少し使用水量を多くする代わりに、布傷みをグッと抑えて洗う「やさしい標準」。弱洗いなどデリケート衣類が多い時に
節水 節水性重視 洗浄力はそのままに、業界トップクラスの節水性を実現する「節水標準」。「ななめドラム」の効果を最大限に発揮
おまかせ 洗浄性能重視 すずぎ効果を高めしっかり洗って、しっかりすすぐ一般的な標準洗浄
実際に、どの位の水流差があるのか、見て見よう。



 
さらに、ドライマーク・コースも用意されています。
こちらは、手洗い、クリーニング対応用のモードです。
正直かなり思い切ったモードです。
ここら辺は、業務用クリーニングを未だに手がけている元サンヨーメンバーの自負がうかがえます。

手洗いの上手い人にかかると、クリーニングに出さずに済むのは事実です。
が、それには、その衣類が手洗いしてもイイかを見定める必要があります。

確かに、動き少なく、洗剤の力を使う様に設定されたコースですが、残念ながらスラッシュはお湯洗いモードはないですからね。また前述の通り、衣服に対するユーザーの目も必要です。
このコースは今後に期待したいように思いました。

 
■衣類おそうじ「糸くずキャッチャー」
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ちょっと古風な「糸くずキャッチャー」。


スラッシュは、非常にモダンなデザインの洗濯機ですが、質実剛健でもあります。
端的な例が「糸くずキャッチャー」。
非常に古典的な機構で、今なかなか見ることのないタイプです。

今一般的になった固定式に比べ、有利なのは、水流に合わせ吸い込み口が左右に動くことです。
確かに、スマートでないように見えますが、実力のある機構を使うのは、イイ家電の鉄則ですからね。

 


 
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「糸くずキャッチャー」の有無での違い。
人間、ティッシュの取り忘れなどもありますからね。


 
■脱水も衣類主体
弱指定より、デリケートな衣類は、数分の脱水でも影響を受けます。
脱水の標準は800回転/分。
かなりの力で、洗濯槽に押しつけられます。

この時、デリケートな衣類はシワがよります。
できるだけシワなどを寄せない。
できる限り、布地に負担を掛けない。

デリケートな衣類を扱う時の鉄則ですが、脱水の回転まで考えられた洗濯機は実に少ないです。

スラッシュは、標準は800回転/分以外に、400回転/分の「やわらか」、850回転/分の「しっかり」を有しています。

 
■第一印象
都会生活者のためのスマートな洗濯機。

これが私の印象ですね。
都会で生活していると、大汗をかくことがあっても、ほとんどの場合泥汚れとは無縁です。
パリッ子のように、10枚で対応したいと言っても、なかなかできません。
流行のモノも2〜3枚持つことも多い。
ところが流行のファッションは、長く着られることを前提に作っていない。
必然的に「弱洗い」が多いです。

「どうせ、1〜2年で着なくなる」と、ガンガン洗いざらしというのも悪くないのですが、洗いざらして様になる衣類は少ないですからね。

そんなニーズにピッタリです。

後、モダンなデザインもイイですね。
アールデコの様に、シンプルで、品があります。
色部分は、程よいアクセントですね。
この生活臭が少ないのも、イイですね。

都会生活者にピッタリの一品だと思います。

 
同時期に取材した、「ツイン・ウォッシュ」は、その2でレポートします。

 
商品のより詳しい情報は、アクアのホームページにてご確認ください。
http://aqua-has.com/laundry/product/aqw03/GT800/

2015年7月25日

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